『HELP!4人はアイドル』 ドーバー海峡はどっちだ?
『HELP!四人はアイドル』(1965) HELP! 90分 イギリス
監督:リチャード・レスター 製作:ウォルター・シェンソン 原案:マルク・ベーム 脚本:マルク・ベーム、チャールズ・ウッド 撮影:デヴィッド・ワトキン 音楽:ケン・ソーン
出演:ザ・ビートルズ(ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリソン、リンゴ・スター)、エレノア・ブロン、ヴィクター・スピネッティ、レオ・マッカーン、ロイ・キニア、パトリック・カーギル、アルフィー・バス
-いつだって能天気 その1-
しばらくの間、コメディ映画を中心とした笑える映画を取り上げることとする。「いつだって能天気」は「Always Look on the Bright Side of Life」の意訳ということで一つ。
真心ブラザーズの歌じゃないが、ジョン・レノンさえ死んでからその名を知った世代で、音楽にはさして関心はなかったのでビートルズに興味はなかった。中学や高校時代の音楽教師がビートルズに妙な熱さを示していて、そのせいでほとんど聴いたことがないのにむしろ嫌いなぐらいだった。今にして思えば、あの先生たちはビートルズ世代だったのだろう。
で、大学生になってリチャード・レスターの『三銃士』『四銃士』を観て面白さに入れ込み、ビデオレンタルで観たのが『ヘルプ!4人はアイドル』だ。いやもう、これが面白いこと面白いこと。ビートルズをダシにして、リチャード・レスターが好き勝手に撮ったとびきりオフビートなギャグ映画だった。
どうやらインド辺りらしいところにカイリという神を崇める密教があった。その教団が若い娘を使って生贄の儀式を行おうとしている。ところが、娘が生贄の証である指輪をはめていない。大あわてして指輪を探す司祭たち。そしてようやくと見つけた指輪は、何故だかイギリス在住の世界的バンド“ザ・ビートルズ”のドラマーであるリンゴ・スターの右手薬指に輝いていた。密教集団は指輪を奪還すべくさっそくイギリスに向かったが、そこから大騒動が始まるのであった。
とにかくギャグの量が豊富で、スタンダードなのからハチャハチャなのまで勢揃い。戦車は走り回るわ、地下室で虎は吠えるわ、人体縮小薬でポールは10cmほどの大きさになるわ、途中で意味もなく休憩が入るし(しかも数秒間とますます意味なし)、映画は何故だかミシンの発明者に捧げられてるし。
アルプスへと逃げたビートルズがカーリングをやっているシーンに氷に開いた穴の中からザバザバと水着姿の男が登場して「ドーバー海峡はどっちだ?」と尋ねる。4人があっちと指さすと男はありがとうと泳ぎ去っていく。このギャグは映画のエンディングでもう一度ちらっ登場しているのにご注目。これはコメディ映画が大好きなオレにとって、5本の指に入る大好きなギャグだ。
ストーリー自体は単純であくまでもギャグが主体。だが、サイレントやモノクロ映画時代のいわゆるスラップスティックと呼ばれる物を進化させようという意志が感じられる。いわばギャグ映画における実験映画的存在だ。
戯画化されたザ・ビートルズを演じた4人の心中は知らないが、コミカルな場面も飄々と演じている。中でもリンゴ・スターはいつも困ったような表情で画面の中をうろつきなかなかなコメディアンぶりを見せてくれる。


