『め組の大吾-曽田正人』 1996年2月15日初版発行 小学館 少年サンデーコミックス
-オレはいつでも燃えている その11-
燃える作品について書き始めて10本。そろそろ空気も乾燥してくる季節だというのに燃えてばかりだと危険だ。そこで火を消すのを仕事とする消防士のマンガで、燃焼の勢い抑えることにした。で、読んだのが『め組の大吾』全20巻。
結果として余計と燃えた。これが火にニトログリセリンを注ぐってヤツなんだろうか。
子供の頃に自宅が火事になり、炎の中から消防士に助け出されたことのある朝比奈大吾。彼は高校を卒業すると消防士になり中央消防署めだかヶ浜出張所に配属された。
そこにいる消防士たちはあまりやる気を感じさせないだらけた連中ばかり。めだかヶ浜出張所は「“め”ったに火事がない、市内一“め”でたい出張所」として通称「め組」と呼ばれていた。しかし、実際は一度火災が発生すれば最高の働きをする火消しのプロたちだった。
め組の一員となった大吾は災害現場で目覚ましい活躍を繰り広げる。もともとのやる気に加え、ナチュラルボーンで持っている火事に対処する才能、根を上げない根性。そしてなによりもたぐいまれな大バカヤローだったからだ。
スポ根物の変種ではあるが、その手の話に付き物である「調子に乗りすぎて失敗する」とか「大きな障害にぶつかって悩み挫折する」などが出てこない。オープニングのナレーションではそれを予感させる回もあるが、終わってみると大吾が人並み外れた勘や思い切った決断力で大活躍している。その点についてはドラマとして物足りなさを感じる人もいるかもしれないが、火事を始めとした災害現場での失敗は被害者の死や大怪我になってしまうのであえて避けたのだろう。
大吾の消防士としての能力が目覚めていくにつれ、発生する災害も大きくなっていく。ビル火災、温泉ホテル火災、ヘリコプター消失などなどで、作者も調子に乗って「次はこんな災害、こんな困難」とエスカレートしていったのだろう。『ドラゴン・ボール』で登場する敵がエピソードが進むごとにインフレ的に強くなっていったのと同じようなもので、作品のスタイルからいうと致し方ないことなのかもしれない。
それでも勢いで読ませてくれるので、さほどリアリティについて悩むことはない。終盤でのスマトラ島の森林火災に巻き込まれた高校時代の恩師にして大吾が惚れている落合先生を救うために、単身インドネシアに乗り込むのはさすがに無茶だし、後にハイパーレスキュー隊が結成され災害救助のため世界中を飛び回っているというのは、「お前ら国際救助隊ことサンダーバードか」てな感じだが、それぐらいの大風呂敷を広げないと話がまとまらなかったのだろう。
オレが好きなのは大吾がレスキュー隊試験に挑戦するところ。前夜に山火事のため出動して女の子を抱えて一晩中駆けずり回り、身も心もズタボロになったままで過酷な試験を受ける。だが、すでに限界を迎えていたかに思える大吾の体は、極限状態においてさらに隠れていた力を発揮するのだ。燃えるぞー!
それにしても、マンガで読んだり映画で観ている分にはいいが、オレにとって消防士というのはなりたくない職業だ。むしろなれないというか、もしも間違って消防士になってしまったら被災者にとって迷惑だろう。
公務員なのでさほど給料もよくないのに、現場ではまさに命がけ。仕事に関する危険度は警察官や自衛官よりも上だろう。警官が命の危険にさらされる状況ってのは日本の場合少ないだろうし、自衛官の場合はさらに少ないはず。火災の発生数を考えると消防士ってのは過酷な仕事だ。
これから火を使うことが多くなる季節。火の始末には気をつけよう。とりあえず、オレは火災原因として大きな割合を占めるという寝タバコをやめることにする。・・・って、そもそもタバコ吸わないか。
じゃあ、台所火災で最も危険と言われる天ぷらをやめる。・・・って、男の一人暮らしで天ぷらなんか調理しないよ。
類人猿段階まで退化すれば火事の心配はなくなるが、それも不便なので、とりあえず台所と自室にそれぞれ消火器を置いているのでそれで良しとしよう。