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『塀の中のプレイ・ボール』 看板に若干のいつわりあり

『塀の中のプレイ・ボール』(1987) 104分 日本

監督:鈴木則文 製作:織田啓二、杉崎重美 プロデューサー:大西悦子、小坂一雄 原作:安部譲二 脚本:鈴木則文、溝札昌裕 撮影:羽文義昌 美術:重田重盛 音楽:山崎稔
出演:草刈正雄、小柳ルミ子、伊武雅刀、山城新伍、長門勇、岡田奈々、ガッツ石松

 囚人チームと看守チームがスポーツで対戦する映画というと『ロンゲスト・ヤード』が有名だが、実は日本映画にもあったりする。スマッシュヒットした『塀の中の懲りない面々』の二作目にあたる『塀の中のプレイボール』がそれだ。
 監督が鈴木則文だからと映画館まで観に行った。東映以外で鈴木則文がメガホンを取るのは珍しい。一応はヤクザ物に属するが、東映ヤクザ物とは雰囲気がかなり違い人情重視になっているのが松竹作品らしい。

 『塀の中』というだけあって舞台は刑務所の中。アメリカの刑務所物はかなり悲惨でつらそうだが、このシリーズにおける日本の刑務所は不自由なことは多くてもそれなりに快適そうで、囚人同士の暴力沙汰やどっからか物を仕入れてくる調達屋は登場しない。刑務所物を観る度に疑問だったのだがあの調達屋ってのはどこから物資を手に入れてくるのだろうか?刑務所じゃなくて捕虜収容所になるが、『大脱走』のジェームズ・ガーナーは看守の弱みを握って裏で取引していたが、刑務所の場合もやはり看守なのだろうか?

 刑務所の中で囚人達が休憩時間に楽しんでいるのがソフト・ボール。以前は看守チームとの対戦も行われていたという話を聞いた主人公(草刈正雄)は再びその試合を実現させようとする。それと同時に、各囚人の犯した罪や過去が語られていく。
囚人の中にガンを患い余命いくばくもない老人がいて、彼がいろいろと面倒を見た少女が今ではスター歌手になっている。彼女が慰問コンサートを行うが会場に老人の姿はない。そして雨の降りしきる中、一つの棺が門を通って塀の外へと運び出される。ベタだがぐっとくるシーンだ。

 もう20年近く前の作品で、今さらレンタルビデオで借りる人も少ないだろうし、テレビで放映されることもまずないだろうから書いてしまうが、結局のところ看守チームとの対戦は実現しない。
原作がそうなっているのか、映画の都合でそうなったのかは知らないが、観終わってみると「なるほどあのまま看守チームと戦わせたら、その勝負に目が行ってしまい囚人達の群像劇が置いてけぼりになってしまうな」と感じた。何を見せて何を見せないかは演出における重要な点だ。
 ソフト・ボールの試合の代わりにラスト近くにどつき合いが用意されている。怒った主人公は看守長(山城新五)のいる部屋へと乗り込み、怒鳴り合ったあげく激しい殴り合いを始めるのだ。この殴り合いがなかなかに良い。アクションとしては大したことはないのだが、「決着はこの拳でつけるぜっ!」とセリフではなく俳優の身体で語らせている。勝負は看守長が勝って終わる。嫌な奴だった看守長もそれなりに男であった。山城新五のことなど興味はなく単なるチョメチョメ野郎だと思っていたがちょっと見直した。ちょっとだけだけどな。

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