
『空軍大戦略』(1969) BATTLE OF BRITAIN 133分 イギリス 2005/07/03DVDにて再鑑賞
監督:ガイ・ハミルトン 製作:ハリー・サルツマン、ベンジャミン・フィッツ 脚本:ジェームズ・ケナウェイ、ウィルフレッド・グレートレックス 撮影:フレディ・ヤング 音楽:ロン・グッドウィン
出演:ローレンス・オリヴィエ、マイケル・ケイン、ロバート・ショウ、エドワード・フォックス、クリストファー・プラマー、クルト・ユルゲンス、マイケル・レッドグレーヴ
軍用航空機物もそろそろ飽きてきた。今日紹介する作品でひとまず最後としよう。最初は『ホット・ショット』(1991)にするつもりだったのだが、「ふざけるな」と怒りの書き込みやメールが来ても面倒だ。怒らなくってもいいじゃないかと思うんだが、怒る人は本当に怒るからな。
そこで軍用航空機物の頂点の一つである『空軍大戦略』(1969)で締めくくることにする。この映画に文句を付けてくる軍用機ファンはさすがにいないだろう。
ヒットラー支配下のドイツから和平使者がイギリスへと派遣される。しかし交渉は決裂し、イギリスとドイツは本格的な戦いへと突入する。後に「バトル・オブ・ブリテン(英国の戦い)」を呼ばれるこの16週間に渡る戦いは、イギリス側ドイツ側双方に大きな痛手を受けながらもかろうじてイギリス側が勝利し、ドイツ軍のイギリス上陸を阻止するのだった。
ストーリー的にはさほど見るところはない。二人とも軍人である夫婦の愛憎を始め、この戦闘に関わった者たちのさまざまなドラマは登場するが、見入ってしまうほどではない。一癖も二癖もあるベテランパイロットたちは面白みがあるが、指揮官にしろ兵卒にしろもう一つ個性が無くて区別が付けにくい。しかしかなりの豪華キャストである。一般的に受ける“豪華”ではないだろうが。
飛行機による飛行シーン、そして空中戦は見事の一言。この作品以降、ここまで大規模な飛行機による空中戦が登場する作品はないが、それは『空軍大戦略』でやることはあらかたやり尽くされてしまったからではないだろうか。
航空機映画の代わりに空中戦が頻繁に登場するようになったのがSF映画だ。『スター・ウォーズ』(1977)のラスト近くではデススター攻略を巡って、反乱軍と帝国軍の戦闘宇宙艇によるドッグファイトが繰り広げられる。これを始めて劇場で観たときには手に汗を握ったものだが、例えば帝国軍のタイファイターが編隊を組んで画面の外から襲いかかってくるシーンは、『空軍大戦略』でドイツ軍戦闘機の編隊が襲いかかってくるシーンとタイミング、構図、カット割りなどほぼ同じ。他にも機が被弾するとコクピットの中にカメラが移って、「うわー」と悲鳴を上げるパイロットの後ろで爆発が起こり炎が広がるなど、「ルーカスの野郎、空軍大戦略を観てやがんな」と思われるシーンがいくつも登場する。
もちろん、ルーカスが悪いと言っているのではない。『空軍大戦略』がすごすぎるのだ。実機ないしレプリカを大量に登場させ、見た限りだと合成は一部のシーンを除いて無し。飛行機とパイロットを調達するだけでかなりの苦労だったろう。イギリス空軍が全面協力しているのだろうか?
撮影にかかる手間を考えただけで気が遠くなる。飛行機が旋回するシーンでミスがあっても気軽に「じゃあテイク2」と言うわけにはいかない。相手の飛行機に無線で連絡をつけて、こちらの飛行機もタイミングを合わせて撮影場所に戻る。そして4機5機が登場するシーンは当たり前だから大変なんてものじゃない。ちょっとやり直しをしているうちに時間はどんどん過ぎるし、天気の悪い日は撮影できない。制作側のトップはものすごい重圧だったことだろう。
戦闘機対戦闘機のドッグファイト、爆撃機に襲いかかる戦闘機など様々な空中戦が描かれる。やはり一番の見所はラスト近くの空戦だろう。ロンドン空襲のため雲霞のごとく大量に飛んできたドイツ軍爆撃機と護衛のメッサーシュミットを、ポーランド軍、チェコスロヴァキア軍、カナダ軍などを含めた混合イギリス空軍が迎え撃つ。編隊飛行が実に美しい。だが美しいのは最初だけで、実際に戦闘が始まると敵も味方も被弾しては墜落したり爆発したりして大空から消え去っていく。混戦の中では正義も悪もなく、単に生き残る兵士と死ぬ兵士がいるだけだ。一人のパイロットが命を捨てての特攻をし、それで形勢が逆転することもない。歴史上明らかにされているようにドイツは負ける。ドイツ人パイロットたちは勇敢に戦うが、無能な指揮官が上層部にゴマをするので精一杯で現実に目を向けなかったのが一番の敗因だ。
頭の上で繰り広げられている空中戦を見物しながら、のんびりと午後のお茶をすすっているロンドンっ子が一番たくましいのだろう。