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映画バカ青春記 第44章 ドラゴンと恋

 高校も3年生になると、部活は引退しているし、柊祭実行委員は1,2年のみ。クラスではイベントをやらないというので暇である。
 暇だ~暇だ~と校内をうろうろしていたら、文化祭である柊祭の一環として祭りの最後に行われる体育祭の手伝いをしないかと誘いがあった。
 体育祭の華といえば応援合戦だが、その応援合戦を彩る飾り、たしかデコレーションと呼んでいたと思うが、そのデコレーションの制作である。
 応援合戦のデコレーション?子供用の御輿みたいな物かなどとあなどってもらってはこまる。
 イナバの物置3~4個ほどの大きさの城に潜むドラゴンのデコレーション。本番まではドラゴンは城の中に隠れていて、いざ本番となると、口から消火器のブレスを吐きながら全面の壁をぶち倒して登場する。仕上げが間に合わずに、前日の夜はデコレーション製作委員の男子は、学校に隠れて泊まり込みをして作業をして、ようやく間に合ったのだ。
 おかげで体育祭当日は眠くてふらふらだったが、それでも体育祭だから飛んだり走ったりしたわけで、若かったんだなと思う。
 ドラゴン製作で特に苦労したのが、口から吐く白いブレス。胴体の中に人が潜んでいて、消火器を噴射させ、噴射口に繋がったホースから消火粉が首の中を通って口から白いブレスとなって吹き出す。
 ホースのねじれが上手く直せなかったし、消火器の数がないので、テストが一回切りしかできなかった。それでも当日は上手く動作してくれた。
 かなりの大きさで、しかも手が込んでいる。受験を控えた高校3年生が作る作り込み具合だろうかこれは。

 ドラゴンの高さはおよそ2メートル30センチ。しっぽの先までを含めた全長はおよそ4メートル。1ボックスのバンぐらいの大きさはある。
 まずは竹で外観の枠を作り、その上に新聞紙を貼る。その上にさらに白いB紙を貼る。
 最初は、このB紙にドラゴンの鱗を緑の絵の具で描くことになっていたが、どうもそれでは質感が出ない。
 製作委員みんなであたまをしぼったあげくに思いついたのが、「鱗を一枚一枚段ボールで作って、貼り付けよう」

 いいのか?それでいいのか受験生?

 夏休みもあまり休むことなく毎日学校に来ては作業をしていた。他の人は、午前中作業をしたら、午後は自習室で勉強。午前中勉強した者は、午後から製作に参加するケースが多かったが、オレは一日中やっていた。
 暑い夏だった。汗だくになりながら、笑ったりはしゃいだりしながら作業を続けた。
 オレが電動式水鉄砲を二丁買ってきて撃ち合いになって駆けずり回ったりもした。ほんのつかの間、受験を忘れる貴重な時間だったのだ。
 もっとも、オレははなっから忘れていたが。
 最初は無茶な計画で、間に合うとも思えなかったのが、段々とドラゴンと城に見えるようになっていった。

 製作委員の子の一人に、眼鏡をかけた女の子がいた。オレはどうもその子が気になって、あれこれ話しかけたりギャグをやったりしていた。相手の反応もそう悪くなかった。
 うーむ、これは恋しちゃったかも。
 受験勉強もせずに映画ばかり観て、デコレーション作って、おまけに恋ときたもんだ。

 毎年、3年生のデコレーションは見事なのだが、今年は特に素晴らしい作品だった。
 デコレーション大賞はもちろん、3年。
 オレは1年生の時はデコレーション作成に関わっていないが、その時はゴジラを作った。3メートルほどの大きさで、確かにでかかったが出来は良くなかった。オレの年が特に出来が悪かったのではなく、例年1年生の作品はそんな物。それが、3年になると程度の差はあれ、かなりのデコレーションを作ってくる。
 そこに、3年間における生徒の成長を感じたりもする。

 ドラゴンの出来があまりに良かったので、いやこれは自画自賛ではなく、本当に良くできていたと思う。近くの幼稚園の庭に数日間置かせてもらうことになった。
 なにしろ、大型トラックでもなければ乗らない大きさなので、みんなで御輿の要領でかついでいった。張り子構造なので大きさの割に軽いのだ。

 高校で自分が運営する側でのイベントはこれが最後となった。
 後は予餞会と卒業式を残すのみだが、これは出席するだけ。
 やいのやいのと騒いでいた高校生活も、次第にラストが近づいてきた。
 空は高く、季節は秋めき、日が暮れる物とっぷり早くなった。
 柊祭が終わるともう10月。進路調査や個別指導が始まる。
 そしてオレは、進路について「ま、なんとかなるんじゃない」と気楽に考え、それよりも眼鏡の女の子Mさんのことで頭がいっぱいだった。

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