
『みんな~やってるか!』(1994) 110分 日本 1995/02/12鑑賞
監督:ビートたけし プロデューサー:森昌行、鍋島寿夫、柘植靖司、吉田多喜男 脚本:ビートたけし 撮影:柳嶋克己 編集:太田義則、ビートたけし 音楽プロデューサー:小池秀彦
出演:ダンカン、ビートたけし、左時枝、小林昭二、山根伸介、結城哲也、前田竹千代、志茂山高也、南方英二、大杉漣、寺島進、ガダルカナル・タカ他たけし軍団
-いつだって能天気 その2-
ビートたけしの初監督作品である。えっ?「たけしのデビュー作は『その男、凶暴につき』だろう」って?いやいや、そちらは北野武のデビュー作。一つの身体に二つの心なのだ。
ビートたけし名義で作られたこの『みんな~やってるか!』は日本映画には珍しいギャグ映画。いきなり表示されるタイトルが間違っているというとんでもないオープニングに始まる。主人公は不細工かつ貧乏な青年(ダンカン)で、もちろんまったく女に持てず欲求不満をもんもんと持て余している。どうしたら女と“ヤレるか”という彼の妄想がどんどん肥大し、かつ暴走していく。
車を手に入れることから始まった暴走は、銀行強盗や徳川埋蔵金の発掘、そしてヤクザの殺し屋になる。ここまででもずいぶんなものだが、女湯を覗くために科学者(ビートたけし)の口車に乗せられて透明人間になり、ついには蝿と合体して巨大ハエ男怪獣となる。青年の欲求不満はついに日本の危機を巻き起こしたのだ。
東京に向かってくるハエ男。このままでは日本が危ないと立ち上がったのが地球防衛軍。そして我らがキャップこと小林昭二は叫ぶ。
「日本中のウンコを集めろ!」
青年が女とヤリたいという欲望のみに忠実に従って、犯罪も何もお構いなしに突き進んでいく姿に、あれこれと現代批評めいたことを言ってもしょうがない。『3-4X10月』(1990)が野球場の隅になる簡易トイレでウンコをしていた間に柳ユーレイが見た妄想だという説もあるが、この作品も女に縁がない男が安下宿で布団を抱きかかえながら「あ~セックスしてぇ」とどんどん妄想を膨らませていったその空想内容を映像化したのだろう。
女性の方だと、「えーっ?男ってこんなことばかり考えているの?」と思われるかも知れない。もちろん個人差はある、個人差はあるよ。ダンカンみたいのはさすがにそうはいないだろう。いないだろうが、多かれ少なかれやはり考えていると男であるオレは断言する。
脚本で言えば良い意味で支離滅裂。それを狙ってやったんだから成功だろう。観ていて話がどう進んでいくのかまったく読めなかった。
ギャグ映画には色々なセットや小道具が必要なのだが、そういった面をちゃんとやってくれているのが嬉しい。銀行強盗に言ったら、窓口にシャッターが降りてくるところなんか、ただそれだけのためなのにちゃんとセットを組んでいる。(ロケじゃないよなぁ・・・それともああいう銀行があるのか?)
ただ、残念だったのがテンポと間が悪く笑い度が落ちていたこと。もっと編集で面白くできる作品だろう。北野武作品は初期の作品を除くと編集は北野武自らが行っている。映画とは編集だと思ってるオレだが、武ワールドでも編集は重要な要素に違いない。
『みんな~やってるか!』では編集にビートたけしの名はあるが、例の原付バイクの事故でたけしが倒れていたため、実質的には太田義則が編集を担当したはず。
サム・ペキンパーも編集を自分でやる方針だったが、『ダンディー少佐』(1964)は製作時のトラブルで編集権を取り上げられてしまい、撮影後のフィルムは他人が編集したためもあってが駄作になってしまった。
ここで一つ提案する。たけし自身は昔撮った映画などすでに興味はないだろうが、ビートたけしが完全編集した『みんな~やってるか!ディレクターズ・カット版』を作って欲しい。まず無理な希望だと思うが、期待して待ち続けることにする。