
『勝利への脱出』(1980) VICTORY 116分
監督:ジョン・ヒューストン 製作:フレディ・フィールズ 原案:ジェフ・マグワイア、ジョルジェ・ミリチェヴィク、ヤボ・ヤブロンスキー 脚本:エヴァン・ジョーンズ、ヤボ・ヤブロンスキー 撮影:ジェリー・フィッシャー 音楽:ビル・コンティ
出演:マイケル・ケイン、シルヴェスター・スタローン、ペレ、マックス・フォン・シドー、カロル・ローレ
サッカー映画特集第五弾。といっても、個人的にこの映画のジャンルをランク付けすると
1.捕虜収容所物
2.脱走物
3.マイケル・ケイン物
4.サッカー物
5.マックス・フォン・シドー物
6.スタローン物
ぐらいな順位になる。って、スタローン一番下かよ。
昔は年に一度ぐらいの割合でテレビの洋画劇場で放映されていた。テレビを見なくなって久しいので分からないが、今でも放送されてるのだろうか。スタローンの声は佐々木功なのだろうか。あれ、羽佐間道夫だったか?まだ玄田哲章じゃない時代の吹替だったよな。
ランク付けでは低くしたスタローンだが、時代的には『パラダイス・アレイ』(1978)と『ナイトホークス』(1981)の間に出演した作品で、この頃のスタローンは俳優業が調子に乗りつつある時期で決して悪くはない。というか、スタローンって結構好きなんだが、まあそれはそれとして、『大脱走』(1963)でスティーヴ・マックイーンが演じたヒルツ大佐的な人物をやっていて、そりゃマックイーンが相手では敵うはずもないのだが、何度も脱走を試みてはその度に捕まって収容所に連れ戻されるのだが全然懲りていない、というか懲りるってことを知らない基本的に単純なアメリカ軍人が似合っている。で、イギリス軍人のマイケル・ケインなどに「だからアメリカ人は」などと思われているのだがまるで気にしていない、というか多分気付いていない。
ドイツ側の捕虜収容所に収容された連合国側軍人が、脱走を試みたりドイツ人チームとサッカーで対戦するというストーリーは『大脱走』(1963)+『ロンゲスト・ヤード』(1974)以外の何物でもないのだが、肩の力を抜いたジョン・ヒューストンの演出は楽しげで堂々としており、「そうか、パクリじゃなくてヒントにしただけだな」と妙に納得してしまう。
マイケル・ケインがイギリスの元名サッカー選手という役柄だが、試合のシーンではあまりボールには近づかない。改めて思ったのだが、サッカーは野球などと比べると映画にするのが難しい。ずっと動きっぱなしで選手が止まっている瞬間が少なく構図が限られてくるし、引きの絵で長目のカットになるためサッカー技術のごまかしが効かないのだ。
ちょっとやそっとの付け焼き刃では映画で使えないと考えたのだろう、だったら本物のサッカー選手を連れてくればいいんじゃない?と「サッカーの神様」ことペレや他にも何人かのサッカー選手が出演している。ロシア人捕虜のため英語がしゃべれず、飯を食っているかサッカーをしているかだけの連中がいるが、おそらく彼らがサッカー選手なのだろう。これならばセリフをしゃべって芝居する必要がないので違和感が少ない。
彼らのサッカーテクニックで特にすごいなと思ったのが、相手側に向かってドリブルで進んでいた連合国選手の前にドイツ選手が立ちはだかったシーンだ。走ったままボールを踵で背中側から蹴り上げてそのまま山なりに前方へと送って相手をやり過ごしてパスをつなげる。これが1カットで描写されていて、これは確かにちょっと特訓したぐらいでどうなるもんじゃないだろうとサッカーに関しては全く知識がないわたしでも感じる。・・・この踵蹴り上げってなんて名前のテクニックなんだ?
そして試合終盤のペレのバイシクルシュート!。前半でドイツ選手の反則的攻撃で怪我をして一度はコートを出ていたのにそれを押しての再出場。一度メンバーを外れたのになんでまた復帰できるんだと青少年だった頃から思っていたが、サッカー好きな知人に問い合わせたところ、ペレが外れた後に交代のメンバーを入れず10人で戦っていたのならば復帰できるんだそうだ。そういえばキャプテンのマイケル・ケインは交代を入れずにかなり長い時間を10人のままで戦っていたが、あれはペレが必ず復帰して活躍してくれるはずだと信じていたって事なのか。男だな二人とも。
オーバーヘッドキックとバイシクルシュートの違いは先日の『炎のストライカー』の時に書いたが、知人にこれらのバク転系シュートって実際に試合で使われる事ってあるの?と尋ねたところ、「ごくたまにあるよ。生の試合でも見たことある。でもゴールが決まったのは見たことないな」とのことだった。知人は城とかいう選手のファンなので、その城がワールドカップのフランス大会かなにかの大きな試合でオーバーヘッドキックをやったが、当然のごとく外れて世間から非難を浴びたがあの状況では他に手段がなかったんだなんだと延々とサッカー話を聞かされた。だがそのおかげでちょっとばかりサッカーに詳しくなった。知ってますか、サッカーは11人でやるんですよ。
スタローンがゴールキーパーというのも、実際にはサッカーの能力が高くないのにごまかしが効くポジションだからだろう。スタローンのエースストライカーってのはかなり無理がある。アメリカン・フットボールの選手だったら似合いそうだがな。
元サッカー選手のドイツ人将校マックス・フォン・シドーが良い。ペレのバイシクルシュートに思わず席を立ち上がって、静まりかえったドイツ軍人の中で一人熱烈な拍手を送る。この人はエンドクレジット後のストーリーが描かれるとしたら、おそらくロシア戦線などの最前線に送られて激しい戦闘の中で命を落としたのではないだろうか。情報将校ではありドイツ人としての誇りは持っていてもナチスには内心で反感を抱いていたとわたしは思っている。割と勘違いされているんじゃないかと思うのは、ドイツ軍人の全てがナチスシンパではなかったということだ。ヒットラーやナチのことを嫌っていても、戦争になってしまった以上は国を守るために戦ったドイツ軍人も少なくなかったはずだ。『鷲は舞いおりた』のスタイナーの様な人物はいたはずである。
マックス・フォン・シドーは何故だかスタローン主演のトンチキ映画『ジャッジ・ドレッド』に出演しているがこの作品の縁じゃないだろうな。
ついでに捕虜になった軍人の脱走義務について。
捕らえられたら脱走しろというのは義務だそうだが、これは再び戦場に戻って戦力となるためでもあるが、敵に対する後方攪乱というのも大きいそうだ。捕虜が脱走計画を繰り返すと、その対策として捕虜収容所の看守として軍人を多目に配置せねばならないので相手側の戦力を減らせる。そして実際に脱走が成功するとそれを捕らえるためにさらに人員を割かねばならずまた混乱させることが出来る。なるほど、ヒルツ大佐があれほど脱走にこだわったのは暇だったからじゃないのか。
それにしても、『勝利への脱出』、『大脱走』、『第十七捕虜収容所』のどれを見ても意外に待遇が良さそうで、案外楽な生活に見えるんだがなぁ。
邦題は『勝利への脱出』で、DVDのパッケージに書かれている英語のタイトルは『ESCAPE TO VICTORY』。しかし、オープニングタイトルで表示されるのは単に『VICTORY』だけ。『VICTORY』が正式なタイトルなのか。

東森さま、レビュー更新お疲れ様です。
とうとうワールド・カップイヤーとなりましたね。私は別に興味はないんですが、この映画には今年の開催地である「ドイツ」つながりということもあり、最近録画したのでチェックしてみようと思ってます。東森さんはいかがお過ごしですか。