
『ヒドゥン』 (1987) THE HIDDEN 100分 アメリカ 1988/11/11鑑賞
監督:ジャック・ショルダー 製作:ロバート・シェイ、マイケル・メルツァー、ジェラルド・T・オルソン 製作総指揮:スティーヴン・ダイナー、リー・ミュール、デニス・ハリス、ジェフリー・クライン 脚本:ボブ・ハント 撮影:ジャック・ヘイトキン 音楽:マイケル・コンヴァーティノ
出演:カイル・マクラクラン、マイケル・ヌーリー、エド・オロス、クルー・ギャラガー、ダニー・トレホ
-オレはいつでも燃えている その34-
村上ショージが昔やっていたギャグだ。「ヒドゥーン!」・・・それは「ドゥーン!」か。
ざらついた粗画質の青っぽいモノクロ画面から映画は始まる。人が行き来する建物のロビーが映し出され、どうやらビデオカメラの映像らしい。ロングコートの男がカメラに近づいてくると、ショットガンを抜いていきなりカメラを吹き飛ばす。画面はノイズだけになる。
そこで観客が観ていたのは銀行の防犯カメラの映像だったことが分かるオープニングが秀逸。そして走り出した映画はラストまでスピードを弛めずに疾走する。この「ヒドゥン」、確かに傑作であった。
地球人に寄生する犯罪者宇宙人と、それを追って地球に来た同じく寄生型の宇宙人刑事。題材自体はハル・クレメントの小説『二十億の針』をヒントにした、というかパクったに近いものであってSF的には目新しいものではない。『二十億の針』は『星から来た探偵』というタイトルで小学生向けSF文庫としても出ていたので読んだ人も多いことだろう。オレも最初はそちらで読んだ。犯罪者宇宙人が誰に寄生したのか分からず、二十億の針の中から探すようなものだ、というのでタイトルが『二十億の針』となっている。続編の『一千億の針』というのも出ているが、こちらは読んでいない。
寄生した身体が銃撃されて致命的な損傷を受けても、他の肉体に乗り移ることで実質的に不死身状態な悪玉宇宙人を、単なる人間の犯罪者だと思って追っている刑事がマイケル・ヌーリー。そこへFBIの捜査官を名乗る少々奇妙な男が相棒となる。その正体は火事で死んだ男の体に乗り移った宇宙刑事。どこか無機質な印象のあるカイル・マクラクランはナイスキャスティング。
どちらも他の生命体に寄生している状態では殺すことが出来ないので、怪我を気にせずドッカンドッカン撃ち合う無茶な銃撃戦が見物。宇宙人は高級車が好きなようで、悪玉はフェラーリ好きでヘヴィメタ好き、善玉はポルシェ好きときてる。
アメリカには鎮痛・制酸剤の“アルカセルツァー”という薬がある。これは500円玉大の錠剤で、コップの水に入れると泡を立てて溶け、溶けたところでグイッと飲む。
マイケル・ヌーリーに酒を飲まされて二日酔いになったカイル・マクラクランが、そのアルカセルツァーを渡されて飲む。後のシーンで、制服警官からアスピリン(だと思う)をもらうのだが、それをコップの水に入れてさて泡はいつ出るのかな、と眺めているギャグがある。どれだけ眺めていてもアスピリンが泡を出すはずがない。それから、もしも入浴剤のバブを見かけたら、薬だと思って飲んでしまうのだろうか?あれも泡を出して溶けるしな。
海外に行ったときにドラッグストアでこのアルカセルツァーを見つけ、10箱ほど買ってきた。半分ほどはお土産にして、残りは自分で使った。後味がエグ味のある物で、「そうか、カイル・マクラクランはこんなのを飲んでいたのだな」と楽しんだ。日本のドラッグストアで見かけたことはないのだが、こちらでは売っていないのだろうか?いかにもアメリカンだから日本では受けなそうではある。
以前ちょっと『ヒドゥン』のことを調べていたらキャストの中にダニー・トレホの名があることに気がついた。『デスペラード』(1995)で小さなナイフをヒラヒラさせる殺し屋や、『スパイキッズ』シリーズのスパイグッズ開発屋などロバート・ロドリゲス作品でお馴染みのヒスパニック系の俳優だ。ロバート・ロドリゲスとは従兄弟だそうで、てっきりロドリゲスにくっついて役者になったのだと思ったが、『ヒドゥン』に出ていたとなるとダニー・トレホの方が芸歴が長いことになる。
さてどこに出ているのやらとビデオを借りてきて観直したところ、後半の留置所内にいる犯罪者の一人だろうと見当をつけた。アップはないので確実とは言えないがセリフもあるしアクが強い外見なのでまず間違いはないだろう。そういえばこの人は役者になる前は本物の犯罪者で刑務所での収容歴もあるとのこと。その前には『暴走機関車』(1985)に出ているようだが、これももちろん囚人の一人だろう。『暴走機関車』は実際の刑務所でロケされて、本物の囚人も出演していたはずだが、まさかその「本物の囚人」じゃないだろうな。
監督のジャック・ショルダーは『エルム街の悪夢2』(1985)の後でこの作品を撮った。こいつはすごいぜと新作を待っていたら、次に撮った『レネゲイズ』(1989)はとんだスカ。以後も水準以下の作品ばかり作っていて、期待した身としては非常に残念である。
後に『ヒドゥン2』も作られたが、ある登場人物以外は繋がりがなく、ほぼ完全に別物。大駄作なので観る必要はない。