映画バカ青春記 第108章 名古屋では自動車学校を車校という

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 名古屋は田舎だ。そしてトヨタのお膝元だ。
 その二つの要因から、学生の、特に男子学生の自動車保有率は東京などと比べて圧倒的に高い。
 名城大学も当然そうだ。
 だが、シネマ研究会は別だった。貧乏人ばかり集まっているのか、車を買う金があったら映画に使うのか、おそらくは後者が強いのだろうが自動車を持っている者は少なかった。とりあえず、オレの同期はオレも含めて一人も持っていなかったはずだ。
 それでも、大学に入るとすぐに自動車学校に行って、免許は取得している者が多かった。
 ちなみに、名古屋では自動車学校のことを車校と呼ぶ。

 だがオレは4年生なってもまだ免許を取っていなかった。原付免許すらだ。
 留年することを決めたので絶対に今年のうちに取らなければならないということはないが、来年になると就職活動などで忙しくなるだろう。やはり、今年に取っておくべきだろう。
 そこでオレは車校に入学した。
 自動車学校は中部自動車学校。名城大学の裏門を出て、墓の中を通る細い道を下っていき、1、2年時(1年だけだっけ?)に体育の授業で利用したグラウンドの脇を通って、ちょっとあるくと自動車学校だ。
 しかし、なんで大学に入ってまで体育をやらねばならんのだろうか。
 しかし、なんで体育の教師というのは中学から始まって大学までクソ野郎揃いなのだろうか。

 そしてさらに思う。なんで自動車学校の教員というのはああもクソ野郎揃いなのかと。

 実地教習では毎回同じ教員になる場合が多い。
 オレの担当教員がクソだった。でっぷり太って脂ぎった中年男性で、これでもかとばかりに威張りまくっていた。
 こちらの「よろしくお願いします」という挨拶も無視。
 そして、「サイドミラーのチェックがどうの」「後方確認がどうの」「半クラッチが下手くそだぞ、どうの」と最初っから最後までずっとケチの付け通し。
 それも2回は我慢した。
 だが、3回目で怒りが爆発した。
「確認のし忘れは確かに悪い。これは本人のミスだし、指摘するのは当然だ。だが、半クラッチが上手くいかないのは初心者だからしょうがないだろう。まだ慣れていないんだから、ケチをつけるだけじゃなくてちゃんと助言をしろ、助言を」
 そんな具合に怒鳴りつけた。

 その日はそれで終わって家に帰ったのだが、夜になってベッドに横になってから自己嫌悪に陥った。
 怒ったからといって感情にまかせて相手を怒鳴るなど良くないことだ。感情に振り回されてどうする。自己を抑制できなくてどうする。
 そして数日間、落ち込んだ。

 そしてオレは自動車学校の不登校児となった。
 途中までは行くのだが、寒々しい墓の間を歩いているうちに、鬱陶しい気持ちになって引き返してしまうのだ。
 それは数ヶ月間続いた。

 入学から5ヶ月。あと1ヶ月の間に卒業しないと料金が無駄になってしまうところまで追い込まれて、ようやくと再び足が向いた。
 幸いなことに、今度の担当教官は普通の人だった。前の人がクソ野郎だっただけに、普通の人が素晴らしく思えた。
 講義の方は出席をすればハンコはもらえるので特に問題はなかった。問題集も、「これが常識だろ」という答えを選んでいけばほぼ正解だった。
 そして、ラストの1ヶ月で路上教習やら試験やらをこなして、どうにか卒業した。

 運転免許試験場は天白区平針にある。オレの住んでいる原から地下鉄で隣の駅。
 当日は自転車で行った。延々と続く坂道がつらかった。
 学科試験はスラスラと解けた。
 当然であったかのように合格し、オレは普通自動車免許を取得した。
 次に大学へ行ったときに、ついでに足を伸ばして自動車学校へ行って、教官の休憩室にいた担当教官にお礼を言った。
 部屋の隅にはクソ野郎もいたが、オレのことを憶えているのかいないのか、とりあえず目を合わせてこなかった。

 夏のバイト料などが残っていたので、車は無理だが原付を買った。中古だ。
 一気に活動範囲が広がり、どこへでもその原付で走っていった。
 購入してから1年間で走行距離が1万キロを超えた。

 それまではケチをつけたりしても、一種のギャグとして貶していた。腹の中では怒っていても、表面上はヘラヘラしていた。
 だが、この頃から本気で怒ることが多くなった。それも突然カッとなって自分を抑えられなくなる。
 明らかに不正義なこと、理不尽なことに我慢がならない。正義感ぶるわけではないが、頭に来るのだからしょうがない。
 嫌みな担当教官にも、腹では馬鹿にしつつも、はいはい御説の通り、おっしゃる通りですませればいいのだろうが、それが出来ない。
 やはり心のどこかが不安定で、バランスが取れていないのだろう。

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このページは、東森時音が2006年10月22日 15:23に書いたブログ記事です。

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