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『がんばれ!!タブチくん!!』劇場版 「ちょっとそこに座りなさい」 「さっきから座ってるじゃないの」

『がんばれ!!タブチくん!!』(1979) 95分 日本 以前スカパー!で放送されたのを録画で2005/06/19鑑賞

監督:芝山努 製作:藤岡豊、山本又一朗 製作補:片山哲生 原作:いしいひさいち 脚本:辻真先、城山昇、出崎統、金春智子 撮影:高橋宏固 音楽:乾裕樹
出演:西田敏行、二木てるみ、肝付兼太、内海賢二、青野武、羽佐間道夫、富山敬

 子供の頃に大ヒットした映画だ。劇場では観なかったがテレビ放映で観て、当時からプロ野球に興味がなく選手の名前などもほとんど分からなかったが、それでも面白かった。原作は今や朝日新聞朝刊の4コマを手がけるようになった“いしいひさいち”の出世作の『がんばれ!!タブチくん』。原作はタブチがタイガースにいた頃のイメージだが、劇場版はトレードでライオンズに移籍した後になるので当然タブチは青と白のユニフォームを着ている。
 1979年から1980年の2年間に続編の『激闘ペナントレース』『ああツッパリ人生』を含む三本が立て続けに公開された。ヒットしたから続編を作ったというよりおそらくは最初から三部作構成として制作されたのだろう。
 さほど制作費がかかっていなそうな作画・動画ではあるが、スタッフの面子は豪華。監督は『ドラえもん』などの芝山努。そして4コマ漫画とオリジナルのアイディアを上手く繋げ合わせて、いくつかのパートには分かれているが一本のストーリーに仕上げた脚本陣はミステリ作家でもある辻真先、『あしたのジョー』などの演出で知られる出崎統など錚々たる顔ぶれ。金春智子と言う人も見たことがある名前だ。
 原作にしろアニメにしろ、タブチはタブタだの西武デパートのアドバルーンだの「タブラン」(タブチのランニングホームラン)=不可能を表す単語として国語辞典に載ってしまうなど徹底してひどい扱いをされている。田淵選手はこの作品に対してクレームは付けなかったのだろうか?洒落が分かる人だったのか?
 若い人には王、長嶋はともかく熱心なプロ野球ファンでなければ登場人物には知らない名前も多いだろう。だが、実際のモデルに頼り切ることなく映画の登場人物としてキャラクターを完成させているので充分に楽しめるはずだ。
 誘惑に弱くうぬぼれ屋でそれでいてすぐに落ち込むタブチと、しっかりもので愛嬌もあり意外と毒舌でいて実はタブチのことを誰よりも思っているミヨ子夫人とのやり取りが面白い。ミヨ子さんみたいな奥さんを持てたらいいなぁ。

 タブチがミヨ子に説教しようとして
タブチ「ちょっとそこ座りなさい」
ミヨ子「さっきから座ってるじゃないの」
の繰り返しギャクがシリーズを通して何度も使われている。人によっては「しつこい、くどい」とケチをつけるだろうが、わたしにとっては大好きなギャグだ。
 そもそも繰り返しのギャグというのは最低でも三度はやらないとダメだ。一度目は普通のギャグ、二度目で「あれ、繰り返しのギャグかな?」と観客に感じさせ、そして三度目で繰り返しは偶然ではなく意図したギャグであることが判明する。そして、ギャグとは笑わせるだけではなく観客のエモーションに動きをもたらすものなので、「なんだこりゃ、くどいな」とシラケるというエモーションを引き出したことはこれぞギャグの勝利の一つなのである。

 『がんばれ!!タブチくん!!』で生み出されたタブチや広岡などのキャラクターはいしいひさいちが現在発表している『ののちゃん』などの作品で先生や作家などになって登場し続けている。スポーツ4コマを描いている漫画家の中には実在の選手の存在感や知名度を利用しているだけの人もいるが、そういった凡庸な漫画家と天才いしいひさいちの差なのだろう。

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