『天山回廊』 (1987) 海市塵廊 90分 中国/香港 1988/01/22鑑賞
監督:ツイ・シャオミン 原案:ツイ・シャオミン 脚本:イップ・ナン、チャン・キット、ツイ・シャオミン 音楽:ジョセフ・クー
出演:ユー・ヤンクャン、パサ・ロマーニ、コニー・クアン、ツイ・シャオミン
-オレはいつでも燃えている その2-
無茶。はっきりいって無茶。『○○』のスタントでは死人が出ているといった噂を昔はたまに聞いたが、この作品では絶対に死んでる気がする。中国製作なので撮影中の事故で1人や2人ぐらい死んでもうやむやのまま闇に葬られているんじゃないだろうか?
舞台は数昔前の中国。ロシア革命の余波で国境近辺が不穏当な状況である。第二次大戦直前か?
主人公タンは冒険家にしてカメラマン。捨て子だったのを拾われて育ち、自らのルーツを求めて中国大陸を旅している。
タンがシルクロードを渡るキャラバン隊と一緒に旅をしていると、断崖絶壁からロープを伝わって大量の盗賊たちが襲っている。なんでもこの盗賊たちを演じたのが人民解放軍の特殊部隊だそうだ。爆発がある度にドッカーンと派手に吹っ飛んでくれる。
爆発で人間が吹き飛ぶシーンは、普通の映画だと見た目は派手だがほとんど威力のない爆薬を使い、トランポリンなどでジャンプしたりワイヤーで引っ張ったりしているのだが、この作品ではまんま火薬の爆発力で吹き飛んでいるようにしか見えない。撮影が巧妙なのか、マジ火薬なのか?答えを知りたいような知りたくないような。
盗賊を退けた後、唐突に大空に蜃気楼が映し出される。そこに映っていたのは民族衣装を着た美しい女性だった。
そしてその女性に一目惚れしたタンは情報を集めるために一度上海に戻る。
上海でサモ・ハン・キンポーを二回り細くしたような相棒マオと、砂漠地方に詳しい若い女性と合流し、天山へと向かう。
苦労の末ようやく蜃気楼の美女と巡り会うが、彼女は極悪な盗賊団の首領でその美しさからは信じられないほど残虐非道だった。主人公の戦いを挑み、ほぼ互角の腕前だし、砂漠をさ迷うシーンでは、倒れた馬の首に歯を立てると動脈を引きちぎり、血を飲んでのどの渇きを癒やす。外面似菩薩内面如夜叉とはまさにこのこと。
そんな彼女が主人公の愛で生まれ変わるのが定番だが、この作品ではちょっと心が動くものの最後まで悪女のまま。いっそあっぱれ。
といった具合にそんなこんながあって、盗賊の砦が襲撃されるラストに突入。
タンや首領を差し置いて脇役のマオが大活躍。それもそのはず、マオ役のツイ・シャオミンは監督にして原案と脚本も担当する映画の中心人物だったのだ。銃弾の中を駆け回って、小さな爆発で吹っ飛び、中ぐらいの爆発でも吹っ飛び、もちろん大爆発でも吹っ飛ぶ。
二階の窓から飛び出した瞬間に建物が爆発して炎に包まれるシーンは実にきわどいタイミングでまさに命がけ。しかも地面に5メートルほど下の地面に叩き付けられる。すごいなぁ。でも、お前脇役じゃん。
結局、美味しいところはほとんど持って行ってラストシーンでは実質的に主役の座におさまっている。監督の職権乱用じゃないのか、これは。
終盤ではほとんど見せ場がないタンだが、渋めの二枚目でかなりクンフーが達者だ。ほとんど情報がないのではっきりしたことは分からないのだが、京劇出身の役者らしい。レオン・カーフェイにちょっと似てるかな。
冒頭の空撮から渓谷を進むキャラバン隊までのカットはなかなか素晴らしい。中国政府が全面協力しただけあって、普段では見ることのできない中国奥地の風景が全編を彩っている。これも見所の一つ。
騎馬民族の踊りや、『ランボー3』にも登場していた馬に乗って羊の死体をボール代わりに使うポロも登場する。ちょっとした観光映画でもある。
主人公の出生の秘密などは解き明かされないまま映画は終わる。全体的な完成度では「うーん・・・」な点もあるが、とにかく熱く燃えさせてくれる作品なのは間違いない。