« 『パリ警視J』 吼えろ、ベレッタM93R | メイン | 『さくらの境』 女子高生三人の平穏(すぎる)な日常 »

『宇宙戦争』(2005) うちの子が助かるためならお前らが死のうが知ったことか

B000BC8IYW.jpg
『宇宙戦争』 (2005) WAR OF THE WORLDS 114分 アメリカ 2005/07/17

監督:スティーヴン・スピルバーグ 製作:キャスリーン・ケネディ、コリン・ウィルソン 製作総指揮:ポーラ・ワグナー 原作:H・G・ウェルズ 脚本:デヴィッド・コープ、ジョシュ・フリードマン 撮影:ヤヌス・カミンスキー 編集:マイケル・カーン 音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:トム・クルーズ、ダコタ・ファニング、ティム・ロビンス、ジャスティン・チャットウィン、ミランダ・オットー、ダニエル・フランゼーゼ、ジーン・バリー

 いかん。スピルバーグが何をやりたいのか全然わからない。何なんだこの『宇宙戦争』という映画は。
 ストーリーは知っている。小学校時代に児童向け図書で、中学時代には文庫本で読んだ。横田順弥が書いた「その時、日本の押川春浪たちはどうしたか」を描いた『火星人類の逆襲』だって読んでいる。要約すれば「火星人がやってきて、暴れて、勝手に死ぬ」。要約しすぎだが、2005年版『宇宙戦争』もそのまんま。だが、問題なのは宇宙人側のストーリーではない。
 トム君ことトム・クルーズは港で働く荷下ろしのクレーン作業員だ。家に帰ると離婚した元妻とその新しい夫が、トム君たちの子供である兄と妹を預けに来ている。ああ・・・なんか先が読めてしまったよ。ずずずーっと先まで読めてしまったよ。でも、仮にもスピルバーグだ。そのまんまはやらないだろうと思ったらずずずーっとそのまんま。
 大人になりきれないまま父親になってしまった平凡な男。その日常である世界が唐突に異星人に襲われ、逃げ戸惑っているうちに子供たち、特に娘との絆を取り戻す。そんだけ。重要なのは親子愛だけで隣人や逃げるうちに関わった人など無視無視。お前らが死のうがうちの子さえ助かりゃ良いんだよってのがテーマか。だから何なんだよそれは。
 そりゃまあ、平凡な男トム君が突然人類を守るために立ち上がり、先頭を切って戦ってついには宇宙人の母船を吹き飛ばしたってのも困るっちゃあ困るんだが。
 心が離れてしまった息子の心を開こうとキャッチボールに誘うってのはアメリカ映画の定番だが、映画において死んでるシーンだ。わたしたちはとうの昔に『ナチュラル』(1984)のラストを見ちゃってるしな。
 宇宙人が操る三本足のマシーン・トライポッドに立ち向かっていく軍隊と道ですれ違うが、軍隊はそのまま行ったっきりどうなったかよく分からない。カメラはあくまでもトム君の視点。徹底していると言えば徹底しているが、世界の一大事を背景に延々と親子ドラマを続けられてもなぁ。逆を言えば、世界の一大事がなければこの親子は理解し得なかったということか?そりゃまずいだろ。
 イカれた男役のティム・ロビンスも何をしに出てきたのかいまいち不明。この地下室のシーンで内部を捜索するトライポッドのカメラは、『マイノリティ・リポート』(2002)に同じようなのがなかったか?
 嵐の後に地上から現れたトライポッドが街を破壊し、奇妙な光線で人間を粉に変えてしまうシーンはさすがの迫力ではある。あの光線は実は冷凍光線ではないかと睨んでいる。一瞬で凍らせてフリーズドライにしているのだ。だから、粉々にならないように気をつけて、水に漬ければほら復活ーっ、はしないか。
 CNNの現地レポート風な手持ちカメラで映像がブレまくって少々落ち着かない。しかし、ブレまくっているのに手前の人間と背景の建物・トライポッドがきちんとズレずに合成されているのはさすがだ。
 スピルバーグにしては細かいところに気が行き届いていない雑な仕上がりに思える。トム君があれこれ製作に口を出したんじゃないかなと考えてしまうのはわたしだけか。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.jion-net.com/mt/mt-tb.cgi/4262

コメントを投稿 携帯電話からは投稿出来ません