ロケが終了し、名古屋へと戻った。1週間ほど間をおき、ここからスタジオ撮影の開始である。
屋内シーンはごく一部を除きすべてスタジオ撮影。スタジオ撮影こそテレビドラマ制作のメイン部分だ。
カメラが一台で、1カット1カット毎に撮影していったロケに対して、スタジオでは1シーンを通しでほぼ1回で撮る。マルチ・カメラ方式というやつだ。
カメラは3台か4台ほど。引きの絵を撮るカメラから、役者のアップを撮るカメラと役割が決まっていて、自分が映すものだけを追い続ける。
「はい、本番いきます。5、4、3、」、2と1は口に出さず、指だけで合図する。
役者が芝居を始め、それをカメラが前後左右に動きながら撮り続ける。シーンの変わり目にきたら「カット」の声で終了。
自主映画では1カット毎の撮影しか知らなかったので、この通しで撮る撮影シーンは新鮮だった。NGが出なければ数分のシーンが1回の撮影で撮れるので効率も良い。
なにより、役者というのはなるほど芝居が出来るから役者なのだと分かった。全体として一つの芝居を数人の役者で作り上げなければならない。自分のセリフと芝居だけではなくて、他人のセリフをちゃんと聞いて間合いを掴んでの共同作業だ。さすがプロである。
ロケの時には高校や道路上などロケ先から許可を取っている時間が決まっているので、スケジュールがつまると大変なのだ。あっちに電話を掛けて頭を下げ、こっちに電話を掛けて頭を下げ、頭を下げるのもSD(サブ・ディレクター)の仕事の一つだ。
その点、スタジオはロケ地間を移動する必要がないのが楽だった。
弁当も相手も勝手知ったる仕出し屋なので、発注した分をまとめて食堂なりに置いておいてくれる。お茶だって給湯施設があるので、魔法瓶を抱えて走り回るロケとは違う。
その日の撮影が終わると自宅に帰れるのも嬉しかった。ロケだと、そのまま宿に泊まり込みなので自分の時間がなかなか持てなかった。撮影が遅くまでかかって終電が無くなっていることもあったが、タクシーチケットをもらえたのでそれで原まで帰った。まともに払ったら深夜割り増しも加えていくらかかったことやら。
そんなこんなをしている内に、制作部で休憩しながらテレビのニュースを見ていたら、「連続幼女誘拐殺人事件」の犯人が捕まったとの報が流れた。犯人は宮崎勤という奴だった。
ようやく捕まったかとほっと安心したが、まさか今になっても最終判決が出ないままとは思いもしなかった。