半田高校の文化祭は文化の日である11月3日を中心に、2日間だか3日間に渡って開催される。
校章である柊の葉にちなんで柊祭と呼ばれている。
開催日のうち一日は一般公開され、近隣の人たちなど多数が訪れる、なかなか盛況な文化祭だ。
クラス単位での発表・イベントもあるが、一番の主役は文化部。文化部にとっては一年で一番輝ける日だ。
放送部も文化部だが、部としての作品発表以外にもやることがいっぱいある。むしろそちらの方が忙しいぐらいだ。
校内放送をはじめとして、体育館で行われる演劇部や吹奏楽部、合唱部の発表会『ダブ・フェスティバル』での放送機材取り扱い、武道場で行われる軽音楽部の発表会や有志による『ライブ・イン・武道場』など、公の仕事がいくつもあった。
オレが担当したのは『ダブ・フェスティバル』だった。
配属された当初は「えー、面倒だなぁ」と思っていたのだが、やっているうちにその面白さと充実感にはまっていった。
『ダブ・フェスティバル』のダブ(Dove)は鳩のこと。会場である体育館に鳩が住み着いていたためにその名前になったらしい。ピジョンにしなかった理由はわからんが、語呂の問題かもしれない。
(夜になってから辞書で確認してみたらdoveは小さな鳩、pigeonは大きめな鳩となっていた。ふーむなるほど。でも鳩の大きさなんかあまり気にしたことがないのでピンとこない)
体育館は講堂も兼ねていて、入学式や卒業式もそこで行われる。そのため、放送設備も整っていた。単にアンプとスピーカーがあるだけではなく、コントロールパネルやカセットデッキ、オープンリールデッキなど割と本格的だ。そのため、扱うには多少の知識が必要で、その操作は発表を行う演劇部や吹奏楽部の部員ではなく、放送部員が行うこととなっていた。
音楽や効果音を流すためには、ダブ・フェスティバルの当日だけではなく、準備や稽古の段階から参加して流れを頭に入れておく必要がある。
オレは放課後になると体育館に行って、各部の練習につきあうこととなった。
吹奏楽部や合唱部に関しては、生の音をお客さんに聴かせるので、さほどやることはない。合唱部のピアノの伴奏をマイクで拾ってスピーカーから流すぐらいで、それよりも発表会の様子を録音することの方が重要だった。
大変なのは演劇部だった。演劇部は全体で5~6人の小所帯で、しかも女の子ばかり。放送の方に回せる人間もいないし、そもそも機械系はまったくだめだ。そこで、放送関係はすべてオレがやることとなった。
ピンマイクがあるわけでもないので、台詞はすべて生の声だが、効果音や音楽は放送設備を使って行う。これらはタイミングが命なので、当日だけ参加ではとても無理だ。台本を読んで流れを頭にたたき込み、そして稽古を繰り返し見てタイミングを覚える。もちろん、稽古でも音があった方がいいので、オレは舞台に向かって左上部にある放送室の窓から舞台を見下ろしながらタイミングをつかみ必要な音を流した。
先ほども書いたが、演劇部は女の子ばかりで少人数。書き割りなどの大道具を作るのでの一苦労だ。毎日体育館に来ていたオレは、次第に放送だけではなく、そういった大道具作りも手伝うようになり、トンカチでトンテンカンテン、ノコギリでギコギコギコギコと飛び回った。
これで、演劇部員の一人と恋に落ちれば少女マンガっぽいのだが、そういった浮いたことは全くなかった。いや、ちょっとはあったが、それよりも柊祭に向けてみんな一生懸命で、そちらのことが楽しくて色恋沙汰は後回しだった。
柊祭の当日のことはほとんど覚えていない。ただ、ひたすらに忙しく飛び回っていたという記憶だけだ。
だが、その柊祭の準備については楽しかったという記憶ばかりだ。
そして、オレはこの『祭りの準備』というヤツにはまった。楽しくてしょうがなかった。
『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』の序盤は、文化祭の準備が舞台となっている。永遠に続くかと思われるドタバタ騒ぎ。そして、それは実際に永遠に続いていて、その黒幕が正体を現すのだが、現実の柊祭の準備は永遠に続くかと思われたが、ある日本番になって、そして終わり、日常に戻った。
だが、一度『祭りの準備』の楽しさを知ってしまったオレは、もう日常では満足できなかった。
そこで、2年生となった翌年は、柊祭実行委員として前期から参加することになり、生徒会活動にも首をつっこむこととなる。
高校、大学時代で都合7回の祭りを経験した。今こうして思い出すに、やはり祭り当日よりもその準備が面白く楽しかった。
夏祭りや盆踊りなど、実生活での祭りに関しては運営面に参加したことはないが、おそらく学園祭にはかなわないだろう。
文化祭・学園祭がああも面白いのは、日常の光景が次第に祭りの様相を呈してくるあのドキドキ感、ワクワク感が大きいのだろう。
行ったことはないし興味もないが、あと一週間ほどで行われるコミックマーケットことコミケも一種の祭りなのだろう。中毒者がいるのもなるほどだ。
*タイトルで使っている『祭りの準備』はガガガSPの曲から取った物で、映画『祭りの準備』とは一切関係なし。
黒木和雄なんてクズ監督が撮ったグダグダクソ映画から取るわきゃねーって。