« 『シコふんじゃった。』 オレだってたまには泣く、その26 | メイン | 『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』 オレだってたまには泣く、その28 »

『ワイルドバンチ』 オレだってたまには泣く、その27

B000CNDI22.jpg
『ワイルドバンチ』 (1969) 137分(オリジナル版)・146分(ディレクターズカット版) アメリカ

監督:サム・ペキンパー 製作:フィル・フェルドマン 原作:ウォロン・グリーン、ロイ・N・シックナー 脚本:サム・ペキンパー、ウォロン・グリーン 撮影:ルシアン・バラード 音楽:ソニー・バーク
出演:ウィリアム・ホールデン、アーネスト・ボーグナイン、ロバート・ライアン、ウォーレン・オーツ、ベン・ジョンソン

 時は1913年。20世紀になってすでに10年以上が過ぎ、アメリカが前近代から近代に移っていった、そんな時代の変わり目の物語だ。
 『明日に向って撃て!』の主人公ブッチ・キャシディとサンダンス・キッドが率いていた無法者の集団が「ワイルドバンチ」である。またの名を「壁の穴強盗団」といい、スパゲティが美味しいことでも有名だ。いや、それは「壁の穴」か。
 「壁の穴強盗団」とはワイオミング州にあるHoll in the Wallと呼ばれる岩の渓谷を根城としていたから付いた名だそうだ。スパゲティ屋の「壁の穴」はウィリアム・シェークスピアの『真夏の夜の夢』に登場する言葉から取ったそうなので両者には関係がない。最初に店名を聞いたときには明太子スパゲティを食っていると突然店内で銃撃戦でも始まるのかと期待したのだが、そういうハプニングないしアトラクションはないとのこと。残念である。

 ラストの銃撃戦の派手さは有名だが、この作品で最高のシーンはその直前にある。
 ワイルドバンチの残党であるパイク(ウィリアム・ホールデン)たちはアメリカ国内で銀行強盗を行い、賞金稼ぎなどに追われてメキシコまで流れ着く。メキシコでは『戦うパンチョビラ』(1968)のパンチョ・ビラなど革命軍が政府軍と戦っている。思想などに興味のないパイクたちは米軍から武器を奪いそれを政府軍、といっても実体は将軍の私立軍隊のようだがそちらに売り渡す。だが仲間の一人であるメキシコ人のエンジェルが、16箱あった武器のうち1箱をこっそり革命軍に渡していたのがばれエンジェルは将軍らに捕らえられリンチにあう。
 パイクたちは将軍からもらった金を持ってそのまま立ち去ることもできた。しかし、女郎屋でパイクはウォーレン・オーツらに言う。
「Let's go.」
 それに対してウォーレン・オーツの返答もたった一言。
「Why not.」
 女郎屋を出た三人。女に興味がないのか外で待っていたアーネスト・ボーグナインがすべて承知とばかりにニカッと笑う。四人は無言のまま馬から拳銃やショットガンなどの武器を取り出し、横一列になって将軍のところに向かって歩き出す。

 これは「命を捨ててでも仲間を救いに行った」という悪い意味での男の美学的なシーンではない。そんな神風特攻隊のような理由ではなく、ただやらなければならないことをやりに行っただけでのことだ。
 そもそも、パイクたちは自分たちの死期が近いことを悟っていた。将軍たちに殺されるからではなく、いわば生き方の末期ガン状態に陥っていたのだ。病気の末期ガンを患った『生きる』の志村喬は自分が存在した証として公園を作った。パイクたちはどうせ死ぬのならば仲間は見捨てないという、無法者なりの筋を通すことを選んだのだろう。

 西部劇に分類されていることがあるこの作品だが、断じて西部劇ではない。それはコルトオートマチック拳銃やブローニング機関銃が登場するからではなく舞台が近代であるからだ。
 西部劇の時代は同時に無法者の時代でもあった。駅馬車襲撃や銀行強盗をして金を奪い、その金で酒を飲んだり女を買い、保安官や賞金稼ぎに撃ち殺されたり捕らえられて縛り首になったりする。そんな牧歌的な(どこが牧歌的って気はするが)前近代の自由さが近代という新しい社会では許されず、パイクたちはアメリカから逃げ出した。だが、逃げ出した先のメキシコでも革命という近代の波が吹き荒れていた。新しい時代に合わせて生き方を変えるか、それとも無法者のままでいるか。だが無法者を選んだ場合には未来はなく、もはや死ぬ運命だったのだ。
 登場人物のほとんどが死んでしまった後で、ちゃっかり生き残った老人が「これまでの様にはいかないがな」と無法者から犯罪者へと生き方を変えることで近代に適応する。これを狡いと見る向きもあるかもしれないが、滅びの美学だなんだと言っても死んでしまっては意味がない。生き方を変えられるならば変えた方が賢くはある。映画のドラマ作りとしては前者の方が盛り上がるのだろうが。

 ちなみにワーナーから発売されているDVDは両面一層。映画の途中でA面からB面へとひっくり返さねばならない「お前はレーザーディスクかっ!」的仕様になっている。手間は大したことじゃないが、映画がそこで中断されるのはかなりイヤな感じだ。値段が変わったりキャンペーンなどで型番は何度か変わっているが同一マスターのままらしくおそらく現行のも両面一層だろう。片面二層で出してくれ。次世代メディアの登場も近いので今さらDVDに変更はないだろうがなぁ。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.jion-net.com/mt/mt-tb.cgi/4337

コメントを投稿