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『俺たちには今日がある-トニー・ケンリック』 オレだってたまには泣く、その9

『俺たちには今日がある』 トニー・ケンリック 角川文庫

『俺たちには今日がある』という邦題はなにやらアメリカン・ニューシネマっぽくて嫌な感じだが原題は『TWO LUCKY PEOPLE』。『2人の幸運な人』のタイトル前半通り2人の男女が主人公なのだが出会った時点で2人とも不治の病に冒され余命はわずか1ヶ月。はてさてどこが幸運なのか?

『三人のイカれる男』など痛快犯罪ギャグ小説で知られるトニー・ケンリックの作品。中期以降はシリアス路線を書き始めて『上海サプライズ』などを手がけている。タイトルを聞いて思い当たる人もいるかもしれないが、当時結婚していたショーン・ペンとマドンナ主演の『上海サプライズ』(1986)の原作だ。せっかくトニー・ケンリック作品が映画化されたのによりによってあの映画ってのは世の中厳しいな。映画館まで観に行っちゃったよ。
 オレが持っているのは1986年1月30日発行の第3版。初版は1985年2月10日でおそらくすでに絶版。大量に売れたという小説ではないだろうから古書店に出回っている数もそれほど多くはないだろう。
 もしも「読んでみたい」と思ってくれた人がいたとしてもなかなか読む機会がないのが残念。『リリアンと悪党ども』など3冊が1998年に復刊されているが、角川書店には残りのトニー・ケンリック作品の復刊もお願いしたい。それから未訳作品の出版も頼む。

 主人公ハリーはある奇病に罹ってしまった。治療法はなくおよそ1ヶ月後には死ぬと医者の保証付きだ。
 医者は同じ境遇の相手と話せばお互いに少しは楽になるのではないかとグレースという女性を紹介する。そうして出会った2人はふとしたことから関わってしまったギャングのボスを倒すことで自分たちが生きた証を世の中に残すことにする。
 しかし、2人には銃や力があるわけではない。そこである特別な才能を持った人々を集めることにする。その人々とは世界最低の料理人に世界最低の運転手、世界最低の競走馬など世にも最低な面々ばかり。いったい2人が思いついた奇想天外な作戦とはいかに?

 ついにギャングのボスであるジョン・コリノスを追いつめた2人だが、このままコリノスを見逃すか、警察よりも数十秒ばかり早くエレベーターで上がってくるコリノスの手下に殺されるかという選択を迫られる。2人はためらわずに片方を選ぶ。
 そしてシーンは変わり、悲しげな顔の牧師が聖書を読んでいる。
「主はわが羊飼い、わが導き手。主によりてわれ-」
 だがその後ろで流れる曲は物語の冒頭近くでも使われたレゲエミュージック。
「おれは行くんだトリニダッドへ
 死ぬほど欲しい太陽あびに
 ヘイ、ブラウンシュガー、レゲエで踊ろう
 楽しまなけりゃ人生じゃない・・・・・・」

 このラスト1ページが泣ける。
 まさかトニー・ケンリックで泣くことになるとは思ってもみなかったが、今回読み直してみてやっぱり泣いた。
 うん、やっぱり復刊してよ角川書店さん。

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