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『レザボアドッグス』 掃き溜めに犬

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『レザボアドッグス』 (1991) RESERVOIR DOGS 100分 アメリカ 1993/05/12鑑賞

監督・脚本:クエンティン・タランティーノ 製作:ローレンス・ベンダー 製作総指揮:リチャード・N・グラッドスタイン、ロンナ・B・ウォーレス、モンテ・ヘルマン 撮影:アンジェイ・セクラ 編集:サリー・メンケ
出演:ハーヴェイ・カイテル、ティム・ロス、マイケル・マドセン、クリストファー・ペン、スティーヴ・ブシェミ、クエンティン・タランティーノ

-オレはいつでも燃えている その17-
 当時、就職で東京にいたので渋谷はスペイン坂の上にあるシネマライズという劇場で観た。
 翌週、同じく就職で東京にいた学生時代の先輩と新宿で会って遊んでいた。
で、
「レザボアドックス観たか?あれ格好いいよな」
先輩が話を振ってきて
「観ましたよ、格好いいですよね」
と盛り上がった。
 時間軸が前後し交差したストーリー構成、悪党どもの会話、黒ずくめの葬式帰りのような衣装、などなど2人で話し込んだ。
「中でもラストのホワイト、エディ、ジョーが拳銃を突きつけ合う三角形が良いよな」
「あの緊張感は最高ですね。実に美しい構図ですね」
「ジョーがオレンジを撃つ」
「それに反応してホワイトがジョーを撃つ」
「親父のジョーを撃たれたエディがホワイトを撃つ」
「・・・」
「・・・」
「じゃあ、誰がエディを撃ったんだよ。あいつも死んでたぞ」
「そういえばそうですね。・・・きっとあれですよ、ホワイトが即死しなかったのは、弾丸が体内で変形せずに貫通したんでしょう。でもって、あそこは倉庫で鉄骨とかが剥き出しですから、弾丸がチューン、チューンと跳ね返ってその跳弾がエディに当たった」
「んな、マイクロブラックホールが地球に衝突する可能性程度の仮説じゃなぁ。んー、ここであれこれ考えていてもしょうがないな」
「しょうがないですね」

 というわけで、山手線に乗って一路渋谷に向かった。もちろん目的地はシネライズ。

「いいか、ジョーは取り合えあえず無視してもいいだろ。俺はホワイトを見てるから、お前はエディを注意して見てろ」
「了解です」

 90数分が過ぎてついに問題のシーン。まばたきもせずに文字通り目をこらして画面に観入った。エディ役のクリストファー・ペンは『ペイルライダー』の頃が嘘のように丸々と太って美味そうだった。って、食うなよ、想像の中で丸焼きにすんなよ。
 そして観客席に灯りがついて声を揃えてこういった。

「ホワイトが2発撃ってるぞ(ますね)!」

 そう、エディに撃たれたホワイトは、撃たれたっというアクションを見せた後倒れざまに銃口をエディに向けて一発撃っているのだ。さすがプロだなという話になった。今にして思えば、すでに大学を卒業して社会人になっているというのに、先輩後輩してなにやってんだ。
 この考えも1秒にも満たない短い時間の出来事なので確実とは言えなかった。はっきりと確認できたのはビデオ化されて、そいつをコマ送りで観てから。スローや早送りして観るのは好きではないが、こいつは例外ということにした。

 今回の文章を書くために久々に観直したが、オープニングのカフェでコーヒーを飲みながら「マドンナの『ライク・ア・バージン』はこういう意味だ」とかどうでもいいことをしゃべっている男たち。そして面子が揃うとレンガ塀をバックにずらりと歩き出す。
 そして、次のカットではいきなり宝石店襲撃に失敗して警察から追われているシーンになる。オレンジ(ティム・ロス)は腹を撃たれて白いシャツが血で真っ赤だしもうなにがなにやら。そこから一気に映画に観客を引きずり込む脚本の妙技。普通の映画ならばじっくりと描く宝石店襲撃をあっさり省略してしまう大胆さには驚く。それに宝石店のセットを組んだり本格的なロケをやる予算がないしな。

 そしてホワイト(ハーベイ・カイテル)とオレンジが集合場所の倉庫に到着してからは、回想シーンなどは別にするとほぼ密室劇になる。
 故淀川長治氏が「舞台劇を映画化したのかと思った」といったぐらい、映画としてはちょっと変わったスタイルにも驚く。それに倉庫だけで大半のシーンが撮れれば合理的だ。予算もないしな。

 下手をすると単なる自主映画で終わっていたところを、ちゃんとした映画に仕上げていたのは、上記のようにタランティーノが予算やそのスタッフ・キャストで出来ることと出来ないことをはっきりさせ、中途半端にやってしょぼくなるだけならばいっそのこと切り捨てるというセンスの良さだろう。自主映画出身の監督にありがちな「やりたいことは分かるんだけどね。意欲は分かるけどね・・・」というのを感じさせない。
 脚本を気に入り、出演だけではなく制作にも関わったハーベイ・カイテルの存在は大きいだろう。他の若手出演者にとって手を抜けない現場だったと想像できる。
 タランティーノという名前はどこかで聞いたんだが、新人なんだよな。さてどこだったか?としばらく悩んだ。後に『ブルース・ブラザース』を観ていて、ジェイクとエルウッドが昔のバンド仲間を捜すシーンで登場する大家の名前がタランティーノだった。多分、これが頭に残っていたのだろう。
 現時点で、一番気に入っているタランティーノ作品が、この『レザボアドックス』だ。それ以降の作品は、タランティーノの映画オタクが悪い方で出てしまっているように思う。『キル・ビル』なんか、まさにそれだ。

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