
『アメリカの友人』 (1977) DER AMERIKANISCHE FREUND 126分 西ドイツ・フランス
監督:ヴィム・ヴェンダース、製作:ミヒャエル・ヴィーデルマン、原作:パトリシア・ハイスミス 脚本:ヴィム・ヴェンダース 撮影:ロビー・ミューラー 音楽:ユルゲン・クニーパー
出演:デニス・ホッパー、ブルーノ・ガンツ、ジェラール・ブラン、ダニエル・シュミット、ニコラス・レイ、サミュエル・フラー
制作されたのは1977年の作品だが、1987年の中頃にリバイバル公開された。当時、大学のシネマ研究会の1年生だったオレは、先輩たちが「『アメリカの友人』は面白いな」「すごいな、あれは」という話を耳にはさんで取りあえず映画館に向かった。ヴェンダースって誰?デニス・ホッパーは知ってるけど、ブルーノ・ガンツって誰?ロボコンの先生?それはガンツ先生か。
今みたいにネットでちょちょちょいのちょいと調べることが出来ない時代だったので、先輩たちが話していた評価だけを材料に観に行った。オレもその頃はフットワークが軽かったのだ。
さして下調べをしていなかったので、10年前の作品だとは知らず、映画が終わるまで最近の作品だとばかり思っていた。実際、古さを感じさせない画面だ。今にして思えば、「ブルーノ・ガンツ若いっ!」なのだがブルーノ・ガンツを知らなければ意味がない。デニス・ホッパーはあまり老けない人なので製作年度の参考にはならないし。
冒頭でいきなり贋作画家として登場するのが傑作『夜の人々』や『大砂塵』のニコラ・レイで、結構セリフもあるのだがそれもちゃんとこなしていて味のある老人役を演じている。
名監督の特別出演としては、主人公たちが狙う犯罪組織のボスを演ずるのがサミュエル・フラー。セリフはまったくなく(確か一言もしゃべらなかった記憶があるが間違いかも)、ただその存在感で画面を圧倒してくれる。白髪がカッコいい。他にはダニエル・シュミットも出ているようだが、どこでどの役かは不明。というより顔を知らん。
映画はパトリシア・ハイスミス原作の映画化で、『太陽がいっぱい』や再映画化の『リプリー』の主人公トム・リプリーシリーズの一作になる。パトリシア・ハイスミスは同じ主人公によるシリーズ物が好きではなく、ただ一つの例外がこのトム・リプリーシリーズだそうだ。
『アメリカの友人』でトム・リプリーを演ずるのはカウボーイ・ハットをかぶったデニス・ホッパー。原作も 翻訳版で出版されているが、こちらだとあくまでもトム・リプリーが主人公。
映画は原作通りではなく原案レベルに止めて、リプリーがオークションに出した贋作を偽物だと見抜いた額縁職人のヨナタンに焦点を当て、彼を主人公にしている。
人を殺したことなど無い、それどころか前科もない殺し屋を捜していたリプリーは、白血病を患っているヨナタンに、このままでは死期が近いので高度な医療を受ける必要がある。そのためには大金が必要だが、ある男を殺してくれたら大金と与えさらに最高の医者を紹介しようと持ちかける。
悩んだ末に(悪党側いわく)簡単な仕事を片付けたヨナタンは泥沼にはまっていく。リプリーとヨナタンはお互いに奇妙な友情を感じあっていたため、リプリーは彼を救おうとするが、すでに動き出した歯車は簡単には止まらなかった。
ハリウッド映画ともフランス映画とも違うこの西ドイツ映画は淡々と、ひたすら淡々と進んでいく。列車での殺害シーンがスリリングではあるが、それもこの映画の静けさを乱すほどではない。
終盤近くの、走行中の赤いフォルックスワーゲンビートル(旧型)の中でヨナタンとその妻が会話するシーンでなく。ヨナタンは間近に迫った死から逃れられないことを感じつつも嘆き悲しむでもなく喚き叫ぶでもなく、ただひたすらに静かだ。ヨナタンが殺しという仕事に手を染めたのも、自らを延命するよりも妻と子供のためだった。
実に美しく、そして悲しい。