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映画バカ青春記 第101章 ロケハンだ・瑞浪市地下軍需工場

『キッズストリート 第一話危機一髪!美少女博士』の撮影は終わったが、全5話のミニシリーズなので、次の話の準備をしなければならない。
 このシリーズの中で、バイト採用時にオレの面接をしてくれたり、他にはいろいろ面倒を見てくれたり、仕事帰りにビリヤード練習場へ連れて行ってくれたM本さんが、初のTVドラマでのディレクター(監督)をやることになった。
 それまでにラジオドラマのディレクターをやったことはあるが、TVドラマとなると関わる人数、ロケやスタジオなど規模が全然違う。
 M本さんが担当する話はSF仕立てで、地下迷宮に潜り込んだり、名古屋のテレビ塔が宇宙船になって飛んでいったりとにぎやかな内容だった。
 そのロケハンの多くにオレはM本さんに同行することとなった。
 ロケハンとはロケーション・ハンティングの略。ロケ地を探し歩くことだが、実際には資料で下調べをした上で、使えそうだと思える場所を訪れる、いわば下見の様なものだ。
 オレはM本さんの指示で資料を調べたり、訪問の予約を取ったりした。NHKの名前はやはり強くて、役場や企業に電話をしてもきちんと対応してくれ、断ってくるところはほとんどなかった。

 劇中で名古屋城の城壁にある秘密の扉から地下迷宮に入る。
 その地下迷宮のロケ地候補となったのが瑞浪市の三菱航空機瑞浪地下軍需工場跡地だ。
 オレの育った愛知県半田市には第二次戦時中、中島飛行機の軍需工場があった。そして、そのため半田市は空襲を受け、学徒動員などの学生を含む一般市民も死亡した。名古屋の空襲も軍需工場が標的だった。
 軍部は空襲で被害を受けないように地下に穴を掘って空洞を作り、そこに軍需工場を造ろうとしたのだ。長野の地下大本営みたいな物か。無茶な話だ。
 実際には掘っている最中に戦争が終わってしまい、瑞浪市にあるのは碁盤の目状に張り巡らされた地下通路が残っただけ。
 だが、その掘っていった地下通路から幾種もの化石が見つかり、今でのこの軍需工場跡地横に化石博物館が建っていて、今では子供たちなどに人気のスポットとなっている。皮肉と言えば皮肉な話だ。

 固い地盤に穴を掘っただけで、柱や板などで補強もされておらず岩盤が剥き出しで危険なため、一般向けには入り口部分しか公開されていない。
 そこへ、ロケハンということで特別に中の方も見せてもらった。
 地下トンネルというと狭く息苦しい物を思い浮かべるだろうが、ここは通路ではなく工場にするために掘った物なので横幅も高さもあり広い。はっきりとは憶えていないが、横幅が3~4メートル、高さが3メートルはあったのではないだろうか。
 そのトンネルが碁盤の目状に交差しながら延々と続く。
 ところどころに水たまりはあるが、足元はしっかりしている。
 カメラ担当のオレは、M本さんに指示されたところをパシャパシャと撮っていく。
 映画で色々な光景を観てきたオレだが、現実の目の前に広がる非日常的風景にはさすがに言葉を失って、「うわー、すごいですね。ここ天井高いですね」と騒いでいた。って、言葉失ってねーじゃん。

 案内していただいた係の方に丁寧に頭を下げた後、午後に向けて昼食タイム。
 M本さんが調べてきた、チャーシューメンで有名というラーメン屋に行った。
 当然、二人ともチャーシューメンを頼む。
 出てきたチャーシューメンには言葉を失った。
 厚さ1cmぐらいはあるチャーシューが何枚ものっていてスープの上を埋め尽くしている!
 ちなみに言葉を失った理由は、必死で食べていたからだ。物を口に入れてしゃべっちゃダメだぞ。
 チャーシューの厚さと量にはさすがに驚いたが、味は普通のラーメンだった。

 午後からダムのロケハンへ。
 ダムの外観のロケハンではなく、地下通路のロケハンなのでダムの中に入れてもらう。
 鉄製の階段を上ったり降りたり。コンクリートの通路が延々と遠くまで伸びているのに驚いたり。
 この時始めて知ったのだが、ダムの壁面、あの水を食い止めている壁の中には通路が走っていて人が通ることが出来るんだね。まぁ、そうじゃないと補修も出来ないわな。
 同じくダムが舞台の『ホワイトアウト』にも通路が出てきたが、確かにあんな感じ。

 この頃になると、スタッフと一緒ではなく単独で行動することも増えてきたので、オレの名刺を作ってくれた。
 まだパソコンで簡単に作れる時代ではなかったので、ちゃんと印刷会社で作った本式なヤツだ。これがオレがもった初めての名刺になる。
 NHKのSDには制服があるわけではないので、オレは私服のいかにも学生のバイトにしか見えない。だが、日本放送協会と書かれNHKのロゴが入った名刺を差し出すと相手の態度がコロッと変わった。
 やはり名の通った企業は違う、というか、NHKの場合は一種の権威というか権力なんだなぁと思ったりもした。
 名刺を受け取った途端、「今日は何のご用で?」といった態度になる人に対して、偉くなった感じがするとか優越感を抱くといったことはなく、それどころかなんかやりきれなかった。
 名刺を出す前も出した後も、オレはオレなんだけどね。

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