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映画バカ青春記 第31章 あおいちゃんパニック!

 高校2年の一学期も終わりに近づき、オレは柊祭実行委員と放送部員の仕事で校内を走り回っていた。
 柊祭実行委員での役割は主に文化部の作業の進行具合をチェックしたり、必要な物資などのリクエストを受け、その手配をすること。
 放送部員としては、体育館で行われる演劇部や吹奏楽部の発表会である『ダブフェスティバル』や、軽音楽部や有志によりバンドが武道場で行う『Live in 武道場』での放送関係の手配や段取り。さらに、放送部は校内放送や柊祭の一環として行われる体育祭での場内放送などやることは色々ある。

 科学部の様子を見に行っているうちに、そこの部員のHというヤツと友人になった。
 Hはどちらかというと無口で、ちょっと変わった男だったが、意外と気が合った。
 最近読んだ本やコミックについて話をしている時にHが、
「そうそう、面白いコミックがあるんだけど、読む?」
 と尋ねてきたので、「うん、貸して貸して」と翌日持ってきてもらった。
 それが講談社のなかよしコミックス竹本泉著『あおいちゃんパニック!』全3巻だった。

 あのね、なんで高校生にもなった男がなかよしコミックスなんか読まねばならんのよ。
 少女マンガでも『花とゆめ』などの白泉社系は読むよ。でも、『なかよし』はねーだろ。
 と思ったが、さすがに口には出さずに、とりあえず借りて帰った。我ながら大人の対応というか、機嫌が悪いと本当にそう応えたりするのがオレだ。

 そして翌日の放課後にはHに『あおいちゃんパニック!』を返した。何故なら、もうオレには必要なかったからだ。
 そう、前日の夜に閉店間際の本屋へと走って、自分用に買ってきたからだ。一緒に『魔法つかいさんおしずかに!』と『パイナップルみたい』と『ハジメルド物語』と『ちょっとコマーシャル』と、並んでいる限りの竹本泉のコミックを買ってきたぞ。でもって、一晩で読んだ。

 それ以来、竹本泉はオレの一番お気に入りのマンガ家だ。ただし、小説での横田順彌やしゃべりでのつボイノリオ、映画監督のジョン・ランディスとは違い、師匠的存在ではなかった。何故ならオレは手先が絶望的に不器用で絵がからっきし下手だったからだ。マンガなんか描けへんのんじゃっ。
 もっとも、オレが仮にマンガ家を目指していたとしても、竹本泉を心の師にはしなかっただろう。もちろんお気に入りのマンガ家ナンバーワンは間違いないが、のほほんとしてぼわーっとしてヘンテコリンな世界観はオレの芸風と合わない。逆に、自分の内面と正反対だからこそ読者として竹本泉作品が大好きなのだろう。

 それ以来、20年以上、いまだ新刊が出るたびに買っている。竹本氏のコミックだけではなく、挿絵を担当した火浦功の『ひと夏の経験値』や(新装版ではたの画家に代わっている)、今実家に帰っているので手元になく作家名がわからないがコバルト文庫の魔法使いモノや、復刻版児童向けSFシリーズの『失われた世界』なども買った。
 『ゆみみみっくす』などのゲームももちろんだ。セガのメガドライブは持っていたが、メガCDは『ゆみみみっくす』のためだけに買ったぞ。
 『てきぱきワーキン♥ラブFX』のためだけに危うくNECのゲームマシンPC-FXを買うところだったのだが、後に(だったよな。同時発売ではなかったはず)PCエンジン版が出たのでそっちを買った。『天外魔境』(2作目が有名だが、この場合は1作目。もちろん2も買ったが)のためにPCエンジン本体とCD-ROMドライブは持っていたのだ。

 竹本泉氏の場合だけではない。オレの場合、あれこれ色々と観たり読んだりするよりも、一人の作家や監督に興味を持つと手にはいる限りのその人の作品を読んでいく。
 だから、本棚にそれなりの量の本があるが作家数で言うと意外と少ない。
 そして、その内に興味が無くなってきて、だんだんと集めなくなるが、その頃には次の面白い作家を見つけてそちらを読んでいく。
 ある作家にこだわるが、それが持続するわけではなく興味を失うと次の人を追い始める。熱中しやすいが飽きるとそれまでがオレのスタイルなわけだが、そんな中で延々と読み続けている竹本泉というマンガ家はやはりオレにとって特別な存在だ。
 映画監督についてはまた書く機会もあるだろうから省くが、そういった存在はマンガ家だと桑田乃梨子、小説家だとスティーヴン・キングとディーン・クーンツ、そして火浦功である。
 もっとも、火浦功はトマス・ハリス並みの寡作作家で新刊は数年に一度なのでファンとしては悲しいやら、その火浦功っぷりがうれしいやら。ガルディーンシリーズはやはり未完のままか?キングが不可能と思われていた『ダーク・タワー』完結を成し遂げたんで、奇蹟は二度起こることを期待する。

 マンガは書かなかったオレだが、ネット小説として初めて書いたエヴァ時代劇のタイトルは『魔法つかいさんおしずかに!』から借用して『姫さまお静かに』とした。
 内容面では竹本氏によるリメイク版『あんみつ姫』から強い影響を受けている。
 ああっ・・・『あんみつ姫』のコミックは初版で持っていたんだが、いつの間にか無くしてしまった。痛恨の極み。大判だが薄っぺらで、確か全4巻だったと思う。現在は復刻版が出ているが、それには講談社版にあったシールがついてないし、なにより講談社版にあったカステラ婦人が輿に担がれて登場するシーンが変更になっている。輿を担いでいたのが腰ミノの土人スタイルな黒人たちだったのが問題になったそうだ。
 んなこといったらピーター・ジャクソン版『キング・コング』だって、上映やTV放映が出来んぞ。・・・あれは白人が演じてるから良いって解釈になるのかなぁ。
 日本の差別問題団体が『ハックルベリー・フィンの冒険』『ハックルベリー・フィンの冒険』や『アンクル・トムの小屋』は黒人差別だから出版を中止すべきとクレームをつけてきたことがあったとの噂を聞いたことがある。さすがにこれは単なる噂で嘘だとは思う。

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