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『復活の日-小松左京』 オレだってたまには泣く、その10

『復活の日』 小松左京 ハルキ文庫

 深作欣二監督、草刈正雄主演で1980年に映画化もされた小松左京のディザスターSF小説。
 人類を滅亡の間際まで追い込むのは兵器として開発されたMM-88菌という細菌である。ある事件によって研究所から外部へと漏れてしまったMM-88は風邪やインフルエンザに似た症状を見せた後、短時間で急死する。養鶏場のニワトリが大量に死に、そのため卵の値段が上がったという昨年の鳥インフルエンザ騒動が思い出される描写がある。しかもワクチン開発に卵が欠かせないためMM-88への対応が遅れて手に負えなくなるという怖さ。
 そして人類のほとんどが死に絶え、わずかに残ったのはあまりの寒さのためさすがのMM-88も到達できなかった南極の各国基地にいた1万人ばかりの人々のみ。
 その彼らに人類が残した核兵器がさらなる危機として迫ってくる。このまま人類は自らが犯した過ちによって滅びてしまうのか・・・

 日本を沈めた小松左京が今度は世界人類を滅ぼそうとする。多大な資料を基にして緻密に作り込まれた設定が圧巻だ。
 主人公は昭和基地所属の吉住ら南極に残された人々だが、物語の大半は南極以外で進んでいく。MM-88で死に絶えていく世界についての描写は淡々と出来事が述べられていく静けさで、それが逆にて恐怖を感じさせる。

 物語のラスト近く、仲間に会うために吉住は丸6年をかけてワシントンから南米大陸の南端までたどり着く。
 ここが泣ける。心理描写などはなくただ気がふれた男が旅する様子が書かれているだけなのだが、だからこそ泣けるのかも知れない。その後に用意されている再会の場面よりもよほど胸を打つ。最初に読んだのが中学生の時でこの時すでに泣いた。今回読み返してみてもやっぱり泣いた。
 小説ではたったの2ページなのに、映画だと「これでもかぁ!」とばかりに延々と続くシーンになっていた。小説と映画では物語を語る文法自体が違うのは確かだし、映画に追加された教会での死者やキリスト像との語らいはそれなりに面白かったが、泣ける2ページを退屈な10分(ぐらいあったような気がするが実際にはもう少し短いかも)にしてしまっている部分だけを見てもやはり映画版『復活の日』は凡作なのだろう。南極ロケで撮ったシーンも「せっかく撮影したフィルムなんだからカットしたら損だ」とばかりに無駄に使われすぎていて冗長だった。あの映画は編集次第でもっと面白くなるだろう。やっぱり映画の肝はは編集だというのがオレの持論。
 映画を観て退屈だと小説の方は読んでいない人がいたら一読をお勧めする。昭和39年(1964年)の作品だが40年前という古さを感じさせない。それどころか細菌兵器がより現実的な危機として存在する現代においてはより衝撃的かもしれない。

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コメント (3)

ネスカフェ:

気になって映画版のほうのレビューを検索してみましたが、見事に賛否両論ですね。賛成派は邦画にみられないビックスケールの意欲作
否定派はセコサがモロに出た不釣合いな作品
という感じです。両方とも言い得て妙ですね。で、「宇宙からのメッセージ」は割と低評価にも
かかわらず好意的なレビューも多かったですよ。

東森時音:

ネスカフェさん
 ソーセージといえば普通は肉、豚の挽肉が主原料です。食事に行ってソーセージを注文したところ魚肉ソーセージを出されたら多くの人が戸惑い、場合によっては怒るでしょう。
 しかし、魚肉ソーセージを注文して魚肉ソーセージが出てきたら「美味しい」と食べるでしょう。
 乱暴な比喩ですが映画版『復活の日』と『宇宙からのメッセージ』はその魚肉ソーセージです。
 制作陣が日本でもハリウッド映画を作り得ると考えて結果としてハリウッド映画の模倣品にしかならなかったのが『復活の日』。
 アメリカで大ヒットした『スターウォーズ』はアメリカ公開から日本公開までかなり期間があったので(ちょっとうろ覚えですが1年近くあったはずです)、みんなが公開を待ちかねている間に似たようなのを作って一発儲けようと最初からハリウッド映画の模倣品という意図で作られたのが『宇宙からのメッセージ』。

 ややこしいことにそもそも“ハリウッド映画”とは何だ?という話にもなってきます。単純にワーナーやユニバーサルピクチャーズなどアメリカのメジャー資本系が製作した映画やロサンゼルスのハリウッドで製作された映画という分類ではないと思うのです。
 その映画の“在り方”が重要なのかなぁという考えを前々から自分の中でもてあそんでいます。そのうち文章にまとめてみるつもりです。でも映画を観れば観るほど分からなくなってきてるのでいつになるのやらだったりします。

(話の都合上魚肉ソーセージは肉ソーセージよりも下だといった書き方になっていますが美味しいんで私は好きです。魚肉ソーセージ業界の方など不快感を持たれた方はビールと発泡酒に置き換えて読んでください。発泡酒業界の方はコーヒーと代用コーヒーに置き換え、代用コーヒー業界の方は・・・きりがないのでここで終了)

東森時音:

そうそう、『宇宙からのメッセージ』はノベライズを『銀河乞食軍団』などの野田元帥こと野田昌宏氏が書いていまして、ストーリーではこちらの方が数段上の出来映え。
八犬伝をモチーフに宇宙世界で物語が繰り広げられますが、不思議な縁で戦士たちが自らの使命に気付いたところでその章が終わる。
章を締める言葉「○○は聞いたのだ、宇宙からのメッセージを」という文章が秀逸でした。
フジテレビ関連の偉いサンを集めてのクイズ大会で、司会の明石家さんまが野田元帥を見つけてさっそくいじってました。
「あの~、ここでは着ぐるみはご遠慮いただいているんですが」
まさかそうギャグを振った相手がフジテレビ最高の着ぐるみキャラクターであるガチャピンとムックを生み出した男とは、さすがの思いも寄らなかったでしょう。もしも知っていたのだとしたらさんまあっぱれ大先生。

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