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『グレイフォックス』 リチャード・ファーンズワース、63歳の初主演作

『グレイフォックス』(1983) THE GREY FOX 91分 カナダ 1986/11鑑賞

監督:フィリップ・ボーソス 脚本:ジョン・ハンター 撮影:フランク・タイディ 音楽:マイケル・コンウェイ・ベイカー
出演:リチャード・ファーンズワース、ジャッキー・バロウズ、ウェイン・ロブソン

 若い頃からスタントマンとして裏方を勤め上げたリチャード・ファーンズワースの初主演作。1920年生まれなのでなんとこの時すでに63歳!大概の人が引退する年齢になって表舞台に上がったことになる。
 演ずる役は実在の人物であるビル・マイナー。西部を渡る駅馬車を襲っては乗客に「手をあげろ」と命じて金品を奪った伝説的強盗だ。なんでも、この「手をあげろ」というセリフはビル・マイナーが初めて使ったという。西部劇の世界がまだ現実にあった頃のことである。
 だがそのビルもついには逮捕されて刑務所に収容された。そして33年の刑期を終えて外の世界に出てきたが、時はすでに1901年、20世紀になっていた。そこにはコルトを腰にぶら下げたガンマンやウィンチェスターを担いだ保安官の姿はすでになく、ビルの持つ世界は過去の物となってしまっていた。
 それでは新しい時代を受け入れるか? 否!
 過去の思い出に浸って寂しく晩年を過ごすのか? 否!
 ビルは西部の荒くれ者のやり方で20世紀を生きることを選ぶ。このジジイは今さら生き方を変えられるほど器用でも素直でもないのだ。
 映画という新しい見せ物をのぞきに来たビルは、たまたま世界初の西部劇と言われる『大列車強盗』(1903)を見てしまう。そして、ビルは駅馬車ではなく列車を襲うことを思いつく。
 まずは駅馬車を襲った要領で走っている列車を襲うべく馬で追いかけるが、もちろん蒸気機関車に追いつくはずがなくあえなく失敗してしまう。だがまったく懲りていないビルは相棒を見つけ、再度の挑戦でついには列車強盗を成功させる。
 しかし司法の手やピンカートン探偵社がビル達を執拗に追跡し始める。果たして逃げ切れることが出来るのか?

 西部劇として分類されたり語られることが多い『グレイフォックス』だが、これは西部劇が終焉した世の中でもはや消えつつある西部の男達がどのように生きたかの映画であって、『ワイルドバンチ』(1969)や『明日に向って撃て!』(1969)が西部劇ではないのと同じように『グレイフォックス』も断じて西部劇ではない。
 ジョン・ウェインの遺作である『ラスト・シューティスト』(1976)はほぼ同じ年代の1901年を舞台に、かつての名ガンマンの死に様を描いている。主人公の過去は若い頃からのジョン・ウェイン出演作を引用して語られ、西部劇スターの、もっと言えばアメリカを代表する映画スターであるジョン・ウェインの有終の美をメロドラマ風に語っている。それは同時に「西部劇の死」でもあったのだろう。
 それに対し、ずっと西部劇の裏方で生きてきたファーンズワースを主役にした『グレイフォックス』は、すでに1980年代になっていることと制作国カナダと言うこともあってか、西部劇に向ける視線がずっと冷静あるいは冷淡である。西部劇の最後を看取るのではなく、すでに西部劇の世界が終わってしまった中で、死に損ねてしまった西部の男がどう生きるかが描かれるのだ。だからこの作品のラストは悲しくも劇的にもならない。

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