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『モーニングアフター』 朝起きて、ふと手を見ると血まみれ

『モーニングアフター』(1986) THE MORNING AFTER 103分(?) アメリカ 1987/04頃鑑賞

監督:シドニー・ルメット 製作:ブルース・ギルバート 脚本:ジェームズ・ヒックス 撮影:アンジェイ・バートコウィアク 音楽:ポール・チハラ
出演:ジェーン・フォンダ、ジェフ・ブリッジス、ラウル・ジュリア、ダイアン・サリンジャー、キャシー・ベイツ

 今朝起きて「ふわぁぁぁ」と大きなあくびをしたところ、口の前を覆った右の手の平が血まみれだった。うぎゃっ!とびっくりして辺りを見渡すと枕にもベットリと血の痕が残り、そしてベッドの隣側には刃物で喉をかっ斬られた若い美女の死体があり、床には血の手形がついた出刃包丁が転がっている。
 あっ、この女性は昨日の飲み屋で知り合った娘ではないか。妙に話があって意気投合し・・・俺の家で飲み直さないかと誘って上手く連れ込んだという記憶がかすかに残っているが、アルコールのため詳しいことを憶えていない。何かの拍子に口論になりカッとなった俺が包丁で刺し殺したのか?まさかそんな馬鹿な。でも記憶がないのも事実だ。
 ピンポーンと呼び鈴が鳴った。出るわけにもいかないのでそのまま無視しておく。すると呼び鈴は何度も何度もしつこく鳴り続ける。宅配便にしてはおかしいと思い始めたころにかわらけ声が響いた。
「東森さん開けてください、いるのはわかってますよ。わたしは○○警察署の吉田です。早く開けないと不利なことになるだけです」
 誰に連絡をしたわけでもないのに、何故こんなに早く警察がやってくるんだ。俺が殺したのか、あるいは誰かに罠に嵌められたのか。
 俺は窓を開けてベランダに出ると下を見渡した。制服姿の警官が玄関側の様子を気にしつつ見張りとして立っている。俺の部屋はアパートの3階なのであまり上は気にしていないようだ。慌てて服を着替えると財布をポケットに入れた。昨日着ていたスーツに入っているクレジットカードも持って行こうと思ったが、カードを使った時点で警察に居場所がばれるのに気づきジャケットはそのまま放り投げた。それはうつろな目を見開いたままの娘の顔に覆い被さった。そうだ、彼女が持っている現金を借りておこうとベッドサイド置かれた彼女のバッグを調べると財布とカード入れが出てきた。現金はさほど入っていなかったが免許証と学生証が見つかった。ようやくと知った彼女の名は日向暁美、なんとお嬢様学校として有名な女子大の2年生だ。住所も高級住宅地のど真ん中で、部屋番号などは書かれていないので一軒家だろう。
 俺は靴を履くとベランダへ出た。隣に立っている二階建ての民家まで距離にしておよそ3メートル。絶頂期のカール・ルイスならともかく、助走なしでこの距離を飛ぶのは難しい。ダイニングの椅子をベランダに置く。そして部屋の端から全力疾走で駆け出すと椅子を踏み切り台にして宙に舞った。10秒にも感じられた滞空時間を経て俺は隣家の瓦屋根に着地した。数枚の瓦が砕け俺も左足を軽く捻った。物音に気付いた警官がこちらを気にしているのが感じられた。1分ほどじっと気配を消してから屋根の反対側へ移り、壁づたいに地面に下りた。
 アパートの方はだんだんと騒がしくなっており、近所の人たちが何事かと様子を窺いに道ばたへと出てきている。俺はこの場から立ち去ることにした。
 まずは飲み屋のマスターに話を聞きに行こう。あまり上等とはいえないあの店にお嬢様学校の学生が来ていたというのはどこか不自然だ。彼女が来たのは始めてか、それとも前にも来たことがあったのか。一人で来たのか、連れと一緒だったのか。
 何かただ事ならぬ感じは受けていたが、俺はこれから4日間の間に警察と組織から執拗に追われ、危険と陰謀が渦巻く一世一代の危機が待ち受けているとはまだ夢にも思っていなかった。

 多少脚色してあるが、上記のようなことが今朝方起きた。どの辺りが脚色部分かといえば美女の死体を見つけたところから飲み屋のマスターに会いに行くところまでかな。
(つまりほとんど嘘ってことだろ)
 だって、わたしは酒をやめっちゃったんで飲み屋にはいかないもんなぁ。お姉ちゃんと意気投合して部屋に連れ込むのはいつものことだけど。
(それが一番の大嘘だろ)
 手の平と枕に血がついていたことは本当。すでに乾いてこすると粉状になった。どうやら寝ている間に鼻血が出たらしい。結構な量が流れたはずだ。
 朝起きたら手に血が付いていて、ベッドには刺し殺された死体があったというシチュエーションで始まるのが『モーニングアフター』だ。映画に話を持って行くまでがやたら長いが、『モーニングアフター』のことなんかこれっぱかしも憶えていないのだからしょうがない。比喩や冗談ではなく本気で憶えていない。かろうじてジェーン・フォンダオバサンの演技がクドかったような気がするぐらい。
 わたしがダメダメ監督シドニーコンビの片割れシドリー・ルメットの映画なんて好きこのんで観に行くはずがない。ちなみにコンビのもう一人はシドニー・ポラック。わたしが勝手にダメダメシドニーコンビと呼んでいるだけなのでそこら辺はちょっと注意。地元の古びた映画館で観ており、公開時期から考えて二本立てだったのは間違いないからもう一本の方を目当てで観に行ったに違いない。
 その頃はなにぶん呑気でお気楽な生活をしていた大学時代で、休日ではなく平日の日中から映画館に行った。その映画館は土・日は9時から上映がスタートし、平日は12時からというスタイルだった。
 休日は9:00~11:00(1本目)、11:00~13:00(2本目)というローテーションだった。映画の長さによって伸び縮みはするがこれが基本。
 すると平日は12:00~14:00(1本目)、14:00~16:00(2本目)というローテーションになると思うでしょ。ところがタイムテーブル(上映時刻表)は休日と同じ。これがどういうことかというと、
 平日の12:00に2本目の映画の途中から始まって時刻通りに13:00で終了、続いて13:00~15:00(1本目)、15:00~17:00(2本目)と続いていく。
 ・・・14時スタート分から入った人は良いが、12時に入ったわたしはいったいどうすればいいの?これがアクションやコメディならまだしも、『モーニングアフター』は一応サスペンス・ミステリな作品だ。上映が始まるなりジェーン・フォンダは逃げ回っているのだがその意味が分からないし、何とか多少は状況が理解できてきたところで真犯人が分かり対決があったりで終了。目当ての映画の方が終わると、ようやくさっきは上映されなかった前半部分を観ることができた。でも、謎とか犯人とか全部分かっちゃってるんだよね。ただでさえつまらない映画なのにおかげで果てしなくつまらねー。

 ただ、最近の映画館は入れ替え式の指定席があたりまえ。途中入場は出来ないことになっている。学生時代にバカのように映画を観ていたころは、名古屋ではまだ二本立てが中心だったのであれも観ておかなきゃこれも観ておかなきゃとかなり無理なスケジュールで映画館を回っていた。新聞の映画広告欄で映画館ごとの上映時間をチェックして、「シアターAの映画が終わった後、10分後のシアターBの上映を観たいが大きな道路をまたいでビルの上階まで移動しなければならない。果たして間に合うのか?この回に予告編が流れるかが鍵になるな」
とか
「うわー、この映画とこの映画とこの映画が観たいんだけど、どれも二本立てで上手く時間が合わないぞ。よし併映の作品Aには興味ないからAの途中から入ってBを見て、そしてAの頭からさっき見たところまでを頭の中でつなげてOKってことにしちゃえ」
なんてことをやっていた。
 途中入場も許されなくなったし、ましてや平気で映画の途中から上映を始める映画館なんてもう存在しないだろう。(映画を見せる場ではなくお客の目的は別という劇場もあるそうだから、そこら辺だとかなり無茶もありそうだが)そう考えるとちょっと懐かしい。
 現在の商業化されマニュアル通りのシネマコンプレックスことシネコンには昔の映画館が持っていた暖かさや人の触れ合いが感じられない。・・・なんてウスラ野郎みたいなことを言うと思ったら大間違いだぁ。

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