さて、いつまでも一息入れていると、この人らはずーっと一息しっぱなしなので、適当なところで撮影再開。
眼鏡がラジカセを投げるシーンを先に撮る。このラジカセは中古だが本物。
後は素直に脚本の順番に撮っていく。
6畳ほどの部屋なので、カメラポジションも限られる。普通に撮っていればまぁ普通な映像が撮れるので、構図やらが苦手なオレにもなんとかなる。
もちろん、すごいヤツはその限られて状況で普通なら考えつかない映像を創り上げてくるが、あれはもう天性のようなものかもしれない。
セットは姉が使っていたガラス天板のコタツ。その上に、ミカンを積んだ器を置く。様式美だ。本当はガラス天板ではなく、裏に緑の布が張られたような古いオーソドックスなコタツが良かったのだが、用意できなかったので妥協。
代わりと言ってはなんだが、ノッポとチビがババ抜きをやるシーンでは、ガラス越しに下から撮った絵を入れた。いかにもであまり気に入ってないが。
誕生日の集団が乱入してくるシーンのみキャストを揃えて別の日に撮影。ただ、その日はノッポ役の先輩が都合が付かなかったので、カメラ向きで上手くごまかした。そう、言われないといないのに気づかないと思う。
ちなみにこの「停電になって、散々苦労してロウソクを点けたら、ハッピーバースデーを歌う連中が登場してロウソクを吹き消してしまう」というギャグは、クレイジー・キャッツの『シャボン玉ホリデー』で使われた物。さすがに放送では観ていないが、小林信彦のコラムで読んで、「よし、いつかオマージュしてやろう」と思っていた物。ある先輩にだけ理解してもらえた。
ビールを飲むシーンではまだノンアルコールビールが一般的に売られていなかったので、本物のビールを使った。
ゴクゴクと飲んで部屋の中を踊り回ってもらう。にぎやかさが感じられて上手い演技だ・・・違う、演技じゃない。この人ら本当に酔っぱらっている。
一気のみの後ですぐ身体を動かしたのだからアルコールも回るという物だが、酔っぱらうともう言うことを聞いてくれない。
勝手にオレのメガドライブを引っ張り出してゴルフゲームを始めたりと手に負えない。
酔いが治まるまでしばし休憩に入る。
ようやくまともになったので、ラジカセを巡って入れたり切ったりのシーンを撮る。
そして、ラストの眼鏡が部屋を出て行くシーンを撮って、撮影終了。
先ほど言ったように、ロウソクを吹き消すシーンだけ残っているが、ほとんど全てを一日で撮影終了した手際の良さは、NHKでのバイトの成果でもあるだろう。
セリフ無しなのでNGも少なかった。ちなみに、誕生日集団は「おめでとう」とかしゃべっているし、物音はする所から分かるように、この映画はサイレントではなく、単に主人公たち三人がしゃべらないだけ。
何故しゃべらないかを聞いてきた人がいるが、そんなのはどうでもいいの。単にオレがしゃべらせたくなかっただけ。
納得がいかないのならば、三人とも聾唖者だとか、揃って風邪を引いていて喉が痛いとか(だからチビはジャムを舐めていたのだ)、テレパシーの使い手だとか理由はなんでもいいのだ。
重要なのはしゃべらない理由ではなく、何故オレがしゃべらせなかったかという部分。理由はセリフを削って、言葉に頼らない映画を作ってみたかったから。
その点については案外と成功していたと思う。
編集には1作目の『ダイヤモンド・ゲーム』以上に気を遣った。
カットが始まるカット頭と、そこで映像が終わるカット尻の両方が、普通のテンポよりも気持ち長くしてある。
微妙に居心地が悪いかもしれないが、どうもオレはそのテンポが好きなのだ。
二本目という事で慣れもあるし、NGが少ないので無駄なフィルムがないこともあって編集作業はテッテケテッテケとスムーズに進んだ。
音楽には頭を悩まされた。いっそのこと音楽も無しにしようかと思ったが、上映してみるとやはり寂しい。
眼鏡にはクラッシック、ノッポとチビにはジャズと時折ロックンロールに絞り、コロコロ音楽が変わらないように長目長目で使う。あまり上手いとはいえないが、前作よりは上達している。うん、これでよし。
オープニングとエンディングのクレジットは、眼鏡が原稿用紙に文章を書いていたことをヒントに、原稿用紙に書く。画面の切替は一枚一枚手がめくっていく方式。
最後に通しで上映してみて、うん完成だ。