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『トラブル・バスター2 俺とボビー・マギー-景山民夫』 オレだってたまには泣く、その14

『トラブル・バスター2 俺とボビー・マギー』 景山民夫 角川文庫

 テレビの構成作家出身で、エッセイでユーモアの中に様々な真っ当ではないこと、不正義、不誠実さについての怒りを書きつづり、それらについての答えを求めたのだろうか、新興宗教の「幸福の科学」に入信してフライデー廃刊運動などにのめり込み、自宅でのボヤで焼死した景山民夫。
 オレ自身は宗教に興味がない、消極的にではなく積極的に興味がないが、景山民夫が答えを求めて宗教に進んだというのはまったく理解できないわけではない。ただ、宗教は生きていく上での指針、ガイドラインにはなるが答えは与えてくれないとは思っている。
 そして、景山民夫がどういう人物であったかとその作品がどうであったかは関係があるとも言えるし無いとも言える。
 傑作冒険小説『虎口からの脱出』やスティーヴン・キングの『シャイニング』を思わせるホラー小説『ボルネオホテル』など、景山民夫は何作もの面白い小説を書き残している。『トラブル・バスター』シリーズもその一つだ。

 主人公の宇賀神邦彦は根っからのテレビ屋だが、制作現場で幾度もトラブルを起こし、今では関東テレビの総務部総務課制作庶務係に籍を置いている。そこでの仕事は関東テレビで発生した様々なもめ事、つまりトラブルを解決すること。すなわち「トラブル・バスター」だ。
 離婚経験があり現在は一人暮らし(同居人として猫がいる)、そして額も徐々に後退しつつある宇賀神がテレビ局や芸能界の裏側で繰り広げる一人称ハードボイルド連作集だ。もはや私立探偵では嘘くさいし、刑事だと物語の制約が多すぎる。景山民夫は自らの古巣であるテレビ業界を舞台にハードボイルドを見事に成立させている。

 主人公以上に傑作なのが宇賀神の上司で制作局長の田所局長だ。「バカヤロー」を連発する口の悪さと服装の趣味の悪さ。だがこの田所が実に良いのだ。田所も根っからのテレビ屋でしゃべり方や外見はともかくまっとうな“男”である。宇賀神と田所のやり取りは過去の様々な作品でお馴染みなウェルメイドさを持っているが読んでいて楽しい。
 第2巻『俺とボビー・マギー』の終盤で、宇賀神の身を守って怪我をした犬ボビー・マギーについての片を付けるため宇賀神はヤクザが運営する芸能プロダクションへと殴り込みをかける。そしてその事件のため、宇賀神はトラブル・バスターの仕事から外されてしまう。新しく配属になった史料編纂室は定年間際の爺さんが3人いるだけの閑職に思われたが、その実体は意外なものだった。
 そして、ラストに田所から電話がかかってくる。例によって「宇賀神か、バカヤロー」で始まる会話の内容は宇賀神を再びトラブル・バスターに戻すというものだった。「聞いてんのか、バカヤロー!」で終わるこの会話、といっても田所が一方的にしゃべっているだけの文庫本で6行ちょっとで泣いた。男だねぇ、田所局長。

 1996年に『さすらいのトラブルバスター』というタイトルで松竹制作の映画にもなっているがこれは基本的な人物設定だけを流用したまったくの別物。コメディ仕立てになっているがこれといって面白くもなく、単なる駄作。
 監督は井筒和幸。テレビで他人の映画にケチをつけてる場合じゃないだろうに。

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