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『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地大乱』 黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)、必殺の無影脚!

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『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地大乱』 (1992) 黄飛鴻之二:男兒當自強 108分 香港 1993/09/18鑑賞
監督:ツイ・ハーク 製作:ツイ・ハーク 製作総指揮:レイモンド・チョウ 脚本:ツイ・ハーク、チャン・タン、チャン・ティンスン 撮影:アーサー・ウォン 音楽:リチャード・ユエン、ジョニー・ニョー
出演:リー・リンチェイ(ジェット・リー)、ロザマンド・クワン、ション・シンシン、マク・シウチン、ジャン・ティエリン、ドニー・イェン

-オレはいつでも燃えている その33-
 一作目の『天地黎明』をすっ飛ばして、二作目の『天地大乱』がいきなりの劇場公開。
 香港では記録的大ヒットとなり、ジェット・リーの人気を再燃させた『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』だが、日本では結局劇場公開されたのは『天地大乱』だけで、あとはビデオスルーとなってしまった。香港映画人気が落ちてきた時期でもあるし、時代劇でクンフー物というのが逆に客足を遠ざけたのか、公開してわりとすぐ観に行ったのだが観客数は少なかった。劇場興行としては失敗したのだろう。非常にもったいないと思うのだが、オレとしてはシリーズ最高傑作の『天地大乱』をスクリーンで観られただけで良しとしよう。確か日比谷の映画館で観た記憶がある。休憩時間には昔ながらの緞帳が下りてくる劇場で、その緞帳の左右には『週刊少年ジャンプ』と『週刊プレイボーイ』の広告が刺繍されていた。人間、時として妙なことが印象となって残っているものだ。

 リー・リンチェイが演ずる黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)は清代末期に実在した武術家にして漢方医である。『酔拳』『酔拳2』でジャッキー・チェンが演じていたのも同じ黄飛鴻だ。『酔拳』では正義感こそ強いが基本的にドラ息子だったが、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズではガチガチの堅物とかなりかけ離れた描写となっている。実際の黄飛鴻はどんな人物だったのだろうか。とりあえず工業用アルコールを飲んで暴れ回ったり、ビュンビュンと空を飛んではいないはず。そうそう、ユン・ピョウ、サモ・ハン・キンポー主演の『上海エクスプレス』(1986)には幼少期の黄飛鴻役が列車の乗客としてちらっと出ている。
 香港映画黎明期にすでに黄飛鴻を主人公とした映画が作られており、人気シリーズとして100本以上の作品が作られたそうだ。史実などリアリティは重視されない娯楽時代劇だったようで、弱きを助けて悪をくじく古典的英雄像になっていたという。水戸黄門や遠山の金さんのように、実在の人物がモデルだが大幅に誇張されていたのだろう。
 清代末期を舞台に欧米列強が中国進出(侵略?)を狙っている中、中国人として民族の誇りを持って戦う黄飛鴻の物語が1990年代になって再び映画化されたのは、単に懐古趣味だけではなく1997年の香港の中国返還が間近になっていた世情もあるはずだ。銃などの近代兵器にクンフーが勝てるのかというシチュエーションに象徴されるように、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』の大きなテーマは中国文化と西洋文化との出会いとそこで生じる軋みだ。叔母にして恋人のイー(ロザマンド・クワン)が欧米で学問を修得し、洋服を普段着として流ちょうな英語も話す。西洋文明を身につけた彼女と、中国文化を大切にする黄飛鴻とのやり取りが面白い。
 『天地大乱』の前半では西洋の医師たちを前に黄飛鴻が鍼麻酔を披露するシーンがある。そこで英語への通訳を買って出るのがかの有名な孫文だ。日本人には聞き慣れなくても、香港・中国では著名な歴史上の人物が登場するのも『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズの特色である。それにしても長いタイトルだな。今後は『ワンス(略)』とすることとする。ってゆーかさっさとそうしとけよ。

 一作目をすっ飛ばしていきなり二作目、しかも香港人にはお馴染みな歴史的背景は省略されているため、「えっ?何が?何で?」と最初は戸惑った。そもそも「黄飛鴻って誰?」なんだが、ややこしいことは抜きにしてツイ・ハークの力押しな演出と切れ味鋭く派手なアクションだけで充分楽しめる。
 白蓮教という邪教集団が存在し、そこの教祖と黄飛鴻が戦うのだが、ここでのワイヤーアクションのすごいことすごいこと。いくつかの机を積み上げ、それ足場にするがこれがもう無茶。人間が自在に宙を飛びながら戦っている。そりゃワイヤーが見えるのは確かだが、そんなのこのアクションを前にしてはどうでもいいだろ。アクションのカット割りとしては繋がっていない部分もあるが、この勢いの前にはどうでもいいだろ。文章で説明しきれるものではないので、未観の人はぜひとも観ることをお勧めする。ワイヤーアクションの究極形がここにある。
 武術指導をしたユエン・ウーピンは、後に『マトリックス』シリーズのアクションも担当している。『マトリックス』でのキアヌ・リーブスとローレンス・フィッシュバーンが乱取りをするシーンなどなるほどユエン・ウーピン色が出ているが、『ワンス(略)』はあれの少なくとも100倍はすごい。キアヌ・リーブスたちは撮影前の数ヶ月に渡って猛特訓をしたそうだが、こちらはリー・リンチェイやドニー・イェンなど長期間修練を積んだ武術俳優が多数出演している。CGなどのビジュアル・エフェクツが進歩してもそう簡単にはその修練の差は埋められない。かといってオレはCGを否定しているわけではない。訓練された肉体とビジュアルエフェクツが組み合わさって、さらにすごいアクション、さらに度肝を抜くスタントが登場することを期待している。

 ただ、リー・リンチェイとドニー・イェンの戦いはもうちょっとカット数を減らして、技の激突をじっくり見せてほしかった。棒術と足技中心なのだが、二人ともピシッと足の伸びたハイキックを高速で繰り出して、香港映画名格闘シーンの一つとなっている。細かいカット割りで迫力はあるが、夢の対決だけにちょっともったいない。
 それにしても、ドニー・イェンにとって最大の不幸は悪人顔に生まれてしまったことだろうな。武術もすごいしアクション監督としても活躍する実力派で、この作品のように悪役だと実にはまるんだが、『ドラゴン危機一発'97』などで善玉を演ずると違和感を感じてしまうのはオレだけか。

 後にレンタルビデオで一作目の『天地黎明』を観たが、大筋に“不平等条約"か関わりさらに中国を憂う思想色が強い。単純に中国=善、欧米=悪といった図式でもない。ちょっと鬱陶しく感じる部分もあるが、香港・中国の人には日本人にとっての幕末物のような魅力があるのだろうか。

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コメント (2)

Kira:

はじめましてこんばんわ。すごい熱のこもったブログですね~。
私もワンチャイシリーズは天地大乱が1番好きです。現在40を過ぎたジェット・リーですが、またフェイフォンを演じてくれないかなーと思ったりします。

東森時音:

kiraさん

天地黎明の竹梯子アクションも捨てがたい物がありますが、やはり天地大乱が一番燃えますね。
劇場で観た直後に書いていたら、熱さはこんなもんじゃなかったですよ。
『チャイナ&アメリカ』でフォン・フェイフォンに復活したジェット・リーですが、西部のガンマン相手に銃対クンフーを見せてくれましたが、番外編といった感じで正直今一つ。監督はやはりツイ・ハークじゃないとダメでしょう。サモハンのは他の監督作もそうですが、演出にキレがなくて野暮ったい感じです。
もう一本、「これがフェイフォン物の頂点だ」というを期待したいところです。

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