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2006年02月 アーカイブ

2006年02月01日

『右側に気をつけろ』 映画を作って持ってこい

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『右側に気をつけろ』(1987) SOIGNE TA DROITE 81分 フランス 1989年鑑賞

監督:ジャン=リュック・ゴダール 脚本:ジャン=リュック・ゴダール 撮影:カロリーヌ・シャンプティエ 音楽:リタ・ミツコ
出演:ジャン=リュック・ゴダール、フランソワ・ペリエ、ジャック・ヴィルレ、ジェーン・バーキン

-いつだって能天気 その5-
 主人公“白痴”(ゴダール)は、とある罪によって田舎に隠遁している。そこへ、「今すぐ映画を作って持ってこい。そうしたらお前の罪は許してやる」との通達が来る。急いで映画を作り上げた白痴は、銀色のフィルム缶をてにパリを目指すのだった。
 映画を作るシーンは省略され、いきなり旅立ちのシーン。まずは車に乗ろうとするのだが、白痴なだけにドアを開けて乗るというごく普通のことが出来ない。そのまま歩いていって車にぶち当たったり、座席の高さに合わせてしゃがんで進むのはいいがそのまま頭をぶつけたり。ついには全開した窓に頭から飛び込むことでなんとか乗り込む。
 そこから始まる白痴やアリさんなど珍妙なキャラクターが繰り広げる珍道中。セリフの洪水など例によって難解なシーンもあるが、そこら辺を無理して理解しようと思わなければ、実体は良質なドタバタスラップスティック映画である。つまりまぁオレとしては「真面目に観るな」と言いたい。
 タイトルの『右側に気をつけろ』はルネ・クレマン監督・ジャック・タチ主演の『左側に気をつけろ』のオマージュだが、右側=右翼でもあるそうだ。確かにゴダールは過激思想の持ち主だし、この作品は表現や言動、その他の自由についての映画でもある。

 ゆっくり浸れる美しい映像と、ゴダールがドルビーステレオに始めて挑んだだけあってクリアーで押しつけがましくないのに耳に残るサウンド。ゴダール入門編に向いてると思うんだが、レンタルDVDにはなっていないんだよな。残念。

2006年02月04日

『ハリーの災難』 埋めて掘ってまた埋めて

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『ハリーの災難』(1955) THE TROUBLE WITH HARRY 99分 アメリカ

監督:アルフレッド・ヒッチコック 製作:アルフレッド・ヒッチコック 原作:ジャック・トレヴァー・ストーリー 脚本:ジョン・マイケル・ヘイズ 撮影:ロバート・バークス 音楽:バーナード・ハーマン
出演:エドマンド・グウェン、ジョン・フォーサイス、シャーリー・マクレーン、ミルドレッド・ナトウィック、ローヤル・ダーノ

-いつだって能天気 その6-
 スリラーの巨匠アルフレッド・ヒッチコックが撮った死体系コメディ。死体系コメディは死体を巡る顛末やドタバタなどを主体としたコメディのことで、オレが以前思いつきで作った言葉だ。
 死体系コメディとしては他に、上司の死体にいかにも生きている振りをさせてごまかし、休暇を楽しむ『バーニーズ あぶない!?ウィークエンド』(1989)や落語の『らくだ』を映画化したエノケンの『らくだの馬さん』(1957)(死体にカンカンノウを踊らせるヤツね)、そしから『メン・アット・ワーク』(1990)にも自分たちが殺してしまったと勘違いして死体を抱え込んで右往左往するシーンがあった。あまり作品数が多いジャンルではないが、探せばもっとある。
 ヒッチコックとコメディというと違和感を感じる人があるかもしれないが、オレはヒッチコックはかなりなユーモアの持ち主だったと考えている。完全にコメディ仕立ての『ハリーの災難』以外のシリアスな作品にも、かなりひねくれてはいるが良質なユーモアが随所に見受けられる。
 ヒッチコックが来日した際に、淀川長治さんが日本料理店へ食事に連れて行ったそうだ。椅子ではなく畳の上に座って食事と会話を楽しんだヒッチコックは、慣れない座り方とその体型もあってか、さて行こうかというときに足がしびれてすぐには立てなかったそうだ。その時に淀川さんに向かって膝をポンと叩くと「ジャパニーズ」とギャグを言ったそうだ。ジャパニーズと膝のknee(ニー)を引っかけたダジャレだ。テニス肘みたいに日本膝という意味もあるのかも知れないが、とにかくダジャレだ。あの数々の優れたスリラー作品で多くの人に悲鳴を上げさせた監督もダジャレ愛好家だったのを知ったとき、オレは屋上へ駆け上ると「ダジャレ最高ー!」と叫んだのは嘘だが、嬉しかったのは事実だ。
 ハリーの死体を見つけた人々が様々な理由から自分が殺したと思い込んで、土に埋めたりして隠蔽しようとするが、ハリーを見つけたまた別の人がこの人も自分が殺したと思い込んでまたハリーを持って行ってしまう。そうしてハリーの死体によって広がっていくトラブル。そういった面では『ハリーの災難』という邦題は少し映画のイメージとは違っていて、『ハリーにまつわる災難』辺りになるんじゃないだろうか。もちろん、シンプルで「一体どんな映画なんだ?」と思わせる良いタイトルだけどね。
 死体を笑いの題材にするといった時点で、不愉快だったり不謹慎、不快感などを覚えてしまう人もいるだろう。分からなくもないがギャグとはありとあらゆるものをネタにする物だ。死体もそうだし、国家、思想、宗教など大きな物をネタにしたり、間抜けな人や障害者をネタにすることもある。「笑いとは差別だ」と言った人がいる。すべてそうだとは思わないが、オレもそうなんだろうなと感じている。
 『ハリーの災難』ではろくでなしな人物だったハリーの死体が全編に渡って登場し、死者に対する扱いとは思えないひどい扱いだがそこが面白い。乾いたギャグと作風で、実際に観てみると不快に思う人は案外少ないはずだ。それでも不快だと思う人とは、オレは友達になれない様な気がする。