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『ジャガーノート』 ファロンはチャンピオン

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『ジャガーノート』 (1974) JUGGERNAUT 111分 イギリス

監督:リチャード・レスター 製作:デヴィッド・V・ピッカー、リチャード・アラン・シモンズ 脚本:リチャード・デコッカー 撮影:ジェリー・フィッシャー 美術:テレンス・マーシュ 音楽:ケン・ソーン
出演:リチャード・ハリス、オマー・シャリフ、シャーリー・ナイト、アンソニー・ホプキンス、イアン・ホルム

-オレはいつでも燃えている その4-
 1200人の乗客・乗員を乗せイギリスからニューヨークへと向かう客船ブリタニック号。名前が不吉な感じな船だが、荒波に揺られ多少ペースを落としながらもそれなりに順調な航海だった。
 しかし、ブリタニック号を所有する運輸会社に一本の電話がかかってくる。ジャガーノートと名乗るその男は、ブリタニック号に7つの爆弾を仕掛けたと告げ、爆発を防ぐためには50万ポンドを払えと脅迫してくる。そして船内にいくつものドラム缶爆弾が発見され、デモンストレーションとして小さな爆発が起こる。ブリタニック号の航海はすでに安全でも快適でもなくなっていた。

 荒れる海の中、ファロン少佐(リチャード・ハリス)率いる爆発物処理班は犠牲者を出しながらもなんとか船に乗船し爆発物の解体に取りかかる。
 船長(オマー・シャリフ)はパニックが起きないよう乗員に冷静な指示を下し、乗客には途中まで爆弾の事実を伝えず平常通りを装ってパニックを防ぐ。
 その間に、妻と子供が偶然ブリタニック号に乗っていたスコットランドヤードの刑事はわずかな手がかりからジャガーノートを探し出そうと懸命な捜査を続ける。
 プロフェッショナルな男たちとジャガーノートによる静かな戦いが始まった。

 ストーリーだけ聞くとサスペンスアクションっぽいが、ハリウッド映画ではなくイギリス映画だけにかなり様子が違う。派手な盛り上がりはあまりなくて、アクションよりも登場人物の描写に力が入れられている。
 監督のリチャード・レスターはオフビートなギャグを得意とする人だが、この作品ではさすがにギャグは抑えている。それでもきっちりリチャード・レスター色が出ているのはさすが。実力がある人は何を撮ってもちゃんと仕上げてくれる。ビートルズ主演でアイドル映画の皮をかぶったハチャメチャギャグコメディ『HELP!四人はアイドル』から『スーパーマン III/電子の要塞』まで幅広い。そしてどれもきっちりリチャード・レスターだ。
 リチャード・レスター作品常連の小太りな男が乗員役でちゃんと出演しているのが嬉しい。船が揺れて船酔いになった人ばかりでろくに食事ものどを通らずに席を立っていく食堂で、ただ1人ニコニコしながら料理を平らげているシーンが笑える。

 一番のアクションシーンは爆発物処理班が航空機からパラシュート降下して海に着水し、が風や波が荒れ狂う中を船まで泳ぎ着くシーン。地味だが犠牲者も出て緊張感がある。 そして一番の見せ場はドラム缶爆弾の解体シーンだろう。細かい作業を一つ一つクリアしていくリアルさだ。アクション映画の解体シーンではいきなり爆弾の蓋を開けて赤と青のどちらのコードを切るかだけというのが多いが、この作品では神経を張りつめた時間のかかる息のつまる作業だ。だからこそファロンたちは時に軽口を叩くことで緊張をほぐしているのだろう。
 小さなミスで命を落とす作業はまさにプロの仕事。オレなんかだととても緊張に耐えられなくなって逃げ出すかパニックを起こしてしまいそうだ。就きたくない仕事度はかなり高い。

 爆弾のことが乗客に知らされ、しかも解体中の事故で船のボーイが死んだ後で、乗客の気を紛らわせるために予定通りに開催される仮装パーティーが良い。人々は日常を演じながらもその奥には無常感が立ちこめている。希望と諦めの狭間で揺れるシニカルな視点がイギリス風。そこでのダンスシーンと爆弾の解体がカットバックも冴えてる。
 解体中の事故で部下を失い自暴自棄になったファロンと再び作業に取りかかるよう説得する船長のやり取りは、リチャード・ハリスとオマー・シャリフという名優だけあって深みがある。でも、オマー・シャリフというとオレには『トップ・シークレット』(1984)がまず頭に浮かぶ。車ごとプレス機にかけられ金属の塊になるが、それでも無事に生きていてチョコチョコと現れるオマー・シャリフ。

 解体されることを見越してジャガーノートはいくつもの罠やトリックを仕掛けている。爆弾魔というのはかなり性格が悪いのだろう。
 この作品でも最後には「赤の線を切るか、青の線を切るか」という状況になる。もしかしたらこの作品から広まったのだろうか。オレが爆弾の設計者ならば50%の確率で解体されてしまわぬように、赤と青に加えて白・黒・抹茶・小豆・コーヒー・ゆず・桜ぐらいに増やしておく。これならおそよ11%まで下がる。
 だが、ただ二者択一のシーンではなく、無線越しにジャガーノートと会話しながらの駆け引きになっていて観ていて息詰まる。
そして結果は、

「ファロンはチャンピオン♪バンバンバン」

 ここでアップを使わないのがまた良いねぇ。

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