冬に撮影された『茶の間の生活』だが、ラッシュを観て駄作だと放り出したため、1989年度の後期上映会には間に合わなかった。結局、1990年度前期上映会にての公開となった。その分、時間をかけてじっくり編集作業が行えたというのはある。
上映会は初夏なのに、映画内の登場人物はセーターやコートなどの冬服姿。ちょっと違和感があるが、まあこれはしょうがない。
ちなみに『茶の間の生活』というタイトルにあまり意味はない。1作目の『ダイヤモンド・ゲーム』がカタカナだったので、日本語タイトルにしようという意図で付けられた物。
上映後のアンケートや機関誌の『ル・シネマ』での評は大きく二つに分かれた。
新入生などからはどちらかというと評判が悪く、上級生やOBのウケは良かった。
ゴダールなどのヌーベルバーグやジム・ジャームッシュのニューヨーク・インディペンデンス映画などに影響を受けまくっていた時期なので、観客に対してある程度映画を観ていることを求める作品ではある。シーンとシーンが黒味フィルムで繋がっている所など、もろ『ストレンジャー・パラダイス』。
感想としては、「ストーリーがよく分からない」というのが多かった。
これについては、確かにその通りだとは思う。場面場面、シーンシーンを描くのがメインで、ストーリーを描くのが目的ではないので、分からないで正解なのだ。
主人公たち三人の関係も、まぁ友人だろうとしか判断するしかないし、眼鏡が書いている文章も何なのか分からない。作家なのか、ゼミの論文でも書いているのか。
映画を観ている限りでは推測するしかないが、一応脚本家の考える設定としては、
眼鏡は締め切りを控えた作家で、その日は誕生日。ノッポとチビはその誕生日を祝いに来た。結果、執筆を邪魔する形になる。
ついにはノッポとチビは部屋から追い出されてしまうが、原稿を書き終えた眼鏡は一緒に遊ぶため外へ出て行く。ということになっている。
前半は映像的にも面白いが、室内に入ってしまうと、これという冴えたカットがない。
これは自分でも感じていた弱点だ。もともと映像的なことは弱点だと思っているので、放置された事故車や赤と黄色、青のコントラストが鮮やかな自販機など、どうとってもそれなりに絵になるロケ地を探してきたが、部屋の中に入ってしまうとくすんだ印象になってしまっている。
もう少し小道具や意外な構図で盛り上げたかった。
爆笑はなかったが、クスクス笑いは全編を持続していたので満足。
オレにとって映画の師である(といっても、何人も師はいるのだが)U谷さんが、アンケートでかなり褒めてくれたので、これまた満足。
前作はやりたいことと出来ることの差が大きかった。私立探偵やアルセーヌ・ルパンという登場人物もコメディとはいえ無理があった。今回は、自分の出来ることを無理なく自然体で作れたと思う。