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映画バカ青春記 第16章 東森DJ伝説の始動、そして終焉

 放送部に入部したオレは昼の放送『Day out JOCKEY(デイ・アウト・ジョッキー)』で木曜日のDJを担当することになった。
 オープニングは「デイ・アウト・ジョッキー」というセリフから始まるのだが、これを「東森時音のデイ・アウト・ジョッキー」と自分の名前をつけた。東森時音というのはペンネームなので実際は本名を使ったが、まずここで「これから始まるのはオレの番組なんだよ」とアピールするわけだ。
 しゃべりの師匠はつボイノリオだが、つボイノリオといえば第6章で書いたように下ネタ王。さすがに師匠を目標にするとしても高校の昼の放送で下ネタはまずい。そもそもオレには下ネタの才能はないし。
 そこで、しょうもないネタに重点を置いた。
 どんな放送をやったかというと。

 あれこれとしゃべっていると、動物の鳴き声がする。
「うわっ、何で放送室にキリンがいるんだよ。誰だよ連れてきたのは。外へ出せ、外へ。って、首がつっかえて扉から出ね~。首をたため首を」
 キリンの鳴き声は分からなかったのでとりあえず馬の鳴き声のテープを使い、再生速度を変えてそれっぽくした。
 ようやくと騒ぎが収まって、音楽を一曲流す。
 曲が終わってまたしゃべっていると、今度は「どすこい、どすこい」と野太い声がしてくる。
「うわっ、何で放送室に相撲取りがいるんだよ。誰だ、朝潮を連れてきたのは。外へ出せ、外へ。って、腹がつっかえて扉から出ね~。押せ、押し出せ~」
「どすこい」のセリフは自分の声を録音し、再生速度を遅くして作った物。

 放送室のオープンリールは上のように再生速度を変更できるだけではなく、逆再生も出来た。
 そこで、自分のしゃべりを録音したテープを逆再生してみたところ、なんとなく朝鮮語っぽく聞こえる。基本的にはローマ字で書いてそれを逆から読んだ声になる。
「あめんぼあかいなあいうえお」だと「おえういあにあかおぶねま」っぽく聞こえる。
 これは面白いやと
「今日のデイ・アウト・ジョッキーは朝鮮語でお送りします」で初めて後は適当にしゃべったテープを逆再生して流してそのままラストまで。

 他のDJ担当は真面目なトークをやっていた。
「今朝学校へ来る途中で犬を散歩するおじいさんが、うんぬん」
 真面目だが面白くない。
 そこで、
「さーて、今日のデイ・アウト・ジョッキーですが、これといってしゃべることがありません。というか、平凡な毎日を送っていてそんな面白かったり興味深かったりすることに出会いませんよ。だから今日は何もしゃべりません。うんぬんかんぬん」
 と、しゃべらないと言いながら、およそ15分の放送時間を曲も流さないで結局延々下らないことをしゃべり続ける。

 放送では音楽を2、3曲流すことになっているが、それをすべて同じ曲を使う。

「ビートルズのヘイ・ジュードです」と紹介しながら三波春夫を流す。

 マイクが壊れた放送事故という設定で
「今日・・・で面白いこと・・・なんです・・・笑ってしま・・・」と途切れ途切れに話す。

 もちろんダジャレなどのギャグは常に連発。

 そんなふざけた放送をしていたらクレームが来た。
 いや、放送部の顧問とか教師からではない。校舎メインの階段の1階から2階への踊り場に放送部のアンケートボックスがあったのだが、そこの苦情の用紙が入っていた。
「全校向けの放送なのだから、真面目にやるべきだ」
「いくらなんでもふざけすぎである」
「良識を疑う」
 などなど。

 あのね、不真面目だから面白いの。中途半端ではなく本気でふざけたいの、オレは。良識なんてねーよ。
 だが、放送部の会議でこれらの苦情のアンケートが問題となり、オレは当面の間DJを下ろされることとなった。業界用語で言えば干されるというやつだ。
 こうして東森DJ伝説は半年ほどで終わりとなった。思えば短い伝説だ。
 代わりに機材担当の役割が多くなった。よく考えてみれば、別にDJがやりたくて放送部に入ったわけではなく、番組作りの方が目的だったのでこれでいいのだ。これでいいのだが、やはり悔しかった。
 オレのギャグに時代はまだ追いついていないのか。
 真面目な進学校のお堅い連中には理解できないのか。
 本気でそんなことを思っていたのだから、これが若さというヤツだ。

 そして、機材の使い方を着々と学んでいったオレは、半田高校の文化祭である柊祭において体育館で行われる文化部の発表会で放送機材を担当することになり、その祭りにのめり込んでいくが、それはまた後の話。

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