名古屋は鶴舞公園の中に池乃茶屋という店がある。
シネ研のコンパは古くからの慣例でそこで行うこととなっていた。
よって、その年の新入生歓迎コンパもそこで行われた。
新入生は自己紹介を兼ねて一人一芸をやらされた。
今考えれば、気楽に小ネタをやればいいのだろうが、当時は本気で悩んだ。
悩んだ結果が座布団回しだった。人差し指の先に座布団の中央を乗せグルグル回す。
不評だった。
もっとも、他の部員の芸もおよそ似たような物だったし、同じく不評だった。
その不評振りを楽しむ物だと分かったのは2年生になってからだ。
池乃茶屋から地下鉄の鶴舞駅に向かう途中には池がある。
例年、新入生はその池に落とされるという伝統があった。
そのため、新入生は池から離れた道の反対側を歩いていた。
しかし、そんなおいしい場面を逃すオレではない。
酔っぱらった振りをしてフラフラしながら池の近くを歩いていた。
そこに食いついてきたのがCさんだ。Cさんはオレに体当たりをしてきた。オレは「うわぁぁぁ~」と叫びながら池に落ちた。
池といっても、せいぜい30センチほどの深さで、水はきれいだ。そこに転びながら落ちたので、胸のあたりまでびしょ濡れとなってしまった。
5月とはいえまだ夜風は冷たい。下半身のジーンズはともかく、上半身の水を含んがMA-1がぐっしょりと重かった。
その年、池に落とされた新入生はオレだけだった。
そして、オレが最後の一人となった。
翌年からは新入生を落とそうとするヤツはいなかったし、2年後にはその慣例すら過去の伝説となっていた。
その後、復活することもなかったろう。
じゃあ、お前が落とせば良かったじゃないかと言われるかもしれないが、それはオレの芸風ではない。オレは落とされる側であって、落とす側じゃないのだ。そこんとこ重要。
この映画バカ青春期に登場する人物はイニシャルを取ってNさんとか、Mとか呼んでいる。
だが、オレを池に落としたCさんは例えば千葉とかいった名前ではない。Cとはまるで関係ない名前だ。
ではなぜCなのか。まず、最初にある名字の人物がシネ研にいた。翌年、同じ名字の新入生が入部してきた。これではややこしいので、最初からいたのをA、後から入ってきたのをBと呼ぶことになった。
これでもうお分かりだろう。さらに翌年になって入ってきたのがCさんだ。イニシャルではなく「しー」「しーさん」というあだ名なのだ。
それを知るまでオレは、てっきり「椎(しい)」という名字なのだと思っていた。
オレが始めてシネ研を訪れた日、パイプ椅子を並べて横になっていたチャックさんという人物がいる。妙にヒゲが濃いし、どこか日本人離れしていたのでひょっとしてアジアからの留学生か?チャック・ウィルキンソンとかいう名前なのかと思ったら、入部時のアンケートで「好きな俳優は」という問いに「チャク・ノリス」と答えた瞬間からチャックというあだ名になったんだそうだ。恐ろしいところである。
オレにはこれといったあだ名がつかなかった。キャラが薄かったんだろうか。未だに残念だ。