『007 ゴールドフィンガー』(1964) GOLDFINGER 109分 イギリス
監督:ガイ・ハミルトン 製作:ハリー・サルツマン、アルバート・R・ブロッコリ 原作:イアン・フレミング 脚本:リチャード・メイボーム、ポール・デーン 撮影:テッド・ムーア 作詞:レスリー・ブリッカス 音楽:ジョン・バリー テーマ曲:レスリー・ブリッカス、モンティ・ノーマン 主題歌:シャーリー・バッシー
出演:ショーン・コネリー、ゲルト・フレーベ、オナー・ブラックマン、シャーリー・イートン、セク・リンダー、タニア・マレット、バーナード・リー、ロイス・マクスウェル、デスモンド・リュウェリン、ハロルド坂田
オープニングタイトル前の派手なアクション、Qの秘密兵器工房、回転するナンバープレートなど特殊装備満載のボンドカー・アストン・マーチンなど、007映画のフォーマットが完成したシリーズ第3作。
監督がテレンス・ヤングからガイ・ハミルトンへとバトンタッチされ、よりスケールアップされた娯楽映画になった。
今回の敵はゴールドフィンガー。スペクターとは関係なく、単独の悪党である。
マイアミのプールサイドで行う累計で10,000ドル程度のカードギャンブルでもいかさまを使って勝ちに行く守銭奴だ。ゴールドフィンガーというのは実在する姓で、映画音楽で有名なジェリー・ゴールドスミスなど、ゴールド何某という姓はユダヤ系に多いそうだ。
オープニング、頭にカモフラージュ用のカモの模型を付けウェットスーツを着たボンドが闇に紛れて水から上がってくる。敵のアジトに侵入すると、何故か部屋にドラム缶単位で置いてあったニトロにプラスチック爆薬をタイマー付きでセットする。
そしてアジトを出たところでウェットスーツを脱ぐと、下には白のタキシードを着ていて、その胸元に一輪の赤いバラを飾る。この瞬間である、ある程度リアリズム志向であった007シリーズが、面白いためなら、観客を楽しませるためなら何でもありに変化したのは。
前2作でのジェームズ・ボンドは任務のためならば眉一つ動かさずに敵を殺すことのできる殺しの許可証00を持つ殺し屋だったが、今作では一時の情事の相手を殺されて、その復讐を胸に誓う男となっている。
ちなみにその女性は体中に金粉を塗られ、皮膚呼吸ができなくて窒息死したという殺害方法だが、実際には人間の呼吸の内で皮膚呼吸の割合は1%なので皮膚呼吸ができなくてもそれで死ぬことはないそうだ。とまぁこんなことや「ドン・ペリニオンは3.5度以下に冷やして飲まなければならない」といった雑学・うんちくをボンドが言うようになるのも今作から。
ヒロインのボンドガールが誰なのかなかなかはっきりしないのでちょっと戸惑う。それらしき女性が2人登場するが、あっという間に殺されてしまう。ようやくボンドガールのプッシー・ガロアが登場するが、ちょっとオバさん。色っぽいけどね。
悪役としてはゴールドフィンガーがふてぶてしいが、それ以上に手下のよろず屋(オッドジョブ)役のハロルド坂田が印象に残る。執事が着るような正装にシルクハット。この帽子のひさしの縁には鋼鉄製の刃が仕込んであって、石像の首だって切断する強力さだ。ハロルド坂田はアメリカで活躍していた日本人レスラー。下駄履きでリングに上がると、正義の味方役の白人レスラーに塩で目つぶしをしたり(相撲の塩をまくところからヒントを得たのだろうか)、負けそうになると土下座をして、相手が振り向いたところを後ろから襲いかかるなど、悪役レスラー(ヒール)だったそうだ。
ゴールドフィンガーが企んでいるのは「グランド・スラム計画」。
アメリカ合衆国政府が保有している150億ドルの金塊がフォート・ノックスという所に保管してある。41,000人のアメリカ陸軍が警備し、仮に襲撃したとしても重量がありかさばる金を全て持ち出すことなど不可能だ。
だが、ゴールドフィンガーの真の狙いは金を盗み出すことではなかった。フォート・ノックスの地下保管庫内で核爆弾を爆発させ、金を放射能汚染させることで利用不可能にし、自分がすでに保有している金の価値を飛躍的に増大させようというのだ。使うのはコバルト爆弾なのでガンマ線放出量が多く、より放射能汚染が強い。
当時は米ドルは銀行に持ち込むと同価値の金と交換することができ(1971年に廃止)、つまりは流通貨幣分の金をアメリカが保有しているということで、それがアメリカドルの価値を保証していたのだが、それも不可能になりアメリカ経済の破綻、ひいては世界的な恐慌にも繋がる。
その計画内容を知ったボンドは果たしてグランド・スラム計画を阻止することができるのか。
フォート・ノックス内でのボンドとよろず屋の戦いはもはや伝説。
核爆弾のタイマーも普通ならば爆発1秒前で停止させるところを、あえて何秒か早くすることでハッタリの効いたギャグとなっている。このハッタリの醍醐味が007シリーズである。
悪役側は何度もボンドを殺す機会があったのに、殺せるときに殺しておかないから・・・。オレが犯罪組織のボスになったらボンドの類は真っ先に殺すな。まぁ、ボンドが敵に回るような大成した悪人にはなれないだろうが。
さぁ終わったなと思わせたところでまだどっきりがある。このタイミングも絶妙だ。
「JAMES BOND WILL BE BACK IN "THUNDERBALL"」