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2006年01月 アーカイブ

2006年01月18日

『HELP!4人はアイドル』 ドーバー海峡はどっちだ?

『HELP!四人はアイドル』(1965) HELP! 90分 イギリス

監督:リチャード・レスター 製作:ウォルター・シェンソン 原案:マルク・ベーム 脚本:マルク・ベーム、チャールズ・ウッド 撮影:デヴィッド・ワトキン 音楽:ケン・ソーン
出演:ザ・ビートルズ(ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリソン、リンゴ・スター)、エレノア・ブロン、ヴィクター・スピネッティ、レオ・マッカーン、ロイ・キニア、パトリック・カーギル、アルフィー・バス

-いつだって能天気 その1-
 しばらくの間、コメディ映画を中心とした笑える映画を取り上げることとする。「いつだって能天気」は「Always Look on the Bright Side of Life」の意訳ということで一つ。

 真心ブラザーズの歌じゃないが、ジョン・レノンさえ死んでからその名を知った世代で、音楽にはさして関心はなかったのでビートルズに興味はなかった。中学や高校時代の音楽教師がビートルズに妙な熱さを示していて、そのせいでほとんど聴いたことがないのにむしろ嫌いなぐらいだった。今にして思えば、あの先生たちはビートルズ世代だったのだろう。
 で、大学生になってリチャード・レスターの『三銃士』『四銃士』を観て面白さに入れ込み、ビデオレンタルで観たのが『ヘルプ!4人はアイドル』だ。いやもう、これが面白いこと面白いこと。ビートルズをダシにして、リチャード・レスターが好き勝手に撮ったとびきりオフビートなギャグ映画だった。

 どうやらインド辺りらしいところにカイリという神を崇める密教があった。その教団が若い娘を使って生贄の儀式を行おうとしている。ところが、娘が生贄の証である指輪をはめていない。大あわてして指輪を探す司祭たち。そしてようやくと見つけた指輪は、何故だかイギリス在住の世界的バンド“ザ・ビートルズ”のドラマーであるリンゴ・スターの右手薬指に輝いていた。密教集団は指輪を奪還すべくさっそくイギリスに向かったが、そこから大騒動が始まるのであった。

 とにかくギャグの量が豊富で、スタンダードなのからハチャハチャなのまで勢揃い。戦車は走り回るわ、地下室で虎は吠えるわ、人体縮小薬でポールは10cmほどの大きさになるわ、途中で意味もなく休憩が入るし(しかも数秒間とますます意味なし)、映画は何故だかミシンの発明者に捧げられてるし。
 アルプスへと逃げたビートルズがカーリングをやっているシーンに氷に開いた穴の中からザバザバと水着姿の男が登場して「ドーバー海峡はどっちだ?」と尋ねる。4人があっちと指さすと男はありがとうと泳ぎ去っていく。このギャグは映画のエンディングでもう一度ちらっ登場しているのにご注目。これはコメディ映画が大好きなオレにとって、5本の指に入る大好きなギャグだ。
 ストーリー自体は単純であくまでもギャグが主体。だが、サイレントやモノクロ映画時代のいわゆるスラップスティックと呼ばれる物を進化させようという意志が感じられる。いわばギャグ映画における実験映画的存在だ。
 戯画化されたザ・ビートルズを演じた4人の心中は知らないが、コミカルな場面も飄々と演じている。中でもリンゴ・スターはいつも困ったような表情で画面の中をうろつきなかなかなコメディアンぶりを見せてくれる。

2006年01月19日

『みんな~やってるか!』 ハエ男は頭のよいホ乳類です

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『みんな~やってるか!』(1994) 110分 日本 1995/02/12鑑賞

監督:ビートたけし プロデューサー:森昌行、鍋島寿夫、柘植靖司、吉田多喜男 脚本:ビートたけし 撮影:柳嶋克己 編集:太田義則、ビートたけし 音楽プロデューサー:小池秀彦
出演:ダンカン、ビートたけし、左時枝、小林昭二、山根伸介、結城哲也、前田竹千代、志茂山高也、南方英二、大杉漣、寺島進、ガダルカナル・タカ他たけし軍団

-いつだって能天気 その2-
 ビートたけしの初監督作品である。えっ?「たけしのデビュー作は『その男、凶暴につき』だろう」って?いやいや、そちらは北野武のデビュー作。一つの身体に二つの心なのだ。
 ビートたけし名義で作られたこの『みんな~やってるか!』は日本映画には珍しいギャグ映画。いきなり表示されるタイトルが間違っているというとんでもないオープニングに始まる。主人公は不細工かつ貧乏な青年(ダンカン)で、もちろんまったく女に持てず欲求不満をもんもんと持て余している。どうしたら女と“ヤレるか”という彼の妄想がどんどん肥大し、かつ暴走していく。
 車を手に入れることから始まった暴走は、銀行強盗や徳川埋蔵金の発掘、そしてヤクザの殺し屋になる。ここまででもずいぶんなものだが、女湯を覗くために科学者(ビートたけし)の口車に乗せられて透明人間になり、ついには蝿と合体して巨大ハエ男怪獣となる。青年の欲求不満はついに日本の危機を巻き起こしたのだ。
 東京に向かってくるハエ男。このままでは日本が危ないと立ち上がったのが地球防衛軍。そして我らがキャップこと小林昭二は叫ぶ。

「日本中のウンコを集めろ!」

 青年が女とヤリたいという欲望のみに忠実に従って、犯罪も何もお構いなしに突き進んでいく姿に、あれこれと現代批評めいたことを言ってもしょうがない。『3-4X10月』(1990)が野球場の隅になる簡易トイレでウンコをしていた間に柳ユーレイが見た妄想だという説もあるが、この作品も女に縁がない男が安下宿で布団を抱きかかえながら「あ~セックスしてぇ」とどんどん妄想を膨らませていったその空想内容を映像化したのだろう。
 女性の方だと、「えーっ?男ってこんなことばかり考えているの?」と思われるかも知れない。もちろん個人差はある、個人差はあるよ。ダンカンみたいのはさすがにそうはいないだろう。いないだろうが、多かれ少なかれやはり考えていると男であるオレは断言する。
 脚本で言えば良い意味で支離滅裂。それを狙ってやったんだから成功だろう。観ていて話がどう進んでいくのかまったく読めなかった。
 ギャグ映画には色々なセットや小道具が必要なのだが、そういった面をちゃんとやってくれているのが嬉しい。銀行強盗に言ったら、窓口にシャッターが降りてくるところなんか、ただそれだけのためなのにちゃんとセットを組んでいる。(ロケじゃないよなぁ・・・それともああいう銀行があるのか?)

 ただ、残念だったのがテンポと間が悪く笑い度が落ちていたこと。もっと編集で面白くできる作品だろう。北野武作品は初期の作品を除くと編集は北野武自らが行っている。映画とは編集だと思ってるオレだが、武ワールドでも編集は重要な要素に違いない。
『みんな~やってるか!』では編集にビートたけしの名はあるが、例の原付バイクの事故でたけしが倒れていたため、実質的には太田義則が編集を担当したはず。
 サム・ペキンパーも編集を自分でやる方針だったが、『ダンディー少佐』(1964)は製作時のトラブルで編集権を取り上げられてしまい、撮影後のフィルムは他人が編集したためもあってが駄作になってしまった。
 ここで一つ提案する。たけし自身は昔撮った映画などすでに興味はないだろうが、ビートたけしが完全編集した『みんな~やってるか!ディレクターズ・カット版』を作って欲しい。まず無理な希望だと思うが、期待して待ち続けることにする。

2006年01月24日

『ホット・ショット』 ボケたらボケっぱなし

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『ホット・ショット』(1991) HOT SHOTS! 85分 アメリカ 1991/12/26鑑賞

監督:ジム・エイブラハムズ 製作:ビル・バダラート 製作総指揮:パット・プロフト 脚本:ジム・エイブラハムズ、パット・プロフト 撮影:ビル・バトラー 音楽:シルヴェスター・リヴェイ
出演:チャーリー・シーン、ケイリー・エルウィズ、ヴァレリア・ゴリノ、ロイド・ブリッジス、ケヴィン・ダン、ジョン・クライヤー

-いつだって能天気 その3-
『フライングハイ』や『トップシークレット』を手がけたコメディ集団ZAZの一員であるジム・エイブラハムズの単独監督作品。『トップガン』を中心に『風と共に去りぬ』や『ダンス・ウィズ・ウルブス』などのパロディと、次から次へと連打で来るしょーもないギャグが嬉しい。ジェット機が空母甲板上のスペースに縦列駐車で停めるシーンなど、わざわざ偽物のジェット戦闘機まで作ってまぁ。そこまで金かけてやるギャグか?とも思うが、そこで金をかけてくれないとやはりギャグ映画はなかなか面白くなってくれない。
 私たち日本人は、笑いというとボケとツッコミがワンセットになっている物と考えている。これは主に漫才が広めたものではないかと思うのだが、この作品ではツッコミ役は一人もおらず、それぞれが好き勝手にボケまくっている。で、そのボケのギャグはそのままスルーされて、まるで何事もなかったかのように話は進む。
 海軍提督役のロイド・ブリッジスがその筆頭だ。飛行機の搭乗口からは落ちるわ、人の話は聞かないわ、事故死したパイロットの葬式で弔砲の音を実際に銃で狙われてると思って拳銃を乱射し手榴弾は投げまくるわ、戦争で鼓膜は破れ左右に耳の穴にハンカチがそのまま通ってキュッキュッと掃除してるわ、頭蓋骨は鉄板か瀬戸物が入っているとか。
 漫才なら、「んなアホな」「ないよ、そんなこと」「いーかげんにしろ」とツッこみが入るところだろうが、この『ホットショット』ワールドでは誰一人ツッこむことなく映画はそのまま進む。
 ひたすらボケまくるロイド・ブリッジスはやはり最高である。『裸の銃』シリーズのレスリー・ニールセンの芸風と似ているが、そもそも俳優としての格はロイド・ブリッジスの方が数段上だけに、他の映画でのシリアス演技との格差がさらに笑いを増大する。ジェフ・ブリッジスら人気俳優であるブリッジス兄弟の父親でもある。DVDディスクのピクチャーレーベルで主役のチャーリー・シーンを差し置いてちゃっかり一人で映っているのも当然か。
 事故死することになるパイロットが期待へと向かう途中に黒猫に前を横切られたり、梯子の下をくぐったり、鏡が割れたりと、欧米で縁起の悪いと言われる事象がどんどんかさなっていくシーンが好き。日本で言えば鼻緒が切れるとかその人の使っている茶碗が割れるとかか?でも、パイロットとその妻は幸せそうなのが、我ながらひねくれているなとは思うが笑える。
 こういったボケのみで見事に成立された作品を観ると、果たしてツッコミというのは本当に必要なのかとも思ったりする。「よしなさい」「やめなさい」「いーかげんにしなさい」というのが典型的なツッコミだろうが、これ自体は何も面白くない。極論を言ってしまうと、ツッコミとは「今、ボケがぎゃぐをやりましたからね~」というのと確認させる役割に収まってはいないだろうか。ほとんどテレビは観ないのだが、バラエティ番組では何かというと出演者の発言をスーパーででかでかと表示する。これもつまり「この発言は笑えますね~、ギャグですね~」と言っているわけで、年始にちょっとだけ新人お笑いのコンテスト番組を観たが、どれもボケがギャグを言って、ツッコミがそれにつっこんで「これはギャグですよ」と確認しているだけ。
 なんというか、そこまで観客や視聴者を信用できないのだろうか。いちいちツッコミや確認のテロップを入れなくてもギャグはギャグって分かるだろ。もちろん、ツッコミがあった方がリズムは作りやすいのだろうが、ひたすらボケたらボケっぱなしな世界観も楽しい。
 ちなみに、登場するジェット戦闘機は『トップガン』よりも旧型だが、ドッグファイトのシーンの迫力はなかなか。

2006年01月30日

『ぼくの伯父さんの休暇』 伸びたり縮んだり

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『ぼくの伯父さんの休暇』(1952) LES VACANCES DE MONSIEUR HULOT 87分 フランス 1991/2/1リバイバルにて鑑賞

監督:ジャック・タチ 脚本:ジャック・タチ、アンリ・マルケ 撮影:ジャン・ムーセル、ジャック・メルカントン 出演:ジャック・タチ、ナタリー・パスコー、アンドレ・デュボワ、ヴァランティーヌ・カマクス

-いつだって能天気 その4-
 ジャック・タチ本人が演ずる永遠のキャラクターユロ氏主演の一作。『ぼくの伯父さん』よりも前に製作されたモノクロ映画なので『ぼくの伯父さん』ではないのだろうが、まあ気にするな。
 オンボロ車で夏の海辺にバカンスに訪れたユロ氏。そしてユロ氏によって引き起こされる観光地で起こるおかしな出来事。おかしなといっても、ハリウッド喜劇のような派手な騒ぎではなく、何かちょっと可笑しいといった事件の連発が実に面白い。
 海岸の屋台で、何やらパンの生地か練っている最中の飴だかが木の棒にかけられる。それがダラーッと伸びていって、下に着く寸前に店主がまた上にかけ直す。そのダラッーの繰り返しを下に着いちゃわないかな大丈夫かな、果たしてほっといて良いのかなと迷いながらウロウロしているユロ氏が笑える。現代ハリウッド映画のリズムに慣れすぎていると、すぐには楽しめないかも知れないが、じっくり腰を落ち着けて気楽に楽しんでもらいたい。
 これだぁあっ!という派手なギャグはないが、ぬるま湯につかっているかのような心底リラックスして観ることが出来る心地よさ。
 後の『ぼくの伯父さん』(1958)や『プレイタイム』(1967)では良い意味でも悪い意味でもメッセージ性が強くなっているので、単純に喜劇人ジャック・タチを観たいならばこの『ぼくの伯父さんの休暇』だろう。