
『エスケープ・フロム・L.A.』 (1996) JOHN CARPENTER'S ESCAPE FROM L.A. 101分 アメリカ 1996/11鑑賞
監督:ジョン・カーペンター 製作:デブラ・ヒル、カート・ラッセル 脚本:ジョン・カーペンター、デブラ・ヒル、カート・ラッセル 撮影:ゲイリー・B・キッブ 音楽:シャーリー・ウォーカー、ジョン・カーペンター
出演:カート・ラッセル、ステイシー・キーチ、スティーヴ・ブシェミ、ピーター・フォンダ、ジョージ・コラフェイス、ブルース・キャンベル、パム・グリア、アル・レオン、ロバート・キャラダイン
-オレはいつでも燃えている その9-
海の大嵐の映像や津波の映像を映画で観る度に、「あの大波でサーフィンをやったら面白い絵になるだろうな」というふざけたことを考えていたのだが、まさかそれを本当に映画館のスクリーンで観ることができるとは思わなかった。どう考えてもバカなアイディアを真面目に映像化するとは、やはりジョン・カーペンターは愛すべき大バカ野郎だ。昨年のスマトラ島沖地震津波で多数の死者が出てしまったので不謹慎と捉える人もいるかもしれないが、映画は映画、現実は現実だしなぁ。
『ニューヨーク1997』(1981)で巨大な監獄と化したマンハッタンから大統領を救出したあの“最悪の悪党”スネーク・プリスケンが帰ってきた。
軍に捕らえたれたスネークは10時間で死亡する致死性ウイルスを注射され、ワクチンを餌に任務を負わされる。地震によって本土から切り離され監獄となったロサンゼルスに侵入して、大統領の娘が奪い去った衛星兵器の起動装置を取り戻さねばならないのだ。
前作のニューヨークにしろ今作のロサンゼルスにしろ強固な壁で囲って監視が見張りについて脱獄不可能ではあるが、内部に看守などはおらず囚人たちが好き放題に暮らしている。刑務所というより島流しみたいなものだろうか。
凶悪な犯罪者が山ほど登場するが、怖ろしいと言うよりもむしろちょっと笑える奴らばかりだ。サーフィン野郎のピーター・フォンダにオカマ役のパム・グリア(あんた女だろ)、観光地図を売り歩いている“スターマップ・エディ”のスティーヴ・ブシェミ。
クレジットにブルース・キャンベルの名前があるが「はて?どこに出ているんだろう」とてんで分からなかったが、整形手術に整形手術を重ねてフランケンシュタインの怪物のような顔になってしまった整形外科医の役だった。そら分からんわ。
『ゴースト・ハンターズ』(1986)にも出演していた中国系俳優アル・レオンがパム・グリアの手下として顔を出しているのがファンには嬉しい。
この面子のせいもあってか、ハードな近未来SFアクションだった『ニューヨーク1997』と比べるとかなりなバカ映画になっている。ジョン・カーペンターは年を取れば取るほどバカになってないか?この場合のバカはもちろん褒め言葉だ。
カーペンターは例によって音楽も担当していて、例によってベンベンな曲だ。
この映画は派手なシーンがある割に、意外と低予算なんじゃないだろうか。
スネーク・プリスケンは強くてそして頭が切れる卑怯者。4人組の敵を前にして、「バンコク式決闘で行こうぜ」と空き缶を拾い、「落ちた瞬間に銃を抜きな」と言って上に放り投げる。そして、空き缶がまだ宙にあるうちに銃を連射して連中を撃ち殺す。アメリカ犯罪史上最悪の犯罪者だけのことはある。もしも誰かと決闘することになったらこの手でいこう。卑怯でも死ぬよりかはマシだ。
危機また危機の連続にあまり緊張感がないし、途中で出会った黒髪の女性がヒロイン役になるのかなと思ったらあっさり死ぬ。そもそも命を形に取られた意に染まぬ任務とはいえ、スネーク・プリスケンが何をしたいのかがあまり見えないため方向性がはっきりしない。だが多少の無理もあるストーリー展開を勢いで乗り切っている。
またもや地震が発生したロサンゼルス島を津波が襲い、その津波でスネーク・プリスケンとピーター・フォンダがサーフィンをするシーンは『パイプライン』っぽい曲も合っていて最高!
アメリカの大統領は終身制となり独裁者として君臨している。大統領に逆らった者はロサンゼルス島に送られたり処刑されてしまう。監獄には犯罪者だけではなくイスラム教徒や大統領に異を唱える者も多数収容されているのだ。
そしてスネーク・プリスケンは衛星兵器を利用して独裁者が作り出した秩序を破壊し、世界中から近代文明を消し去る。スネークは犯罪者にして究極のアナーキストだったのだ。
世界から電灯の明かりが消え闇に包まれた中、スネークがつぶやく。
「Welcome to the human race.」
スネーク・プリスケンといえば左目のアイパッチがトレードマークだが、実はものもらいの眼帯じゃないのかという説を唱えている。今のところ賛同者はいない。