撮影は集中して行われるが、毎日あるわけじゃなくてたまには撮影のないオフの日もある。
主人公の子供たち5人の内3人は東京から来てホテルに滞在している。
撮影が休みだからと言って、じゃあ休んでてね、とほったらかすわけにも行かない。
ホテルにこもり切りじゃ退屈だろうし、ホテルのある栄は大人向けの繁華街で、小学生にはあまり遊ぶところがないだろう。
そこで上の方から、オレがその3人を動物園にでも遊びに連れて行けとの命令が下った。
オレは保父じゃねーっつーの。
行き先は名古屋人なら誰でも知っている東山動物園。1990年前半のある日だった。
「遊園地はどうですか」とスタッフに言ったら、「そういうところは怪我をする可能性があるから」という返答だった。
二十歳過ぎの好青年と女の子一人、男の子二人。学童保育の引率といったところか。
同行した子供たちは、主人公の飯泉征貴、その妹役の飯塚雅弓、そして主人公の友人役のふとっちょ。
象を見たりライオンを見たり。1984年に東山動物園に来たコアラを見たり。まさに遠足だ。
でも、さすがに東京で活躍している子役だけあって発言もしっかりして頭もよかった。オレのガキ時代とは大違いだ。
とはいえ、やはりガキはガキで、オレが飯塚に「ブスが転んでコロンブス」とか言ったら妙に男二人に受けて、「コロンブス」「コロンブス」とはやしてからからかっていた。
イジメんなよ、お前ら。あっ、言い出したのはオレか。
その後、飯泉征貴はドラマや映画に出演し、現在でも俳優・声優として活躍している様子。
飯塚雅弓は『おもひでぽろぽろ』(1991)のキャスト欄に名前があった。判別できなかったが、主人公の少女時代のクラスメイトの一人だろう。
「そうか、飯塚は声の仕事もやるのか」と思った。
その後、オレはTVドラマは観ないが、とりあえず映画には出ていないので、ひょっとしたら引退したのかなぁと思っていた。
と、1990年代後半、久しぶりに会った大学の同期で一緒にNHKでバイトをしていたYが「飯塚、すげぇなぁ」と言ってきた。
最初は「飯塚?誰それ」だったが、「ほら、『キッズストリート』の女の子だよ」で思い出した。
「ふーん、ドラマかなんか出てるの」
「バカ、お前知らないのかよ。ポケモンだよポケモン。ポケモンのアニメで主役キャラの一人をやってるんだよ」
これにはさすがに驚いた。ポケモンと言えば当時人気絶頂、今でも人気絶頂のゲーム&アニメではないか。
さっそくその週の放送日放送時間にチャンネルをテレビ愛知に合わせた。
番組が始まる。主人公は男の子2人、女の子1人。男のうち一人は男性が声を担当しているのでこれは除く。主人公のサトシは松本梨香。松本梨香は女性だが、これは当時アニメを観ていなかったオレでもさすがに違うと分かる。となると、残ったのは女の子キャラ、カスミだ。んー、ということはこれが飯塚か?こんな声だったような、違ったような。
エンディングでキャストが表示され、ようやくカスミ=飯塚雅弓だと判明した。
そっかー、国民的アニメの主役キャラの一人にまでなったのか。あのチビ助がねぇ・・・ちょっと感慨にふける。