『赤ちゃん教育』(1938) BRINGING UP BABY 102分 アメリカ
監督:ハワード・ホークス 製作:W・S・ヴァン・ダイク二世 脚本:ダドリー・ニコルズ、ヘイジャー・ワイルド 撮影:ラッセル・メティ 音楽:ロイ・ウェッブ
出演:ケイリー・グラント、キャサリン・ヘプバーン、チャーリー・ラグルス、メイ・ロブソン、バリー・フィッツジェラルド、ウォルター・キャトレット、フリッツ・フェルド、ウォード・ボンド、ジャック・カーソン
ケイリー・グラントはニューヨークにある博物館の学者。今日も今日とてブロントザウルスの未完成骨格標本を前に、さてこの骨はどこの骨かなと考え込んでいる。ちなみに、翌日には博物館の秘書である女性と結婚する予定だ。
博物館にある老婦人が100万ドルの寄付を検討しており、どの代理人である弁護士との接待ゴルフに出かける。アメリカにも接待ゴルフがあるんだ。
そのゴルフ場で彼のボールを自分のボールだと思い込んだ若い女性(キャサリン・ヘプバーン)とボールのことで揉め、さらに彼女は彼の車を自分の車だと思い込んで乗っていってしまう。
こうして、木訥で真面目一方、さらには対人関係に多少不器用なケイリー・グラントは、じゃじゃ馬で調子外れでちょっとイカれたお転婆娘キャサリン・ヘプバーンにことある毎に出会い、そして振り回されることになるのだが、さてこの行く末はどうなることやら。
『赤ちゃん教育』というタイトルなので『スリーメン&ベビー』のような赤ん坊が登場する映画を想像されるかも知れないが、この作品に赤ん坊は出てこない。代わりに出てくるのはベビーという名前の豹だ。
バスルームに豹がいるわよ、とヘプバーンに言われて「どうせ剥製だろ」と入っていったグラントは本物の生きた豹に出くわして思わず叫び声をあげる。
「うっひょー」・・・ごめん
ベビーは人に馴れた大人しい豹で音楽が好き。あなたもペットにどうですか?
「教育」とはなっているが、BRINGING UPは辞書によると「しつけ」なので、「赤ちゃんのしつけ方」とでもいったタイトルになるのであろう。育児映画のようだが、実はロマンスコメディというのも洒落ている。
ヘプバーンにベビーを押しつけられそうになったグラントは、彼女と一緒に豹の元の持ち主である彼女の兄の住むコネチカットの邸宅に向かう。
その途中で、ヘプバーンが運転する車が脇見運転のためニワトリやアヒルを積んだ車に追突してしまう。
路上で暴れ回るニワトリたち。それを見てベビーが襲おうと車から出て行こうとする。尻尾を引っ張って止めようとする二人。だが、ついに飛び出していくベビー。
そして次のカットはすでに走っている車の中。グラントは羽毛まみれになっている。このギャグのタイミングは完璧で、大笑いしてしまった。
同じ種類のギャグだと、4年がかりで発掘されたブロントザウルスに一本欠けていた最後の骨が見つかり、それをグラントが持ち歩いていたのだが、ひょんな隙から邸宅の犬がくわえていってしまう。
骨はどこだと探し回り、そうだ犬がこの部屋にいたんだわと庭に飛び出すと、鼻面を土で汚した犬が今さっきどこかに骨を埋めたばかりの様子。
「骨はどこに埋めたの」と追求すると、植え込みの辺りを掘り始める。やった骨か!と思いきや出てきたのはブーツの片割れ。
そしてカットが変わると、広大な庭があちこち穴だらけ。こちらのタイミングも完璧。
邸宅にはヘプバーンの叔母がいたが、じつはこの叔母こそ100万ドルの寄付を検討している夫人。そして狩猟を趣味とする元軍人が加わったところに、納屋に閉じこめておいたベビーが抜け出したからこれまた大騒ぎ。だが、これではまだ足りないとサーカスからどう猛な豹まで逃げ出してくる。
でもって、これでも足りないだろうと誤解誤解の連続でみんな次々に保安官に逮捕され留置所に入れられてしまう。
とにかく次から次へと騒動が起こって、困ったことはどんどん増え、みんな自分勝手な行動を取るばかりで、映画はドタバタしながらひたすら走り続ける。
休む暇もないので、人によっては疲れてしまうかも知れない。
スクリューボール・コメディの代表的一本で、ハワード・ホークスを語る上でも避けて通れない作品である。
スクリューボール・コメディなので二人はさんざん衝突したり口げんかをしたりしながらも、最後には恋に落ちる。
遅刻しそうで通学路を走っていたところ、曲がり角で見かけない女生徒にぶつかりケンカになる。で、転校生を紹介すると現れたのがその女生徒。なんだかんだとケンカをしながらいつの間にか互いを好きになっているというやつだな。昔の少女マンガか。
ラストのブロントザウルス骨格大崩落のシーンで、ドリフ『8時だよ全員集合』の前半コントの終わりでかかる「ちゃららちゃららら、ちゃらららららら~」という曲が頭の中で鳴り響いたのはオレだけか。
ちなみにブロントザウルスは先に発見命名されていたアパトサウルスと同一種であることが近年解明され、ブロントザウルスという種は消え去ってしまった。