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『デルタフォース2』 チャックさんは麻薬王を倒すためなら他国だろうがお構いなし

『デルタフォース2』 (1990) DELTA FORCE 2:OPERATION STRANGLEHOLD 111分 アメリカ

監督:アーロン・ノリス 製作:ヨーラン・グローバス、クリストファー・ピアース 脚本:リー・レイノルズ 撮影:ホアオ・フェルナンデス 音楽:フレデリック・タルゴーン
出演:チャック・ノリス、ビリー・ドラゴ、ジョン・P・ライアン、ベゴニア・プラザ、リチャード・ジャッケル、ポール・ペリ

-オレはいつでも燃えている その18-
 学生時代、所属していたシネマ研究会の2つ上の先輩に「チャックさん」という人がいた。チャックさんが入部当時、「好きな俳優は?」と聞かれて「チャック・ノリスですね」と答えたばっかりにそんなあだ名になってしまったのだ。I沢という本名があるのだが、そちらで呼ぶ人はほとんどおらず、先輩ないし同期からは「チャック」、後輩からは「チャックさん」。
 チャック・ノリスが好きだと言ったばかりに、在学中の4年間ずっと「チャック」と呼ばれるとは本人も思っていなかっただろう。体毛は濃さげだった以外にチャック・ノリスに似ている部部分もなく、なぜ「チャック」が定着してしまったのだろうか。チャックさんは非常に存在感のある人で、例えて言うならば『アニマルハウス』でのジョン・ベルーシっぽい黙ってそこにいるだけで圧倒させる迫力と「チャック」という名がマッチしていたからかも知れない。

 そんなこんなでチャック・ノリス主演の『デルタフォース2』だ。『デルタフォース』(1985)という同じくチャック・ノリスの映画があるが、主人公チャック・ノリスの役名がマッコイであること。所属が対テロ特殊部隊デルタフォースであることを除けば、ストーリー的な繋がりはない。
 前作ではジェット機をハイジャックしたイスラム系テロリストと戦ったマッコイ(チャック・ノリス)たちが今回相手にするのはコロンビアの麻薬王。って、デルタフォースは対テロ特殊部隊だろ。麻薬組織と戦うのはちょっと違わないか?悪党どもによる犯罪組織ではあるが、テロリストとはちょっと違うだろ。
 この映画が製作された1990年頃といえば、CIAの友人が重傷を負ったことへの復讐のためにジェームズ・ボンドが麻薬組織に乗り込む『007 消されたライセンス』(1989)や、ジャック・ライアンがコロンビアの麻薬組織と戦う『今そこにある危機』(1994)、そしてその原作のトム・クランシー著『Clear and Present Danger』がアメリカで発刊されたのが1989年といった具合で、麻薬組織を敵にするのが流行っていた。ソビエトという敵に魅力がなくなり(ソ連解体は1991年)、ハリウッド映画が次なる敵としてとりあえず選んだのがコロンビアとその国内にある麻薬組織・麻薬王だったのだ。
 最近ではイスラム系などのテロリストに悪役の座を奪われてしまったが、麻薬問題がなくなったわけではない。生産し密輸してくる犯罪組織を糺弾することも必要だが、国内で麻薬を乱用している人々の実体や、麻薬断絶の方針方策なども重要ではないだろうか。

 麻薬王を演ずるのは我らがビリー・ドラゴ。爬虫類のようなぬめっとした雰囲気だが妙な色気があり、そして見る物を威圧する迫力と目つき。まさに悪役になるために生まれてきた男だ。それ以前のチャック・ノリスで端役を演じていたが、ついには影の主役に出世した。
 好きな俳優だったのでその後の活躍を期待したが、もう一つぱっとしないままだ。『トレマーズ4』(2004)で見かけたときはうれしかったが、あれはテレビ映画だよな。まあ、元気そうで何より。

 デルタフォースは麻薬組織壊滅のためにヘリを使って乗り込んでいくが、チャック・ノリスはそれに先だって単身コロンビアにパラシュート降下で侵入している。
 チャック・ノリスの狙いはもちろん麻薬組織壊滅でもあるが、それ以上にビリー・ドラゴに捕らえられガス室で処刑された部下にして友人の仇を討つためだ。ビリー・ドラゴが処刑のシーンをビデオに撮ってデルタフォースに送りつけてきて、それを見て怒りを抑えられなくなったチャック・ノリスが格闘訓練と称して隊員たちをつぎからつぎにボコボコにしていくところは名シーンだ。隊員たちは良い迷惑だが。
 麻薬撲滅といった大義名分よりも、個人的な復讐のために戦っていると感じさせるチャック・ノリスがイカす。

 アメリカはビリー・ドラゴが生産し密輸してくるコカインに苦しめられていたが、主権国家であるコロンビアに乗り込んでいって逮捕するわけにも。そこで、アメリカ上空を飛ぶジェット旅客機からビリー・ドラゴを放り出し、チャック・ノリスが落下中に捕まえるて自分が背負ったパラシュートで海に着水し、アメリカ領海内でビリー・ドラゴを逮捕する。このパラシュート無しでの高空からの落下はラストで再度登場し活かされる。
 それにしても、乗り込んでいって逮捕するのが出来なかったことから発生した事件を、最終的に武装した特殊部隊がヘリで乗り込んでいって、マシンガンやらロケットミサイルを撃ちまくって、爆薬で爆破してはいめでたしってのはどんなものだろうか。コロンビアにはいろいろ問題があるだろうが、独立した主権国家なんだしさぁ。
 例えば、日本で出回っている覚せい剤の中には北朝鮮で製造・密輸された物だという話や説がある。それが事実かどうかはここでは関知しない。ただ、自衛隊のレンジャー部隊がヘリで北朝鮮の覚せい剤工場を襲撃して、そこの人々を殺した上で工場を爆破し、覚せい剤王の金なんとかを空から落とす。といった具合に日本に当てはめてみると、この作品の無茶さがわかる。そこも含めてこの作品は好きなのだが、さすがアメリカというかなんというか。

 チャック・ノリスと敵側の長髪ハゲとの戦いがあるが、ここはさほど燃えない。チャック・ノリス自身はブルース・リーと一対一の対決をした『ドラゴンへの道』(1972)を観ればわかるように「燃える格闘戦」が出来る男。90年当初のハリウッド映画はまだまだクンフーや空手などの撮り方が上手ではない。

 監督のアーロン・ノリスはチャック・ノリスの実の弟。B級アクション映画をきっちりと仕上げてくるなかなか良い監督だと思うのだが、兄関連作品以外ではほとんど活躍しておらず、残念。

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コメント (2)

ネスカフェ:

チャックノリスの映画は、チャック自身が窮地に追いやられるというか傷つきながらも、それをバネに戦うという「努力」が常にあるというのがいいですよね。タカ派なんだけど、英雄気取りになることなく、争いに対して「空しさ」なんかを含んだビターな味わいがあるような気がします。その辺がせーガルやシュワのような大作路線から遠ざけている所以なんでしょうが・・。
でも、そういう姿勢は好きなんですけどね。

東森時音:

ネスカフェさんへ

チャックさんは頭に来てすぐに戦いに突っ込んでいくのではなく、耐えられる部分は耐えに耐えて、身内の人間などに害が及ぶところまできて、ついに立ち上がって敵陣に乗り込んでいくというところがありますね。
高倉健の『昭和残侠伝』などから分かるように、この姿勢は日本人の感性に合うと思うんですが、あまりウケていないようで。

バリバリのタカ派のようでいて、『ファントム 地獄のヒーロー4』では、凶暴な殺人鬼と対決して敗れ、命を落とすところをアクシデントで救われ、殺人鬼を叩きのめして逮捕したと勘違いされ苦しんでいました。本当のことを言い出せず、さらに殺人鬼の恐怖を夢に見る。珍しいと言っては失礼ですが、ちゃんと演技してました。
刑務所でその殺人鬼を担当している精神科医がビリー・ドラド。てっきり、ビリー・ドラゴが裏で殺人鬼を操っていると読んだんですが、みごとに外れました。っていうか、普通の役でビリー・ドラゴを出すなよ。

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