2006年12月アーカイブ

06050101.jpg『007 カジノ・ロワイヤル』(2006) CASINO ROYALE 144分 アメリカ/イギリス

監督:マーティン・キャンベル 製作:バーバラ・ブロッコリ、マイケル・G・ウィルソン 製作総指揮:アンソニー・ウェイ、カラム・マクドゥガル 原作:イアン・フレミング 脚本:ニール・パーヴィス、ロバート・ウェイド、ポール・ハギス 撮影:フィル・メヒュー プロダクションデザイン: ピーター・ラモント 衣装デザイン:リンディ・ヘミング 編集:スチュアート・ベアード 音楽:デヴィッド・アーノルド テーマ曲:モンティ・ノーマン 主題歌:クリス・コーネル
 
出演:ダニエル・クレイグ、エヴァ・グリーン、マッツ・ミケルセン、ジュディ・デンチ、ジェフリー・ライト、ジャンカルロ・ジャンニーニ、サイモン・アブカリアン、カテリーナ・ムリーノ、イワナ・ミルセヴィッチ、セバスチャン・フォーカン、イェスパー・クリステンセン、クラウディオ・サンタマリア、イザック・ド・バンコレ

 00要員になるためには任務上で二人殺害しなければならない。オープニングで話している相手がその二人目。一人目の殺害シーンは格闘アクションで、体の動きは歴代ボンドの中でダントツ一位だろう。
 これまで冒頭にあった銃口越しに狙われているボンドが横向きざまにワルサーを撃つ「ガン・バレル」がない。ボンド役がダニエル・クレイブに変わったことでイメージチェンジでなくなったんだろうかと残念に思っていたら、二人目を殺したシーンの後にあった。あっそうか、ここまでは単なる諜報員で、二人目を殺した時点から007なんだ。
 オープニングタイトルはトランプをモチーフにした物で、ハートなどの記号だけではなくキングやクイーンの絵も登場する。どうもモンティ・パイソンでテリー・ギリアムが担当したアニメーションっぽい。最後には巨大な足が落ちてきて、全部踏みつぶすんじゃないかと思った。
 そしてオープニングアクションはジャッキー・チェンばりの追跡劇。登ったり降りたりのマンチェイスの場にされた建設中のビルはあちこち壊れ被害額は多そうだ。スタントマンも多用しているのだろうが、肉体的なアクションにおいてダニエル・クレイブはなかなかやる。
 男は射殺してしまうが、そいつが持っていた荷物を手に入れ、携帯電話にエリプシスという人物が登録されているのを見つける。
 エリプシスに関する情報を調べていくと、バハマのパラダイス・アイランドにあるオーシャン・クラブにいるようだ。
 ボンドは男を射殺したことでMと口論になる。M曰く、これで背後にいるテロ組織などの情報を得られなくなったと伸べ、ボンドには00の資格がないと考えているようだ。
 バハマに飛ぶボンド。車はアストン・マーチン。
 クラブの防犯ルームに忍び込んで過去のデータを調べる。防犯カメラのビデオ映像がSONYのBDに記録されていた。製作にソニーが関わっているからなのだが、大容量なので記録時間は長そうだ。
 ボンドはMのパスコードを使いMI6のコンピュータで調べた結果、アレックス・デミトリオスという人物が浮かび上がった。
 ボンドはノートパソコンでさらに情報に当たり、ル・シッフルという人物に行き着いた。
 悪党側の男がマイアミ空港に現れる。狙いはスカイフリート航空の新型旅客機の爆破・ル・シッフルの狙いは、まずスカイフリートの株を大量に空売りして、そして旅客機を爆破することで株価を暴落させ、その差額で大儲けするつもりだったようだ。しかし、ボンドに阻止されて1億ドルを超える損害となった。
 ル・シッフルはテロ組織から資金を預かり、それを運用して利益を上げるのが仕事。一種の投資ファンドだ。CIAからの情報によると9・11テロの翌日に大儲けした者がいる。それにも関わっているかもしれない。
 モンテネグロのカジノ・ロワイヤルで大きな勝負が行われる。ギャンブル好きなル・シッフルは埋め合わせ金稼ぐためそのゲームに出場するとのこと。ボンドもMの命令で出場することになる。
 列車の中で英国財務省の女性ヴェスパーが現れる。政府の金が正当に運用されるかを監視に来たのだ。口げんかばかりの二人だが、便宜上恋人として振るまい同時行動することになる。
 ホテルで車の鍵を渡される。駐車場にはボンドカー、アストン・マーチン。だが、後半はほとんどカジノ・ロワイヤル内での室内劇になるので、アストン・マーチンにはあまり活躍の場はない。
 そしてギャンブルがスタート。マティスという男が二人の協力者として観客としてカジノにいる。
 ル・シッフルは出資者のアフリカテロリストに脅されている。盗み聞きをしていたボンドは、部屋から出てきたテロリスト二人と鉢合わせ、二人とも殺す。
 初めて殺人と関わりショックを受けているヴェスパー。
 そして大勝負になり、ル・シッフルの偽ブラフにボンドは騙され完敗し資金を使い果たす。
 ヴェスパーに予備の資金500万ドルも出せとボンドが迫る。「今度は必ず勝てる。オレを信じろ。この目を見るんだ。」、まるでパチンコや競馬に入れ込んだギャンブル狂の困ったオヤジのようだ。
 ヴェスパーは資金を出してくれなかったが、出場者の一人フィリックス・ライターが融通してくれる。フィーリックス・ライターの名に聞き覚えがある人も多いことだろう。CIAのエージェントで007シリーズには多数出演している。白人だったはずだが、今回は黒人になっている。『ネバーセイ・ネバーアゲイン』でも黒人だったな、たしか。
 最後のゲームでボンドはストレートフラッシュで一人勝ち。
 だがマティスはル・シッフルとも通じており、裏切られて捕まる二人
 ル・シッフルに勝った金の送金口座と暗証番号をボンドに聞き出すべく拷問を行う。
 そこへ入ってきた謎の男がル・シッフルを撃ち殺す。
 スイス銀行の担当者がボンドが収容されている病院の現れ、勝ち金の送金手続きを行う。そしてヴェスパーに恋に落ちたボンドはMに宛ててノートパソコン(VAIO)から辞職願いを出し、これからは普通の生活を送ることを誓い、数日間の休日に浸る。しかし、数日後Mから入金がされていないとの連絡が来る。ヴェスパーは銀行に出かけていて詳細が分からない。
 そこでスイス銀行の担当者に確認すると確かに指定された口座に送金したという。おや、いま誰かが引き出しているようです。
 そのベニス支店はホテルのすぐ近く。銀行に急いだボンドは、ヴェスパーと謎の男たちを見つける。
 改装中の建物にヴェスパーたちを追い込み、銃撃戦、格闘戦が始まる。
 水の上に作られた建物で土台が壊れて水に沈んでいく。エレベーターに閉じこめられたヴェスパーはボンドの助けを拒否して溺死し、謎の男がアタッシュケースを持って立ち去っていく。
 Mによるとヴェスパーには故郷に恋人がいて、その恋人を人質に取られて脅迫され、仕方なく英国政府を裏切った。ボンドが殺されなかったのは、ヴェスパーが現金引き出しボンドの命を引き替えたからだ。
 ボンドは00要員の中に裏切り者がいると考える。
 ボンドはMに辞職願を出したとおりにMI6を辞めたのだろうか。
 そして謎の男、ホワイトの携帯に一本の電話がかかってくる。その途端、サイレンサー付きの銃で撃たれるホワイト。自宅への階段へ這っていくホワイトの目の前に一人の男が立っていた。
「お前は誰だ」ホワイトの問いに男はこう答えた。
「My name is Bond, James Bond.」

 007シリーズの第21作目にして現在絶賛公開中の新ボンドダニエル・クレイグの第一回作品でもある。
 2006年12月31日を007シリーズ最新作で終わらせるにはいろいろな計算や予定調整が・・・ありませんでした。第12作目の『ユア・アイズ・オンリー』をアップしたときに、さてこのペースだと年内にどこまで書けるかなぁと計算してみたら、それまでの1日1作というペースで行けば、ちょうど大晦日に最新作の『カジノ・ロワイヤル』になるではないですか。でも年末は色々と忙しい・・・嘘ですオレの場合年中暇です。とりあえずマイペースで書き続ければ問題なさそう。いや、問題があった。それはまだ『カジノ・ロワイヤル』を観に行っていないこと。色々調子が悪くなって映画館とか列車とかの閉鎖空間が苦手になったんだよな。でも観に行きました。今回の特集の中で一番大変だったのだ『カジノ・ロワイヤル』を観に行ったことでしょう。ほんの数年前までは世の中で一番好きな空間だったんですけどね。

『女王陛下の007』と並ぶシリーズ中最大の異色作で、まずラストがハッピーエンドではない。
 敵の正体もはっきりとはせず、黒幕の正体も分からないまま。強いて言うならば、○部作の1作目で、2作目以降で詳細が分かっていくという感じなのだろうか。
 派手なアクションシーンもオープニング直後と終盤間近の二カ所に集中していて、本編のほとんどはカジノ・ロワイヤル内でのポーカーによる勝負に使われている。地味といえば地味だ。
 シリアス路線、ハードボイルド路線を追求したためだろうか、Qが登場しないのが残念だ。確かに、現在のQはお笑いキャラになってしまったため、今作の世界観とは合わないが、ボンドの腕にモニター機器を埋め込むシーンでちらっとでも出て欲しかった。
 ボンドとM以外では皆勤賞だったマニーペニーが出てこなかったのも残念。
 時代に合わせて作品は変わっていく物だが、今回の作風は別に007シリーズでやる必要がどれだけあったのか少々疑問だ。ボンドカーも特殊装備は医療キットとAED(電気ショックで停止した心臓にショックを与えて鼓動を復活させる装置。病院の待合室や、最近では駅の構内などでも見かけるようになった)と、便利なんだろうが地味。ミサイルとか撃たなきゃボンドーカーじゃないと思うんだがなぁ。
 他には携帯電話によるGPSやノートパソコンでの情報収集など、実用的だが秘密兵器と言うには地味。
 そう、全体的に地味なイメージなのだ。監督のマーティン・キャンベルはオレは好きではないのだが、アクションシーンはそれなりに撮れていた。問題はカジノでのポーカーのシーンやボンドとヴェスパーのやり取りなど心理描写を必要とするシーン。とりあえず下手。抑制のきいた演出と地味な演出は違うんだってば。ボンドが単に頭が固く頑固なクソオヤジにしか見えないのはどんなもんだろう。
 悪役も地味。ル・シッフルは小悪党といった印象で、カジノでボンドを相手に息詰まるポーカーを繰り広げるのだが、演出とこいつの小物ぶりで緊張感が感じられない。見せ場のシーンがこれではダメだろう。大逆転もまるで燃えない。チョウ・ユンファ主演の『ゴッド・ギャンブラー』でも見て、ギャンブルシーンでのはったり演出を学べ。
 地味といえばダニエル・クレイブも地味だ。役者としては悪くないのだろうし、肉体的アクションも見事にこなすが、ジェームズ・ボンドという大役をやるには華がないだろう。群衆シーンになるとどこにいるのか分からないというのが最大の弱点。実際のスパイは目立っちゃ行けないのだろうが、これはスパイを主人公にした娯楽映画。ぱっと観客の目を引くことが必要だ。立って、歩いて、銃を撃つ。そのどれもが決まってなければボンド役は難しい。マイナーな映画ならともかく、メジャーなアクション映画のスクリーン上ではダニエル・クレイブは脇役にしか見えない。とはいえ、これは努力して身につくものではないので、ダニエル・クレイブを悪くいうつもりはない。
 次回作がどんな形になるのか分からないが、『カジノ・ロワイヤル』の黒幕をさらに追っていく内容になるのだろうか。
 個人的には007シリーズは娯楽アクション映画で、小難しいテーマを扱う必要はないと考えている。ムーアボンドが一番の好みだし。
 だが、さすがにやりすぎたと制作陣が反省したのか、ダルトンボンドではアフガン問題や麻薬問題などを取り上げ、話がリアルすぎてスケールが小さくなった。
 続くブロスナンボンドでは衛星兵器や世界的な戦争を起こそうとするなど、ムーアボンドよりの派手な映画になった。
 今回の『カジノ・ロワイヤル』はコネリーボンドから始まるこれまでのシリーズには存在しなかったタイプの話だ。小説への原点回帰との声もあるが、すでに小説と映画の関係は限りなく希薄だ。シリアスなアクション映画ならばいくらでもある。007にはとにかく派手でイカれた悪党の登場するバカ映画を目指してもらいたい。

「JAMES BOND WILL RETURN」

B000IU38OC.jpg『007 ダイ・アナザー・デイ』(2002) DIE ANOTHER DAY 133分 アメリカ/イギリス

監督:リー・タマホリ 製作:バーバラ・ブロッコリ、マイケル・G・ウィルソン 原作:イアン・フレミング 脚本:ニール・パーヴィス、ロバート・ウェイド、撮影:デヴィッド・タッターサル 音楽:デヴィッド・アーノルド テーマ曲:モンティ・ノーマン 主題歌:マドンナ
 
出演:ピアース・ブロスナン、ハリー・ベリー、トビー・スティーヴンス、ロザムンド・パイク、リック・ユーン、ジュディ・デンチ、ジョン・クリーズ、マイケル・マドセン、ウィル・ユン・リー、ケネス・ツァン、エミリオ・エチェバリア、コリン・サーモン、サマンサ・ボンド、マドンナ

 007シリーズもついに21世紀に突入したシリーズ第20作目。
 オープニングタイトルの「ガン・バレル」でボンドが放った銃弾がバレルに飛び込む。お前は『マトリックス』か。
 海からサーフィンで北朝鮮に潜入するボンドたち。ちなみにこの作品はフィクションで、実在する人物・地名とは一切関係ありません。
 サーフボードの中から取りだした誘導装置でヘリの進路を変更し、自分たちがいる地点に着陸させる。ヘリを強奪、乗っていた白人に成りすましたボンドと部下が乗り込み、そのまま本来の到着地点へ向かう。着いたのは非武装地帯にあるムーン大佐の基地だった。
 ヘリを降りたところで知らぬうちに写真を撮られ、解析にかけられる。アタッシュケースに入っていたのはアフリカから密輸出されたダイヤだった。ムーンはオックスフォードとハーバードで学んだ。「西洋の偽善」について学んだそうだが、高価なスポーツカーをコレクションしている自己矛盾を抱えた男だ。
 ダイヤと交換するのは武器。非武装地帯の地雷原の中に隠してある。そこをホバークラフトで行き来する。
 ムーンの部下ザオが写真による検索でボンドの正体を見抜く。というかこれまで作品では見抜かれなかったのが不思議だ。
『ゴールデンアイ』の頃と比べるとブロスナンも渋くなった。あるいは老けた。顔に細かいしわが目立つ。
 捕まりそうになったところをダイヤの入ったアタッシュケースに仕掛けておいた爆弾を爆発させ、隙を作ってホバークラフトを奪い逃走。
 ムーン大佐や部下もホバークラフト軍団で追いかけてくるが、単にカーチェイスの変種で、ホバークラフトならではのアイディアはないのが残念。
 追跡劇の末、滝から落ちるムーン大佐。ボンドはムーンの父ムーン将軍に捕まり、拷問を受ける。
 その拷問のままオープニングへ。主題歌はマドンナ。なかなか面白い曲だ。

 14ヶ月後 牢獄から連れ出されたボンドはムーン将軍の前に引き出される
「お前は国に裏切られたのに何故口を割らん。西側での息子の協力者は誰だ。」だがボンドは答えない。
 そして外へ連れて行かれる。銃殺かと思っているボンドだったが、ザオとの捕虜交換で解放される。
 西側に戻ったボンドは麻酔薬を打たれ、医療施設に監禁されれあれこれと検査された。体内に残留した薬物を調べると、サソリの毒が検出された。サソリに刺させては解毒剤を打って回復させ、また刺させると、過酷な拷問を繰り返したようだ。
 Mとの面談。「あなたの代償は高すぎた。中韓首脳会談の会場に爆弾を仕掛け3名の中国人諜報員を殺害したザオとの引き替えだったから。でも、北朝鮮に潜入していたアメリカの諜報員が一週間前に殺された。密告の情報はボンドがいた収容所からだった。アメリカはボンドが拷問に耐えきれず話したのだとうと推測。そこで人質交換でボンドを解放した」
 ボンドは、ザオを取り戻すために自分を利用し、情報を漏らして人質交換に持ち込んだろうと主張。
 だがMはボンドを再教育施設に送り、00ナンバーも取り消すと告げる。
 瞑想で心臓を止め、医者が蘇生措置に来たところを利用して脱走するボンド。そこは船の上で、香港港の中だった。中国スパイの協力を得て、ザオが潜むキューバへと向かう。
 葉巻屋の看板を上げたキューバのスパイを訪れてザオの情報を得る。
 ザオはオス・オルガノス島にいる。そこには遺伝子治療専門のアルバレス病院がある。高額な治療報酬で寿命を伸ばす治療などを行っているようだ。
 島への船便が出る桟橋のあるホテルで、ボンドはジンクスという名の黒人女性に会う。奇妙に惹かれ合う二人だった。
 ボンドは病院に向かう船にジンクスも乗っていることを見つける。
 院長がジンクスにDNA組み替え治療の概略を説明している。患者の骨髄を殺してDNAを白紙に戻す。続いてドナーの健康なDNAを注入する。ドナーはホームレスや行方不明者などだから事件にはならず安心だ。それだけ話すと院長はジンクスによって射殺される。
 コンピュータをチェックしていたジンクスは、白人に遺伝子整形するザオのファイルを見つける。
 ボンドは治療中のザオを発見。黒幕が誰かを聞き出そうとするが乱闘になる。何度もザオに向けて発砲するが擦りもしない。やはりボンドは射撃が下手だ。
 ザオが残していった物は数個のダイヤモンド。成分によると通称が禁じられたセラレオナ産だが、刻印ではアイスランドのグレーブス社の製品となっている。アイスランドで採掘されたダイヤがアフリカの禁輸品と同じ物。グレーブス社はどこか匂う。

 女王陛下からグレーブスにナイトの称号が贈られることになり、式典のためにグレーブスがロンドンに現れる。
 グレーブスは有能だが記者会見の場にパラシュート降下で現れるなど派手なパフォーマンスが好きで、他人を下に見た感じの男である。
 グレーブスを追ってフェンシングの練習場に現れたボンドはベリティ(マドンナ)に会う。
 クラブ一の達人はグレーブスの広報担当として働いているミランダ。シドニーで銀メダルを取った女性だ。ボンドはベリティにグレーブスに紹介してもらう。
 賭試合専門のグレーブスは一本1000ポンドで賭を申し込む。はじめは普通のフェンシングをやっていた二人だが、途中から頭に血が上って真剣で勝負を始め、建物の中はしっちゃかめっちゃか。グレーブスに勝ったボンドは、アイスランドでのイカルスの発表会に招待される。
 今は使われていないロンドン地下鉄の駅にMI6の秘密アジトがあった。
 そこでボンドはMとグレーブスについて情報交換をし、現場復帰を許される。
 自分のデスクでワルサーP99を掃除しているボンド。なにやら怪しげな雰囲気を感じる。廊下に射殺された職員が転がり、マニーペニーも殺されている。現れる敵を次々に撃ち殺していく。Mが人質になり盾にされているが、ボンドはMを撃ち、ひるんだ敵を冷静に射殺する。実はバーチャルリアリティでの訓練。訓練だとボンドの弾はよく当たるようだ。 
 倉庫には昔使った秘密兵器の数々が保管されている。ワニ型ボート、ジェットパックなどなど、懐かしいね。
 Qが新型の車だといって現れた台車にはなにも乗っていない。ついにイカれたかと思いいきや、『プレデター』のエイリアンや『攻殻機動隊』のような光学迷彩を実現させたアストン・マーチンなのだ。その他にはイジェクトシートにロケットランチャー、自動追尾式マシンガン。
 そしてMのデスクの前に座ったのはミランダ。彼女はMI6のエージェントだったのだ。暗号課上がりでグレーブスに近づいて3ヶ月になるが収穫はなく、彼は白だと主張する。

 アイスランドにある氷の宮殿は巨大なオープンセット。そこにはジンクスの姿もあった。
 主催者のグレーブスの元にザオが現れる。グレーブスはDNA整形で白人になったムーン大佐だったのだ。
 発表会のセレモニーでグレーブスはイカルスについて宇宙に打ち上げた大型衛星で、パラボラ状の巨大な鏡を広げる。そして光を反射して地球を照らしものだと説明する。イカルスの光りで暗闇のアイルランドの会場が昼間のように明るくなる。
 イカルスのコントロール装置を持ったグレーブスの部下を追って、宮殿の裏側を外からのぞき込むボンド。見張りに発見され逃げだし、途中でミランダが彼を助け、自らもMI6であることを話す。
 研究所のドームに進入したジンクスはそこでザオを発見、だがグレーブスに捕らえられ、台に縛り付けられてレーザーで細切れにされそうになる。
 ボンドは水中からドームに侵入。危機一髪のところでジンクスを助ける。
 ジンクスの正体はNSA国家安全保障局だった。そしてジンクスの話からボンドはグレーブスの正体がムーン大佐だったことに気づく。
 ボンドは乗り込んでいってグレーブスと対面し武器を突きつける。続いてミランダが現れてグレーブスに銃を突きつける。
だがグレーブスは余裕の表情で「ところで、だれが北朝鮮でお前を裏切ったか分かっているか。意外と身近にいるかもしれんぞ」と笑う。
 怪しむ間もなく銃をボンドに向けるミランダ。ボンドはミランダを撃とうとするが、ミランダが昨夜銃に細工をしていたため弾が出なかった。
 ガラスで出来た床を高振動式破壊装置が付いた指輪で砕いたボンドは、表にあったロケットカーで逃亡する。イカルスからの熱光線で殺されたかに見えたボンドだが、ロケットカーの部品とブレーキ用のパラシュートでパラサーフィンを作ってかろうじて脱出。ジンクスを救助するため宮殿に戻る。
 警備の人間に見つかり、アストン・マーチンに乗ったボンドは、バルカン砲などで武装したザオのジャガーXKRと氷上をカーチェイスを繰り広げ、ついには宮殿内に突入する。
 氷の宮殿の一室に閉じこめられていたジンクスは氷が溶ける水に飲み込まれて溺死してしまう。だが水温が極端に低かったためボンドが蘇生に成功。

 二人は韓国非武装地帯にある米軍司令部へ到着する。
 北朝鮮側の非武装地帯に8万の兵が集合している。さらに100万の予備軍がいる。ムーン将軍はクーデターにより囚われの身となった。
 北朝鮮軍はイカルスで地雷原の地雷を破壊して、安全になったところを進行してくるのだ。だが、イカルスはアメリカが対衛星兵器で破壊するとファルコが言う。
 グレーブスは北の飛行場にいる。北にはいることは出来ないが、ボンドとジンクスは強引に進入作戦を実行する。
 対衛星ミサイルがイカルスに迫るがイカルスの熱光線で破壊されてしまう。
 もはや頼りは二人のみ。
 グレーブス一味はジェット機で飛び立ち、その飛行機に密航する二人。
 ムーン将軍の前にいたのはイカルスコントロール装置をウェブラブルに改良して身にまとった白人グレーブスだった。ムーン将軍は自分の息子だとは認めない。
 そこでグレーブスは父に教わった兵法を語る。「戦に優れたる者は勝利の後にもさらなる戦に挑む」孫子の兵法だ。
 イカルスを始動させ、次々に非武装地帯が火の海に飲み込まれる。地雷原がなくなれば、あとは兵士を韓国に送り込んで半島を統一し、さらに日本など他国も侵略してさらなる力を手に入れようというのだ。
 穏健派のムーン将軍は過激なグレーブスを受け入れず、結局グレーブスは父を殺す。
 そこにボンドが登場するが、誤射で期待の壁面に穴が開き、外に吸い出されていく手下や北朝鮮の将軍たち。
 機内ではジンクス対ミランダの刀による戦いと、ボンド対ジンクスの格闘戦が繰り広げられ、ミランダは心臓をナイフで刺され、グレーブスはジェットエンジンに巻き込まれて死ぬ。二人はハーバードで同じフェンシング部に所属しており、その縁がこの事件の発端だったとも言えるのだろう。
 制御不能になって墜落していくジェット機から、二人は貨物室に積まれていたヘリで自由落下のまま脱出する。
 なかなかエンジンがかからない。刻一刻と近づいてくる地面。再度エンジンをかけようとするが無反応。このままピザのように真っ平らになって死ぬのか?もちろんギリギリでエンジンが始動し、無事大空を飛ぶ。100%そうなるとわかっちゃいるけどハラハラしてしまうのは何故だろう。

 マニーペニーが書類仕事をしているところにボンドが。熱烈なキスをするボンド。20作目にしてついに一線を越えてしまうのかっ!と思ったら訓練用のバーチャルリアリティ装置でマニーペニーが架空のロマンスに耽っていたのだ。でも、マニーペニーは確実にボンドに気があるのだが、決して直接的にはアプローチしない物だったのだが。これも時代の変化か。
 その頃、韓国の野原にある庵でボンドとジンクスはランデブーの真っ最中だった。

 監督のリー・タマホリは『ザ・ワイルド』(1997)や『スパイダー』(2001)などを取っていた中堅監督で今回の起用は大抜擢と言っていいだろう。アクションシーンの演出は前作のマイケル・アプテッドよりかなり上手く、アクション的にはだれる部分は少なかった。
 その反面、人間ドラマの書き方は下手で、父親にコンプレックスを持っていて、祖国のために大きな事をやることで認められたいというグレーブス(ムーン大佐)と、その方向が間違っていることに気づきながらも直してやることが出来ず、結局は息子を拒否してその息子当人の手で殺されてしまうムーン将軍の父息子の葛藤が上手く描かれていなかった。その後、駄作『トリプルX ネクスト・レベル』(2005)を撮ったがこれはつまらなかった。今後もあまり期待できそうではない。
 これまでのボンドガールはボンドに守ってもらったり、ボンドを裏切ったり、戦いでボンドのバックアップになったりはしたが、今作のジンクス(ハリー・ベリー)は『トゥモロー・ネバー・ダイ』でのミシェル・ヨーと同じく、ボンドと並んで同じレベルで戦う女性戦士だ。ボンド顔負けというか、分野によってはボンドより有能な部分もあるだろう。
 ハリー・ベリーといえば『チョコレート』でアカデミー主演女優賞を受賞したが、その授賞式があったのはこの作品の撮影最中のこと。受賞以降、ハリー・ベリーの知名度は上がり、ギャラもアップしただろうから、この作品は良い時期に契約したものである。オレはこの作品でハリー・ベリーを見て、「あれ?エグゼクティブ・デシジョンのフライトアテンダントじゃないか」と思った程度だった。
 もう一人のボンドガールミランダの方は正直さえない。主人公を裏切る悪女としてのボンドガールは前作『ワールド・イズ・ノット・イナフ』でソフィー・マルソーが最高の物を見せてしまったので、どうやっても分が悪い上に、演ずる女優が下手で終盤の悪女振りも様になっていない。

 ブロスナンは4作契約と言うことで、今後はどうなるかと思ったが、契約の延長はなくダニエル・クレイグが引き継いで『カジノ・ロワイヤル』が制作された。
 歴代ボンドの中で一番走るシーンが多かったように思う。過酷な撮影もあったようで、お疲れ様でした。

 太陽光線を集中させて地上に放射するイカルスという衛星兵器は007シリーズらしいうさんくささだが、南北朝鮮問題という実在する問題を全編で扱っている。なんというか、007シリーズにこの手の重いテーマは似合わないのではないだろうか。別にジョン・ル・カレの原作を映画化しようって言うんじゃないんだから。

 ここまでの20作は全てDVDになっている。オレが持っているのは以前出ていた特別編なのでブロスナン以外作品は吹き替えなしだが、今出ているアルティメット・コレクションは前作吹き替え入りだチクショー。しかも20作入りのボックスだとたったの¥48,750だコンチクショー。オレはBOX1(¥24,800)、BOX2(¥19800)、BOX3(¥19800)で買ったぞ、さすがに定価ではなく10%引きぐらいだがそれでも金額は大違いだ、テラチクショー。しかも当時は『007 ダイ・アナザー・デイ』は出ていなかったので、単品買いだ、オメガチクショー。

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 しかも『007アルティメット・コレクション BOX』は収納用アタッシュケース付き。
欲しいなぁ、買わないけどさぁ。ふんっ、どーせ次世代メディアでまた出るんだろ。今はソニーが版権を持ってるからBDか。

「JAMES BOND WILL RETURN」

B000IU38O2.jpg『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ』(1999) THE WORLD IS NOT ENOUGH 127分 アメリカ
監督:マイケル・アプテッド 製作:マイケル・G・ウィルソン、バーバラ・ブロッコリ 脚本:ニール・パーヴィス、ロバート・ウェイド、ブルース・フィアスティン 撮影:エイドリアン・ビドル 音楽:デヴィッド・アーノルド テーマ曲:モンティ・ノーマン 主題歌:ガービッジ
出演:ピアース・ブロスナン、ソフィー・マルソー、ロバート・カーライル、デニース・リチャーズ、ロビー・コルトレーン、ジュディ・デンチ、デスモンド・リュウェリン、ジョン・クリーズ、マリア・グラツィア・クチノッタ、ゴールディー、セレナ・スコット・トーマス、サマンサ・ボンド、コリン・サーモン

 シリーズ第19作目となる当作では清純派女優ソフィー・マルソーの悪女振りや、『フル・モンティ』(1997)などコミカルな演技で知られるロバート・カーライルの演ずるイカれた悪の親玉の異常者演技など、役者面で観るところが多い。
 そして何よりも長年Q役をを務めたデスモンド・リュウェリンの最後の出演作である。まるでこれで最後と感じさせる演出が取られているが、公開時はまだ在命中だったし、病気でもなかった、死亡原因は病気ではなく交通事故だったので、もう数作は出て上手くジョン・クリーズに引き継ぐ予定だったのだろう。

 Mの古くからの友人であろるロバート・キング卿の所有する文書が盗み出され、その身代金はボンドが奪い返したが、盗難の際にMI6のエージェントを殺した犯人は分からなかった。危機的状況に追い込まれながらも生還したボンドだが、狙撃で殺せたはずなのに何故殺さなかったのかと疑問に思う。
 取り返した札束が薬品加工によって爆弾になっている、自分は爆弾の運び屋にされただけだと気づいたボンドは、保管室に向かうキング卿を止めようとしたが、間一髪で間に合わずキングは爆死してしまう。
 結果を確認するためだろう、ボートに乗った女性がテムズ川からボンドを睨んでいる。
 Qが開発していた試作品のボートに強引に乗り込むと、女の後を追いかける
 途中でボートが360度側転するが、幾つかのカットに割られている。これは一発撮りなのか、複数の撮影をつなげて成功したように見せているのか。昔の007なら1カットで撮るところだろう。
 近道を取るために陸上にあがり、町中の道路や魚市場、レストランの中を強引に走り抜けるボート。非常識きわまりない。レストランのお客さんに迷惑でしょ。って道を走るボート自体が非常識か。
 追い詰めるが熱気球で女は逃走を。だがすでに警察などのヘリが数機ホバリングして待ちかまえている。ボンドは女に黒幕の正体を言えば守ってやると約束するが、あの男から守り抜くなんてできっこないと熱気球のボンベを撃ち抜いて爆死

 キングの葬式で彼の娘エレクトラを見かけたボンドは何か惹かれる者を感じる。
 爆弾が爆発したのは、キングが胸元に付けていたピンが偽物とすり替えられ、それが信号を発して起爆装置となったから。つまり犯人の一人はキングの近い位置にいる。
 バグパイプ型マシンガン&火炎放射器などの珍兵器が並ぶQ支局。Qが後継者として育てている男を紹介。Qの次だからRかとボンドジョーク。
「だが引退するって事じゃないよな?」とボンド。
Qはそれには答えず「007 君には2つのことを教えてきた。1つ、人に弱みを見せるな」
「2つめは」
「常に逃げ道を用意しておけ」
そしてリフトで床下(地面の下)に消えていくQ。地面の下=墓の中と言う連想が働く。しかし、撮影時は健康体で、病気に冒され残された命をおして撮影に臨んだというわけではない。偶然なのであろう。
 エレクトラは誘拐され犯人側は500万ドルを要求してきたが、彼女は見張りを射殺して自力で脱出のだ。そして冒頭の書類への身代金も500万ドルだった。
 ボンドがさらに詳しく調べようとするとエレクトラ誘拐事件の詳細ファイルはアクセス禁止になっていた。
 それに対しMが説明したのは、キング卿は誘拐事件を独力で解決しようとした。しかし失敗したためにMに助言を求めた。原則としてテロリストの要求は受け入れられない。Mは自分も母親である本能を押し隠して「身代金を払うべきではない」と伝えた。それで交渉で時間担ぎをしてその間に捜査を進めた、ということだった。
 ボンドは今回と誘拐事件の身代金が同額だったことを説明。これはテロリストからのメッセージだと主張する。
 主犯と思われる男はヴィクター・ゾーカス、別名アナーキスト・レナードと呼ばれる。北朝鮮、ボスニア、アフガニスタン、イラク、ベイルート、カンボジアなど危険地帯でテロ活動を行っている、テロリストだ。
 009が狙撃し弾丸は命中したが即座に死には至らなかった。その弾丸が延髄を傷つけたために感覚器官が麻痺し、触覚と嗅覚、痛覚を失い、その影響で恐怖感がなくなった。
 レナードが再びエレクトラを狙うことが予想されるため、ボンドはアゼルバイジャンに派遣される
 エレクトラが社長になったキング石油では、地中海まで石油のパイプラインを建設中。
 ボンドはエレクトラに彼女の身の危険を説明するが、「MI6を二度信じて、二度裏切られた」ととりつく島もなく警護を拒否する。
 パイプライン建設予定地の視察に無理矢理同行するボンド。スキーで山を下っていってパイプライン合流予定地を確認する。そこへパラグライダーの襲撃、着陸するとスノーモービルになる優れものだ。ボンドが一台一台破壊していく。
 爆発の衝撃で小型の雪崩が起こり生き埋めになるが、Q特製の防御スーツで助かる。しかし閉所にパニックを起こすエレクトラ。

 ボンドは情報源を求めてカジノへ、。透視機能付きサングラスでカジノの内部を見渡すと用心棒はもとより、女性客まで銃を隠し持っている。
 ボンドはヴァレンティン・ズコフスキーに会いたいとバーにいた男に告げる。元KGBのヴァレンティン・ズコフスキーは『ゴールデンアイ』にも登場した男だ。ボンドとは冷戦時代からの古い因縁のある人物だ。
 ボンドはズコフスキーに襲撃者が付けていたマークを見せる。これは原子力省に所属する対テロ部隊だと説明するズコフスキー。
 アフガニスタン以降、ロシアはレナードを捨てた。それ以来はフリーなので雇い主は他の石油会社だろうと推理を告げるズコフスキー。
 そのカジノにエレクトラが乗り込んできて、ズコフスキーを相手に100万ドルで一回限りの賭をする。カードを引いて大きい数字の方が勝ち。そしてエレクトラは負ける。
 ボンドはエレクトラ自身が白だと思ったのか、とりあえず節操もなくエレクトラがイチャイチャ。
 ボンドが事務所の中を探っていると一人の男が現れる。その男を射殺し、入れ替わったボンドは飛行機でカザフスタンの核ミサイル解体現場へ。
 成りすましたのはロシア原子力省のアーコフ。地下の核兵器保管庫に降りたボンドはではレナードとその部下が核弾頭を盗みだそうとしている。
 係員や核兵器解体学者のクリスマスが降りてきて、ボンドは偽物だと告げる。確認のために届いたアーコフの写真は、ボンドが見つけた死体の男だった。ボンドはキング・グループとレナードにつながりを感じる。
 係員に怪しまれたレナードたちはP-90を乱射し核弾頭を持って脱出を計る。ボンドは取り戻すべく懸命に戦うが、後一歩のところで盗まれる。
 エレクトラからMにボンドが行方不明になったと連絡が入る。代わりの者を寄こすならMに来て欲しいと懇願する。
 無事に館の戻ってきたボンドはエレクトラに裏でレナードと通じているのだろうと問い詰める。誘拐されている間にストックホルム症候群になって(スウェーデンですね。フィンランドです。・・・でも実は)
 Mが現地入りするが、ボンドはエレクトラが敵側に付いている可能性を示唆。
 パイプラインを内側から調べる機器リブが何者かに乗っ取られる。それに核弾頭が積まれている可能性があり、ボンドとクリスマスはもう一台のリブで追いかける。
 爆弾を解体するがプルトニウムが半分しかない。リブから飛び降りて、起爆用の通常爆薬は爆発させる 死んだと思わせる
 エレクトラがMに悪事を働いていることを伝え、あなたも殺すと言い切る。
 残りの半分のプルトニウムはテロリストの手に。しかしそれだけでは臨界量に足りないので何に使うのか不明だ。
 エレクトラはレナードに誘拐されたときに父のキング卿もMも何もしてくれなかったと思いこんでいる。レナードによって巧みに洗脳されたのだ。

 カスピ海にあるズコフスキーのキャビア工場に乗り込む。どうもズコフスキーはもっと詳しい情報を掴んでいるはずだとにらんだのだ。
 カジノでエレクトラから勝った100万ドルは報酬だったのだ。
 丸ノコを吊したヘリでズタズタにされていく工場。ジェームズ・ボンドが全力疾走する。走るボンドはやはり良い。
 ボンドカーのBMWのミサイルで一機は撃墜するが、もう一機のヘリの丸ノコでBMWは左右に真っ二つ。
 キャビアの貯蔵プールに落ちたズコフスキーは、溺れそうになってついにエレクトラとの関係を白状した。時々ロシアから必要な資材などを調達していて、100万ドルは海軍にいる甥っ子に船を借り出させた報酬だ。船が着くのはイスタンブールだ
 イスタンブールの隠し港に入港する原子力潜水艦。乗組員は飲み物に仕込まれた毒物で死亡。
 レナードはプルトニウムを原潜の原子炉に入れ炉心誘拐を起こす。これならば一見事故にしか思われない。イスタンブールは壊滅し他のパイプラインは使えなくなり、唯一地中海に繋がっているキング社のパイプラインで石油運搬を独占できる。それが狙いだったのだ。
 エレクトラに捕らえられていたMは時計を手に入れ、その電池でロケーターを作動させる。その電波で位置を掴んだボンドは、その場所に向かうが、レナードの手下に捕らえられてしまう。エレクトラがボンドに古代の処刑機を紹介する。手枷足枷、首輪で体を固定され、首の後ろに付いた輪を五回回すと首の骨が折れる。
 ソフィー・マルソーがボンドに演説を繰り広げ、見事に悪女を演ずる。さすが昔は清純派、現在は本格派女優として活躍しているだけあって、アクションも濡れ場もないがこれが最大の見せ場かもしれない。
 ボンドが危機一髪のところでズコフスキーが手下を連れて乗り込んでくるが、エレクトラによって撃たれる。ボンドに左膝を撃ち抜かれ足が不自由なズコフスキーは常に杖を持ち歩いている。この杖には単発の銃が仕込まれていた。一旦はエレクトラに向けられた銃口がボンドに狙いを変える。バン!発射された弾丸はボンドの体ではなく、処刑機に体を拘束している右手枷の一つを破壊していた。ズコフスキーは「ふん」と不敵に笑ってくたばる。くっそー、良い役だぜ。
 処刑装置から抜け出したボンドは最上階にエレクトラを追い詰めるが、「あなたには愛した女を殺せないでしょう」とエレクトラはレナードに無線で実行指令を出す。即座にボンドが彼女を射殺する。007シリーズでボンドが意図的に女性を殺したのはこれが初めてである。シリーズのおけるこれまでの女性は、恋の対象か、守るべき対象、せいぜいが詰問するぐらいであって、倒すべき敵として登場したのはこれが初めてだろう。
 潜水艦に忍び込んだボンドとクリスマスは、艦内で銃撃戦銃撃戦を繰り広げる。レナードはプルトニウム製制御棒を持って、原子炉室を閉鎖した。原子炉室に入るためには一度海中に出て原子炉室の選外ハッチから中に入るしかない。原子炉へのハッチに入るが、クリスマスが濁流にのまれてしまいなかなか排水のボタンを押せない
ついつい観客のオレも息を止めて観ていた。
 最後、格闘の末にレナードはこれでようやく死ねるかとでも言った、一種安堵の表情になって死ぬ。

R「2000年問題かな」

 アクション面ではさほぼ見るべきところはない。新しいアイディアもほとんどなくて、どこかで見たようなシーンの連発だ。
 代わりに人間ドラマとしての完成度型高い。牽引役となっているのがエレクトラのソフィー・マルソーだ。最初は被害者として登場し、次第に怪しい部分が浮かび上がってきて、ついには極めつけの悪女振りを発揮する。見応えがある。
 もう一人のボンドガール、クリスマス・ジョーンズ博士(デニース・リチャーズ)はひどいとまでは言わないが、ソフィー・マルソー相手では分が悪い。核兵器解体の専門家なのにその設定がほとんど活かされていないし、あまり頭がキレそうな人物にも見えない。正当派ボンドガールだが、もう一つ目立っていない。フェミニストの方には怒られそうな感想だが、胸と尻は良かった。
 これまでは冷徹な印象が強かったMだが、級友キング卿の死や、自分の娘のように思っているエレクトラへの心配と裏切られたときのショックなどを上手く演じている。さすがシェークスピア俳優。
 ズコレフスキーの死に様も渋格好いい。長年の因縁があるライバルを最後に助けて死ぬ。一種の男の友情だ。
 ロバート・カーライルはスキンヘッドにして不安定な目つきで不屈のテロリストを演じている。エレクトラを手なずけた物の、もはや彼女に触れてもなんの感触もない。肉体的に彼女を愛せない代わりに、世界を彼女に贈ろうとする。哀れな男だ。他作品でのロバート・カーライルを忘れてから観ると、ちゃんとどこか哀れな最悪のテロリストを演じきっている。
 Qはもちろん、お間抜けなRがギャグ部門を担当。ジョン・クリーズが次作からQになるが、ギャグの度合いは強くなりそうだ。
 ピアース・ブロスナンは例によって大根だが、全力疾走する姿が格好いい。オレはそれで満足だ。

「JAMES BOND WILL RETURN」

B000IU38NS.jpg『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』(1997) TOMORROW NEVER DIES 119分 アメリカ

監督:ロジャー・スポティスウッド 製作:マイケル・G・ウィルソン、バーバラ・ブロッコリ 脚本:ブルース・フィアスティン 撮影:ロバート・エルスウィット 音楽:デヴィッド・アーノルド テーマ曲:モンティ・ノーマン 主題歌:シェリル・クロウ
出演:ピアース・ブロスナン、ジョナサン・プライス、ミシェル・ヨー、テリー・ハッチャー、リッキー・ジェイ、ゲッツ・オットー、ジュディ・デンチ、デスモンド・リュウェリン、サマンサ・ボンド、ヴィンセント・スキャヴェリ、ジョー・ドン・ベイカー、コリン・サーモン

 シリーズ第18作
 監督がロジャー・スポティスウッドという人。これまでに『刑事ジョー/ママにお手あげ』(1992)、『エア★アメリカ』(1990)、『ターナー&フーチ/すてきな相棒』(1989)などコメディ系の駄作も駄作大駄作ばっかり撮ってきたような人なのでものすごく不安だったが、意外に普通の映画。冴えたカットも、冴えたシーンも、優れた心理描写も、意外な展開もないが、別に普通に観られる。まぁ普通の映画。それ以上でもそれ以下でもない。
 せっかくミシェル・ヨーがバレエやテニス、そして香港のアクション映画界で磨き上げたアクションも監督が下手ではどうにも活かしようがない。アクションシーンはB班だったり、アクション専門の監督がつくことが多いが、だからまだ見れるのかもしれない。
 すっかりおいしいところを取られてしまってボンドは少し寂しそう。でもまぁ、昔の恋人パメラとのやり取りがあって、芝居が出来たからいいじゃん。大根だ大根役者だと言われるピアース・ブロスナンだが、オレはそんなに大根かと思う。仮に大根だとしても、ジェームズ・ボンド役なんだから良いじゃんかとも思う。
 007シリーズとは刑事物や特殊部隊物などの系列のアクション映画ではなく、『X-MEN』や『スーパーマン』などのアメリカンコミック系のアクション映画だと思っている。リアルさは味付けであってそれが主題ではない。
 敵の首領がメディア王で、大手新聞や大手テレビ曲局、さらには巨大PCソフトメーカー(マイクロソフトがモデル)などを傘下に置き、業界を幅広く制覇しているようだ。スペクターのような奇想天外な存在ではないが、武器商人や麻薬密売人とも違う。現代的な敵役だ。FOXグループのメディア王ルパート・マードックあたりがモデルか?演ずるジョナサン・プライスが神経症っぽい危うさを醸し出していた。『未来世紀ブラジル』でもそうだったが、どこかネジが緩んでいて、ある日突然壊れそうな脆さがある。
 しかし現実的には、この作品ではPCソフトメーカーがメディア王の部下になっていたが、実際のビル・ゲイツ(実務は退いたが)の方が遙かに上だろう。正解を狙うにしても、Windowsの機関部にウイルス対策ソフトでも対応できないスパイウェアを仕掛けられ、パソコン内の情報を片っ端からマイクロソフトに送信していたらと思うと実に恐ろしい。個人情報から不正会計、脱税、問題のあるプライベート写真、日記などが全てマイクロソフトに把握されてしまうのだ。これで脅迫でもされよう物なら・・・
 主立った政治家や企業人を脅迫して操れば、日本ぐらいなら簡単にゲイツの所有物になってしまうだろ。というか、あの個人資産で四国ぐらいなら合法的に買えるんじゃないか。

 ボンドが独占OSメーカーの陰謀に挑み、それを人からバカにされてばかりのハッカー少女が助けて大活躍する。そして髪をカットしてちゃんとした服を着てメイクをしたら美女だった、なんて映画がちょっと観たい。


 ロシア国境近くでテロリストの武器取引が行われていた。火炎瓶やお手製の迫撃砲などではなく、重機関銃に装甲車、大型ミサイルにヘリやミグ戦闘機まであり、実に品揃えの良い(ブラック)マーケットだ。
 客層は広く日本人もいる。サトシ・イサグラ、東京地下鉄毒ガス事件の実行犯である。ストーリーには全く関係ない人物だが、地下鉄サリン事件は外国にとってもそれだけ衝撃だったのであろう。
 そしてハイテクを得意とするテロリストのヘンリー・グプタの姿もあった。現地に潜入したエージェントから送られてくる映像では、なにやら機材を試している。
 根こそぎ一掃だと、英国海軍がミサイルを発射するが、武器マーケットにはなんと核爆弾もあった。このままでは核兵器も爆発するか、あるいはプロトニウムが飛散し、大惨事になることは間違いない。
 だが、潜入していたエージェントは他ならぬジェームズ・ボンド。核兵器を搭載したミグを操縦して間一髪のところで無事に脱出。

 オープニングタイトルでは前作からCGが多用されるようになって、これはこれで良いが、昔の光学合成のも今にして思えば味があった。
 シリーズ第18作となる『トゥモロー・ネバー・ダイ』で、ボンドはこれまでになかったタイプの悪役と戦うことになる。 
 中国近海を航行中の英国戦艦が、ミグ2機から中国海域に進入している、このままだと攻撃を加えると警告を受ける。しかし衛星で確認するとそこは公海上だ。
 不審に思う英国戦艦に不可思議な魚雷を撃ち込まれ、ミグも撃墜される。不可思議な魚雷は無人潜水艦の前方に掘削用ドリルを取り付けたシードリルいう兵器だ。かろうじて沈みゆく船から脱出した乗組員は、中国の武器で皆殺しにされる。
 悪党のアジトでグプタがGPSのエンコーダーを操作することで、戦艦がGPSによって把握位置は大きく南西にずれていた。
 作戦への指令とと同時進行で新聞の第一面紙面を付けっている男。この男こそ今作の敵役カーヴァーである。
 カーヴァーの表の顔はメディア王である。新聞のトップニュースや、テレビ番組、バグ満載でバージョンアップが不可欠なソフトなど、各種情報産業のトップに位置する男だ。

 イギリス戦艦撃沈に関しては英国上層部では、中国に対する報復措置を主張する物や、Mの様に事実を確認することが先だとの慎重案がぶつかりあっていた。
 ボンドがトゥモロー新聞を持って登場。17人の脱出者が中国軍の武器で惨殺されたことがすでにトップ記事になっていた。いくらなんでもニュースになるのが早すぎる。情報漏れか?
 48時間後の総攻撃が決まり、Mにはそれまでの時間が猶予として与えられた
 戦艦のGPSを狂わせた電波はカーヴァーの所有する衛星から発射された可能性が高い。そこでボンドはカーヴァーが衛星による全世界ネットワーク完成を祝うパーティーに出席する。
 現地ではQがレンタカー会社の職員に変装して登場。マシンガン、ロケット弾、GPS追跡システム、携帯電話に備わったパッドでのリモコン操作などBMWについて説明するが、ボンドは真面目に聞いていない。例によって「無傷で返せよ」とボンドを戒めるが、返したためしはまずない。
 イギリスの銀行員ジェームズ・ボンドとしてカーヴァーに接近する。そこには新華社通信のウェイ・リン(ミシェル・ヨー)の姿もあった。
ボンドとカーヴァー夫人のパリスとは彼女の結婚前に関係があったが、スパイ家業に身も心も魅せられているボンドを捨ててカーヴァーと結婚したのだ。
 カーヴァーが壇上で世界向け放送を使って演説を繰り広げる一方、ボンドは防音スタジオで手下に痛めつけられていた。ボンドは隙を突いて逆襲し、脱出する前に会場の電気をシャットダウンさせる。世界寿を前に赤っ恥をかいたカーヴァーはパリスに、ボンドとは何者だと食ってかかる。
 カーヴァーは香港の三流紙で働き始め、そこで「誰が(who)、何を(what)、いつ(when)」ではなく、「何故か(why)」だと学んだのだ。ボンドは何故お前に近づいたのかと怒る。
 パリスはカーヴァーに告げることなくボンドのホテルを尋ねる。一方、カーヴァーはグプタにボンドについて調べさせ、諜報員だと感づいた。
 カーヴァービル最上階には謎の研究所があった。忍び込んだボンドは、数字が表示される装置が入った赤い小箱を見つけ持ち出し、それを盗み出す。だが、同じく忍び込んだウェイ・リンと遭遇して警報ベルが鳴る。バラバラに別れて、それぞれ無事に脱出する。
 ホテルの自室に戻るとベッドにはパメラの死体があった。部屋の中にいたのはカウフマン博士、拷問が趣味の殺し屋だ。そのカウフマン博士を冷酷に殺す。
 赤い小箱を仕舞ったままのBMWに戻ると、悪漢どもがハンマーやバールで車のドアやガラスを壊そうとしていた。ボンドは携帯電話のふたを開くと、ノートパソコンのパッド状のインターフェースで自在にBMWを操り、カーチェイスが始まる。
 ミサイルはもちろんのこと、後部からマキビシをまいて後続車を行動不能にする。Uターンして自分がマキビシを踏んだ場合は、ボタン一つで修理されるパンク自動修復装置まで搭載されている。パンク修復装置は便利そうだが、ボンネット全部に付けられたワイヤーカッターは、役に立つのは確かだが、さすがに取り付けた意味が不明。「こんなこともあろうかと」でQが付けたんだろうが、使われなかったままの「こんなこともあろうかと」がいくつもあることだろう。

 舞台は戦艦の上に。CIAのウエイドが再登場。過去の作品におけるフィリックス・ライターの位置を継いだのか?
 機械はGPSのエンコーダーで米国軍の技術者は「エンコーダーに関してはトップシークレットだ」とか言ってるが、カーナビなんかにもGPS信号のエンコーダーは付いてないか?軍用の精度は商用利用で許可されているそれよりもはるかに高精度だそうだが、利用する衛星電波自身は同じなはず。技術者によるとエンコーダーの操作によって英国戦艦の位置が南西にずらされていた可能性があるとのこと。
 だがそれらは全て憶測。実際に沈没した現場を調べねばならない。そこはベトナム領海の端である。その沈没地点に3000mの高さからボンドはHALOでパラシュート降下する。
 計算通りの位置に英国戦艦は沈んでいた。艦内を調べる内に、搭載された核ミサイルが盗まれているとこが判明した。沈船内で同じくアクアラング姿のウェイが登場。二人は怪しげな連中に捕らえられ、手錠でつながれたままヘリでサイゴンのビルに運ばれる二人。そのビルには大きな垂れ幕でカーヴァーの顔が描かれていた。やはり黒幕はカーヴァーだったかと再確認する二人は、廊下で中国軍人チャン将軍とすれ違う。
 テレビ、新聞、雑誌と手中に収め、大いなる力を手に入れたと誇大妄想気味のカーヴァーだが、二人は垂れ幕を降下ロープ代わりにして脱出。混雑したサイゴンでは車よりもバイクがいいだろうと手に入れた(別名:盗む)のはまたもやBMW製。車での追跡は簡単に交わし、ヘリによる追跡からも何とか逃げ切った。
 ウェイのアジトに入ると数人組の悪漢が襲いかかってきた。しかし、ウェイの格闘技であっさり返り討ちになってしまう。悪漢が弱いのではない、ウェイが強すぎるのだ。これまでにも男顔負けの活躍をするボンドガールは何人もいたが、肉弾戦で男を負かしたのはウェイだけだ。それどころか素手での戦いならボンドとやっても勝つんじゃないかとすら思える。シリーズ最強はウェイかジョーズだろう。
 ウェイは盗まれたステルス素材に関してチャン将軍が怪しいと睨み調査を続けていた。ボンドは、カーヴァーがそれでステルス艦を作り、中国軍とイギリス軍がにらみ合い一触即発の中で、イギリス艦隊近くから双方に向けミサイルを発射。そして戦争が始まり、カーヴァーは特ダネを独り占めする気ではないかと推理する。
 古びた倉庫に見えたウェイのアジトはボタン一つで近代設備に早変わりをする。だがパソコンのキーボードは中国語(漢字)仕様なのでボンドには使えない。
 周りにあるのは、普段ならばQの開発支局に登場するような珍妙な秘密兵器ばかり。そしてワルサーP99をみつけ、「これ欲しかったんだよなぁ」と借用して以後そのまま使い続ける。ウェイは貸すともあげるとも一言も言っていないだが。
 ここぞと思われる湾を見つけ出し、夜を待って漁船で近づく。
 発見したステルス艦に乗り込み、二手に分かれて爆弾を仕掛けていく。だがウェイは捕らえら、ボンドは射殺されて海に落ちたと思われる。
 大きな舞台には観客が必要だと、「海域で小競り合いを起こしておいて、核ミサイルをこのステルス艦から北京に撃ち込むのだ。北京では今回の非常事態に関する会議で主要な人物が勢揃いしている。ただ、チェン将軍だけは渋滞のために遅れて奇跡的に助かるがね。こうして世界戦争は始まり、私は全てを手に入れるのだ」と計画の全てをウェイに語って聞かせる。なんで悪の組織の首領ってのはああも自己顕示欲が強くておしゃべりなんだ?ちなみに中国を手に入れたチェン将軍からカーヴァーが得るのは今後100年間のテレビ独占放映権だとか。欲しいか?それ。
 ボンドの機転で艦内は大騒動になり、ウェイはMP5の二丁拳銃というか二丁サブマシンガンで戦いながらエンジンルームを目指す。
 コントロール装置はセットされていたためミサイル発射のカウントダウンは始まっている。ボンドはシードリルを始動させ、ピットドリルでカーヴァーをミンチにする。スタンパーという残忍な殺し屋は足をミサイルの噴射口に挟まれ爆死。
 鎖を巻かれてその重みで浮かび上がれないウェイにボンドがキスして口移しで空気を吸わせる。
 Mはカーヴァーが死亡。自殺の可能性ありとマネーペニーにマスコミに偽情報を流させる

「JAMES BOND WILL RETURN」

B000IU38NI.jpg『007 ゴールデンアイ』(1995) GOLDENEYE 130分 イギリス/アメリカ

監督:マーティン・キャンベル 製作:マイケル・G・ウィルソン、バーバラ・ブロッコリ 原案:マイケル・フランス 脚本:ジェフリー・ケイン、ブルース・フィアスティン 撮影:フィル・メヒュー  特撮:デレク・メディングス 編集:テリー・ローリングス 音楽:エリック・セラ テーマ曲:モンティ・ノーマン 主題歌:ティナ・ターナー
出演:ピアース・ブロスナン、ショーン・ビーン、イザベラ・スコルプコ、ファムケ・ヤンセン、ジョー・ドン・ベイカー、チェッキー・カリョ、ゴットフリード・ジョン、アラン・カミング、セレナ・ゴードン、デスモンド・リュウェリン、サマンサ・ボンド、ジュディ・デンチ、ミニー・ドライヴァー、ロビー・コルトレーン

 小説『007』シリーズの生みの親がイアン・フレミングだとしたら、映画『007』のそれはアルバート・R・ブロッコリである。『消されたライセンス』(1989)以降に1909年生まれのアルバート・R・ブロッコリが肉体・精神ともに老いて弱り、『消されたライセンス』が失敗作だったこともあり、『007』シリーズもついに過去の遺物になったのかと思われた。
 それから6年、ブロッコリの実娘バーバラ・ブロッコリが映画製作に乗り出し、シリーズ第17作としてついにあの男が帰ってきた。その男の名はジェームズ・ボンド。007とも呼ばれる男だ。

 映画作りにおいて制作者の役割は大きい。山のような脚本の中から使えそうな作品を見つけ出し、企画を立て、スタッフやキャスト、そしてなにより制作費を集めなければならない。
 極論を言えば、監督は自作の出来が良ければそれで満足だし、出演者は自分が綺麗あるいは格好良く映っていればそれで満足だ。だが、プロデューサーは興業結果が良くなければ、どれだけ作品として評価の高い作品を作っても失敗だ。出資者に利益をもたらしてこそのプロデューサーだ。そこでは裏の手口や卑怯な手段を使うこともあるだろう。裏切りや陥れもあるかもしれない。その辺りはロバート・アルトマンの『ザ・プレイヤー』(1992)などを観てもらうとして、とにかく生半可な覚悟では出来ない仕事だ。
 この『007 ゴールデンアイ』がバーバラのプロデューサーデビュー作となるが、どれだけ責任のある仕事を任されていたかは不明だ。ひょっとしたらアルバート・R・ブロッコリの娘という肩書きだけで、御輿として担ぎ出された可能性もある。
 だが、彼女のおかげでシリーズ再開のはしりとなった。感謝である。ちなみに姓のブロッコリはあの野菜のブロッコリーである。なんでもブロッコリ一族は、過去においてこのブロッコリの普及につとめたそうだ。ブロッコリ一族が広めたからブロッコリーかと思いきや、ブロッコリーとはイタリア語で「茎」といった意味だそうなので、ブロッコリーを広めたからブロッコリ一族らしい。ブロッコリ一族とオタク系ショップ「ゲーマーズ」などを運営しているブロッコリーとは関係ない、と思う多分。

 新ボンド役のピアース・ブロスナンは1953年生まれ。 1946年生まれのティモシー・ダルトンから7歳若返った。
 立っているところ、歩いているところ、銃を構えていることろなど、外観的には合格点。これまででもっとも若いボンドかつブロスナン自身も体を鍛えているのだろう、格闘アクションも決まっている。

 オープニングで、ボンドは巨大なダムの上を走る。ダムの壁面を降りるのにロープ降下ではなく、いきなりバンジージャンプで飛び降りる。時間が限られているので、1秒でも早く下に降りる必要があるとか説明は無理矢理付けられるが、なに「こっちの方が格好いいから」がその理由だろう。その意味のなさ、良い意味でのリアリティの適度な欠如が007シリーズの魅力だ。そしてウルモフ将軍を出し抜いてロシア軍の基地は破壊されるが、その途中で同僚の006が死ぬ。

 オープニングタイトルではソ連国旗の槌と鎌、そしてレーニン像などが壊れ、オープニング以降にソビエト連邦が崩壊したことが語られる。
 そして9年後、街道レースをやった相手の女性オナトップとカジノで再開する。トランプカードを使ったバカラで戦う二人。なんでも2枚、必要ならば3枚のカードをもらい、その合計額の下一桁が9に近い方が勝ちなんだそうだ。
 フランス軍の新兵器タイガーヘリがオナトップとウルモフによって奪われる。このヘリは最新兵器や防御システム搭載で、特に電磁波攻撃に対するシールドは一品だ。
 続いてロシアの宇宙兵器管理センターにタイガーヘリで、ウルモフ将軍が抜き打つ検査に見せかけて進入し、衛星兵器ゴールデンアイのコントロール装置を入手した時点で職員を皆殺しにする。だが、ヒロインであるナターリアだけはたまたまキッチンにいて難を逃れる。
 続いてMI6本部へ。マネーペニーがイモっ娘風になってちょっとショック。
 Mもキャスト変更に。こんどは女性だ。「わたしは前任者とは違いますから」と言ってるんで、設定はそのままで性別だけ女に入れ替わったわけではなく、役柄としての人物も入れ替わったようだ。冷酷で情など入る隙間もないという感じのおばさんで、これは正解だったと思う。
 ボンドが変わり、Mが変わり、マネーペニーが変わっても、Qは変わらない。
 新ボンドカーのBMWに自爆装置やらミサイルやらあれこれ細工の最中だ。もっともこのBMW、実際に道路を走るシーンはごく短いし、しかも普通のドライブシーンで秘密兵器は何一つ使いやしない。BMWが注文を付けたのか、スポンサーなので遠慮したのか。まぁ、これに関しては次回作以降に期待。
 他には紳士用ベルトに仕込まれたロープとウインチ。『ルパン三世 カリオストロの城』でルパンが使ってたようなやつか。
 そしてボタンを4回連続で押すと爆発するボールペン型小型爆弾。大きなサンドイッチが置いてあったので、ボンドはこれはどんな仕掛けがあるのだろうと手に持ってしげしげ眺めていると。Qが厳しい声で「触っちゃいかん」と取り上げる。そして「これは、わしの昼飯だ」。うむむ、以外に大食漢だな。
 裏から糸を操っている武器密売組織ヤヌスを追って、ボンドはロシアへ。そこでCIAのジャック・ウエイドと会う。演ずるのはジョー・ドン・ベイカー、ってあんた『リビング・デイ・ライツ』の悪役でボンドと対決して死んだじゃんか。まぁ、007シリーズでは別人役で2回登場したボンドガールもいるしな。今さらか。
 ヤヌスに顔が利く男は、元KGBのヴァレンティン・ズコフスキー。実は過去においてボンドに左足膝を撃ち抜かれた男だ。
 ズコフスキーの口利きで、共産主義時代の石像など忘れ去られた遺物が並ぶ広場に案内されたボンドは、オープニングで死んだはずの006ことアレックとで会う
 アレックは共産主義と戦ったコサック人で、第二次大戦時にイギリスに投降したが、戦後スターリンに迫害された。両親の敵であるイギリス政府に、アレックは従順な振りをして仕えた。だから現在では二つの顔を持つローマの女神ヤヌスを名乗っている。
 そして捕らえられたボンドは、同じくヤヌスの手に落ちていたナターシアとともに、すでに用済みになったタイガーヘリのコクピットに閉じこめられている。時機を目標にしたミサイルが発射され、Uターンしてこちらに向かってくる。逃げ出す手段は非常脱出装置を使うしかない。ボンドはぎりぎりで装置を作動させ、コクピットは空高く打ち上げられる。下ではミサイルが大爆発。いやいやいや、それってどう観ても『ダイハード2』(1990)だろ。あれ、似てますか?じゃ通用しないぞ。
 無事に生き残った二人は、ロシア軍に拉致される。だが隙を突いて取調室から抜けだし、基地からの脱出を計る。状況を知らないまま任務に忠実だっただけで殺されていくロシア兵が哀れ。
 ナターリアはウルモフ将軍に奪われ車で連れ去られる。それをボンドは戦車で追う。車も壁もブロンズ像も敵ではない。戦車最強!!と思いきや装甲列車にあっさり負ける。
 ナターリアは取り戻し、ウルモフ将軍は死ぬが、アレックとオナトップには逃げられる。もはや手がかりなしかと思われたが、ナターリアが列車に積まれたコンピュータからアジトはキューバだち掴んでいた。
 カリブの島でドライブをするBMW。ボンドカーがようやく登場だ。その前方の路上にジャック・ウエイドが操縦するセスナ機が着陸。島を調べるためにセスナを預かり、代わりにジャック・ウエイドがBMWで退場。これでBMWはそれっきり。せめて、ジャック・ウエイドが適当にスイッチを触ってしまってミサイルを発射してしまうぐらいのギャグは欲しかった。
 島の上空をセスナで飛ぶ内に池からミサイルが撃墜される。
 そして、池の下からアンテナがゆっくりと姿を表す。

 直径数百メートルはある巨大なパラボナアンテナをセットし終わった頃、ヤヌス秘密基地の玄関チャムが鳴る。「誰だよ、この忙しいのに」とアレックが応対に出ると、ドアの外には冴えない中年男性が立っていた。
「NHKですがこちらパラボナアンテナをお取り付けになったようで。これは義務となっておりますので衛星放送の契約と受信料のお支払いを」・・・

 ボリスが弾みでボンドのボールペン型爆弾を手にしてくるくると予備校回しもどきをする。指の間でひらひら回転させるのだが、予備校回しの場合親指と人差し指の付け根の上で回転させるより優雅な技だ。ボリスは一流のハッカーを気取っているようだが、日本の学生や浪人生のレベルにはほど遠い。
 そしてボールペンが爆発し、燃料に引火。基地の中は大混乱。
 パラボラアンテナの上にある発信器でボンドとアレックは戦い、復讐心を糧に生きてきたアレックは死ぬ。
 さて、これで終わりだ。周りに誰もいないしいちゃつこうかと抱き合ったボンドとナターシアだが、お邪魔虫のジャック・ウエイドが現れる。白ける二人だが、実は誰もいない草原だと思っていたらカモフラージュした米国海兵隊だらけだった。

 監督のマーティン・キャンベルは他に『マスク・オブ・ゾロ』のゾロシリーズや『ヴァーティカル・リミット』などを撮っている人。どうもオレはこの人と相性が悪いというか、好きになれないというか、はっきりいって嫌いだ。作る作品作る作品つまらなくないか?
 前任者のジョン・グレンと比べるとアクションの撮り方は上達したが、それほどたいしたってほどでもない。人間ドラマが描けない。ギャグが下手。正直、野暮ったさを隠せない二流の監督だ。
 007シリーズの監督はものすごい天才かものすごいバカかである必要があるだろう。できればものすごいバカが望ましい。マーティン・キャンベルはしょせんありふれた監督に過ぎない。

 今作の音楽はエリック・セラが担当していて、透明感のある音楽を聴かせてくれるが、透明すぎて印象に残らないという欠点がある。リック・ベッソンだと長年の付き合いもあってその特性を掴んでいるのでセラを使いこなせるのだが、マーティン・キャンベルでは無理。

「JAMES BOND WILL RETURN」

B000IU38N8.jpg『007 消されたライセンス』(1989) LICENCE TO KILL 133分 イギリス/アメリカ

監督:ジョン・グレン 製作:アルバート・R・ブロッコリ、マイケル・G・ウィルソン 脚本:マイケル・G・ウィルソン、リチャード・メイボーム 撮影:アレック・ミルズ 音楽:マイケル・ケイメン テーマ曲:モンティ・ノーマン 主題歌:グラディス・ナイト

出演:ティモシー・ダルトン、キャリー・ローウェル、ロバート・ダヴィ、タリサ・ソト、アンソニー・ザーブ、フランク・マクレー、エヴェレット・マッギル、ウェイン・ニュートン、デスモンド・リュウェリン、デヴィッド・ヘディソン、プリシラ・バーンズ、ベニチオ・デル・トロ、グランド・L・ブッシュ、ケイリー=ヒロユキ・タガワ、ロバート・ブラウン、キャロライン・ブリス

 007シリーズ第16作。あまり評判のよろしくない作品だ。
 オレにとっては出来が良い悪いの問題ではなく、唯一「嫌い」な007作品だ。他のは程度の差はあれ好きなのに。「消されたライセンス」だけはオラァダメだ。許せない、受け付けない、認めない。

キーウェストでボンドの古い友人CIAのフィリックスがすぐ後に控えた結婚式にそわそわしている。そんなところにDEA麻薬取締局のヘリが訪れる。麻薬王サンチェスが極秘でアメリカに入国したというのだ。フィリックスは結婚式をほったらかしにして、介添人役のボンドとともに出動して、セスナで逃亡しようとしたサンチェスを捕獲する。
 そしてボンドとフィリックスは花嫁デラが待つ教会にパラシュート降下。

 取調室でお前の懲役は合計で936年だぞと脅されても、サンチェスは不敵に笑ったままで、係官に200万ドルで買収を持ちかける。白人の係官は怒ってサンチェスを脅すが、どうも見るからに裏切りそうな俳優がキャスティングされている。見え見えすぎ。
 フィリックスが愛妻デラにボンドの結婚について話すシーンがある。このことから、コネリー・レーゼンビー・ムーア・ダルトンが演ずるジェームズ・ボンドは同一人物だと導き出される。
 そして新婚初夜のフィリックス・ライター家を何者かが襲う。もちろんサンチェスの部下だ。その中にはダリオという役でとしてデビュー間もないベニチオ・デル・トロがいる。『ユージュアル・サスペクツ』(1995)の犯罪者連中の一人だった人だが、このときすでに他の脇役とは目つきが違い後の活躍を予感させる。まぁ今見直してるんで後付の感想だが。
 デラは殺され、フィリックスは左足の膝から下を生きたままサメに食われた
 フィリックスの復讐を果たすため、ボンドはサンチェスについて個人的捜査を始める。それが邪魔になったのか、DEAの職員にやりすぎだと警告を受ける
「この国には法律ってもんがある」
「悪党を見逃すのが法か」
 そして謎の男たちにヘミングウェー記念館に連れて行かれる。そこにはMがいた。Mに手を引いて本来の任務に戻るように命令されるが、拒否して辞職を願い出る。女王陛下のための任務よりも個人的な復讐を選んだのだ。
 ワルサーを返せと言われて「これがほんとの『武器よさらば』だな」とボンドジョーク。
 隙を突いて逃げ出したボンドを部下が狙い撃とうとするのを、「よさんか、人が多すぎる」とMが制止する。「人が多い」は口実でボンドを助けたのだ。だが、今回の事件について、もはや彼が出来るのは神に祈ることだけ。
 こうして任務よりも友人の仇討ちという個人的動機を選ぶことに関しては問題ない。それでこそ男だ。問題はその手段なのである。

 ボンドはサンチェスが裏から支配する国へ、CIAに情報を流していた元陸軍パイロットのパメラが操縦する小型機で乗り込む。名乗る名前はジェームズ・ボンド。しかも後半ではサンチェス相手に、元英国情報部員だとか言ってるんで、度胸があるのかアホなのかどっちかだ。
 自分を売り込みに来た。役に立つ男だぜとサンチェスに接近し、無事に取り入ることに成功する。そしてサンチェスの信頼を得て、彼の心に甘い嘘をささやいて、側近を疑わせては始末させ、次第に組織は崩れていく。

 ボンド、男らしくねぇぇぇー。友人の仇討ちときたら、『男たちの挽歌2』のラストや『昭和残侠伝』の健さんみたいに、正面から相手の本拠地に乗り込んで行かなきゃダメだろ。
 オレのこの命は果てようとも敵は必ず殺すぐらいの迫力と怒りがなきゃ。
 相手の組織内部に入り込んで、そこを混乱させて自滅させるというのはたしかにスパイ的戦い方で、ボンドはスパイ、この作品では解任されているので元スパイだから戦法としては間違っていないのだろうが、自分の友人の仇を取るのに、敵の信頼を得て友人となり、彼が持っている部下への信頼を打ち砕いていくってのはどうなのよ。友人の仇を取るのに相手の友情を利用するなよ。
 右手にはワルサーPPK/S、左手にはMP5A4、背中にしょった日本刀一振りで正面から突っ込め。

 そもそも、ボンドが勝手なことをしたために、実はCIAだったパメラは命の危機にさらされるし、長年かけておとり捜査を続けてようやく明日に麻薬精製工場を見学することでその本拠地をつかむ予定だった香港麻薬取締局の連中は4人ほどいたのが皆殺しにされてしまうし、他人に迷惑かけてばかり。復讐するなら人の迷惑にならんようにやれよ、マナーだろ。
 香港麻薬取締官の現地ボスをやっているのがクアンという名の男で演ずるのはケイリー=ヒロユキ・タガワ。日系人だ。父親は日系二世で母親は元宝塚の日本人女性だと言うから遺伝的には100%日本人か、父親の結婚相手が日系以外だとしてもクォーター。でも彼の名前などを知らずにスクリーンでみると中国系俳優にしか見えない。実際、『ラストエンペラー』でも大きな役をやっているし、オレは昨日までこのひとは中国系だと思っていた。
 よく、日本人役を中国系俳優がやっているとの指摘がある。実際そういうケースもあるだろうが、ちゃんと日系俳優がやっていて、普段は英語で生活していてまったく日本語を使わないからいい加減な発音になっている可能性もある。
 まぁ、ハリウッド映画が求めているのは正確な日本語を話せる下手な俳優ではなくて、日本人に見える上手い俳優だから、場合によっては日本人役を他のアジア系俳優がやる場合もあるだろ。その映画を観ると日本人は違和感を感じるが、その映画の観客層の内日本人が締める割合などしれた物だ。日本人向けに作られた作品ならともかく、それ以外の場合はまぁしかたないのだろう。

 ボンドが心配なマニーペニーは独断でQに頼み込み、Qは休暇を取ってボンドに秘密兵器を届けに行く。
 伯父だと名乗ってホテルの部屋に入り、目覚まし時計型時限爆弾、プラスチック爆薬入りの練り歯磨きチューブ、カメラ型銃、X線撮影が可能な上攻撃用レーザーも発射するインスタントカメラなどなどを得意げに取り出す。呆れるパメラ。男の子には胸がドキドキだが、女性にはわからんわな・

 サンチェスは宗教チャンネルの寄付募集番組を利用してその指導者の寄付金目標額という形でコカインの値段を売人に伝える。
 その教団の国際瞑想センターこそがコカイン精製工場だった。
 現金を寄付するとちらつかせてパメラはインチキ伝道師に近づく。伝道師はパメラに鍵を奪われた上で監禁されるが、男の表情は怒ったり諦めたと言うより、ようやくこの悪夢を終わらせてくれる者が来たかという感じ。彼は最初は本当に信仰があって熱心な伝道者だったのが、サンチェスの甘言に乗せられて、気づいたら麻薬組織の宣伝役
になってしまったのかもしれない(オレの個人的想像だが)。だから、それから解放してくれるかもしれないパメラに「Bless your heart.」と一言かけたのだろう。
 ラストの精製工場の爆発でみんなが逃げ出すシーンではパメラから渡された寄付金の袋をパメラに「返してね?」と奪われてしまうが、この時も怒った様子はなく、ただ一言「あなた神の祝福を」。
 こうして男は信仰を取り戻した、のかもしれない。

『消されたライセンス』の興行的作品的失敗、アルバート・R・ブロッコリの死などによって、007シリーズの制作はしばらくの間ストップし、もしかしたらこのまま消え去っていたかもしれない。
『消されたライセンス』がヒットしなかった理由は単純につまらなかったというのもあるのだろうが、1980代後半になってハリウッド製のアクション映画の質が飛躍的に向上し、それと比べると見劣りするようになってしまったというのも大きいだろう。
『リーサル・ウェポン』が1987年、『ダイ・ハード』が1988年、『エイリアン2』が1986年。それらと戦うには『消されたライセンス』では非力好ぎたのだ。監督のジョン・グレンはそれだけの器じゃなかったのだ。
 だがそれでも、だってやっぱり、そうさ必ず

「JAMES BOND WILL RETURN」

B000IU38MY.jpg『007 リビング・デイライツ』(1987) THE LIVING DAYLIGHTS 131分 イギリス

監督:ジョン・グレン 製作:アルバート・R・ブロッコリ、マイケル・G・ウィルソン 原作:イアン・フレミング 脚本:リチャード・メイボーム、マイケル・G・ウィルソン 撮影:アレック・ミルズ 音楽:ジョン・バリー テーマ曲:モンティ・ノーマン 主題歌:a-ha
出演:ティモシー・ダルトン、マリアム・ダボ、ジェローン・クラッベ、ジョー・ドン・ベイカー、ジョン・リス=デイヴィス、アート・マリック、アンドレアス・ウィズニュースキー、デスモンド・リュウェリン、ロバート・ブラウン、ジェフリー・キーン、ウォルター・ゴテル、キャロライン・ブリス

 ジェームズ・ボンド役がロジャー・ムーアからティモシー・ダルトンへと変更となったシリーズ第15作。ティモシー・ダルトンは1946年生まれだから1927年生まれのロジャー・ムーアから20歳近く若返った。『美しき獲物たち』でのムーアボンドは57歳だったが、『リビング・デイ・ライツ』時点でのダルトンボンドは30歳。老人から青年への大転換である。
 57歳から30歳への変化だと、みんな若返ったねーぐらいの感想だろうが、これが35歳から15歳への変化だと、薄汚れた大人から青春時代への変化だ。これでまた尾崎とか聞いて「大人は汚い」とかいったら笑うな。もっといえば、10歳の子供だったら生まれる10年前だぞ。歴史が変化すると自分が生まれないことになっちゃうから深海パーティーのステージでチャック・ベリーの曲をギターで弾いたり、ケンカ別れしそうな結婚前の父と母を仲直りさせるべく公園の中を駆けずり回ったりするんだぞ。

 オープニングでは00部隊がジブラルタルのレーダー基地への侵入するという訓練の真っ最中。基地で迎え撃つのは世界最強とも言われるSASだ。
 Mのオフィスかと思いきや、そこは輸送機の中。HALO(高高度降下低高度開傘)で降下する三人の00要員。もちろんその中にはボンドの姿もあった。
 ペイント弾を利用した訓練のはずが、SASの一人が実弾を使い、他のSASを数人殺した上で、00要員の一人を殺害する。異常に気づいたボンドはジープで逃げ出そうとする殺し屋を追う。、全力疾走するボンドは久しぶりだ。

 オープニング主題歌はa-haが担当。前作のデュラン・デュランに続いて80年代ロックだ。どちらの名前も懐かしい。オレは音楽はまったくもって詳しくないが、彼らは元気にしてるのだろうか?
 チェコスロバキアでのオーケストラを鑑賞しているボンド。いや、その振りをしているだけで任務の最中なのだ。
 桟敷席にいるロシアのコスコフ将軍から西側へ亡命したいとの申し出があった。そして亡命を防ぐため、怪しい動きがあった場合は即コスコフはロシアの狙撃手に殺されることになっている。そのため、先に狙撃手を見つけ出しあらかじめ排除することが今回の任務だ。
 ボンドが使うスナイパーライフルはワルサー製。その手の銃も出してたんだ。
 暗視装置で狙撃手を見つけるが、相手はオーケストラの女性チェロ奏者カーラ・ミロヴィーだった。ボンドは殺さずに相手のライフルに命中させて狙撃を阻止する。
 同僚に何故殺さなかったかと詰問されると、「俺はプロしか殺さない。あの女は素人だった」としびれるセリフ。007も一種の殺し屋だが、殺し屋なりの仁義である。
 ボンドも変わったが、マネーペニーも若い女性に交代。第1作から出演していた先代のロイス・マクスウェルさん、お疲れ様でした。
 仕事中の牛乳配達人が登場。玄関前に牛乳を置いて空き瓶を回収して帰ろうかと思ったら、扉が開き中にはネグリジェ姿の人妻が。生唾ごっくん、ふらふらと誘われるように家の中に入っていき、ある部屋に連れて行かれて、人妻は部屋の外へ出て鍵をかける。期待に胸を膨らませた牛乳配達員が振り向くと、そこには牛乳配達員が山のようにいた。年老いてヒゲが伸びたり、中には骸骨になった牛乳配達員もいた・・・。そして聞いたり読んだりした相手を笑い殺してしまう必殺ギャグが発見される。全ての騒動はこのギャグを狙う東西陣営の争いだったのだ。はっいかん、途中からモンティ・パイソンのスケッチに行ってしまった。牛乳配達員は殺し屋に襲われ命を落とし、代わりに殺し屋が配達員に成りすます。
 Mの屋敷ではコスコフが告白を繰り広げている。現在ソ連では「スパイに死を」という計画が進行中で、これは米英の諜報員に対する暗殺計画。責任者はプーシキン将軍だという。
 そこへ牛乳配達員に変装したKGBのエージェントが襲撃。戦いの結果、コスコフが奪い去られる。イギリス上層部からプーシキン抹殺指令が下るが、ボンドは彼は有能な男でスパイ抹殺計画などといった馬鹿げたことをやるはずがないと主張する。
 そしてQが登場。特製のキーホルダーをボンドに手渡す。『英国に栄光を』を口笛のメロディーで即効性の麻痺ガスが出る。国歌で爆発するのかとボンドが軽口をたたくと、国歌ではないが爆発はするよ。君の場合はいい女を見かけたときの「ヒュー、ヒュウゥ?」だと真面目に答えるQ。
ボンドカーはアストン・マーチン
 チェコでカーラに会ったボンドは、彼女がコスコフの恋人(コスコフがカーラのパトロン?)であり、狙撃に使った弾は空砲だったことに気づく。そもそもあの亡命騒動が芝居だったのだ。
 警察に監視されているカーラをボンドが策略で無事にアパートから抜け出す。そのまま国境を目指すはずが、音楽院に忘れたチェロを取りに戻るとカーラが言い張る。それに対してボンドは絶対にダメだと拒否する。でカットが変わると音楽院前。山中貞雄の『丹下左膳餘話 百萬兩の壺』(1935)に通じるテンポだ。
 追跡してくるパトカーや装甲車を相手に、特殊装置満載のボンドカー・アストン・マーチンが大活躍。このところ普通の車中心だったので、うれしい。レーザー、ミサイル、防弾ガラスは当たり前。Qが冬向け仕様だと言っていたが、何の意味かと思いきや、サイドからスキーが、そして通常タイヤからスパイクが飛び出す変形スパイクタイヤ。これならアイスバーンでも問題なしだ。さらにはロケットエンジンに、自爆装置は当然だろう。
 ボンドカーを失ったボンドたちはチェロのケースでスキーにして、無事にオーストリアに入国。
 タンジールではプーシキン将軍とウィティカーとが面談していた。
 武器商人のウィティカーは邸宅にヒットラーやチンギス・ハン、ナポレオン、カエサルなどの等身大人形を並べ、その全て顔を自分のそれに変更しているイカれた戦争オタク。
 二人はなにやら怪しげな陰謀を企んでいるようである。
 舞台は再びウィーンへ。遊園地の射的で大勝ちするボンド。食べ放題の店と同じく「プロお断り」の張り紙を出すべきであろう。
 緯度の高い冬のウィーンだからか、真夜中でも空がほんのりと明るい。
 その遊園地で、ボンドの無理を聞いてくれた同僚を殺さてしまう。表面は比較的落ち着いているが、心の中では怒りの炎が燃え上がっている。ムーアボンドとダルトンボンドの大きな違いが現れたシーンだ。
 そして敵を追ってタンジールへ。プーシキンを尾行するボンド 双眼鏡眼鏡が奇天烈な外観で目立ってるぞ。
 実はプーシキンは同僚たちの殺害には関わっておらず黒幕ではない。コスコフとウィティカーにはプーシキンが邪魔。そこで計略を以てボンドにプーシキンを暗殺させようとしているのだ。騙されたに見えたボンドだが・・・
 ボンドが屋根の上で逃走劇を繰り広げる。それなりに迫力だがこれが全盛期のジャッキーだったらと思っても無意味なことをついつい考えてしまう。
 警官の目を美女二人が乗った車でごまかしヨットへ連れて行かれる。そこにはCIAのフィーリックス・ライターがいた。フィーリックスも若返ってさわやかな青年になっていた。
 そしてカーラの待つホテルに戻るが、彼女はコスコフに連絡を取っており、すっかり丸め込まれたカーラによって睡眠薬で眠らされ、そのまま輸送機に乗せられて、今度はアフガニスタンへ。
 ソ連軍基地の牢屋に入れられそうになるが、キーホルダーの麻痺ガス機能を利用して無事に脱出。ついでに牢屋にいたアラブ人カムランを助けてやる。実はこのカムランのモデルはオサマ・ビン・ラディンという説もある。『ランボー3 怒りのアフガン』(1988)にもソ連軍と戦うアフガンゲリラの指導者が出てくるが、これもビン・ラディンだとか。この頃は対ソ連という共通の敵から西側と協力体制にあったのだ。
 アラブ人からアヘンを買うコスコフ。そして他国で売りさばき横領した公金を埋め合わせるつもりなのだ。ボンドは爆薬を持ってトラックに忍び込む。カーラはカムランに助けを求めるが拒否され、銃を持ってボンドを助けるべく一人で馬を駆る。
「親分、俺らこのまま何もしないで本当にいいんすか?」とばかりにカムランを見つめる部下たち。「仕方ない、行くぞ」とのカムランの言葉にイヤッホーと銃を振り上げる部下たち。お前ら燃え燃えだぞ、オレ的に。萌えじゃなくて燃えな。
 アヘンとその中に仕掛けた時限爆弾を積んだままボンドとカーラを乗せて飛び立つ輸送機。これで爆弾さえ処理すれば一安心かと思いきや、離陸直前に乗り込んでいた殺し屋との格闘。格納庫の扉が開き、ネットが大空に伸びる。二人はそれにしがみついたまま戦う。この手のスカイアクションは007の十八番 殺し屋はボンドのブーツにしがみつくが、ボンドは靴紐をナイフでプツリプツリと一段ずつ切っていく。一気に切らないところが殺し屋に対するボンドの怒りを感じさせる、あるいはサドなのかも。
 爆弾は2秒前で無事に止める。
 カーラから「彼はどうしたの?」と尋ねられ「ブーツっ飛んだ(英字幕:He got the boot.)」となんじゃそりゃな珍訳ダジャレでボンドは答える。1987年の大作映画となるとひょっとして翻訳はあの人か?と思い今回ようやく調べたら、案の定字幕は戸田奈津子。おおよそ20年来の胸のもやもやが解明されました。当時、あまりに気になったので、オレのいい加減きわまりないヒアリング能力で「He got the boot.」って言ってる気がするってんで「get the boot」を辞書で調べてみたら「逃げる」とかそんな言い回しだった記憶がある。「彼はどうしたの」「逃げてったよ&ブーツを持ってったよ」の二つの意味をかけている。違ってたらすまん。
 ウィティカーの屋敷にボンドが侵入すると、ウィティカーはジオラマで南北戦争ごっこの真っ最中。戦いになり、ワルサーPPK/Sのみのボンドはハイテク兵器を駆使するウィティカーに苦戦するが、所詮は戦争オタク。実戦で鍛え上げられたボンドの敵ではなかった。
 ソビエト軍人を敵の一人にして東西の確執も盛り込みつつ、プーシキンを魅力のある一癖持った人物にすることで作品の幅を広げている。1989年にベルリンの壁が壊され冷戦は終結、ソ連も1991年には解体された。現実的な人間は西側との協調をすでに考えていたことだろう。
 ロンドンでのカーラのコンサートは物語を締めるにふさわしく、Mやソ連の将軍による配慮や、武装した部下を二人連れたカムランが「空港で手間取ってね」と登場するなど細かいネタが散りばめられている。武装したアラブ人ではそりゃ手間取るわ、現在のロンドンなら手間取る前に射殺されっかな。
 ボンドは本編ではカーラとしかいちゃついていない。節操なしが少しは収まったか。エイズ流行によるセーフセックスの流れかな。

「JAMES BOND WILL RETURN」

B000IU38MO.jpg『007 美しき獲物たち』(1985) A VIEW TO A KILL 122分 イギリス

監督:ジョン・グレン 製作:アルバート・R・ブロッコリ、マイケル・G・ウィルソン 原作:イアン・フレミング 脚本:リチャード・メイボーム、マイケル・G・ウィルソン 撮影:アラン・ヒューム 音楽:ジョン・バリー テーマ曲:モンティ・ノーマン 主題歌:デュラン・デュラン
出演:ロジャー・ムーア、クリストファー・ウォーケン、タニア・ロバーツ、グレイス・ジョーンズ、パトリック・マクニー、パトリック・ボーショー、フィオナ・フラートン、アリソン・ドゥーディ、デスモンド・リュウェリン、ロバート・ブラウン、ロイス・マクスウェル、ウォルター・ゴテル、ドルフ・ラングレン

 北極で行方不明になった同僚003の死体を探すジェームズ・ボンド。ようやくと雪の中から死体を見つけ、ある部品を持ち出すが、ロシア軍に見つかりAKで発砲される。スキーで逃走するが途中で板が壊れてしまい、ロシアのスノーモビルを奪うがこれも破壊される。だがそれぐらいで諦めるボンドではない。スノーモービル前方に付いたそりを利用してスノーボードだ。時代を先取り、先取りしすぎである。
 そしてオープニングタイトル。主題歌を歌うのはデュラン・デュラン。いかにも80年代ロックって感じで懐かしい。単体の歌としてヒットチャートでも活躍したそうだ。

 003が持っていたマイクロチップ(字幕ではIC)について説明するQ。通常のマイクロチップは核爆発で発生する強力な電磁波に耐えきれず破壊されてしまう。だが、このチップはそれに耐えることが出来る耐核爆発しようなのだ。
 浮かび上がるのはそのチップを製造しているゾリン産業という企業だ。社長のゾリンは第二次大戦中のドレスデンで生まれ、戦後フランスに移住しフランス人で育った。非常に有能な人物で、裸一貫から巨大企業複合体を作り上げたのだ。
 さて出かけるかというわけで正装して競馬場へ。紳士淑女の娯楽なのだ。日本の競馬場(行ったことはないが、場外馬券場売り場の前を歩いて通ったことはあり、おおよその見当は付く)とは大違いだ。多分日本の競馬場には紳士淑女はあまりいない。
 馬のオーナー席にはゾリンの姿。そのすぐそばには大柄で怖い顔をした黒人女性のメイ・デイが背筋をビシッと伸ばして立っている。演ずるグレイス・ジョーンズはモデル出身と言うこともあってか姿勢が良い。ゾリンの馬ペガサスは驚異的な瞬発力で見事優勝する。名馬の血筋ではないというのに、その力に疑問を持ったボンドはまずはそこから当たることにする。
 先にペガサスの捜査に当たっていた私立探偵とエッフェル塔の観覧室にあるレストランでボンドは食事をする。東京タワーや名古屋のテレビ塔には高くて不味い定食屋しかないが、正装していないと入れない洒落たレストランがあるとはさすがフランス。だが、話の途中で探偵は殺されてしまい、ボンドは犯人を追う。エッフェル塔の鉄骨の上でちらっと犯人と視線を交わすが、それはメイ・デイだった。
 パラシュートで飛び降りたメイ・デイを追って、ボンドはいきなりタクシー泥。これが今回のボンドカーか?おそらくプジョーかな、色は青。さんざん無茶な走りをしてついには前半分だけになってしまうが、それでも走り続ける。そうか、FFなら何とかなるのか?でも燃料タンクは普通後部だよな?

 ゾリンの屋敷で彼が保有する馬の競売があるのでボンドは資産家に変装し同僚に運転させて乗り込む。競売の目玉はペガサスの弟馬イシウス。ちなみにペガサスの兄には純白の馬ユニコーンがいるとかいないとか。
 屋外パーティーではおもむろにサングラスをかける。透視X線サングラスかと思ったらガラスの反射を除去する偏光サングラスだった。そんなん釣りが趣味のおっさんでも持ってるわい。
 厩舎の地下に進入したボンドと相棒は、馬の足に手術で小型の注射装置を埋め込み、レース中に必要に応じてステロイドを注射していることを突き止める。
 地下に侵入者があったことを知ったゾリンはボンドが怪しいとにらみ、画像解析とコンピューターでボンドの身元を調べる。ちなみにこんかいはスマイスとかいう偽名。いつもは本名なのにね。
 ボンドが英国情報部の殺人許可証を持つスパイだと気づいたゾリンはボンドを馬の障害競走に連れだし、事故に見せかけて殺そうとするが失敗。
 競馬場でKGBの幹部と面談するゾリン。もともとはKGBの下で核爆発にも耐えうるチップを製造していたが、最近になって暴走し独自の計画を企んでいるらしい。
 ちなみにこのシーンでKGBの一員にドルフ・ラングレンがいる。紺のスーツを着込んで、セリフもない上背景扱いなので、出ていると聞かないとまず気づかない。
 どうやら、ゾリンは何らかの方法でシリコンバレーを破壊し、マイクロチップの生産と販売を一手に握るつもりのようだ。悪のインテルかよ。いや、悪じゃなくて普通のインテルか。
 そして舞台はサンフランシスコへ。CIAのエージェント中国系のチャック・リーと合流する。今回はフェーリックス・ライターじゃないのか。
 地下研究所で見かけた老人はステロイド研究の草分けだった博士で、ナチの強制収容所でステロイドによる胎児の知能向上実験を行ったのだ。敗戦後ロシアが連れ去り15年前まで運動選手用のステロイド開発を行っていたがその後行方不明。おそらく、ゾリンは改良で作られた高知能児ではないかとボンドは推測した。だが、彼らの多くは精神的に破綻しているのだ。
 調べを続ける内に、漁師から海から蟹が消えたとの情報を得る。ゾリン石油の採油上にアクアラングを背負って海側から進入するが、そこは石油を掘るどころか大量の海水を地下に送り込んでいた。
 同じくゾリン石油に忍び込んでいたKGBの女性スパイ、ポーラ・イワノバと一時の情事を楽しんだ後は、地質学者のステイシーの家に進入。あっけなく見つかるが、今度は本当に悪意を持った複数の侵入者が襲いかかってくる。ステイシーの持っていた散弾銃で撃つが、相手は一瞬気を失うが無傷。殺傷能力のない岩塩弾を使っているのだ。普通の散弾銃では小さな鉛の弾だが、こいつは大粒の塩を使う。あくまでも威嚇・自衛用の武器。
 飾られている高価そうな壺を割らない様に戦うのはジャッキー・チェン風。もちろん同じシチュエーションだったらジャッキーはさらにすごいんだが。そして無事守りきったかに思える壺は・・・
 ボンドは偽名とロンドン新聞の記者だと嘘をつく。いつもならば職業はごまかしても、「名前はボンド、ジェームズ・ボンドだ」というところだろうに。ちょっと違和感。その後、怯えるステイシーを守るためにボンドが屋敷に泊まり込む。いつもならばすかさず同衾だろが、今回はショットガンを抱えたままソファーで寝る。あれ?
 そして翌朝、小さな地震が起きた。地震研究所の計測データにappleでアクセスし、地震の情報を得ると震源地はゾリン石油の採油場。
 どうやらゾリンは活断層に大量の海水を送り込んで人工地震を起こそうとしているようなのだ。
 役場に資料を探しに行ったところをゾリンに見つかる。ゾリンもそのまま拳銃で撃ち殺せば良いだろうに、役人殺しの罪をなすりつけ、逃走中にエレベーターに閉じこめられそのまま焼死したようにみせかけると、やたら回りくどい。もちろん失敗する。
 エレベーターから脱出するシーンではボンドはステイシーに対して女性というより娘を相手にするような態度を取る。考えてみればロジャー・ムーアは1927年生まれ。タニア・ロバーツは1955年生まれ。親娘でもおかしくない年齢だ。
 ゾリンは採油場計画と平行して、銀の廃鉱に大量の火薬を運び込んでいた。廃鉱の上には湖があり、爆発でその大量の水を活断層に送り込む。海水を送り込む断層と合わせて左右それぞれの活断層を活性化。大地震を起こして地盤沈下を起こし、そこに海の水をなだれ込ませ、シリコンバレーのある谷(バレー)を水の底に沈める計画なのだ。これが成功すれば数百万人が犠牲になってしまう。
 時間が近くなると作業中の部下をサブマシンガンで撃ちまくり皆殺しに。自らも裏切られ、死にかけたメイ・デイが味方になる。
 大量の爆弾を爆発させる起爆装置を積んだリフトを筋肉を緊張させて巻き上げるメイ・デイ。そして起爆装置を積んだトロッコのブレーキが壊れていてブレーキがかかったままになってしまうので、死を覚悟してブレーキレバーを握ったままリフトで坑道から飛び出していくメイデイ。男だぜ!女だけど。
 途中から何度か怪しい雰囲気はあったのだが、ステロイドを研究していた博士はゾリンのことを自らが作り上げた最高傑作として溺愛していた様子がある。異常というか歪んだ愛情だ。それは父息子のそれだったのだろうか。オレにはよくわからない。
 ラストは高齢だが海千山千のムーア・ボンド対高知能を持つゾリン(クリストファー・ウォーケン)の組み合わせなので、てっきり裏を読み、さらにその裏の裏を読む頭脳戦になるかと思いきや、あっさりとした肉弾アクションだったのでちょっとがっかり。
 クリストファー・ウォーケンは知的かつ異常者振りを見事に表現していて、敵役として十二分に合格点。新世代の悪役という感じである。

 この作品の撮影時点でロジャー・ムーアはすでに57歳。ボンドガールが娘に見えるようではさすがに限界だ。引退のニュースを聞いたときは寂しかったが、「まぁしょうがないよな」と感じたのも事実。
 ボンド俳優は30代半ばから50歳過ぎまでぐらいだろうか。ロジャー・ムーアはシリーズ最多の7作で主役を張ってくれた。お疲れさん、オレたちは、とりあえずオレは絶対にあんたを忘れない。

「JAMES BOND WILL RETURN」

B000IU38ME.jpg『007 オクトパシー』(1983) OCTOPUSSY 130分 イギリス

監督:ジョン・グレン 製作:アルバート・R・ブロッコリ、マイケル・G・ウィルソン 原作:イアン・フレミング 脚本:ジョージ・マクドナルド・フレイザー 撮影:アラン・ヒューム 音楽:ジョン・バリー  テーマ曲:モンティ・ノーマン 主題歌:リタ・クーリッジ
出演:ロジャー・ムーア、モード・アダムス、ルイ・ジュールダン、クリスティナ・ウェイボーン、カビール・ベディ、スティーヴン・バーコフ、ヴィジェイ・アムリタラ、ウォルター・ゴテル、ロバート・ブラウン、デスモンド・リュウェリン、ロイス・マクスウェル

 恒例の本編前のアクション。普通の映画ならば終盤の見せ場で使うような力の入ったアクションが真っ先に観られるってのは単純に嬉しい。
 今回、ボンドは某国の空軍基地に士官に変装して潜り込み、戦闘機に事件爆弾を仕掛けるがあえなく捕まり、爆弾も撤去されてしまう。
 オープントラックで護送されるボンドを二人の兵士が見張っている。トラックを追い越そうとした車が横付けになって併走する。運転するのは露出度の高い服を着た美女。あー、これまでに何度も観たシーンだ。そして案の定女に見とれる兵士たち。その隙を突いてボンドは兵士をトラックから突き落とし、併走する車に乗り移る。だから言ったじゃないか、この手のシーンは10割近い確率で罠。引っかかるなよ。
 そして超小型一人乗りジェット機ジェット機で空に舞い上がるボンド。このジェット機はQ特製ではなく(あれこれ手を加えているだろうが)、実在し市販もされていたはずだ。往年のクイズ番組『アメリカ横断ウルトラクイズ』のある回の優勝賞品がジェット機で、よーしと盛り上がった出場者たちだったが、優勝者に手渡されたのはこの小型ジェット機だった(気がする)。しかも組み立てキットなので部品レベルまでバラバラ。どうしろってんだよ!
 格納庫をすり抜けるシーンは最後の閉まりかける扉の間をすり抜けて飛び出すシーン以外は合成を使っていない。ではどうやって小型ジェット機とはいえ危険なシーンを撮影したのか?答えは丸見えだが、ジェット機を下から支える棒。棒の上にジェット機を乗っけて、その棒を走らせたのだ。劇場ではあまり気にならないが、DVDでスロー再生するとモロバレ。だが、やいのやいのと重箱の隅をつつくのではなく、ちょっと笑ってそのままやりすごすのが楽しい映画の見方だ。それからガソリン満タンね。

 シリーズ第13作はレーザー投影が多用されたオープニングタイトル。しっとりとした女性ボーカルで、このころの007シリーズはその傾向が強い。レーザーの使い方はこのころ流行っていて、オレはライブやらコンサートは好きではないが、そちらの方面でもよく使われていたとか。
 ピエロが必死になって逃げている。追いかけてくるのは投げナイフ遣い。後ろにいるはずのナイフ遣いが目の前に現れる。なんとこいつら双子なのだ。合成ではなく実際に双子の役者である。
 ピエロは投げナイフを背中に刺されるがかろうじて逃げることに成功する。そしてベルリンの英国大使館に逃げ込み、そこで息絶える。その手から転がったのは金と宝石の細工で作られた美しい卵。鶏の卵よりは大きく、がちょうのそれぐらいか?それはファベルジュの卵とよばれる、ロマノフ王朝時代の美術品で、ふたを開けると金で出来た皇帝の馬車がある。ただし偽造品。それを運んできたピエロの正体はボンドと同じく英国情報部のエージェントである009。ロシア側が偽造品を本物として西側で売りさばき、資金調達を企んでいるのか?ボンドはその謎の解明に当たる。自分の同僚が殺されたというのにボンドは眉すら動かさず動揺した様子も見せない。自分たちの職業では当たり前のことという考えなのだろう。
 一方、ロシア側。上層部の会議では西側との妥協策を受け入れようとする意見が強い。しかしタカ派のオルロフ将軍(スティーヴン・バーコフ)はドイツへの侵攻と侵略を強く主張する。時代の変化について行けない古い考えの軍人だ。
 本物の卵はサザビーでのオークションに出品される。その会場でボンドは卵を偽造品とすり替える。そして、卵を競り落とした相手を追ってインドへ。
 正直、ちょっとストーリー的に分からないところがある。009が盗み出したのは偽造品。そしてサザビーに出品されたのは本物。ロシアの美術品保管室にあったのは本物だが、それがオルロフ将軍によって持ち出され、悪事に関わった職員が2日後の在庫調査までに本物がないと困りますと騒いでいる。
 まず保管庫から本物が持ち出され、偽造品が作られた。その後、本物は保管庫に戻されるはずだったのだが、偽物が盗まれたため、代わりにオークションには本物を出品した。そして自ら競り落として保管庫に戻す、ということなのか?オークションへの出品取りやめって無理なのか?ちと疑問。まぁどうでもいいが。

インドに到着したボンドを蛇遣いの笛がジェームズ・ボンドのテーマでお出迎え。ここら辺の茶目っ気はムーアボンドならでは。
 カジノのバックギャモンによるギャンブルでは悪党のトリックとも言えないトリックを見破って見事相手を負かし相手を揺さぶり怒らせた。
 そして三輪タクシーでのカーチェイスが始まる。『マッハ!』でもあったね。ボンド自身は運転はしてないが今回はこの三輪タクシーがボンドカーということでいいのだろうか。
 相棒のインド人がテニスラケットで敵の頭をパッカーン、ポッコーンと殴るたびに、通行人が揃って右を見たり左を見たり。テニス観戦かよ。どうもこの俳優はプロテニスプレイヤーだとかいう話も聞いたが確証はない。
 そして人混みで前に進めなくなった車から降りたボンドは、火の上を歩く行者、釘の上で寝る行者、剣を飲む行者などなどを上手く利用して敵を倒していく。そして最後はタクシーで壁に貼られたポスターに突っ込むとそのまま穴になっていて、破れたところにまた新しいポスターが機械仕掛けで一瞬のうちに貼られる。ここら辺のテンポが何かに似ているなと思ったら、『レイダース 失われたアーク』(1981)だった。エジプトの繁華街での敵との追いかけっこや、トラックがガレージに入るなり前を露天が塞いで隠すところなどどこか似ている。おそらく『レイダース』の影響を受けたものと見た。
 とはいえ、『インディ・ジョーンズ』シリーズは、ジョージ・ルーカスとスティーブン・スピルバーグが雑談している中で、「007みたいな映画作りたくね?」「いーじゃん、やろうよそれ」「じゃあ、おれがプロデューサーやるからスティービーが監督やってよ」「でもスパイだとありきたりじゃね。そうだ考古学者ってのは面白くない?」「それいいかも。じゃあ主演はトム・セレックにしよーぜ、ヒゲだし」という会話になり、それが実現してしまったもの。TVシリーズ『私立探偵マグナム』の出演契約があったため主演はハリソン・フォードになった。『レイダース』から『007』への、ある意味では本歌取りかな。
 そして今回のボンドガールはその名もオクトパシー。名前の通りタコを飼っている。青い毒ダコで唾液の中にテトロドキシン、所謂フグ毒をもっているヒョウモンダコだと思われる。噛まれると死ぬこともある恐ろしいタコだ。
 一度はオルロフ将軍と組んで悪事を企んでいるマル・カーンに捕まるが、死体袋に入って脱走。
 虎にお座りと言ったり、ワイズミューラー張りのアーアーアーとターザン叫びでツタからツタへとジャンプ。見事逃げ切るのであった。

 オクトパシーは男性を信用せず、女性だけを部下にして豪邸に住んでいるという。
 島にあるその豪邸にワニ型ボートで接近するボンド。口を開けると中にボンドがいるという、お前食われてんじゃね?的絵面だ。
 実はオクトパシーは英国情報部員の娘。悪事に走ってしまったその父を、辱めることなく自決の機会を与えてたのがボンドで、そのため彼女はボンドに恩義を感じており、彼に協力することとなる。
 オクトパシーは多角経営を行っていて、サーカスも持っている。ベルリンのアメリカ軍基地でそのサーカスによる慰問講演が行われるのだが、サーカスの道具に紛れて核兵器を持ち込んみそれを基地内で爆発させようというのだ。当然報復相手が分からず、それどころか、米軍の過失と思われて反核運動や反米運動が行われ、NATOの縮小に繋がる。そこを一気にオルロフ将軍が侵略しようというのだ。
 核兵器を積んだ列車に追い始めるボンド。ロシア兵相手の銃撃戦になるが、珍しくPPKの弾を確実に当てるボンド。射撃の名手といわれる割にボンドは外してばかりの印象がある。
 進入防止として地面に打ち込まれた鉄の刃でタイヤがパンクが、そのままホイールをレールに乗せて線路の上を走り出す。レール幅ってのはホイール幅と同じなのか?

 ラストは悪党カマル・カーンのインドにある屋敷をオクトパシー美女軍団とともに襲撃。ボンドはQが操縦する新兵器で乗り込む。この新兵器は暖められた空気は気温の低い空気よりも比重が軽い、つまりその暖めた空気を拡散させずに一定量以上を集めて温度を保てば空を飛ぶことも可能になるという画期的な論理を元にした新兵器だ。って、それ単なる熱気球だろ。まぁ、気球の模様がイギリス国旗ってのが工夫か。Qはそのまま前線に残り、珍しく実戦でもちょっと活躍する。
 この美女軍団が強いこと強いこと。『007は二度死ぬ』の忍者軍団や『私を愛したスパイ』の海兵たちよりも絶対強い。しかも美人だったり可愛かったり。

 走る列車の上や空を飛ぶ双発の小型飛行機の上での格闘戦など体を張ったアクションが多いのも見所だ。特に今述べた二つは時間的には長くないものの実に素晴らしい。機械を使った派手なアクションをオープニングに持ってきて、本編は肉体的なアクションに比重を置く。アクション面のバランスは絶妙だ。派手さと地味さがうまく生かされていて、上に書いた奪い合いにおける卵の持つ意味が若干不明確だが、ボンドとボンドガールの因縁や、東西緊張が薄れていく中で、その新しい時代に対応できずに暴走する将軍などよく書けた脚本だ。
 個人的なムーアボンドのベストは『ムーンレイカー』だが、普通の人から「ロジャー・ムーアの007ではどれが面白い」と訊かれたら面倒くさいんで素直に『オクトパシー』にする。
 そもそも他人にお勧め映画なんか尋ねるなとまずは思うが、理由を説明するのが面倒なので言わないけどさ。

 そしてエンディングクレジット。ここ何作かからクレジットがどんどん長くなっていった。前はキャスト名、それも主要キャストだけだったんだが。ま、時代の流れか。

「JAMES BOND WILL RETURN IN "FROM A VIEW TO A KILL"」

B000IU38M4.jpg『007 ユア・アイズ・オンリー』(1981) FOR YOUR EYES ONLY 128分 イギリス/アメリカ

監督:ジョン・グレン 製作:アルバート・R・ブロッコリ、マイケル・G・ウィルソン 原作:イアン・フレミング 脚本:リチャード・メイボーム、マイケル・G・ウィルソン 撮影:アラン・ヒューム 特撮:デレク・メディングス 音楽:ビル・コンティ テーマ曲:モンティ・ノーマン 主題歌:シーナ・イーストン
出演:ロジャー・ムーア、キャロル・ブーケ、トポル、リン=ホリー・ジョンソン、ジュリアン・グローヴァー、ジル・ベネット、カサンドラ・ハリス、デスモンド・リュウェリン、ロイス・マクスウェル、ウォルター・ゴテル、チャールズ・ダンス

 ギリシャ沖で魚雷に触れたイギリス漁船が沈没する。しかし漁船というのは偽装で、実態はイギリス海軍の監視船だった。この船にはATACという装置が積まれていた。これは他国の物であろうと発射された核ミサイルを自在に操り、落下点を変更できるという物だった。これがKGBなど東側勢力に渡れば世界のバランスは大きく揺らぐ。
 イギリス政府から沈没船の探査を依頼された海洋考古学者の夫妻が殺され、一人娘メリナだけが生き残る。演ずるキャロル・ブーケはどことなくジェニファー・コネリーに似ていて個人的にすごく好みだ。いやまあそれはどうでもいい。
 そして007ことジェーズム・ボンドが派遣されることにある。事件のあらましについてまとめられた書類のファイルフォルダには「FOR YOUR EYES ONLY」の文字が。これは閲覧のみ、しかも複写は不可という意味で、字幕では「読後焼却」、原作の邦題は「読後焼却すべし」となっていた。そして、この「FOR YOUR EYES ONLY」という単語は映画のラストで今度はロマンチックな言葉として登場する。

 シリーズ12作目となる『ユア・アイズ・オンリー』は『私を愛したスパイ』『ムーンレイカー』と派手な作品が続いた反動か(反省とは思わない。だってどちらもすごく面白かったからだ)、シリーズ中での地味な作品になっている。だが地味だからつまらないということはない。派手・地味と面白い・つまらないに相関関係はない。
 オープニングタイトルは主題歌を歌うシーナ・イーストン本人の映像が前面に出ていて彼女のプロモーションビデオのようだが違和感はない。
『女王陛下の007』でスペクターのブロフェルドによって殺された、たった一日限りの妻トレーシーの墓を参っているボンド。そこに緊急出動命令が入りヘリコプターで空に飛び立つ。そこに登場するのが電動車いすに乗り、猫を膝に抱いたハゲ頭の男。もちろんブロフェルドである。顔ははっきりと映らないが、ヘリの操縦士を電撃で殺した後、リモコンで操作してボンドを殺そうとする。だが、ボンドはリモコンのケーブルを引き抜くことでコントロールを回復し、逆にヘリを使ってブロフェルドを殺す。
 こうしてシリーズ最大の敵スペクターの首領ブロフェルドは死亡した。もちろん、例によって影武者の可能性もあるが、その後スペクターはまったく姿を現さなくなるので、本人だったのだろう。シリーズ前半を支えた敵役ではあったが、世界征服を狙う秘密結社というのが1980年代ともなるとリアリティを失いすぎて戯画にしかならず、制作者としてはとっとと過去の存在にしたかったのであろう。しかし、全編を通しての悪党として登場させるのはもう難しく、ストーリーとは関係ないオープニングの敵=雑魚扱いとなったのだろう。

 映画全体も派手な秘密兵器や特殊装置は登場せず、ボンドが運転するボンドカー・ロータスエスプリも盗難防止の装置が付いているぐらい。その装置はガラスをたたき割ると車が大爆発するというもので、いくらなんでもやりすぎだ。
 代わりにカーチェイスで活躍するのはヒロインの乗ったシトロエン2CVだ。日本では『ルパン三世カリオストロの城』の印象が強すぎてそれなりの性能を持った車と思われているが、実はかなり非力な大衆車。岡本喜八の『殺人狂時代』では主人公の仲代達矢が愛用車として乗り回しているのがこの2CV(かなりオンボロ)。それを盗んだ自動車泥棒の大友ビルが仲代達矢に「フルスピードで30kmとはどういうことだ」と自分の犯罪は棚に上げて食ってかかるというシーンがあった。
 そんな車で悪党の乗った普通の車相手にカーチェイスをしなければならない。走る道路はつづら坂のようなカーブの多い下り坂。なるほど、車の差をドライバーのテクニックでカバーするのだなと思ったらあっという間に追いつかれる。この時運転しているのはボンドで、運転技術は高いはずだが、期待の性能差はいかんともしがたいということか。
 久しぶりのカジノのシーンもあるし、殺し屋の似顔絵を作成するコンピューター式モンタージュマシンで似顔絵の鼻を嘘をついたピノキオみたいにミューンと伸ばしてふざけるQという珍しいシーンも見られる。いつもならボンドが似顔絵にいたずらをしてQに叱られ窘められるところだろう。
 肉体的なアクションが多いのも特徴で、ロジャー・ムーアもがんばったと思うがもっとがんばったのはスタントマン。お疲れ様です。
 殺し屋が乗った車を追いかけ、駆け上がるボンド。走るボンドはそういえば久しぶりか。断崖に追い詰めた殺し屋の車を蹴落とす残酷さに、ムーアボンドには珍しい凄味を感じた。
 意外な手がかりをもたらしてくれるオウムだが、ラストのオチにも使われる。日本でこれをやったら怒られるんだろうなぁ。
 敵だと思っていた相手、そして味方だと思っていた相手がぐるっと逆転する瞬間がなかなかにスリリングで、脚本としても良く出来た作品だ。完成度は高い。地味だけどな。

「JAMES BOND WILL RETURN IN "OCTOPUSSY"」

B00005HQTY.jpg『007 ムーンレイカー』 (1979) MOONRAKER 126分 イギリス 1979/12鑑賞

監督:ルイス・ギルバート 製作:アルバート・R・ブロッコリ、マイケル・G・ウィルソン 原作:イアン・フレミング 脚本:クリストファー・ウッド 撮影:ジャン・トゥルニエ 特撮:デレク・メディングス 音楽:ジョン・バリー 主題歌:シャーリー・バッシー
出演:ロジャー・ムーア、ロイス・チャイルズ、ミシェル・ロンズデール、コリンヌ・クレリー、リチャード・キール、バーナード・リー、デスモンド・リュウェリン

 真面目な007映画ファンからは「駄作だ、最低作だ」と罵られることが多い『ムーンレイカー』だが、オレは大好きなんだよ。シリーズ中で一番好きかも知れない。ああっ・・・
『私を愛したスパイ』(1977)で初めて映画館で007シリーズを観たオレにとって、ジェームズ・ボンドとはショーン・コネリーでもなければピアース・ブロズナンでもない。意表を突いてジョージ・レーゼンビーと思わせて、実はロジャー・ムーア。ロジャーボンドこそオレにとっての007なのだ。
『007 ドクター・ノオ』(1962)から始まったハードなタッチの作風が、『007 ゴールドフィンガー』(1964)から娯楽大作へと路線が変わる。その娯楽大作路線の頂点というか終着点がこの『ムーンレイカー』だ。
 この作品はもう、なんでもありあり。原作だと大陸弾道ミサイルの話だったのに、なんでボンドがスペースシャトルで宇宙に行ってんだよとか、そういうややこしこいことを考えちゃダメ。制作陣がノリと勢いだけで作っているんだから、観客もノリと勢いで観ろ。
 それに007の映画が原作からかけ離れているのはいつものこと。『私を愛したスパイ』の原作なんかほとんどソフトポルノだぞ。原作の1作目である『カジノ・ロワイヤル』の映画版なんかハチャメチャギャグだぞ。まぁ、『カジノ・ロワイヤル』(1967)はブロッコリ作品じゃないし、コメディとして作られたパロディ映画だが。次の007作品は原作路線の『カジノロワイヤル』ってのは本当か?(この文章は2005年11月に書いた物。2006年12月現在、その『007 カジノロワイヤル』が新ボンドを起用して公開中)

 コネリーボンドは『ダイヤモンドは永遠に』(1971)で砂漠を月面探索機に乗って走り回っているシーンがあるが、あまりしっくりこなかった。しかし、『ムーンレイカー』のオープニングでパラシュート無しで大空に放り出されても平気なムーアボンドは、スペースシャトルで宇宙に行って、無重力空間を宇宙服で飛び回ってもなんら違和感がない。この良い意味のでリアリティの無さがムーアボンドの魅力だろう。

 Q(デスモンド・リュウェリン)の発明の奇抜さもここに極まれりって感じで、ヴェニスの街を走り回る水陸両用ゴンドラの意味がなく、そしてイカすこと。便利なのは間違いないが、目立ちすぎだろ。広場に居合わせた人たちが唖然としているが、観てるこっちもびっくりだ。
 悪役ドラックスの部下に向井千秋の夫である向井万起男氏にそっくりな日本人がいて、常に着物姿でうろつきまわっている。いや、胡散臭い口ヒゲとか、実に似てるんだこれが。スペースシャトルで宇宙に行く映画にこのキャスティングとは、ひょっとしたら担当者は予知能力者か?東洋人の下っ端というのは『ゴールドフィンガー』のオッド・ジョブ(ハロルド坂田)へのオマージュなんだろうか。
 殺し屋としての正体を現し、時計台の中でボンドを襲うが、その時の姿が剣道の防具に武器は竹刀。竹刀じゃ人は殺せんだろ、せめて真剣にしろよと当時は思ったが、ひょっとしたら宮本武蔵級のものすごい剣の達人で、竹刀で充分なのかも知れない。まあ、あっけなくやられるんで、しょせん端役だ。
 代わりに前作『私を愛したスパイ』で活躍し人気を博したジョーズ(リチャード・キール)が再登場する。昨日の敵は今日の友というか、全力を尽くして死闘を繰り広げてようやく倒した相手が、後になって味方になる少年ジャンプのような展開だ。最後にはジョーズがついに自分の居場所を見つける。ここは泣けるよ。

 棺桶に入った殺し屋や、秘密研究室への入り口にあるロックに暗証番号を入力すると、それがたまたま『未知との遭遇』の例のメロディ「たらたたら?♪」になっているといった細かいギャグも楽しい。
 ラストの地球に向かって落下する毒ガス弾をレーザーで撃ち落とすシーンで、自動照準装置が故障したため、ボンドが手動で狙いを定めるシーンなどはまさに『スター・ウォーズ』だ。そう、明らかに『スター・ウォーズ』(1977)によって引き起こされたSF映画ブームに便乗した作品なのだが、作り手が手を抜かずに真面目に作っているのがうれしい。バカ映画こそ手抜きをせず本気で作るべきなのだ。

 ドラックスの目的は、選ばれた人間だけを宇宙ステーションに移し、その後で毒ガスを使って人類を滅亡させ、無人となった地球に戻ってもう一度文明を始めから作り上げようというもの。ヒットラーのナチス的というか、スケールを小さくすると麻原彰晃のオウム真理教的というか、どのみち本人は素晴らしいことをやっているつもりかもしれないが、単に気がふれてるだけだな。

『ムーンレイカー』に登場するスペースシャトルは現在の物と同じ形。細かな改良は加えられているのだろうが、基本的なデザインは一緒だ。最近ではスペースシャトルの老朽化や設計の古さが指摘されているようだが、『ムーンレイカー』が製作された1979年から26年も経つのにモデルチェンジ無しとは、お前は三菱自動車のデボネアかっつーの。
 んっ?三菱自動車・・・そういえばスペースシャトルも設計ミスや作業ミスなどの人的要因が、見落とされたり放置されることで、人命に関わる事故を引き起こした。ひょっとしてNASAの正体は三菱かっ?いや、単なる独り言。

B000IU38LK.jpg『007 私を愛したスパイ』(1977) THE SPY WHO LOVED ME 125分 イギリス
監督:ルイス・ギルバート 製作:アルバート・R・ブロッコリ 原作:イアン・フレミング 脚本:クリストファー・ウッド、リチャード・メイボーム 撮影:クロード・ルノワール 特撮:デレク・メディングス 音楽:マーヴィン・ハムリッシュ テーマ曲:モンティ・ノーマン 主題歌:カーリー・サイモン
出演:ロジャー・ムーア、バーバラ・バック、クルト・ユルゲンス、キャロライン・マンロー、リチャード・キール、バーナード・リー、デスモンド・リュウェリン、ロイス・マクスウェル、ウォルター・ゴテル、ジェフリー・キーン、ショーン・バリー、ニコラス・キャンベル

 世の中、「面白ければなんでも良いじゃん」と無責任に言う人は多い。
 でわってんでその面白ければ何でもありの映画を作って持っていくと、「これはさすがにちょっとやり過ぎだろ」とか抜かす。大衆というのは結局保守的で、極端に突き抜けた作品はなかなか受け入れてくれない。
 シリーズも二桁になり長寿化がはっきりしてきたシリーズ第10作がこの『007 私を愛したスパイ』である。
 ネット上で情報を集めてみたが、どちらかというと「やりすぎだろ」とか「不真面目だ」「リアリティがない」といった否定的な意見の方が多かった。
 中途半端ではなくやりすぎだから面白いんだろ。それにリアリティな作風はは『007 ゴールドフィンガー』の時点で捨てたはずだ。
 まっ、その人たちがどう言おうが、オレは『私を愛したスパイ』が大好きだし、ボンドはムーアボンドに限ると思っている。

 『黄金銃を持つ男』はパワフルで勢いのある主題歌とタイトルバックだったが、『私を愛したスパイ』ではしっとりとした主題歌と優雅なタイトルバックになっていて、ロマンスを感じさせる物になっている。007は凝ったタイトルバックで知られるが、これはシリーズ中でもかなりの出来の良さではないか。
 イギリス、そしてソ連の軍事用原子力潜水艦が相次いで消息を絶つ。
 オーストリアはアルプスの山小屋で休暇中だったジェームズ・ボンド(もちろん美女付き)だがMからの出頭命令が下る。ちなみにそれを受信するのはタイプ印字式受信機能を持つ以外はごく普通の日本製液晶デジタル腕時計。Qの特製秘密兵器だろうが、ぱっと見は今なら500円で買えそうな代物だ。ボンドはスキースーツを着込みナップザックを背負うとスキーを履いて雪山へと出て行く。そこを狙うのはロシア情報部KGBのスパイたち。『女王陛下の007』を思わせるスキーチェイスが繰り広げられる。ただし、オープニング前のアクションなので規模は前作に劣る。
 断崖絶壁に追い詰められたボンドは、さてどうするのかなと思ったらそのまま飛び降りる。地上数百メートルはありそうな高さで、宙に舞ったボンドは落ちる落ちる、そしてまた落ちる。スローモーションとはいえ延々落ちる。どうするんだ?どうやって助かるんだと思っていると背負ったナップサックからパラシュートが開く。なんだパラシュートかと一安心すると、大きく開いたそのパラシュートの模様はイギリス国旗。わははは、これが007だよなと笑う。

 機密だった原潜の航海路がばれたのは、熱で原潜を探し出す追跡システムを誰かが作り上げたから。
 闇市場にその追跡システムが売りに出されているようで、謎はエジプトはカイロにありと睨んだボンドは現地に向かい、そこでアニヤ・アマソヴァというロシア人女性と会う。じつは彼女の正体は同じく追跡システムを追うロシアはKGBのスパイ、コードネーム・トリプルXだ。『トリプルX』はソニーが007シリーズに対抗して作り上げたスパイ映画だが、『トリプルX』の名前の元ネタはやはり今作か?
 ちなみにソニーはこの映画に協力しているようで、悪党が見ているモニターのロゴなどSONYの文字は何度か目にした。
 そして007シリーズもっとも魅力的な悪役と言っても良いジョーズ(リチャード・キール)が登場する。ライトアップされたピラミッドのシーンでは鉄格子を閉めた鉄の鎖を金属製の入れ歯で噛みきってしまう。
 ほかにもエジプトの宮殿か何かの廃墟でのアクションシーンがあるが、えっ?廃墟じゃなくて遺跡?人が住んでいない古い建物という点では廃墟も遺跡も同じような物だが、どこで差を付けるんだろう。でそのアクションシーンだが、どうみてもその遺跡を傷つけてないか?
 車が激突する石の壁なんかはさすがに大道具さんが作ったのだろうが、映画のスタッフってのは壊しても直せばいいんだろと考えているふしがあるからなぁ・・・遺跡内にMI6支局を作ってたりするし。これはさすがに入り口以外はセットだ。
 入っていくなり椅子に座っているのはなんとKGBの偉いサン。それだけではなく、先ほどのシーンで睡眠薬いりの煙草でボンドを眠らせて逃げたアマソヴァもいる。入手した追跡システムのマイクロフィルムを見るために基地の奥へと案内される彼ら。そこはQの開発工房で、リニアモーターカーの原理で宙を飛んでターゲットを首ちょんぱにするお盆とか、座った人間を宙高くはね飛ばすクッションとか、そんな珍発明ばかり。これじゃKGBにバカにされないか?いや、ひょっとしたらQ課の開発力を見くびらせるためにしょーもない発明品だけを目に付くところに用意したとも考えられる。いや、Qの発明はいつもこんなもんか・・・

 拡大したマイクロフィルムからとある海運大企業が関わっているのではと予想され、東西緊張緩和ということでボンドとアマソヴァは協力して事件の解決にあたることになる。
 夫婦と身分を偽り寝台列車で南ヨーロッパに向かう。食堂車での食事から個室に戻ってきてあれこれやり取りがあった後に、隣の個室にボンドは追い出されてしまう。そしてアマソヴァは身支度を寝間着に着替え、着ていた服を物入れに掛けようと扉を開けた途端、中からジョーズが現れ襲いかかってくる。するってーとジョーズはずーっと狭い物入れの中でじっと待ってたのか。もしも物入れを使わなかったらそうするつもりだったんだろ。あの図体に狭い物入れではさぞ窮屈だったことだろう。
 そして隣室からボンドが駆けつけ、ジョーズとの格闘戦になる。だが体格からして肉弾戦は圧倒的に不利で、ジョーズに担ぎ上げられたボンドは何度も何度も天井に叩き付ける。叩き付けるなら普通は床だが、ジョーズはやはり普通じゃない。奇策を用いてジョーズを列車から突き落とすが、その程度でくたばるジョーズではなく、極めて元気そうに立ち上がる。ほんとタフなヤツだ。

 南ヨーロッパに着いた時点で、一足先にやって来ていたQが白いロータス・エスプリを用意して待っている。そのQにアマソヴァは、「こんにちは、ブースロイド少佐」と呼びかける。あーそういえば『ドクター・ノオ』や『ロシアより愛をこめて』のころはQというコードネームではなく「ブースロイド少佐」と本名で呼ばれていた。
 ロータス・エスプリは今回のボンド・カー。最近の作品では特殊装備満載のボンドカーはあまり登場していなかったので、久々の本格的ボンドカーだ。ボンドカーとしてもっとも有名なのは『ゴールドフィンガー』でのアストン・マーチンだろう。回転式ナンバープレートや、油をまいたり、機銃掃射機能があったりと後々のスパイカーに大きな影響を与えた車だ。
 今回のロータスエスプリはそれに継ぐ出来で、人気も高いと思われる。この車、追いかけてくるオートバイやジョーズの乗った車は難なくやり過ごすが、ヘリコプター相手ではさすがに分が悪い。追い詰められたボンドは何を考えたのか桟橋から海へとダイブ。もちろん沈んでいくエスプリ。だが心配めさるな、このエスプリはなんと潜水艦に変形する特殊機能を持っているのだ。エスプリのフラットで車高の低いデザインがなんとなく潜水艦っぽい。でも実際は潜水艦には球体か円柱形が向いているはずだから、本当はワーゲンビートル辺りが強度的にもいいんじゃなかろうか。まぁボンドカーがビートルでは庶民的すぎるが。
 実際にエスプリが変形するのではなく、撮影では何種類ものモデルが使われ、一見シームレスな変形を実現している。
 アマソヴァには同じくKGB諜報部員の恋人がいたが、この任務の寸前にオーストリアはアルプスでイギリス諜報部員に殺された。それがジェームズ・ボンドだったことが分かるシーンで一気にドラマ性が高まる。
 その後の二人の関係にも影響を与え、単に一緒に戦うボンドガールではなく、任務を終えたら真っ先にあなたを殺すとボンドに告げる。そしてボンドは、死ぬのは君かも知れないと冷たい目で言う。

 アメリカ海軍の潜水艦に搭乗したボンドとアマソヴァは、敵の大型タンカーに接近するが、潜水艦の電子装置がおかしくなり浮上する。そこにタンカーが接近し、大きく開いた船首部分から中に飲み込まれてしまう。なかにはドッグがあって、行方不明になったイギリス・ソ連の二隻の潜水艦もそこにあった。他の大型メカに飲み込まれるという意味では『007は二度死ぬ』の米ソの宇宙船を飲み込む大型宇宙船がアイディアの元にあったのではないだろうか。
 悪党はその原潜からワシントン・モスクワに核ミサイルを撃ち込み、現在の堕落しきった文明を一度破壊し、自らがトップとなって新しい世界を作り出すのが木的なのだ。
 悪党の部下はそれなりに数もいて、技術者などのレベルは高そうだ。この部下たちはどのようにして集められたのだろうか。母体は大運送会社なので、そこに就職を希望して配属された部署がなんか妙なところで、気がついたら悪の手下になっていたのだろうか。今回の場合、金目当てではなく新世界設立が目的なので単なる犯罪者ではないのだろう。かれらは赤い制服が目印で、どこかで見た格好だなと思ったら実写版映画『ストリートファイター』(1994)のバイソン軍だった。囚われていた牢獄からボンドが助け出した海兵たちと戦いになるが、海兵は青い制服なので、青と赤で分かりやすい。
 ワシントンとモスクワでの核爆発は防いだボンドだが、公海上で核爆発*2が起きている。海の汚染やらなんやらで「やったー良かったー」と喜んでいる場合ではないと思うのだが。

 作戦実施前に海中都市アトランティスにアマソヴァを連れて避難した悪党。
 そのアトランティスを即刻破壊せよとの命令が下る。
 だがボンドは艦長に「アマソヴァを助けなければならない。1時間くれ、いや40分でいい」と頼み込む。
 艦長は「これは軍法会議物だぞ」と言いながらも「1時間だ」とボンドに告げる。艦長、男だぜ。

「JAMES BOND WILL RETURN IN "FOR YOUR EYES ONLY"」・・・この時点では

B000IU38LA.jpg『007 黄金銃を持つ男』(1974) THE MAN WITH THE GOLDEN GUN 125分 イギリス

監督:ガイ・ハミルトン 製作:ハリー・サルツマン、アルバート・R・ブロッコリ 原作:イアン・フレミング 脚本:リチャード・メイボーム、トム・マンキウィッツ 撮影:テッド・ムーア、オズワルド・モリス 音楽:ジョン・バリー テーマ曲:モンティ・ノーマン 主題歌:ルル
出演:ロジャー・ムーア、クリストファー・リー、モード・アダムス、ブリット・エクランド、リチャード・ルー、クリフトン・ジェームズ、マーク・ローレンス、スーン=テック・オー、デスモンド・リュウェリン、バーナード・リー、ロイス・マクスウェル

 前作では登場人物の口から名前が出るだけでQ自身はスクリーンに登場しなかった。その分を取り戻すべくなのか、今回は1度だけではなく何度も登場シーンがある。やはりQあっての007シリーズだなと再確認したシリーズ第9作。
 Qは秘密兵器開発を行っているQ支局の責任者。Q支局の責任者だからQなのか、Qが責任者だからQ支局なのか。おそらくは前者だとは思うのだが、ボンドの上司のMはなんでMなんだろうか?
 開発といえば、今日は2週に一度の通院日。オレが通っているのは市民病院で計算の窓口に書類を出して、しばらくすると名前を呼ばれて会計の窓口で精算をする。市民病院だから窓口にもそれなりの人数が働いている。担当者は胸に名前が記載されたバッチを付けているのだが、今日の計算窓口にいたのは「開発」さんだった。他の人は例えば「鈴木」とか「田中」とか書かれているので、「開・発」ではなく「開発」で苗字なのだろう。これは「かいはつ」と読むのだろうか。書類を出したときはふーんと思っただけなのだが、精算を待っている間にどんどん気になっていった。お金を払い終わった後、そのまま帰ろうとしたが思いとどまり、「開発」さんの計算業務の手がちょっと止まった瞬間を利用して訊いてみた。
「そのお名前、かいはつさんとお読みするんですか?」
「いえ、かいほつです」
「そうですが、どうもお手数かけました」
 尋ねることは尋ねたのでとっとと帆かけて逃げた。
 そうかー、開発と書いて「かいほつ」と読むのか。これは訊かなきゃ分からない。オレは横浜生まれの名古屋育ちだが、今は都合でそのどちらとも関係なく距離もだいぶと離れた土地で暮らしている。ひょっとしたらこの土地では開発という苗字は極端に珍しくはないのかも知れない。この苗字の人が理系に進み、就職して開発部所属になったらいろいろギャグにされるのだろう。
 念のために言っておくと、オレは普段ほとんど通りすがりに過ぎないような相手に苗字の読みを訊いたりはしない。今回は007シリーズで秘密兵器「開発」をしているQのことが頭にあったからだ。その理由もどんなもんかとは思うが。

 ルルの勢いと迫力のあるボーカルによる主題歌がパワフル。「ザ・マン・ウィズ・ザ・ゴールデン・ガン!!」思わず拳を握ってしまう。前作の主題歌『LIVE AND LET DIE』が比較的パンチの弱い曲だったが、この系統の方が好きだ。『ゴールドフィンガー』とかな。
 MI6に007と刻印の入った黄金の銃弾が送られてくる。市場には存在しない4.2mm口径という特殊な口径で23金+白銅で作られた黄金弾だ。
 その弾丸の謎を追ってジェームズ・ボンドはベイルートとマカオを経て香港へ。途中で出会うその弾丸を作った銃職人が「人を殺すのは銃ではなく人だ」という。個人的に好きなセリフだ。役柄からしていかにも殺され役だなと思った銃職人だが、なんてこともなくそのまま物語から退場。
 浮かび上がってきたのはスカラマンガ(クリストファー・リー)という名の殺し屋。サーカスで生まれ育ちそこで射撃の腕を身につけたこと、そして三つ目の乳首があること以外は顔や外見など一切不明の謎の殺し屋だ。仕事には黄金銃を使い、報酬は1人当たり100万ドル。金も欲しているが、それ以上に殺しへの欲求が強い男で、単に殺すのではなく「もっと強いヤツと戦いたい」と『ストリートファイター2』のCMコピーのようなことを考えていて、いずれはボンドと戦いたいと願っている。
 そのスカラマンガの部下というか愛人の女性が、スカラマンガの異常振りに怯えてボンドに接近してくるが、最初は彼女を信用せず腕をねじり上げたり頬を叩いたりとボンド意外に残忍な振る舞いを見せる。コネリーボンドならば違和感がないのだろうが、女性のシャワーシーンに出くわして思わず鼻の下を伸ばしているようなムーアボンドには似合わない。
 香港にいたはずなのに、ボンドが気絶させられて格闘技の道場に連れてこられるとそこはもうタイだったりと、地理関係がちょっといい加減。単に東南アジアという括りで一まとめにされている。『007は二度死ぬ』での日本はそんなに大きく間違っている部分はなかったと思うのだが、今回の香港・タイは映画でしか現地を知らないオレから観ても明らかに間違っているだろ、それ!というシーンが多々ある。
 舞台が東南アジアで、空手などの格闘アクションがあり、ラストのスカラマンガの屋敷では鏡などを使ったトリックルームで主人公対悪漢の戦いがあるなど、この『007 黄金銃を持つ男』(1974)は『燃えよドラゴン』(1973)の影響を明らかに受けている。相撲取りまで出てくるしな。それにしても二人の姪っ子つええええぇぇー!
 その伯父であるヒップを演ずるのはスーン=テック・オーという中国系俳優。どっかで見た顔だと思ったら『ファイナル・カウントダウン』でジェット戦闘機によって撃墜され空母に捕らえられたゼロ戦のパイロットをやってた人だ。

 道場から抜け出したボンドは小型のモーターボートを手に入れ(別名・盗んで)ちょっとしたボートチェイスが始まるが、『007 死ぬのは奴らだ』に比べると規模は極めて小さい。
 楽しいのはその後のカーチェイスだ。スカラマンガが乗った自動車を追いかけるためボンドはカーディーラーで車を調達して(別名・盗んで)、助手席に座っていた客を乗せたまま走り出す。その客というのが『死ぬのは奴らだ』でボンドとカーチェイスを繰り広げたペッパー保安官。奥さんと東南アジアを旅行中だったのだ。007シリーズにはMやQはもちろんとして、CIAのフィーリックス・ライターやKGB(後に退職)の白いスーツを好んで着るエージェントなど何作かに渡って登場する人物はいるが、直接的にストーリーに関係ない人物で再登場したのはペッパー保安官だけだろう。
 カースタントの規模としては他作品に劣る部分もあるが、当時の技術の粋を凝らした名スタントがある。それは壊れて傾き、途中が落ちてなくなっている橋を車でジャンプして飛び越えるシーン。橋が傾いているので車もそれに沿って傾き、ジャンプしてる最中も回転運動が続いて、ぐるっと360度横に回転して通常の向きで着地。何度も計算を繰り返して微妙な調節を行ってようやく成功したそうだ。今観てもすごいシーンなのだが、効果音が「ヒュ?ポ?」ってのはどんなもんだろう。
 そしてとあるガレージにスカラマンガの乗った車を追い詰めるが、その車は飛行機に変形してトランクにMI6の新米女性職員グッドナイトを乗せたまま大空へと飛び去ってしまう。グッドナイトはあっちで大人しくしてろと言われたのに、ボンドの役に立ちたくてスカラマンガの部下である小人を追いかけていて捕まってしまったのだ。んーまったく。
 ちなみに変形すると言ってもスイッチ一つでガシャンガシャンと『超時空要塞マクロス』のバルキリーみたいに変形するわけではなく、飛行機に無理矢理翼とエンジンを載せてくっつける方式。メーターなんかはスイッチでクルッと飛行機用に変わったが、翼やエンジンを車に最初から積んでいるならともかく、置いてあったガレージで取り付け作業を行う手間を考えたら、最初からそこにセスナ機でも置いておけば良かったんじゃなかろうか。まっ、そこらも含めて007シリーズの魅力なんだが。
 スカラマンガの使う黄金銃にしたって、ライター、シガレットケース、そして万年筆を変形・組み立てして拳銃になる。ばらばらの状態だと身体検査をされても銃を持っているとばれないが、そういったシーンは映画には登場せず、普通に銃を持ち込んでも問題なさそうだ。そうなると銃の変形・組み立てには何の意味があるんだってことになるが、それが007シリーズってもんでしょ。

 ラストに悪党との対決はお馴染みだが、今回は背中合わせから始まる古式ゆかしき決闘方法。ちなみにスカラマンガ役のクリストファー・リーは原作者イアン・フレミングの実の従兄弟で(実の従兄弟ってのも妙な表現ですが)、原作の段階でリーをイメージしていたとのこと。
 そのボンドをグッドナイトが助けると思いきや、低温に保たねばならない液体ヘリウムの温度を上げて太陽発電システムは暴走して爆発を始めるし、後ずさったときにうっかりお尻でボタンを押してボンドを反射板で集中させた太陽光線で焼き殺しそうになったりと、見事なドジっ娘ブリを発揮。お前はコミックかアニメの登場人物か。
 顔は綺麗というよりも可愛い感じで、オレとしては嫌いじゃないが、ドジっ娘にスパイは無理だと思った。
 無事に事件は解決したが一つだけ気になることがある。ボンドは土産物売りの少年に2万バーツを払いに行ったんだろうか?

「JAMES BOND WILL RETURN IN "THE SPY WHO LOVED ME"」

B000IU38L0.jpg『007 死ぬのは奴らだ』(1973) LIVE AND LET DIE 121分 イギリス

監督:ガイ・ハミルトン 製作:ハリー・サルツマン、アルバート・R・ブロッコリ 原作:イアン・フレミング 脚本:トム・マンキウィッツ 撮影:テッド・ムーア 特撮:デレク・メディングス 音楽:ジョージ・マーティン テーマ曲:モンティ・ノーマン 主題歌:ポール・マッカートニー&ウィングス
出演:ロジャー・ムーア、ヤフェット・コットー、ジェーン・シーモア、クリフトン・ジェームズ、ジェフリー・ホールダー、デヴィッド・ヘディソン、バーナード・リー、ロイス・マクスウェル、マデリン・スミス、ジュリアス・W・ハリス

 ショーン・コネリーから三代目ジェームズ・ボンドとしてロジャー・ムーアに変わったシリーズ第8作。この作品の銃口越しに狙われるボンドというオープニングからソフト帽がなくなる。時代的に帽子を着用している人が少なくなっていたのだと思うが、キャスト変更で若返りの雰囲気を出したかったのかも知れない。でも、1930年生まれのショーン・コネリーに対してロジャー・ムーアは1927年生まれ。実は年が上になったんだよね。
 映画館で初めて見た007シリーズが『007 私を愛したスパイ』なためか、オレが一番好きなのはロジャー・ムーアが演ずるジェームズ・ボンドだ。野性味や残酷さがあったコネリーボンドに比べて、ムーアボンドは笑顔がデフォルトで茶目っ気も強い。
 今回は登場するなり女性と同衾しているが、そこにM自らボンド宅を尋ねてくる。女性をクローゼットに隠して、そこにMを近づけないようにちょっとしたドタバタが繰り広げられる。コメディかよ。
 Mがオフィスにボンドを呼びつける暇すら惜しんだのは、アメリカで3人の英国諜報部員が殺されたから。その中でもニューヨークのハーレムでの殺人は、黒人の葬式を通りで眺めていた諜報部員(白人)が脇に立っていた男に「あれは誰の葬式だい?」と尋ねると「あんたのだよ」とナイフで殺され、その死体が棺桶に入れられると楽隊がそれまで演奏していた悲しげな音楽から「パラッパ?」とトランペットを鳴らすにぎやかな曲に切り替え、参列者たちは楽しそうに踊りだす。お気に入りのシーンだ。
 オープニングタイトルは髑髏が繰り返し登場する不気味な物。いつもの美しいから路線としてはちょっと外れている。ブードゥーが関わってくるのでそのイメージか。主題歌を歌うのはポール・マッカートニー。コネリーボンドが「ビートルズを聴くときは耳栓をすること」と言っていたことから考えるとやはりボンドは若返ったようだ。実際のロジャー・ムーアがビートルズのファンかは知らないが、なんとなく聴いていても違和感を感じない気がする。ちなみにロジャー・ムーアって元はアニメーターで、そこから演劇を始めて役者になったという一風変わった経歴の持ち主。絵は上手いんだろうな。
 日常生活ではボタンを押すと文字盤が赤く輝くデジタル腕時計を使っていたが、任務に出発する前にMが「これはQからだ」とアナログ式腕時計を手渡される。この腕時計は竜頭を引っ張ると強力な電磁石になり、さらには文字盤外周が回転して丸ノコにもなる。今回、Qは名前が出てくるだけで姿は見せず、ファンにとってはちょっと寂しい。
 パン・ナムの航空機でアメリカに到着したボンドは早速悪党に命を狙われるが、無事に切り抜けてCIAのフィーリックス・ライターと合流。
 映画の中ではタイトルの「LIVE AND LET DIE」についての説明がないが、原作ではボンドとこのフィーリックス(だったと思う)の会話に登場する。「こちらも生きて、あちらも生かす(お互い様)。それが我々の方針だ」というフィーリックスにボンドが、「こちらの方針は違う。こちらは生きて、相手は殺すだよ(LIVE AND LET DIE)」と言うのだ。
 CIAが使っているオープンリールデッキにははっきりと「パナソニック」の文字がある。最新作『007 カジノロワイヤル』からMGC買収により制作にソニーが関わっているそうで、パソコンはVAIOを使うなどソニー製品がいくつも登場しているそうだが、過去の作品まで遡ってCGで「Panasoninc」→「SONY」のように企業ロゴを変更したりしないだろうか?やらないよな。やらないよ。うーん、やらないだろうな。でもソニーだしなぁ・・・

 今作のボンドガールは最初から敵の手の中にある。タロットを用いて百発百中で未来を予言する美人占い師ソリテールだ。彼女は処女で、その処女性が不可思議な力の源であって、処女でなくなるとその魔力も失ってしまう。おそらくはなんらかの神話がベースとなった設定だろう。ザ・ロック主演の『スコーピオン・キング』でも同じ設定の女性占い師が登場していた。日本の神社にいる巫女さんなんかもその一種か?
 悪党のボスである黒人のカナンガは、彼女の力を悪用してジャマイカの島でケシを栽培し、そこから抽出したヘロインをただでばらまこうとしている。そして中毒患者だらけになったところで販売に切り替え大もうけを企んでいるのだ。これまでの悪役であるスペクターやゴールドフィンガーと比べると小粒だが、反麻薬運動が世界的に高まっていた当時の動向を取り入れたのだろう。
 ボンドとソリテールが初めて出会ったシーンで彼女がタロットカードを引くと現れたのは「恋人たち」のカード。その後、1人でボンド占っていて、そこで現れたのもまた「恋人たち」のカード。
 カナンガの屋敷に侵入したボンドがソリテールが占いに使っているテーブルでタロットカードを弄んでいる。そしてソリテールに一枚引かせると、それも「恋人たち」のカードだった。やはり神聖なる魔力は存在するのか・・・
 キスをする二人。ボンドの手から残りのカードがこぼれ落ちる。表面を上に床に落ちたカードは全て・・・っておい。

 ハーレムにある敵のアジトをCIAの諜報部員が見張っているところに、観客にはすでにお目にかかっている黒人の葬式が近づいてくる。今回は殺害シーンは省略されそのままにぎやかな音楽に変わる。この省略が楽しい。

 運動性能の高いスポーツカーではなくあえて動きの鈍い二階建てバスを使ったカーチェイスや、空港内での飛行機と車のカーチェイス。
 ボートチェイスの歴史を変えた、といってもボートチェイス自体があまり映画に登場しないが、スクリューではなく水流を噴射して進むジェットボートによるチェイスが派手で楽しい。アクションに関してはムーアボンドの世代になって明らかにランクアップした。もっとも、派手さを追求するあまりリアリティが薄れたのも確かではある。その後のアクション映画に与えた影響が大きいことを考えると個人的には成功だと思う。
 マシンを使ったアクションばかりではない。クロコダイル牧場で池の中にある小島に置き去りにされてしまったボンドにクロコダイルワニたちが牙を剥き出しにしてジワリジワリと近づいてくる。秘密兵器の電磁石内蔵腕時計で対岸にある手こぎボートを引き寄せようとするがボートはロープでつながれていて無理。
 ボンドはワニの餌となって終わるのかと思った瞬間、そこで何匹か横に並んだワニの上を走って渡り見事脱出。お前は因幡の白ウサギか。ちなみに作り物ではなく本物のワニ。子供の頃にテレビで観たときはボンドの全身が映っていたという記憶があるのだが、後に観直してみると下半身しか登場していなかった。そりゃそうだよな。ボンドのスタントマンを演じたのはワニ牧場の飼育員だとか。
 ボートでの追跡劇ではペッパーという名の太った保安官が登場する。次作『黄金銃を持つ男』のためにもしっかりその顔を覚えておきましょう。こうしたあからさまなお笑いキャラが登場するのも今作から。保安官の他には州警察に自然保護レンジャーまで登場して、アメリカの司法組織の複雑さを感じさせる。どうやら街などの担当自治地域の中では保安官の方が州警察よりも権力があるようだ。だが、街を一歩出れば保安官もただの人。州警察の警官は他州では権限はないが一応警官。州をまたいだ犯罪にはFBIと。レンジャーは国立公園などを警備しているようだ。書いててよく分からん。

 中盤に大きなアクションがいくつもあったせいか、ラストの戦いは案外地味。セットも小さい。
 1970年代に入り、世界情勢も変わり、アクション映画も変わっていった。その中で、いかに007シリーズの方向性を決めていくかについて、若干の迷いがありながらも作り手として手応えは感じていたのではないかと個人的には思う。
 イアン・フレミングとしては望ましい方向性ではなかったと思うが、8作も続き作品規模も大きくなったこの時点で、すでに映画は作者の手を離れたに近い。良い悪いは別にして。
 ふとここ一週間ほどに書いた文章を読み直してみたらああた、007シリーズを『ドクター・ノオ』から順番に書いてるではないですか。うーむ、気がつかなかったなぁ。(嘘付け)
 取りあえず、毎回DVDで該当作を観直してから書いてるんですが、今回の『死ぬのは奴らだ』が一番楽しんで観られた。やはり力が入ったショーン・コネリーよりも肩の力を抜いた感じのするロジャー・ムーアの方が好きなんだろう。

「JAMES BOND WILL RETURN IN "THE MAN WITH THE GOLDEN GUN"」

B000IU38KQ.jpg『007 ダイヤモンドは永遠に』(1971) DIAMONDS ARE FOREVER 120分 イギリス

監督:ガイ・ハミルトン 製作:ハリー・サルツマン、アルバート・R・ブロッコリ 原作:イアン・フレミング 脚本:トム・マンキウィッツ 撮影:テッド・ムーア 特殊効果:アルバート・ホイットロック 音楽:ジョン・バリー テーマ曲:モンティ・ノーマン 主題歌:シャーリー・バッシー
出演:ショーン・コネリー、ジル・セント・ジョン、チャールズ・グレイ、ラナ・ウッド、ブルース・キャボット、ジミー・ディーン、ノーマン・バートン、バーナード・リー、ロイス・マクスウェル、デスモンド・リュウェリン


 主人公の一人称視点で怒り狂い暴れうジェームズ・ボンド。「ブロフェルドはどこだ?」とスペクター関係者を殴り倒す。『女王陛下の007』のラストで花嫁のトレーシーがブロフェルドによって殺されたため、その復讐に乗り出したのだ。
 途中まで顔が映らないのは、ジョージ・レーゼンビーから再びショーン・コネリーにキャスティングが変更になったため、それを埋める演出である。
 ブロフェルドの居所を突き止めたボンドは、スペクターの基地に侵入してブロフェルドと対決する。またもや顔が変わったブロフェルド。今回演ずるのはチャールズ・グレイだ。この人は『007は二度死ぬ』で味方側として登場してあっという間に死んだ役者じゃないか。昨日の友は今日の敵ということか。ちょっと違うか。色素の薄い青い瞳が残虐っぽくてそれほど悪くないのだが、頭の毛は剃って欲しかった。ハゲじゃなきゃブロフェルドじゃないぞ。
 そしてボンドはブロフェルドの殺害に成功する。したかに見えたのだが・・・

 というわけでシリーズ第7作『007 ダイヤモンドは永遠に』が始まる。まるで婚約指輪の宣伝文句のようなタイトルだ。
 南アフリカのダイヤ採掘現場から原石が盗み出されているらしい。そのダイヤは一旦オランダに持ち込まれていることが判明する。
 ブロフェルドは殺したことだし、地味な任務に就けとMから命令されたボンドだが、深く関わっていく内に地味どころか巨大な陰謀が裏に潜んでいたのである。
 今作のボンドガールはティファニーという名前。母親がティファニー店内で産気づいて彼女を出産したためその名が付けられたという。どうでもいいけど臨月なのに宝飾品店で買い物をしているのはちょっとどうかと思うぞ、お母さん。状況いかんでボンドに協力したり、敵側に付いたりと、あまり好感は持てないヒロインだ。
 全編を通して登場する二人組の殺し屋がボンドと対決することになるが、ブ男と前半分がハゲの組み合わせで、ユーモラスではあるがちっとも怖くはない。ギャグあるいは間抜けそうに見えて残虐という意外性を狙ったのか。とりあえず失敗だとは思う。
 自分が殺した悪党に成りすまして、ボンドはダイヤモンドをアメリカに密輸する。アメリカの空港で待っていたのはもちろんCIAのフェリックス・ライター。この人もまた演ずる役者が変わっている。同じ人を使わないのは何でなんだろうか?
 そして舞台はギャンブルの街ラスヴェガスに。ホワイトハウスという名のホテル・カジノがあり、そこの社長ホワイトは最上階のペントハウスに篭もったきり三年も人前に姿を現していない。どうやらこのホワイトが裏で糸を引いているようなのだが、その正体はボンドが殺したはずのブロフェルドだった。殺したのは同じ顔に整形した影武者だったのだ。
 スペクターの研究所から月面車で脱出したボンドだが、三輪バギーに追われあやわ追い詰められそうになるが、機転で無事に切り抜ける。エンドクレジットにホンダの名前があり、どうやらこの三輪バギーはホンダ製品のようだ。
 そして保安官たちの運転する何台ものパトカーとカーチェイスを繰り広げる。アクションの質が『女王陛下の007』のスキーチェイスから格段に向上しており、ここでのカースタントは以前の物と比べてかなり工夫が凝らされている。車の幅よりも狭い路地を片輪走行で通り抜けるシーンが面白い。『ダイヤモンドは永遠に』ではカットを割って撮影されているが、ジャッキー・チェンの『Who am I』だったと思うが、こちらにもほぼ同様のスタントがあってそちらでは1カットになっていた。007のカースタントチームは『スパルタンX』に参加していたりと、ジャッキー・チェンとは縁があるようだ。昔、いすゞのジェミニのCMでワルツを踊るように走る車が話題になったが、あれを担当したのも007のカースタントチームだったはず。
 ブロフェルドによって人質になっていたホワイトを救出するためにボンドは郊外の別荘を訪れる。ここで白人と黒人の二人の女性にボンドはかなりコテンパンに叩きのめされてしまう。他のシーンでもそうだが、コネリーボンドは射撃の腕は良いが、格闘戦は苦手なようだ。
 ボンドが使うQの秘密兵器は指の腹に貼るニセ指紋と携帯ミサイルぐらいだが、Q自身が指輪型のスロットマシーン操作機でカジノで大勝ちしている。シリーズ中もっとも実用的な秘密兵器かも知れない。オレにくれないだろうか、パチスロに行って一儲けするのだが。まぁ捕まりそうだし、そもそもギャンブルは宝くじすらやらないんだけどね。
 ホテルが隠れ家として役に立たなくなったためブロフェルドは車で逃げ出すのだが、なんと女装している。意味がないというか、逆に目立つだろうに。ただ単に女装したかっただけじゃないのか。「だってしょうがないじゃありませんことですわよ。素顔だとばれてしまいますからオホホホ。あらご免あそばせ」とか言いながらファンデーションをパタパタやってるの。うげげ。
 ダイヤモンドを集めていた理由は、人工衛星に積むレーザー兵器に必要だったから。前作は致死性ウイルスで今作は宇宙兵器。スペクターは多角経営だ。

 全体的にだれた感じが否めない。ショーン・コネリーがもうやりたくないというのに無理矢理引きずり出されてボンド役をやっているというのもその一因だろう。
 イギリス、オランダ、ラスヴェガスと舞台が変わっていくが、そのテンポもあまりスムーズではない。ガイ・ハミルトンは好きな監督なのだが、今作はちょっと・・・と首をかしげずにはいられない。

「JAMES BOND WILL RETURN IN "LIVE AND LET DIE"」

B000IU38KG.jpg『女王陛下の007』(1969) ON HER MAJESTY'S SECRET SERVICE 142分 イギリス

監督:ピーター・ハント 製作:ハリー・サルツマン、アルバート・R・ブロッコリ 原作:イアン・フレミング 脚本:ウォルフ・マンキウィッツ、リチャード・メイボーム、サイモン・レイヴン 撮影:マイケル・リード、エグリ・ウォックスホルト 音楽:ジョン・バリー 主題歌:ルイ・アームストロング
出演:ジョージ・レーゼンビー、ダイアナ・リグ、テリー・サヴァラス、ガブリエル・フェルゼッティ、ベッシー・ラヴ、ジョアンナ・ラムレイ、カトリーヌ・シェル、バーナード・リー、ロイス・マクスウェル、デスモンド・リュウェリン

 ショーン・コネリーが降板し、二代目ジェームズ・ボンドとしてジョージ・レーゼンビーが起用されたシリーズ第6作。1930年生まれのショーン・コネリーに対してジョージ・レーゼンビーは1939年生まれと10歳近く若返った。その差は格闘など肉体を使ったアクションの切れのとして現れている。ただしレーサーそしてモデル出身のジョージ・レーゼンビーはお世辞にも演技力があるとは言えず、過去の作品と比べて今作はドラマ性が強調されているため見劣りがするのは確か。

 車を運転するボンドは、その後ろ姿、あるいは煙草を咥えた口元のアップ、逆光のシルエットとしてまずは登場する。顔がはっきり映るのは1、2分してからで、主演男優交代の違和感をなるべく取り除こうとしている。
 過去の007シリーズの映像を使ったオープニングでは楽曲だけで歌は無し。ルイ・アームストロングによる主題歌は、ボンドと恋人のトレーシーがいちゃつく中盤のシーンで使われている。
 Qの作った秘密兵器はインクジェットプリンターぐらいの大きさをした携帯コピー機。今では数万で手に入りそうな機械だが、Qにしては珍しく実用的な装備品だ。もっとも、Qから支給されたシーンはないので他の人が作ったのかも知れない。だから実用的なのか?
 第1作の『007 ドクター・ノオ』からして007シリーズは海が舞台の作品が多かった。ジェームズ・ボンドは英国海軍中佐なので海が似合うのは確かだが、今回の舞台となるのはスイスはアルプス山脈。山、それも雪山だ。
 前作『007は二度死ぬ』のラストで取り逃がしたスペクターの首領ブロフェルドを追って、致死性ウイルスを開発している山頂の研究所に紋章学者として潜り込む。
 正体がばれてロープウェイの機械室に監禁されてしまうが、ロープを送り出す窓が開いているのでそこからあっという間に脱出。ブロフェルドももう少し考えろよ。ちなみに今作のブロフェルド役はテリー・サヴァラス。もちろんハゲだ。憎たらしくて前作のドナルド・プレザンスよりも悪役度が高い。
 そしてスキーにて麓の村を目指すが、ブロフェルドの手下に発見されスキーチェイスが始まる。確実なことは言えないが、スキーによるアクションシーンの原形として後々の作品の手本になっていると思われる。敵の1人が除雪車に巻き込まれて血染めの雪となるが、嫌な死に方だ。
 国連はブロフェルドのウィルスによる脅迫を受け入れることに決定し、Mはボンドに何もするなと命令するが、ボンドはそれに逆らってトレーシーの父親がボスを務める犯罪組織の力を借りて研究所をヘリコプターで強襲する。Mの指示に従わないという点でもシリーズ異色作である。他にボンドが暴走するのは『007 消されたライセンス』ぐらいか。

 ラストはボンドとトレーシーが結婚し、ボンドはスパイ稼業を引退することになる。だが、ハネムーンに向かう車をブロフェルドが銃撃し、トレーシーは死んでしまう。
 007シリーズはボンドとヒロインが抱き合って終わるのが多く、今回も形はそうだが悲劇として終わる。
 ジェームズ・ボンドは1人の女性と結婚してごく幸せな自分の生活を送ることは許されず、お国のため、女王陛下のためにスパイとして生き続けなければならない宿命なのだろう。タイトルの『女王陛下の007』はそういった意味だと解釈している。
 スパイは孤独だ。

 ジョージ・レーゼンビーは今作限りでジェームズ・ボンド役を降ろされた。観客から不評だったせいもあるが、かなり傲慢な性格でスタッフに嫌われたのが一番大きかったそうだ。
 その後、B級映画などに多少出演しているようだが、オレが観たのは『ケンタッキー・フライド・ムービー』で「先生」「看護婦」「先生」「看護婦」ってやってるのと、その後のナポレオン・ソロとして作られたTV用映画『ナポレオン・ソロ』に「JB」のナンバープレートが付いた白いアストン・マーチンに乗った英国スパイ役としてのゲスト出演ぐらいだ。イリヤ・クリヤキン(デビット・マッカラム)がナポレオン・ソロ(ロバート・ボーン)に「ひょっとして彼か?(ジェームズ・ボンドか?という意味だろう)」「ああ、彼だ」とか言ってて笑った。

「JAMES BOND WILL RETURN IN "DIAMONDS ARE FOREVER"」

B000IU38K6.jpg『007は二度死ぬ』(1967) YOU ONLY LIVE TWICE 117分 イギリス

監督:ルイス・ギルバート 製作:ハリー・サルツマン、アルバート・R・ブロッコリ 原作:イアン・フレミング 脚本:ロアルド・ダール 撮影:フレディ・ヤング 音楽: ジョン・バリー テーマ曲:レスリー・ブリッカス 主題歌:ナンシー・シナトラ
出演:ショーン・コネリー、若林映子、浜美枝、丹波哲郎、ドナルド・プレザンス、バーナード・リー、ロイス・マクスウェル、デスモンド・リュウェリン、カリン・ドール

 世界的大ヒットを飛ばす007シリーズがついに日本上陸。上陸と言っても映画が上映されたのではない、日本ロケである。117分の作品時間のほとんどが日本を舞台にしたシーンになっている。屋内シーンなんかはロンドンのスタジオで撮影された部分が多いようだが。

 まず最初に言っておくが、日本を舞台にしたり題材にした映画について、やたらと「これは間違っている。こんなの日本ではあり得ない。うんぬんかんぬん」と文句を言う人がいるが、制作者たちは正しい日本の姿を海外に知らしめるために映画を撮っているのではない。日本という東洋の国が持つオリエンタリズムに魅力を感じて題材にするのだ。だから、デフォルメされていて当たり前。それを言い出したら日本が撮った外国が舞台の映画やテレビドラマだってかなりいい加減だぞ。
 娯楽作品なんだから肩の力を抜いて楽しみましょうや。

 映画は宇宙から始まる。衛星軌道を飛行中のアメリカの宇宙船を謎の大型宇宙船が飲み込む。後のシーンではソ連の宇宙船が飲み込まれて同じく消息を絶ち、それぞれに相手の国の陰謀だとなじり合い、このままでは米ソの直接戦争は避けられない。
 謎の宇宙船が着陸したのが日本。だが頭に血が上った米ソ両国はそれを信じず、唯一イギリスだけが日本へと捜査に乗り出す。送り込まれたスパイはもちろんジェームズ・ボンド(ショーン・コネリー)。

 番傘のシルエットと噴火する火山、そして髪を結った女性によるオープニングタイトルバック。主題歌を歌うナンシー・シナトラはフランク・シナトラの娘だ。
 日本に向かう潜水艦の中でMの秘書マネーペニーがボンドにインスタント日本語という日本語のアンチョコを渡すが、日本語はケンブリッジで習ったからとボンドは自信ありげだ。その割に、日本語を話すシーンはほとんどないし、発音も何言ってんだか?だったりする。
 東京の夜景は『アサヒビール』を始めとしたネオンサインの山また山。ひょっとしたら『ブレードランナー』に影響を与えているのかも知れない。
 ボンドが真っ先に訪れるのは蔵前国技館。当時の大相撲横綱本人が登場し、ボンドとちょっとばかりやり取りがある。国技館では大相撲の真っ最中で、席は満席だ。よくそれだけエキストラを集めた物だと思うが、今もしも007シリーズの日本ロケがあってエキストラを募集したら、東京までの交通費や滞在費を出しても東京まで行くな、オレ。
 日本の秘密警察地下基地でタイガー・田中が登場。演ずるのは先日亡くなられた丹波哲郎。堂々とした物腰で、当時人気絶頂だったショーン・コネリーと一対一の芝居でも何ら臆した感じはない。
 今作のボンドカーはトヨタ2000GTだ。といってもボンドはハンドルを握らず運転するのは若林映子である。ナンバープレートが2000のこの2000GTは映画用に特別に作られたオープンカーである。本来はコンパーティブルが用意されていない車種なので、トヨタも力を入れて協力したのだろう。たしか格好良くてにこれは良い宣伝になる。
 敵と思われる大里化学に侵入した後は、タイガー・田中宅で田中と一緒に風呂に入るボンド。『クレヨンしんちゃん 爆発!温泉わくわく大決戦』(1999)で丹波哲郎演ずる温泉の精が「ジェームズ・ボンドと風呂に入ったことがあるんだ」とか言ってるが、それはこのシーンのことだ。
 今でこそ日本でも『007』は『ダブルーオーセブン』と発音されるが、当時は『ゼロゼロセブン』と呼ばれていた。それもあってか、タイガー・田中との無線通信ではボンドのことを『ゼロゼロ』と呼んでいる。
 大里化学を追っている内に、舞台は東京から神戸の港へ。そこで人足たちに襲われるが、その中の1人が笑点の座布団運びだった松崎真。現在の座布団運びである山田隆夫は『太陽の帝国』でトラックを運転する旧日本兵として登場していたが、どうやら笑点の座布団運びは世界的規模の大作映画に出演できるという法則があるようだ。

 そしてもちろんQも登場。組み立て式オートジャイロ「リトル・ネリー」を持って来日する。屋内シーンだけかと思ったら、オートジャイロが飛び立つ屋外シーンでもいるのでちゃんと来日して撮影されたようだ。
 阿蘇山火口(映画内の設定では阿蘇山ではなく架空の山)近く、を飛んでいたボンドはヘリコプターの集団に襲撃されるが、これを撃退する。どうやら敵の秘密はこの火山にありそうだと見当を付ける。そして事実、スペクターの秘密基地はその火山の中にあった。基地には猫を膝に抱いたブロフェルドがいた。ここではまた胸までしか映らず、顔は見えない。
 姫路城ではタイガー・田中の部下である忍者たちが訓練中。壁に立てかけた人型の的に手裏剣を投げるシーンでは、的から外れた手裏剣が壁を傷つけかなり怒られたらしい。そりゃそうだ。
 そしてボンドは日本人の漁師に変装し、島へと潜入するが、どこをどう見ても日本人には見えない。これでは逆に怪しいだろ。
 そして偽装結婚をする相手が浜美枝。英語はあまり得意ではなく撮影では苦労したそうだ。
 新婚という設定で家に着いて、食事に生牡蠣を出されるが「体に毒だ」と食べない。別にこのところ流行っているノロウイルスによる食中毒を怖れてのことではなく、牡蠣は精が付くといわれているので、浜美枝と同衾できないなら「無駄に精力が付いてはかえって毒だ」ってこと。宇宙船消失の謎を解きに来たのか、女性といちゃつきに来たのかどっちだまったく。

 スペクターの火口基地に忍び込んだボンドは発見され、No.1ことブロフェルドとついに対面することになる。ようやくと顔が映ったブロフェルドを演ずるのはドナルド・プレザンス。『大脱走』で偽造屋をやっていた人で、良い役者だと思うが大悪党ブロフェルドのイメージとはちょっと違う気もする。
 そしてアメリカの宇宙船がまた強奪される直前にタイガー・田中と忍者軍団が基地を強襲し激しい戦いに。スペクターのオペレーターをやってるのは『ピンク・パンサー』シリーズでクルーゾー警部の召使いケイトー役だった人だよな?

 かくして阿蘇山は大噴火するが、スペクターの野望は打ち砕かれ米ソ戦争の危機は去った。
 だが、世界はまだ平和ではない。

「JAMES BOND WILL BE BACK "ON HER MAJESTY'S SECRET SERVICE "」

B000IU38JW.jpg『007 サンダーボール作戦』(1965) THUNDERBALL 129分 イギリス

監督:テレンス・ヤング 製作:ケヴィン・マクローリー 製作総指揮:ハリー・サルツマン、アルバート・R・ブロッコリ 原作:イアン・フレミング 脚本:リチャード・メイボーム、ジョン・ホプキンス、ジャック・ホイッティンガム 撮影:テッド・ムーア 音楽:ジョン・バリー テーマ曲:モンティ・ノーマン 主題歌:トム・ジョーンズ
出演:ショーン・コネリー、クローディーヌ・オージェ、アドルフォ・チェリ、マルティーヌ・ベズウィック、ルチアナ・パルッツィ、リク・ヴァン・ヌッター、バーナード・リー、ロイス・マクスウェル、デスモンド・リュウェリン

 監督が1、2作目を撮ったテレンス・ヤングに戻ったシリーズ第4作。この作品まで007シリーズは毎年制作されていたのだ。企画・脚本段階から考えると、1年という期間は映画制作にとって決して長くはない。むしろ短すぎる。1作毎に大作化、大予算化されたため、次作からおよそ2年ごとの制作ペースとなって現在に至る。上映時間も前3作が2時間以内だったのに、今作は129分と長くなっている。
 この作品の頃からショーン・コネリーはジェームズ・ボンドに俳優としての役柄が固定されるのを嫌って降板を口にするようになっていたそうだ。その後、ジェームズ・ボンド色を拭い去るまでかなり苦労したことを考えると、彼の考えは正しかったようだ。

 恒例になったオープニング前のアクションでは圧縮空気を使ったバックパック型の飛行装置でボンドが空を飛ぶ。飛び立つ前にはちゃんとヘルメットを被り安全対策もばっちり。同じ原理の装置が1984年のロサンゼルスオリンピック開会式で実際に飛んでいた。そもそもは敵地への潜入など軍事用に開発されたそうだが、飛行距離の短さや騒音から実用には至らなかったそうだ。
 計画段階では良くても、実際に作ってみると役に立たないってのはよくあることだ。

 オープニングタイトルは海中をイメージしていて、『サンダーボール作戦』を象徴した素晴らしい出来だ。トム・ジョーンズの主題歌が暑苦しい。

 敵として国際的犯罪組織スペクターが再び登場。律儀に幹部が全員顔を揃えて会議のシーンから始まる。財務報告までしているのだから、こいつら犯罪組織ではなく普通の会社を興していれば十分成功していたんじゃないかとも思える。
 組織に背いた者はその場で抹殺という鉄の規律。前にも書いたが、人的資産がいくらあっても足りないぞ、これは。ちなみに日本人らしき幹部もいる。『007は二度死ぬ』への伏線だったりしてな。
 今回の敵は左目に黒い眼帯を付けたNo.2ことラーゴ。トップのブロフェルドがNo.1だから、その名の通り組織での順位が2番目の腹心の部下と思われる。
 ラーゴは館のプールに鮫を何匹も飼っていて、任務に失敗した部下はそこに放り込まれて哀れ餌に。氷河期が終わりつつあると言われてもまだまだ就職・転職が厳しい昨今だが、幾ら職がなくてもスペクターには就職したくない。そもそもどうやって人材を集めてるんだか。『フロムA』?それじゃバイトか。

 NATOの爆撃機が演習中に消息を絶つ。機体には2発の原子爆弾が搭載されていた。
 もちろんこれはスペクターの仕業。原爆を返して欲しければ大金と引き替えだとイギリス・アメリカなどを脅迫してくる。
 保養所でカイロプラクティックを受けたり、女といちゃついていたりしているジェームズ・ボンドにも緊急呼集がかかる。MI6本部に駆けつけると会議の真っ最中。00要員の座る椅子が9個並んでいて、ジェームズ・ボンドは7番目の椅子に座る。他の00要員の顔ははっきりと映らないが、やはり001から009までの9人がいるようだ。009は加速装置が付いてたりするんだろうか。
 パナマ諸島に謎の答えがあるとにらんだボンドはかの地に向かう。
 何気に出演回数の多いCIAのフィーリックス・ライター(フェリックス・ライター)と合流して共同で捜査に当たる。
 南国の島に合わせていつもはスーツ姿のQがパイナップル柄の青いアロハシャツとショートパンツで登場。腕時計型のガイガーカウンター(もちろん防水)や小型の空気ボンベなどを支給する。手渡すだけだから部下にでも任せれば良さそうな物だが、本人が出張ってくるとは休暇も兼ねていたのだろうか。
 ボンドの助手である女性がラーゴに誘拐される中盤辺りは少々ダレるが、海底に沈んだ爆撃機をボンドが発見した辺りから面白くなってくる。
 終盤のマイアミ沖での水中戦は敵味方みだれての大激戦。ラーゴは当計画のトップなのに自らウェットスーツにアクアラングで前線に立つ。自分は安全な場所にいて口先ばかりの企業のトップは見習って欲しい物だ。
 ラストでソビエトから連れてこられた科学者がラーゴに協力させられていたのを裏切ってボンドたちを助け、岩島に衝突する船から海に飛び込むまでは一緒にいるのだが、救命ボートの上に姿はなく、飛行機によって救助されるのもボンドとボンド・ガールのドミノだけ。明らかに保身のための行動で同情すべき人物ではないとはいえ、博士はどこ行ったんだ?

B000IU38JM.jpg『007 ゴールドフィンガー』(1964) GOLDFINGER 109分 イギリス

監督:ガイ・ハミルトン 製作:ハリー・サルツマン、アルバート・R・ブロッコリ 原作:イアン・フレミング 脚本:リチャード・メイボーム、ポール・デーン 撮影:テッド・ムーア 作詞:レスリー・ブリッカス 音楽:ジョン・バリー テーマ曲:レスリー・ブリッカス、モンティ・ノーマン 主題歌:シャーリー・バッシー
出演:ショーン・コネリー、ゲルト・フレーベ、オナー・ブラックマン、シャーリー・イートン、セク・リンダー、タニア・マレット、バーナード・リー、ロイス・マクスウェル、デスモンド・リュウェリン、ハロルド坂田

 オープニングタイトル前の派手なアクション、Qの秘密兵器工房、回転するナンバープレートなど特殊装備満載のボンドカー・アストン・マーチンなど、007映画のフォーマットが完成したシリーズ第3作。
 監督がテレンス・ヤングからガイ・ハミルトンへとバトンタッチされ、よりスケールアップされた娯楽映画になった。

 今回の敵はゴールドフィンガー。スペクターとは関係なく、単独の悪党である。
 マイアミのプールサイドで行う累計で10,000ドル程度のカードギャンブルでもいかさまを使って勝ちに行く守銭奴だ。ゴールドフィンガーというのは実在する姓で、映画音楽で有名なジェリー・ゴールドスミスなど、ゴールド何某という姓はユダヤ系に多いそうだ。
 オープニング、頭にカモフラージュ用のカモの模型を付けウェットスーツを着たボンドが闇に紛れて水から上がってくる。敵のアジトに侵入すると、何故か部屋にドラム缶単位で置いてあったニトロにプラスチック爆薬をタイマー付きでセットする。
 そしてアジトを出たところでウェットスーツを脱ぐと、下には白のタキシードを着ていて、その胸元に一輪の赤いバラを飾る。この瞬間である、ある程度リアリズム志向であった007シリーズが、面白いためなら、観客を楽しませるためなら何でもありに変化したのは。
 前2作でのジェームズ・ボンドは任務のためならば眉一つ動かさずに敵を殺すことのできる殺しの許可証00を持つ殺し屋だったが、今作では一時の情事の相手を殺されて、その復讐を胸に誓う男となっている。
 ちなみにその女性は体中に金粉を塗られ、皮膚呼吸ができなくて窒息死したという殺害方法だが、実際には人間の呼吸の内で皮膚呼吸の割合は1%なので皮膚呼吸ができなくてもそれで死ぬことはないそうだ。とまぁこんなことや「ドン・ペリニオンは3.5度以下に冷やして飲まなければならない」といった雑学・うんちくをボンドが言うようになるのも今作から。

 ヒロインのボンドガールが誰なのかなかなかはっきりしないのでちょっと戸惑う。それらしき女性が2人登場するが、あっという間に殺されてしまう。ようやくボンドガールのプッシー・ガロアが登場するが、ちょっとオバさん。色っぽいけどね。
 悪役としてはゴールドフィンガーがふてぶてしいが、それ以上に手下のよろず屋(オッドジョブ)役のハロルド坂田が印象に残る。執事が着るような正装にシルクハット。この帽子のひさしの縁には鋼鉄製の刃が仕込んであって、石像の首だって切断する強力さだ。ハロルド坂田はアメリカで活躍していた日本人レスラー。下駄履きでリングに上がると、正義の味方役の白人レスラーに塩で目つぶしをしたり(相撲の塩をまくところからヒントを得たのだろうか)、負けそうになると土下座をして、相手が振り向いたところを後ろから襲いかかるなど、悪役レスラー(ヒール)だったそうだ。

 ゴールドフィンガーが企んでいるのは「グランド・スラム計画」。
 アメリカ合衆国政府が保有している150億ドルの金塊がフォート・ノックスという所に保管してある。41,000人のアメリカ陸軍が警備し、仮に襲撃したとしても重量がありかさばる金を全て持ち出すことなど不可能だ。
 だが、ゴールドフィンガーの真の狙いは金を盗み出すことではなかった。フォート・ノックスの地下保管庫内で核爆弾を爆発させ、金を放射能汚染させることで利用不可能にし、自分がすでに保有している金の価値を飛躍的に増大させようというのだ。使うのはコバルト爆弾なのでガンマ線放出量が多く、より放射能汚染が強い。
 当時は米ドルは銀行に持ち込むと同価値の金と交換することができ(1971年に廃止)、つまりは流通貨幣分の金をアメリカが保有しているということで、それがアメリカドルの価値を保証していたのだが、それも不可能になりアメリカ経済の破綻、ひいては世界的な恐慌にも繋がる。
 その計画内容を知ったボンドは果たしてグランド・スラム計画を阻止することができるのか。

 フォート・ノックス内でのボンドとよろず屋の戦いはもはや伝説。
 核爆弾のタイマーも普通ならば爆発1秒前で停止させるところを、あえて何秒か早くすることでハッタリの効いたギャグとなっている。このハッタリの醍醐味が007シリーズである。
 悪役側は何度もボンドを殺す機会があったのに、殺せるときに殺しておかないから・・・。オレが犯罪組織のボスになったらボンドの類は真っ先に殺すな。まぁ、ボンドが敵に回るような大成した悪人にはなれないだろうが。
 さぁ終わったなと思わせたところでまだどっきりがある。このタイミングも絶妙だ。

「JAMES BOND WILL BE BACK IN "THUNDERBALL"」

B000IU38JC.jpg『007 ロシアより愛をこめて』(1963) FROM RUSSIA WITH LOVE  115分 イギリス

監督:テレンス・ヤング 製作:ハリー・サルツマン、アルバート・R・ブロッコリ 原作:イアン・フレミング 脚本:リチャード・メイボーム、ジョアンナ・ハーウッド 撮影:テッド・ムーア 音楽:ジョン・バリー、テーマ曲:ライオネル・バート、モンティ・ノーマン 主題歌:マット・モンロー
出演:ショーン・コネリー、ダニエラ・ビアンキ、ロバート・ショウ、ペドロ・アルメンダリス、ロッテ・レーニャ、マルティーヌ・ベズウィック、ヴラデク・シェイバル、ウォルター・ゴテル、バーナード・リー、デスモンド・リュウェリン、ロイス・マクスウェル
 007シリーズ最高傑作との呼び声も高い第2作目。
 世界征服を狙う悪の秘密結社「スペクター」が本格的に姿を現し、ジェームズ・ボンド暗殺に乗り出す。スペクターの首領ブロフェルドは猫を抱いた首から下だけがスクリーンに映し出され顔は不明。キャストクレジットでも「?」となっている。『オースティン・パワーズ』など数々の作品でパロディ化された敵組織のボスのスタイルである。

 スペクターがロシアのイスタンブール領事館から暗号解読機を盗み出す計画を立てる。その計画に007を利用し、ついでに殺害してしまおうという一石二鳥の計画だ。
 殺し屋がジェームズ・ボンドに襲いかかるシーンから映画は始まり、いきなりボンドは殺されてしまう。えっ、マジっすか。
 驚きながらも、そんなはずはないだろと思ったらやはり違った。原作の小説が大人気だというのに、いきなり映画2作目で主人公を殺さないよな。
 Mがジェームズ・ボンドにイスタンブールでの秘密指令を伝えると同時に、Q(デスモンド・リュウェリン)がボンドに特殊なアタッシュケースと組み立て式狙撃銃を渡す。Qはその後シリーズを通してレギュラーになり、同じデスモンド・リュウェリンが『ワールド・イズ・ノット・イナフ』まで演ずることになる。デスモンド・リュウェリンが交通事故で亡くなったため、『モンティ・パイソン』で有名なジョン・クリーズが後を引き継いだ。
 本格的な特殊装備が登場したのは今作からだが、ボンドカーは登場しない。

 映画の看板に主演女優のイラストがあり、その口の部分に窓が開いてそこから逃げだそうとした悪党を狙撃して「口は禍の元」と言ったり、ボードに積んだ燃料ドラム缶を照明弾で爆破して「火のないところに煙は立たず」と言うなど、しょーもないボンドジョークは今作から登場する。ボンドってダジャレ系が好きなようだ。

 オリエント急行の個室でのロバート・ショウとの死闘から、小型ヘリコプターによる追跡、ボートでの逃走劇と終わりそうでなかなか終わらずアクションが続く。
 ついには失敗続きでこのままでは自分がブロフェルドから抹殺されると悟った老女幹部No.3自らが毒薬を塗ったナイフを仕込んだ靴でボンドに挑む。そのキックを防いだボンドは「これで蹴りがついた」とまたダジャレネタ。
 任務に失敗すると首領に殺されるってのはお約束だが、実際にこれをやると人材不足に陥るし、失敗を怖れて思い切った作戦が取れないと思うんだが、労務管理としてスペクターに欠点は多いんじゃないだろうか。

 エンディングには「JAMES BOND WILL RETURN IN "GOLDFINGER"」と書かれている。これまた今作以降のお約束。

B000IU38J2.jpg『007 ドクター・ノオ』(1962) DR. NO 105分 イギリス

監督:テレンス・ヤング 製作:ハリー・サルツマン、アルバート・R・ブロッコリ 原作:イアン・フレミング 脚本:リチャード・メイボーム、バークレイ・マーサー、ジョアンナ・ハーウッド、テレンス・ヤング 撮影:テッド・ムーア 音楽:モンティ・ノーマン、ジョン・バリー
出演:ショーン・コネリー、ウルスラ・アンドレス、ジョセフ・ワイズマン、バーナード・リー、ピーター・バートン、ロイス・マクスウェル、ジャック・ロード、アンソニー・ドーソン

 007シリーズの記念すべき映画化第一作目。
 もう44年も前の作品なんだね。そりゃショーン・コネリーも禿げるわけだ。オレが生まれる前の作品である。
 後に予算をかけた大作化していくシリーズだが、『ドクター・ノオ』は比較的低予算で作られているようだ。派手なアクションもあまりないし、大規模なセットが全編を通して登場するわけでもない。「竜(ドラゴン)」と呼ばれる怪物の正体は火炎放射器を搭載した装甲車。装甲車と言っても本格的なヤツではなく、普通の車にガワを貼り付けただけでちゃちな感じだが、明るいシーンでは使わず暗い闇の場面にしか登場しないのでそのちゃちさがばれない。その辺りはさすがテレンス・ヤングは上手い。

 ジェームズ・ボンドはカジノでバカラ?をやっているシーンで登場。いきなり煙草を吸っている。世界的な嫌煙傾向にあるので、今となっては問題視される映像だろう。2006年版『カジノロワイヤル』では煙草を吸わないんだっけか?実はまだ観ていないのだ。
 Mとジャマイカで起きた情報部員の失踪事件に関する打ち合わせの後、愛用のベレッタを取り上げられ、代わりにワルサーPPKを支給される。このワルサーティモシー・ダルトンボンドで若干の変更が加えられたPPK/Sになるが、「トゥモロー・ネバー・ダイ』でワルサーP99に交代するまで長きにわたってボンドの身を守ることになる。その割に、今作では活躍しないが。

 Qから支給される各種秘密スパイ道具が007シリーズの魅力の一つであるが、今作で登場するのはこのワルサーPPK/Sと特殊機能無しのボンドカー、そしてガイガーカウンターぐらい。この頃はまだ比較的地味な映画だったのだ。

 オープニング前の一大アクションもまだない。銃口から狙われたスーツ姿のジェームズ・ボンドがパッと横向きざまに拳銃を撃つ「ガン・バレル(銃身)」と呼ばれるタイトルバックはすでに今作から登場している。ただし、そこで流れる音楽は「デーデ、デーデ、デーデデッデ」の007のテーマではなく、ピコピコピコの電子音。そこからオープニングクレジットが始まり007のテーマが流れる。
 そして3人の盲人がシルエットで映し出され、レゲエ風の『3匹の盲目ネズミ』に音楽が変わる。その盲人たちが実際に画面に登場して本編がスタート。なかなか凝ったタイトルバックだ。

 ボンドガールがたまたま悪党が支配する島で貝殻を採取していたり、悪の親玉であるドクター・ノオが怪力を放つ鋼鉄の義手を持っていながらほとんど活躍しないままにあっけなく死んでしまうなど、気になる点はいくつかあるが、テンポ良くラストまで進んでいく。
 ドクター・ノオが最終的悪玉ではなく、さらにその裏にスペクターという悪の秘密結社が存在することも分かり、続編を感じさせる終わり方だ。ただし、エンドクレジットにはまだ「JAMES BOND WILL RETURN」の文字は現れない。

 終盤はドクター・ノオの原子炉で二人は死闘を繰り広げる。(そんなに大げさじゃないが)
 ジェームズ・ボンドは防護服を着ているが、原子炉を暴走させているし、炉の真上で格闘を行う。あれは絶対放射線で被曝してると思うんだが、どんなもんだろうか。
 最後は基地が大爆発してるし、カリブ海が放射能で汚染されたのではないだろうか。今ほど放射線や放射能に関する知識が乏しかったに違いない。

B0009Q0JZ6.jpg『エネミー・オブ・アメリカ』(1998) ENEMY OF THE STATE 132分 アメリカ

監督:トニー・スコット 製作:ジェリー・ブラッカイマー 脚本:デヴィッド・マルコーニ 撮影:ダン・ミンデル 音楽:トレヴァー・ラビン、ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
出演:ウィル・スミス、ジーン・ハックマン、ジョン・ヴォイト、リサ・ボネ、レジーナ・キング、バリー・ペッパー、ガブリエル・バーン、ジェイソン・リー、スチュアート・ウィルソン。ローレン・ディーン、イアン・ハート、ジェイク・ビューシイ、トム・サイズモア、スコット・カーン、ジャック・ブラック、ジェイミー・ケネディ、ジャッシャ・ワシントン、フィリップ・ベイカー・ホール

 各家庭に電話が引かれ、個人が携帯電話を持ち歩くようになった現代。もしも政府がそれら情報技術を利用して個人を監視し追跡したらどうなるか。予想を超える怖ろしさが描かれた作品だ。

 主人公のウィル・スミスは弁護士。妻にクリスマスプレゼントを買おうと立ち寄ったランジェリーショップで偶然出会った古い知人から知らないうちに携帯ゲーム機であるNECのPCエンジンGTをバッグに入れられる。知人はその直後に車に轢かれて死亡。動揺を隠せないウィル・スミスだが、それはほんの始まりに過ぎなかった。
 ゲーム機に差し込まれたPCカードには国家安全保障局(NSA)による要人殺害の現場ビデオが記録されており、ウィル・スミスがそのデータを持っていることに気づいたNSAは彼から職や財産を奪い、孤立させて脅迫する作戦を取ってくる。
 アメリカ合衆国を敵に回した男は翻弄されるが、NSAの情報局員だった元エージェントと出会い、彼の力を借りて反撃に出る。

 トニー・スコットの手腕が冴える作品で、132分と長目だが冒頭からラストまでだれることなく観ることが出来る。
 NSAは電話や携帯電話の回線を片っ端から盗聴し、部屋の中に仕掛けたビデオカメラや、コンビニなどの店にある監視カメラの映像も入手し、遥か上空からはスパイ衛星で撮影する。クレジットカードは停止され、銀行口座も凍結される。誇張された部分ももちろんあるのだろうが、政府という強大な相手を敵に回す怖ろしさがひしひしと伝わってくる。
 じっくりと考えるよりもひたすら疾走し続ける系統の作品で、マフィアが経営するレストランでの銃の突きつけ合いで緊張度は最大に達する。同じトニー・スコット監督(脚本はクエンティン・タランティーノ)の『トゥルー・ロマンス』のラストも同じような構図であった。

 オレの生活だって、電話と携帯電話、それから電子メールを傍受されると交友関係から趣味、思想などのかなりの部分がばれてしまう。あんたなんか盗聴してどうするのと思うだろうが、その相手を選ばないのがハイテク技術の怖さだ。いや、すでに監視されているのかもしれない。
「そこに隠れているのは分かってるぞ。出てこい」と叫んだら、押し入れから人が・・・

 ジーン・ハックマンにジョン・ヴォイト、ガブリエル・バーンなど曲者俳優が脇を固めてリアリティを高めている。ウィル・スミスのテンションも抑えめ。

『GAME KING 高橋名人VS毛利名人激突!大決戦』(1986) 29分 日本

監督:神澤信一 製作:山本又一郎 プロデューサー:鈴木清 企画:工藤裕司、大里幸夫 構成:岩井田利治、渡辺浩弐 撮影:阪本善尚 美術:松原裕志 音楽:高橋洋一
出演:高橋利幸、毛利公信、志賀正治

 しばらく続いたゲームが原作である作品特集も今回で終わり。
『モータルコンバット』など取り上げなかった作品もいくつかある。『ポケットモンスター』や『デジモンアドベンチャー』などアニメも含めるとさらに数は増える。そちらは多少は観ているがちょっと守備範囲の外だ。

『GAME KING 高橋名人VS毛利名人激突!大決戦』は松竹系で公開されたアニメ『スーパーマリオブラザーズ』の同時上映だった短編映画。厳密にはゲームの映画化ではなく、当時人気のあった高橋・毛利両ゲーム名人がシューティングゲームで対決する様を描いた、ドキュメンタリー風映画である。
 1秒間16連射で有名だったハドソンの高橋名人に主なスポットが当たっており、修行のシーンまである。なんと、親指の連射でスイカを真っ二つだ。すげぇ!でもゲームにどう役に立つのかちと不明だ。

 後半は息詰まるゲーム対決。連射もすごいが、敵の攻撃をすり抜ける自機の操作もすごい。どんな反射神経だ。
 今後ともヴィデオゲームの歴史は続くだろうが、ゲーム対戦の様子を描いた作品はもう登場しないだろう。
 もしも作るとしたらシューティングゲームではなく『ヴァーチャファイター』などの格闘アクションゲームになるのではないだろうか。そこらのゲームセンターでも「あっありえないっ!」技を繰り出すプレイヤーがいるが、全国のトップレベルともなるとさぞやすごいことだろう。オレは観に行かんが。

 当時、いかにファミコンが社会現象として大きな存在だったかがうかがえる作品だ。
 そうか、高橋名人は高橋利幸というフルネームだったのか。オレはてっきり名人が下の名だと思っていた(嘘付け)。毛利名人は毛利公信と戦国武将のような名前で強そうだ。

B000E1KMCQ.jpg『殺人ゲームへの招待』(1985) CLUE 88分 アメリカ

監督:ジョナサン・リン 製作:デブラ・ヒル 製作総指揮:ジョン・ピーターズ、ピーター・グーバー、ジョージ・フォルシー・Jr、ジョン・ランディス 原案:ジョン・ランディス、ジョナサン・リン 脚本:ジョナサン・リン 撮影:ヴィクター・J・ケンパー 音楽:ジョン・モリス
出演:レスリー・アン・ウォーレン、ティム・カリー、アイリーン・ブレナン、マデリーン・カーン、クリストファー・ロイド、マイケル・マッキーン、コリーン・キャンプ、マーティン・マル、リー・ヴィング

 原作の『Clue:クルー』は、ゲームはゲームでもビデオゲームではなく、『人生ゲーム』や『モノポリー』と同じくボードゲームの一つ。そんな物まで実写映画化されているから驚きだ。
 ある邸宅で人が殺され、招待客の中に犯人がいる。殺人者、場所、狂気の3枚のカードが封筒に入っており、プレイヤーは探偵となってゲームを進め、その3枚のカードの内容を推理して正解すれば勝ちというゲームだ。
『ビルとテッドの地獄旅行』では主人公二人が死神と対決することになるが、その手段が潜水艦ゲームやツイスターなどのファミリーゲーム。その中の一つにこの『クルー』があった。日本では知名度が低いが、アメリカでは有名なのだろう。そもそもそうでなきゃ映画化されないか。

 映画のストーリーは基本的にゲームに則っている。
 ある雨の夜、豪邸に招待された6人の客人。それぞれマスタード大佐やミスターグリーン、ミセスホワイトなどと仮名を名乗らされる。どうやらそれぞれある弱みがあって、それを掴んだ男から脅迫されているようなのだ。
 そして突然明かりが消え、数秒間の暗がりが去った後には、床の上にその脅迫者の死体が転がっているのだった。一体犯人は誰なのか?

 作品のカラーとしては、同じく豪邸に客人が招待され、そこで殺人事件が起きる『名探偵登場』(1976)に似ている。もっとも出来はあちらの方がかなり上だ。
 この作品が他の推理物映画と違うのは、最後まで観て犯人が判明してもそれが正解とは限らないことだ。もう一度観てみると、今度は別の人物が犯人と言うことになっているかも知れない。
 えっ?そんなことがあるはずないって?だったらもう一度観てみよう。ほら、前2回とまた犯人が変わった。
 そう、この映画には合計3つのエンディングがあるのだ。ラストになってやたら駆け足で謎解きが始まるのだが、その最後の5分のフィルムが3つのリールに分かれていて、どのリールを上映するかでエンディングが異なる。マルチエンディングの映画なのだ。
 実に画期的、実験的試みである。ただし、日本で公開されたときは一つのエンディング固定で上映された。DVDでラストに収録されている「真のエンディング」がそれである。それじゃ意味ねーじゃんと、当時映画館で強く思った物だ。
 まぁ、それほど出来の良い作品ではないので、エンディングコンプリートのために映画館に通い詰めはしなかっただろうが。

 オレの知っている限りではボードゲームの映画化はこの『殺人ゲームへの招待』だけだ。『モノポリー』辺りは『投資家バブルお父さんのガッポリウハウハ人生orズッポリ泥沼人生』なんてタイトルで映画化できないだろうか。面白いかどうかは別だが。

 後におもちゃ屋で見つけて、どんなゲームか興味があったので購入。大学のサークルに持っていって部室で何度か遊んだ。そんなには面白くなかったように思う。
 ゲームとしては『モノポリー』や雑学クイズゲームの『トリビア』(『スパイ・ライク・アス』のラストでやってたヤツね)、『UNO』なんかの方が人気があって盛り上がった。って、どんな大学生だよ、オレらは。・・・まぁどのゲームも持ち込んだのはオレだが。

B0009OATOO.jpg『ダンジョン&ドラゴン』(2000) DUNGEONS & DRAGONS 107分 アメリカ

監督:コートニー・ソロモン 製作:トーマス・M・ハメル、キア・ジャム、コートニー・ソロモン 製作総指揮:ネルソン・レオン、ジョエル・シルヴァー、アラン・ゼマン 脚本:トッパー・リリエン、キャロル・カートライト 撮影:ダグラス・ミルサム SFX:ジョージ・ギブス 音楽:ジャスティン・ケイン・バーネット VFX:ジョアン・コリンズ・カーリー
出演:ジェレミー・アイアンズ、ジャスティン・ホウェリン、マーロン・ウェイアンズ、ゾーラ・バーチ、リチャード・オブライエン、ブルース・ペイン、ゾー・マクラーレン
 古典テーブルトークロールプレイングゲーム(TRPG)である『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の映画化。昔は『ダンジョン&ドラゴンズ』って呼んでなかったか?映画のタイトルでは「s」が全部消えた。まぁいつものことだが、ダンジョン(迷宮)にしろ山のような数のドラゴンにしろ複数だろうに。

 TRPGとはパソコンやゲーム機を使わずに、テーブルの上を舞台にしてダンジョンマスター(いわゆるゲームマスター)が世界とストーリーを作って司会進行役を行う。そこでプレイヤーが人間、エルフ、ドワーフといった種族と戦士、僧侶、魔法使いなどの職業を決めてキャラクターを作り、その役を演じてゲームを進める。役割(ロール)を演ずる(プレイ)からロールプレイング。
 ドラクエやファイナル・ファンタジーだとプレイヤーは1人でパーティー全体を操作するが、TRPGでは自キャラ以外も人間が演じている。アニメにもなった『ロードス島戦記』はもともとパソコンゲーム誌『コンプティーク』の誌上で連載されたTRPGの紹介記事だった。わいわいがやがや楽しんでいる様子が感じられて面白そうだった。そのゲームも『ダンジョンズ&ドラゴンズ』をベースとしていたらしい。
 最近は『ラグナロク・オンライン』や『FFXI』などMMORPGとしてインターネット上で展開されるRPGが人気だ。これだと使うのはパソコンやゲーム機だが、その世界には他人が操作するキャラクターが多数いて、コミュニケーションゲームでもあるようだ。興味はあるのだが、どうにも敷居が高い感じであまりやったことはない。

 映画は『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのスケールを小さくして、ストーリーをお気楽にして、予算を減らしましたって感じ。
『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の世界観には『指輪物語』が大いなる影響を与えているとのことなので、似ているのは当たり前だろう。
 主人公のリドリーは若き盗賊。黒人の相棒と組んで、ちんけな盗みを繰り返している。そんな彼らがある日、魔法大学へと盗みに入る。そこで一枚の地図を盗み出したことから大冒険に巻き込まれることになる。
 盗賊に魔法使い(メイジ)に戦士。種族は人間にドワーフにエルフまで。もちろんドラゴンも空を飛ぶが、こいつらは鼻の穴のでかい豚顔で醜いだけであまり格好良くない。オレがこれまで見た中で、一番デザインが良かったのは『ドラゴンスレイヤー』(1981)のドラゴンだ。あれは凶悪そうで良かった。
 主人公の盗賊は冒険の中で自らが持つ秘められた力と運命に気づくことになる。勇者を捜していたら自分が勇者だった。ドラクエにもあったなぁ、そういうの。
 仲間に加わる女性エルフは黒人が演じている。ダっ、ダークエルフ?!

 ジェレミー・アイアンズが悪の宰相を演じているが、髪を二八分けにしていてあまり邪悪そうには見えない。なんか、真面目でかちっとした人って感じ。背も低そうに見えるんだよな。

 ラストの主人公と敵の行動隊長とによる剣での戦いは、『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』のラストのよう。黒ずくめの格好をした悪の宰相と戦い初めてからは、ジェレミー・アイアンズがリドリーに向かって「私がお前に父だ」と言い出すんじゃないかとハラハラした。
 それをいうと、ドラゴンとドラゴンの空中戦もスター・ウォーズのドッグファイトにそっくりだけどな。

 比較的予算はかかっていないだろうが、CGIなどのSFXはなかなかがんばっているし、世界観もしっかり作られている。だが、演出がそれを活かすだけの力を持っていない。もったいなし。

B0002L4COM.jpg『バイオハザード』(2001) RESIDENT EVIL 101分 ドイツ/イギリス/アメリカ

監督:ポール・W・S・アンダーソン 製作:ポール・W・S・アンダーソン、ジェレミー・ボルト、ベルント・アイヒンガー、サミュエル・ハディダ 製作総指揮:ヴィクター・ハディダ、ダニエル・クレツキー、ロバート・クルツァー、岡本吉起 脚本:ポール・W・S・アンダーソン 撮影:デヴィッド・ジョンソン 音楽:マリリン・マンソン、マルコ・ベルトラミ
出演:ミラ・ジョヴォヴィッチ、ミシェル・ロドリゲス、エリック・メビウス、ジェームズ・ピュアフォイ、マーティン・クルーズ、コリン・サーモン

『フィフス・エレメント』(1997)のミラ・ジョヴォヴィッチがまた脱いだ。美人なのに脱ぎっぷりの良いこと、胸は小さめだが体の線のキレイなこと。うれしいなぁ。・・・ってオヤジかオレは。

 カプコンの家庭用ゲーム『バイオハザード』シリーズの映画化。原作のゲームは『バイオハザード1』をアレンジした物。
 『バイオハザード』は三人称シューティングゲームTPSだ。ドッカンバッカン撃ちまくるというよりも、謎を解きながら先へと進んでいくアドベンチャーゲーム的側面が強い。1作目だけはプレイしたが、あれこれ難しいし、セーブポイントが少なく制限があるので苦労した。

 アンブレラ社という巨大企業がある。電機製品など数多くの商品を発売しており、9割の家庭で使われているという。そのアンブレラ社には裏の顔があった。最新兵器や遺伝子改造による細菌兵器の製造なのである。
 500人の研究者が働き細菌兵器を開発している地下研究所で事故が発生。閉鎖された研究所に救助に向かった特殊部隊は、その中で人間の姿発見する。しかし、それは生きた死人だった・・・

 特殊部隊の隊員たちと、記憶を失った若い男女、そして刑事だと名乗る男。
 ちょっと人数が多すぎてキャラクターの整理が付いていない。特殊部隊は10名ほどの構成である。救助チームの人数がそんなに少ないはずはないのでそれはまあいい。殺され要員として活躍してもらわなければならないし。だが、あるシーンでまとめて同じ罠で4人殺されてしまうのはあまりよろしくない。サイの目切りレーザーの所だ。隊長だけは生かして残しておけば、後半での使い道もあっただろう。

 ゾンビどもはジョージ・A・ロメロの『ザ・デッド』系のゾンビよりは元気がよいが、『バタリアン』みたいに全力疾走するわけではない。武器を持ったまま歩くなど、ある程度の知能はあるようだ。ウイルス兵器によってゾンビとなり、最後に残ったたった一つの本能である食欲を満たすために襲いかかってくるのだ。
 人間がゾンビになるんだから、犬だってゾンビになる。ということでドーベルマンゾンビも登場。何故かは知らないが犬のゾンビは生前と同じような速度で駆け回る。実験のシーンでは白いウサギにもウイルスを注射していたが、ウサギゾンビは登場しない。しても弱そうだもんな。
 いや・・・いやまてよ。『モンティ・パイソン ホーリー・グレイル』の殺人ウサギみたいに最強の敵キャラかも知れないぞ。
 ゾンビどもを殺しながら研究所からの脱出を目指すのだが、銃での戦いがあまり燃えない。正直いってアクションの描き方が上手くない。この点については『DOOM』の方が上だ。発砲数も少ないが、それよりも工夫が足りない。その分を、ラストのミラ・ジョヴォヴィッチとモンスターの格闘戦である程度持ち直してくれるが、『バイオハザード2』(映画版)でのそれと比べると迫力不足。

 狭い通路などの閉鎖空間が多く、山ほどゾンビが登場したように見えても、実際のゾンビ役者はそれほど数がいないようだ。印象よりも低予算な映画かも知れない。
 次回へ引くぞっという終わり方をして、実際に続編の『バイオハザード2』も制作された。そちらもどうやら3作目もありそうな終わり方をする。

B000FCUY68.jpg『DOOM ドゥーム』(2005) DOOM 104分 アメリカ/チェコ

監督:アンジェイ・バートコウィアク 製作:ジョン・ウェルズ、ロレンツォ・ディボナヴェンチュラ 製作総指揮:ジョン・D・スコフィールド 原案:デヴィッド・キャラハム 脚本:デヴィッド・キャラハム、ウェズリー・ストリック 撮影:トニー・ピアース=ロバーツ プロダクションデザイン:スティーヴン・スコット 編集:デレク・G・ブレッシン 音楽:クリント・マンセル
出演:カール・アーバン、ザ・ロック、ロザムンド・パイク、ラズ・アドティ、デオビア・オパレイ、ベン・ダニエルズ、デクスター・フレッチャー、リチャード・ブレイク、アル・ウィーヴァー、ヤオ・チン

 1993年に発表されたPCゲーム『DOOM』シリーズの実写映画化。FPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)と呼ばれる一人称視点シューティングゲームだ。主人公の視点で通路などを進んでいき、銃などで敵を倒していく。NINTENDO64の『007 ゴールデンアイ』なんかがそうだ。って、古いな。
 アメリカでは大人気のジャンルだそうだ。オレも『バトルフィールド・ベトナム』というPCゲームに一時ハマっていたが、マウスとキーボードを駆使する操作方法には苦労した。FPSは難易度も高めの作品が多い気がする。なんでもアメリカ人のコアなゲーマーはスキルを含めていろいろすごいらしいからな。
 webで予告編を観たときは、ゲーム通りに一人称で未来的な建物の中を突き進んでいるシーンがあって、まさか戦闘シーンは全部これじゃないだろうなとある意味期待していたのだが、裏切られてほっとした。

 DOOMとは破滅とか悪い運命とかいった意味。
『ファンタスティック・フォー』の悪役の名が「Mr.ドゥーム」だったし、『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』の原題は『INDIANA JONES AND THE TEMPLE OF DOOM』だったな。
 いやいや余計なことばかり書いて、どぅーむすいません、なんつったりして。あたしがこうやったら笑ってくださいよ。体だけは大事にしてください、ほんと大変なんすから。

 林家三平は遥か過去になった近未来。地球上から火星へのワープホールが発見され、そして人類は火星ですでに滅びた文明の遺跡を発見。ワープホールは火星人類が過去に作った物らしい。そして基地を作り研究者などが駐留して遺跡の研究を進めていた。
 ある日、基地から救難信号が発信され、主人公たち海兵隊の小隊はワープホールで救助に向かう。そして基地内を探索している内にモンスターに遭遇し、戦うことになるが、そのモンスターの正体とは・・・

 小隊を率いる軍曹を演じているのがザ・ロック。「忠実たれ」のタトゥーが入った背中からの登場で、どこかで見た絵面だなと思ったら、『ケープフィアー』のロバート・デ・ニーロの登場シーンが確か同じような感じだったはず。終盤になって、軍人としての任務に忠実なあまり邪悪な面が表に出てくるが、なるほどそれをどことなく予感させる。ヒーローではなく最終的には敵になる。『ハムナプトラ2』での特別出演以来の悪役だ。
 サーチandデストロイの指令通り、時にはモンスターと戦いながら基地内を探索していき、次第に謎が解けていく。あえて言うならば『エイリアン2』+『バイオハザード』といった感じ。ゲームの主人公も海兵隊員で、火星基地からの脱出のために戦うと言った内容だとか。ゲームの方はやってないが、設定は比較的忠実なようだ。

 ラスト近く、オリジナルゲームファンお待たせの一人称による戦闘シーンが開始される。
 これが延々とあって、実に5分ほどの長さ。銃に爆薬、ついにはチェーンソーまで振り回す。オレはレンタルDVDで観たが、これが劇場の大スクリーンだったら3D酔いするぞ。
 エンドクレジットの表示も無意味にFPS仕様で、笑ってしまった。
 ラストの肉弾格闘アクションがなかなか燃える出来だ。相手を横にして肩に担ぎ、グルグル振り回してから放り投げる、技の名前は分からないがそんなプロレス技も登場する。

B00005NJPN.jpg『ときめきメモリアル』(1997) 91分 日本

監督:菅原浩志 プロデューサー:臼井裕詞、関口大輔、手塚治、河瀬光 企画:重村一、久板順一朗 脚本:岡田恵和 撮影:高間賢治 美術:和田洋
出演:岡田義徳、榎本加奈子、中山エミリ、矢田亜希子、山口紗弥加、池内博之、吹石一恵、井澤健、袴田吉彦、大石恵、岡まゆみ、小柳友貴美

 コナミの青春シミュレーションゲーム『ときめきメモリアル』の映画化作品。
 といっても、ゲームの方はやってないのでオリジナルへの忠実度は知らない。どうやらあまり関係ないようではある。
 いわゆるギャルゲーに分類して良いのかな?ギャルゲーをやらない訳じゃないが、あの絵は受け付けなかった。ちなみに『トゥルー・ラブ・ストーリー』シリーズはやった。いやまあそれは関係ないが。

 学校の人気者美少女4人とお近づきになろうと、主人公の少年が夏休みの期間中同じ海の家でバイトをするというお話。
『ときめきメモリアル』というこっぱずかしいタイトルに相応しく、こっぱずかしい内容だ。
 まぁ、青春ってのはこっぱずかしいもんだ。多くの人は、今となっては顔から火が出るような思い出の一つや二つはあるだろう。オレにだって、「あんなことはもう出来ません。言えません」ってことはいくつかあった。恋愛関係は特にな。
 だが、そこで恥ずかしいとかひねくれだとかを捨てて、本気でその恥ずかしいことをやれるってのが青春時代だ。

 てっきりビデオオリジナル作品かと思ったら、東映系でちゃんと劇場公開された劇映画だった。さすがに劇場では観ておらず、ずいぶん前にビデオ屋で見かけて何となく借りてきた。
 オレは途中で「勘弁してくれ?」だったが、当時の同居人は面白そうに見ていた。普段借りてくるアクションやホラーは不評だったが、「たまには良い作品も借りてくるじゃないの」と言われたような記憶がある。
 女の子たちは当時のアイドルらしいが、中山エミリがどっかで名前を見たぐらいであとの娘たちは知らない。日本の芸能界の知識はほんとからっきしだよ、三級品。

 ゲームのラストに登場するという伝説の樹での告白?はあった。「?」が付いている理由は1対1じゃないからだ。ゲームでもそうらしいが、いよいよ卒業という間際になって告白しても、交際する期間がないんじゃないかなぁと個人的には思ったりもする。

sml_59690006_1.jpg『スーパーマリオ/魔界帝国の女神』(1993) SUPER MARIO BROS. 105分  アメリカ

監督:ロッキー・モートン、アナベル・ヤンケル 製作:ジェイク・ロバーツ、ローランド・ジョフィ 脚本:エド・ソロモン、パーカー・ベネット、テリー・ランテ 撮影:ディーン・セムラー 編集:マーク・ゴールドブラット 音楽:アラン・シルヴェストリ
出演:ボブ・ホスキンス、ジョン・レグイザモ、デニス・ホッパー、サマンサ・マシス、フィッシャー・スティーヴンス、リチャード・エドソン、フィオナ・ショウ

 任天堂が生み出した世界的ゲームキャラクター「マリオ」が映画になった!
 たしか新宿は歌舞伎町の映画館で観た記憶がある。
 ボブ・ホスキンスが口ヒゲに赤のツナギを着て、そのまんまマリオのポスターを見ててっきりバカ映画だろうと思ったら、世界観からしっかり作られた本格的作品だったので驚いた。
 後になって監督が『マックスヘッドルーム』の人だと知って納得した。クッパ(デニス・ホッパー)が支配する地下世界のダークな雰囲気が、『マックスヘッドルーム』の未来世界とどこか似ている。

 邦題は『スーパーマリオ』だが原題は『SUPER MARIO BROS.』となっている通り、ちゃんと弟のルイージもいる。兄弟で配管工をやっているという設定で、マリオの赤、ルイージの緑のツナギは作業用の制服だ。二人にあの服装をさせるためにあれこれ設定を考えたに違いない。
 それとも、ゲーム自体が配管工という設定か?ゲーム『スーパーマリオブラザーズ』には地下に通じる土管とか下水のような空間があるしな。
 ヒロインの名前はピーチ姫からデイジーに変更。マリオではなくルイージの恋人という設定だったかな?予告編でルイージが「デイジー!」と叫んでいた気がする。
 そして悪の怪物クッパ大王を演ずるのは我らがデニス・ホッパー。この人も仕事を選ばない人だ。生き残った恐竜が進化して地底に帝国を作っていて、その親玉がクッパ大王。普段は人間形態だが終盤には恐竜に変身。威勢良く大暴れだ。
 クッパ大王やその手下たちを、武器で武装してやたらとジャンプできるシューズを履いたマリオとルイージがばったばったとなぎ倒す。ここら辺はちゃんとゲームを再現してくれている。
 あまり役には立っていないが小型恐竜のヨッシーも登場する。ちょっと造形がリアルすぎ。

 個人的推奨年齢は割と高め。小学校高学年ぐらいでないと退屈するかも知れない。
 この文章を書くために10数年ぶりに観直そうと思ったが、レンタル屋にはビデオしかなかった。どうやらDVDにはなっていないようだ。このところビデオデッキの調子が悪くて、具体的にはテープの下側を巻き込んでヨレヨレにしてしまうことがある。自分のテープならともかく、借りてきたテープを痛めてしまってはいけないのであきらめた。
 今さらビデオデッキを買ってもなぁ・・・と思案中。

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