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『銀のロマンティック・・・わはは』 オレだってたまには泣く、その1

『銀のロマンティック・・・わはは』川原泉 白泉社文庫『甲子園の空に笑え!』収録

 なにかしらの作品で泣くということはほとんどないオレだが、たまには泣くこともある。
 そんな、オレを泣かせた作品をしばらくの間紹介していくことにしよう。
 普段の一人称は私だが、「泣く」関係では日常で使っているオレで通すことにする。

 まず一作品目が白泉社文庫『甲子園の空に笑え!』に収録された川原泉の長編『銀のロマンティック・・・わはは』である。
 お世辞にも上手いとは言えない絵、怒濤のごときセリフや解説の多さ。時に難解で哲学的なシーンとそれに溺れず照れ隠す客観性。川原作品は実に独自独特である。
 始めて『銀のロマンティック・・・わはは』を読んだのはコミックスで出ていた頃、まだ10代の高校生時代のはずだ。さすがに自分で買って読んだのではなく、3歳上の姉が持っていたのを借りて読んだ。
 でもって、泣いた。

 世界的バレエダンサーの娘である由良(聖ミカエル学園の高校生。お嬢様学校として有名だが由良はとてもじゃないがお嬢様的性格ではない)と、怪我でスピードスケート選手として活躍することができなくなった男子大学生の忍がスケート場で偶然に出会う。遊びで3回転ジャンプに挑戦したところ二人ともやすやすと3回転半のトリプルアクセルジャンプを跳ぶ。そしてそれをたまたま居合わせたフィギュアスケートのコーチに見いだされ、二人はフィギュアスケートの世界に入っていくことになる。
 これだけ書くとあまりにも偶然続きでいかにもな少女マンガに思えるが、なにしろ川原泉なので脱力感に満ちあふれていて好みは分かれるだろうがオレとしてはそこが良い。
 フィギュアスケートを始めた二人は日本のトップとなり世界に挑んでいき、そして世界の壁の厚さに圧倒される。技の冴えは申し分ないのだが、フィギュアにおいて重要な表現力に欠けているのだ。
 そして悩んだ二人は決め技として4回転ジャンプ・クワドラプルを習得しようと試み、犬のポチの協力もあってついには成功率50%程度だがクワドラプルができるようになる。しかし、忍がスピードスケート時代に負った怪我が再発し・・・

 終盤、もうこれが最後のペアスケートと知りつつスケートリンクの上に登場する二人。
 これまであった力みも消え、ただ楽しく滑る。ある意味悟りに達した二人はリンクで銀のロマンティックを織る。

アナウンサーと解説の
「それに何よりも表情がいいです。実にいい顔で滑ってます」
「なるほど・・・」
「え・・・も・・・もしかして本当に笑ってません?」
「・・・・・」
からクワドラプルへ、結果は分からないまま後日談になり最後のコマの
「テクニカル・メリット 6.0 6.0 6.0 6.0 ・・・」
「アーティスティック・インプレッション 6.0 6.0 6.0 ・・・」
「-夢見たものは 夢見たものは銀のロマンティック」
「・・・そしてまぶしくて まぶしくて もう何も 見えない・・・・・・」

に至る8ページの間、もう涙がだだ漏れ。
最初に読んだときから、この文章を書くために読み直した今日まで、読む度に毎回泣いている。よほどオレの心の奥にある涙の元栓に触れると見える。

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