『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ』(1999) THE WORLD IS NOT ENOUGH 127分 アメリカ
監督:マイケル・アプテッド 製作:マイケル・G・ウィルソン、バーバラ・ブロッコリ 脚本:ニール・パーヴィス、ロバート・ウェイド、ブルース・フィアスティン 撮影:エイドリアン・ビドル 音楽:デヴィッド・アーノルド テーマ曲:モンティ・ノーマン 主題歌:ガービッジ
出演:ピアース・ブロスナン、ソフィー・マルソー、ロバート・カーライル、デニース・リチャーズ、ロビー・コルトレーン、ジュディ・デンチ、デスモンド・リュウェリン、ジョン・クリーズ、マリア・グラツィア・クチノッタ、ゴールディー、セレナ・スコット・トーマス、サマンサ・ボンド、コリン・サーモン
シリーズ第19作目となる当作では清純派女優ソフィー・マルソーの悪女振りや、『フル・モンティ』(1997)などコミカルな演技で知られるロバート・カーライルの演ずるイカれた悪の親玉の異常者演技など、役者面で観るところが多い。
そして何よりも長年Q役をを務めたデスモンド・リュウェリンの最後の出演作である。まるでこれで最後と感じさせる演出が取られているが、公開時はまだ在命中だったし、病気でもなかった、死亡原因は病気ではなく交通事故だったので、もう数作は出て上手くジョン・クリーズに引き継ぐ予定だったのだろう。
Mの古くからの友人であろるロバート・キング卿の所有する文書が盗み出され、その身代金はボンドが奪い返したが、盗難の際にMI6のエージェントを殺した犯人は分からなかった。危機的状況に追い込まれながらも生還したボンドだが、狙撃で殺せたはずなのに何故殺さなかったのかと疑問に思う。
取り返した札束が薬品加工によって爆弾になっている、自分は爆弾の運び屋にされただけだと気づいたボンドは、保管室に向かうキング卿を止めようとしたが、間一髪で間に合わずキングは爆死してしまう。
結果を確認するためだろう、ボートに乗った女性がテムズ川からボンドを睨んでいる。
Qが開発していた試作品のボートに強引に乗り込むと、女の後を追いかける
途中でボートが360度側転するが、幾つかのカットに割られている。これは一発撮りなのか、複数の撮影をつなげて成功したように見せているのか。昔の007なら1カットで撮るところだろう。
近道を取るために陸上にあがり、町中の道路や魚市場、レストランの中を強引に走り抜けるボート。非常識きわまりない。レストランのお客さんに迷惑でしょ。って道を走るボート自体が非常識か。
追い詰めるが熱気球で女は逃走を。だがすでに警察などのヘリが数機ホバリングして待ちかまえている。ボンドは女に黒幕の正体を言えば守ってやると約束するが、あの男から守り抜くなんてできっこないと熱気球のボンベを撃ち抜いて爆死
キングの葬式で彼の娘エレクトラを見かけたボンドは何か惹かれる者を感じる。
爆弾が爆発したのは、キングが胸元に付けていたピンが偽物とすり替えられ、それが信号を発して起爆装置となったから。つまり犯人の一人はキングの近い位置にいる。
バグパイプ型マシンガン&火炎放射器などの珍兵器が並ぶQ支局。Qが後継者として育てている男を紹介。Qの次だからRかとボンドジョーク。
「だが引退するって事じゃないよな?」とボンド。
Qはそれには答えず「007 君には2つのことを教えてきた。1つ、人に弱みを見せるな」
「2つめは」
「常に逃げ道を用意しておけ」
そしてリフトで床下(地面の下)に消えていくQ。地面の下=墓の中と言う連想が働く。しかし、撮影時は健康体で、病気に冒され残された命をおして撮影に臨んだというわけではない。偶然なのであろう。
エレクトラは誘拐され犯人側は500万ドルを要求してきたが、彼女は見張りを射殺して自力で脱出のだ。そして冒頭の書類への身代金も500万ドルだった。
ボンドがさらに詳しく調べようとするとエレクトラ誘拐事件の詳細ファイルはアクセス禁止になっていた。
それに対しMが説明したのは、キング卿は誘拐事件を独力で解決しようとした。しかし失敗したためにMに助言を求めた。原則としてテロリストの要求は受け入れられない。Mは自分も母親である本能を押し隠して「身代金を払うべきではない」と伝えた。それで交渉で時間担ぎをしてその間に捜査を進めた、ということだった。
ボンドは今回と誘拐事件の身代金が同額だったことを説明。これはテロリストからのメッセージだと主張する。
主犯と思われる男はヴィクター・ゾーカス、別名アナーキスト・レナードと呼ばれる。北朝鮮、ボスニア、アフガニスタン、イラク、ベイルート、カンボジアなど危険地帯でテロ活動を行っている、テロリストだ。
009が狙撃し弾丸は命中したが即座に死には至らなかった。その弾丸が延髄を傷つけたために感覚器官が麻痺し、触覚と嗅覚、痛覚を失い、その影響で恐怖感がなくなった。
レナードが再びエレクトラを狙うことが予想されるため、ボンドはアゼルバイジャンに派遣される
エレクトラが社長になったキング石油では、地中海まで石油のパイプラインを建設中。
ボンドはエレクトラに彼女の身の危険を説明するが、「MI6を二度信じて、二度裏切られた」ととりつく島もなく警護を拒否する。
パイプライン建設予定地の視察に無理矢理同行するボンド。スキーで山を下っていってパイプライン合流予定地を確認する。そこへパラグライダーの襲撃、着陸するとスノーモービルになる優れものだ。ボンドが一台一台破壊していく。
爆発の衝撃で小型の雪崩が起こり生き埋めになるが、Q特製の防御スーツで助かる。しかし閉所にパニックを起こすエレクトラ。
ボンドは情報源を求めてカジノへ、。透視機能付きサングラスでカジノの内部を見渡すと用心棒はもとより、女性客まで銃を隠し持っている。
ボンドはヴァレンティン・ズコフスキーに会いたいとバーにいた男に告げる。元KGBのヴァレンティン・ズコフスキーは『ゴールデンアイ』にも登場した男だ。ボンドとは冷戦時代からの古い因縁のある人物だ。
ボンドはズコフスキーに襲撃者が付けていたマークを見せる。これは原子力省に所属する対テロ部隊だと説明するズコフスキー。
アフガニスタン以降、ロシアはレナードを捨てた。それ以来はフリーなので雇い主は他の石油会社だろうと推理を告げるズコフスキー。
そのカジノにエレクトラが乗り込んできて、ズコフスキーを相手に100万ドルで一回限りの賭をする。カードを引いて大きい数字の方が勝ち。そしてエレクトラは負ける。
ボンドはエレクトラ自身が白だと思ったのか、とりあえず節操もなくエレクトラがイチャイチャ。
ボンドが事務所の中を探っていると一人の男が現れる。その男を射殺し、入れ替わったボンドは飛行機でカザフスタンの核ミサイル解体現場へ。
成りすましたのはロシア原子力省のアーコフ。地下の核兵器保管庫に降りたボンドはではレナードとその部下が核弾頭を盗みだそうとしている。
係員や核兵器解体学者のクリスマスが降りてきて、ボンドは偽物だと告げる。確認のために届いたアーコフの写真は、ボンドが見つけた死体の男だった。ボンドはキング・グループとレナードにつながりを感じる。
係員に怪しまれたレナードたちはP-90を乱射し核弾頭を持って脱出を計る。ボンドは取り戻すべく懸命に戦うが、後一歩のところで盗まれる。
エレクトラからMにボンドが行方不明になったと連絡が入る。代わりの者を寄こすならMに来て欲しいと懇願する。
無事に館の戻ってきたボンドはエレクトラに裏でレナードと通じているのだろうと問い詰める。誘拐されている間にストックホルム症候群になって(スウェーデンですね。フィンランドです。・・・でも実は)
Mが現地入りするが、ボンドはエレクトラが敵側に付いている可能性を示唆。
パイプラインを内側から調べる機器リブが何者かに乗っ取られる。それに核弾頭が積まれている可能性があり、ボンドとクリスマスはもう一台のリブで追いかける。
爆弾を解体するがプルトニウムが半分しかない。リブから飛び降りて、起爆用の通常爆薬は爆発させる 死んだと思わせる
エレクトラがMに悪事を働いていることを伝え、あなたも殺すと言い切る。
残りの半分のプルトニウムはテロリストの手に。しかしそれだけでは臨界量に足りないので何に使うのか不明だ。
エレクトラはレナードに誘拐されたときに父のキング卿もMも何もしてくれなかったと思いこんでいる。レナードによって巧みに洗脳されたのだ。
カスピ海にあるズコフスキーのキャビア工場に乗り込む。どうもズコフスキーはもっと詳しい情報を掴んでいるはずだとにらんだのだ。
カジノでエレクトラから勝った100万ドルは報酬だったのだ。
丸ノコを吊したヘリでズタズタにされていく工場。ジェームズ・ボンドが全力疾走する。走るボンドはやはり良い。
ボンドカーのBMWのミサイルで一機は撃墜するが、もう一機のヘリの丸ノコでBMWは左右に真っ二つ。
キャビアの貯蔵プールに落ちたズコフスキーは、溺れそうになってついにエレクトラとの関係を白状した。時々ロシアから必要な資材などを調達していて、100万ドルは海軍にいる甥っ子に船を借り出させた報酬だ。船が着くのはイスタンブールだ
イスタンブールの隠し港に入港する原子力潜水艦。乗組員は飲み物に仕込まれた毒物で死亡。
レナードはプルトニウムを原潜の原子炉に入れ炉心誘拐を起こす。これならば一見事故にしか思われない。イスタンブールは壊滅し他のパイプラインは使えなくなり、唯一地中海に繋がっているキング社のパイプラインで石油運搬を独占できる。それが狙いだったのだ。
エレクトラに捕らえられていたMは時計を手に入れ、その電池でロケーターを作動させる。その電波で位置を掴んだボンドは、その場所に向かうが、レナードの手下に捕らえられてしまう。エレクトラがボンドに古代の処刑機を紹介する。手枷足枷、首輪で体を固定され、首の後ろに付いた輪を五回回すと首の骨が折れる。
ソフィー・マルソーがボンドに演説を繰り広げ、見事に悪女を演ずる。さすが昔は清純派、現在は本格派女優として活躍しているだけあって、アクションも濡れ場もないがこれが最大の見せ場かもしれない。
ボンドが危機一髪のところでズコフスキーが手下を連れて乗り込んでくるが、エレクトラによって撃たれる。ボンドに左膝を撃ち抜かれ足が不自由なズコフスキーは常に杖を持ち歩いている。この杖には単発の銃が仕込まれていた。一旦はエレクトラに向けられた銃口がボンドに狙いを変える。バン!発射された弾丸はボンドの体ではなく、処刑機に体を拘束している右手枷の一つを破壊していた。ズコフスキーは「ふん」と不敵に笑ってくたばる。くっそー、良い役だぜ。
処刑装置から抜け出したボンドは最上階にエレクトラを追い詰めるが、「あなたには愛した女を殺せないでしょう」とエレクトラはレナードに無線で実行指令を出す。即座にボンドが彼女を射殺する。007シリーズでボンドが意図的に女性を殺したのはこれが初めてである。シリーズのおけるこれまでの女性は、恋の対象か、守るべき対象、せいぜいが詰問するぐらいであって、倒すべき敵として登場したのはこれが初めてだろう。
潜水艦に忍び込んだボンドとクリスマスは、艦内で銃撃戦銃撃戦を繰り広げる。レナードはプルトニウム製制御棒を持って、原子炉室を閉鎖した。原子炉室に入るためには一度海中に出て原子炉室の選外ハッチから中に入るしかない。原子炉へのハッチに入るが、クリスマスが濁流にのまれてしまいなかなか排水のボタンを押せない
ついつい観客のオレも息を止めて観ていた。
最後、格闘の末にレナードはこれでようやく死ねるかとでも言った、一種安堵の表情になって死ぬ。
R「2000年問題かな」
アクション面ではさほぼ見るべきところはない。新しいアイディアもほとんどなくて、どこかで見たようなシーンの連発だ。
代わりに人間ドラマとしての完成度型高い。牽引役となっているのがエレクトラのソフィー・マルソーだ。最初は被害者として登場し、次第に怪しい部分が浮かび上がってきて、ついには極めつけの悪女振りを発揮する。見応えがある。
もう一人のボンドガール、クリスマス・ジョーンズ博士(デニース・リチャーズ)はひどいとまでは言わないが、ソフィー・マルソー相手では分が悪い。核兵器解体の専門家なのにその設定がほとんど活かされていないし、あまり頭がキレそうな人物にも見えない。正当派ボンドガールだが、もう一つ目立っていない。フェミニストの方には怒られそうな感想だが、胸と尻は良かった。
これまでは冷徹な印象が強かったMだが、級友キング卿の死や、自分の娘のように思っているエレクトラへの心配と裏切られたときのショックなどを上手く演じている。さすがシェークスピア俳優。
ズコレフスキーの死に様も渋格好いい。長年の因縁があるライバルを最後に助けて死ぬ。一種の男の友情だ。
ロバート・カーライルはスキンヘッドにして不安定な目つきで不屈のテロリストを演じている。エレクトラを手なずけた物の、もはや彼女に触れてもなんの感触もない。肉体的に彼女を愛せない代わりに、世界を彼女に贈ろうとする。哀れな男だ。他作品でのロバート・カーライルを忘れてから観ると、ちゃんとどこか哀れな最悪のテロリストを演じきっている。
Qはもちろん、お間抜けなRがギャグ部門を担当。ジョン・クリーズが次作からQになるが、ギャグの度合いは強くなりそうだ。
ピアース・ブロスナンは例によって大根だが、全力疾走する姿が格好いい。オレはそれで満足だ。
「JAMES BOND WILL RETURN」