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映画バカ青春記 第87章 続東森時音貸します・『ミクロの決死圏』

 スタジオでの公開放送のヘルプに入ったこともある。
 これまたBS番組で、「SFX映画」を主題にした特別番組だった。生放送である。
 時期は11月の祝日だった。3日の文化の日は学祭に参加してバイトは休んでいたから、おそらく23日の勤労感謝の日だと思う。

 『バットマン』(1989)の公開が翌12月に控えていて、その特典映像というのが一つの目玉だった。結局は予告編にはないがほんの1、2分の映像が流れただけだったが。
 そして一人目のゲストが登場。映画評論家の水野晴郎氏である。
 水野晴郎氏はこの日、名古屋で開かれた講演会の仕事あって、そちらが終わってからNHKに来ることになっていた。ところがその講演会が長引いて、会場を出るときに「大至急そちらに行きますから」と電話が入ってきた。
 水野晴郎氏を出迎えて案内するのがオレの役だった。玄関で車が到着するのを待つ。なにせ録画じゃなくて生放送。タイムテーブルはしっかり組まれていて、狂いはわずかしか許されない。じりじりとしつつ待つ。
 かなりギリギリになってようやくと水野晴郎氏が乗った車が到着。出番までの残り時間を伝えると、水野晴郎氏は
「じゃ、急がないとね」
 と応えてくれた。
 衣装はそのままだが、テレビ用にメイクをしなければならない。メイク室にオレが案内する。普通に歩くオレの後を水野晴郎氏が走って追いかける。でも両者の距離は開かず縮まらず。
「先生、歩いてで良いですから」と言おうとしたが、それもかえって失礼かなと思い直してそのまま。
「ガキの頃から、先生の解説で何本も映画を観てきましたよ」と感謝の言葉を伝えたかったがその暇も無し。
 メイクを終えた水野晴郎氏の案内をスタジオのスタッフに引き継いで、また雑用仕事に戻る。
 SFX映画について水野晴郎氏とアナウンサーが話を繰り広げる。
 そしてこれから放送される『ミクロの決死圏』(1966)の解説を水野晴郎氏が行う。
 水野晴郎氏の解説を生で聞くことが出来たのはかなり興奮した。
 「映画って本当にいいものですね」で締めてくれて、お約束だが嬉しかった。
 そして映画がスタート。スタジオの仕事は一段落するので、その間に地下にある(だったかな)社員食堂に飯を食いに行く。味はまぁ普通で学食ほどではないが安い。
 ちょっと混んでいて、視聴者センターの人と相席になった。現在放送中のBS特番の話になった。
「番組予告で『バットマン』の映像を使っていたでしょ。だから『バットマン』全編が放送されると思っていたのに、ちょっとしかやらないじゃないか!ってクレームの電話が何本かかかってきたのよ」
「うわぁ、ご苦労様です」という話になった。
 劇場公開すら来月の映画を丸々とテレビで放映するはずがないぐらいちょっと考えれば分かりそうなものだが、その「ちょっと考える」をしないのだろう。しかも、そこで納得せずにクレームの電話を掛けてくると言う思考が分からない。
 この人とは顔なじみになって、何度か食堂で一緒になった。
「登場人物がタクシーに乗ったシーンと降りたシーンでタクシーのナンバーが違うってクレームの電話を入れてくる人がいるのよ。その人は常連でそんな電話ばっかりしてくるの」
 などといろんな話を教えてもらった。世の中、困った人はいるものだ。

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