
『遠い空の向こうに』(1999) OCTOBER SKY 108分 アメリカ
監督:ジョー・ジョンストン 製作:チャールズ・ゴードン、ラリー・フランコ 製作総指揮:ピーター・クレイマー、マーク・スターンバーグ 原作:ホーマー・ヒッカム 脚本:ルイス・コリック、ホーマー・ヒッカム・Jr 撮影:フレッド・マーフィ 編集:ロバート・ダルヴァ 音楽:マーク・アイシャム
出演:ジェイク・ギレンホール、クリス・クーパー、ローラ・ダーン、クリス・オーウェン、ウィリアム・リー・スコット
以前からレンタルビデオ屋で見かけてはいたんだが、いかにも感動青春モノ風なパッケージのため手に取ることがなかった。
だがある日、ひょいと裏の解説を読んでみると4人の高校生達がロケットを自作して打ち上げる物語らしい。うーん、面白いかもというので借りてみた。
そしたらもう、当たりも当たり、大当たりだった。監督としてジョー・ヒューストン(『ミクロ・キッズ』『ロケッティア』など)のクレジットが出たところでひょっとしたらと思ったが、こりゃ面白いわ。
1957年、アメリカはウエストバージニア州の炭坑町。すでに石炭は斜陽産業だったが、この町で生まれた男の子は炭坑夫になることを運命づけられていて、唯一町から抜け出す方法はアメリカンフットボールの選手として活躍して、スポーツ推薦で大学に行くことだけだった。
主人公の少年ホーマー・ヒッカムは身体も貧弱で、フットボール部の入部テストにも落第してしまう。自分はこのままこの小さな炭坑で生きてそして一生を終えるんだろうな、なんてことを考えているある日、ソビエトが人類初の人工衛星スプートニクスの打ち上げに成功したニュースを耳にする。夜空を見上げると小さな光点が星の間を横切っていく。
そして少年は宇宙を夢見た。
夢を見るだけならば誰でもできるが、ホーマーは仲の良い2人の友達と一緒に実際にロケットを作り始める。最初のロケットはロケット花火を何本もばらしてそれを詰め込んだだけの代物で、空に打ち上がるどころか母親が大事にしていた庭の柵を一部吹き飛ばしてしまう。だがまるで懲りていない3人は、数学の天才で変わり者の眼鏡(今でいうオタク)を仲間に加え、ロケット・ボーイズとして本格的にペンシルロケットの製作に取り組んでいく。
生徒達に学問の道を進んでもらいたいと思っている科学の女性教師(ローラ・ダーン)や炭坑の工場で溶接作業をしている男の協力も得るが、作るロケットはどれもまともに飛ばないか爆発する始末。それでも、どこが悪いんだろうか、どこを改良すればいいのだろうかと工夫を加える内に、ロケットは少しずつ形になっていく。
以前、『ドラムライン』について書いたときに、文化系的スポ根というのは作れないのだろうかと思ったのだが、『遠い空の向こうに』の前半ではかなりその文化系的スポ根が成立している。
後半ではロケット作りは進められるが、物語は主人公とその父親による父子物が全面に押し出される。
テーマ性とかをしつこく打ち出さずにじっくり静かに描いていてそれ故に感動的である。だが、前半のバカ4人組が他人から馬鹿にされたりしながらも懸命にロケットを作り続け、ついにはちゃんと飛ぶロケットを作り出すというのが大好きなわたしには、そのままラストまで疾走し続けて欲しかったのでほんの少し残念だ。
炭坑長である父親は息子ホーマーを半人前だと考えていて、まだまだ自分の監視下で鍛え育て上げるつもりである。おそらくは息子は独立した人格ではなく自分の一部だと思っているのだろう。そして炭坑夫という仕事に誇りを持っている。
そんな息子が自分と同じ炭坑夫の道を選ばずに町を出て行きたいと考えているのが分かったときに、それを父親という権力で押さえつけようとする。もちろん、この父親は単なる暴君ではなくて息子のことを真剣に考えているから故の行動ではある。
しかしホーマーはそんなプレッシャーに負けずに素晴らしいロケットを作り上げ、科学コンテストでグランプリを取って大学への奨学金を手に入れる。
コンテスト会場で展示品などを盗まれる。その危機を、抜け出そう抜け出そうと思っていた炭坑の人々、そして母親と父親が彼のために立ち上がるシーンも感動的。
ラストの初めてロケットの打ち上げに来た父親にその発射ボタンを押してもらうシーンは、和解というよりはむしろ父親との決別を表しているのだろう。もう父親の一部ではなく一人の自立した人間で、自分で自分の道を行くということ。父親もそれを受け入れてホーマーを一人前の男として認め、男同士としてある意味対等な関係になったのだ。
母親が科学教師について町である噂を耳にする。その噂の詳細は観客には知らされないがおよその見当はつく。そして、ベッドに横たわるすっかりやつれ果てた教師の姿を見てその予想が当たっていたのに気付く。これについても、「えっ、先生が不治の病だって!」などと騒ぎ立てない慎ましさがこの映画にはある。
一筋の煙を引きながらロケットはどこまでも高く高くそらに上がっていく。
そんなラストシーンの後、古い8ミリフィルムや写真によって彼らロケット・ボーイズたちのその後が紹介される。ホーマーはその後NASAのエンジニアになったそうだ。
それ自体はよくある手法なのだが、そこに登場する人物達が映画のそれと違う。というか、加工して古く見せているのではなく本当に古い写真だ。
あれれと思っていると、base on the book "Rocket Boys" by Homer H. Hickam,Jr. 原作“Rocket Boys”ホーマー・H・ヒッカムJr著とクレジットが出る。
ホーマー・ヒッカムって主人公と同じ名前じゃ・・・はっ!?まさかこれって実話ベースなのか?
慌てて調べたら本当に実話だった。知っている人には当たり前なんだろうが、映画雑誌を買わなくなって長いことになるし、映画のサイトも特に見ない上に作品を観る前の下調べもしないのでまるで知らなかった。
実話だから感動する、フィクションって結局は嘘ってことだろとは全く思わないが、1950年代末というロケットに関する情報もほとんどない時代の田舎町で、なんといっても図書館でロケット関係の本を探してもジュール・ヴェルヌの『月世界旅行』ぐらいしかない中で高校生が本当に自分たちでロケットを作ってしまったというのは驚きだ。
そしてそのロケットは単なる憧れや夢だけではなく、自分の現実の将来を切り開くためというのがまた良い。
閉鎖的な炭坑町とロケットが飛んでいく大空、そして宇宙との対比が面白い。
原作の小説は『ロケットボーイズ上下』『ロケットボーイズ2上下』として翻訳版が出ているようだが、一冊1,890円とちょっと高い。合わせて7,560円なのでなかなか手が出ない。ハードカバーのようだが文庫本化を期待する。
コメント (1)
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個性あふれる映画紹介ブログですね。
自分のブログもここまで大きく、内容満点にしたいものです。
今後も参考にさせていただきます。
Posted by: koin | 2005年05月12日 23:18
日時: : 2005年05月12日 23:18