『悪い奴ほどよく眠る』 課長補佐の復讐(最近は“帰還”だっけ)
『悪い奴ほどよく眠る』(1960) 日本 150分
監督:黒澤明 製作:黒澤明、田中友幸 脚本:小国英雄、久板栄二郎、黒澤明、菊島隆三、橋本忍 撮影:逢沢譲 美術:村木与四郎 音楽:佐藤勝
出演:三船敏郎、森雅之、香川京子、三橋達也、志村喬、西村晃、藤原釜足、笠智衆、宮口精二、菅井きん、田中邦衛
先日、西武鉄道前社長小柳氏が首吊り自殺をした。
西武グループといえば大量の株売却や有価証券報告書への虚偽記載など会社ぐるみでの悪事に検察特捜部のメスが入っているところだ。当然、その西武事件における多くの事実を小柳氏は知っていたはずだ。氏が自ら命を絶ったことによって捜査のいくつかはそこで行き詰まってしまうのだろうか。
だとしたら、小柳氏は命を投げ打ってコクド会長の堤氏などを守ろうとしたのか。一種の生け贄にされたのか。もちろん、精神的に追いつめられて発作的に自殺したこともありえるが。
企業や政治家などが悪事を働いた場合、そのトップに近い人物、例えば会長に対する社長とか代議士に対する秘書などが自殺し、そこで捜査が事実上ストップして事件がうやむやになってしまうことが時々ある。実に日本的構図で、しかも命を絶った人物を組織への忠義心が強かった様な表現をすることすらある。そんな馬鹿なことがあるはずがない。たかが会社、たかが政治家のために自殺するぐらいなら記者会見でも開いてすべてをしゃべりまくって必要なら刑務所にでも入る方がずっとましだ。
土地開発公団が不正入札汚職で揺れ動く渦中に、ある課長補佐が飛び降り自殺をした。その死によって捜査はうやむやに終わってしまった。
それから数年後、一人の青年が公団副総裁の娘婿となり秘書として公団に潜り込む。青年の正体は自殺した課長補佐の息子で公団における汚職の全貌を調べ上げ世間にぶちまける腹づもりなのだ。
地道な調査で少しづつ明らかになっていく汚職の構造や公団と建設会社などのつながり。しかし、何者かが事件を調べていることに気付いた公団側も行動を起こし・・・
社会派作品と思われているが実質的にはアクション映画だろう。分かりやすいストーリーに分かりやすい登場人物。志村喬や西村晃など公団側の悪党連中が会すると、現代劇というより時代劇の悪代官と廻船問屋の密会のようである。
青年(三船敏郎)の行動理由が社会正義ではなく父親の復讐であり、“仇討ち”という古典的テーマに則っている。これで、全ての証拠を手に「お前が父を殺したな」と公団副総裁の森雅之に詰め寄ったら、黒装束の森が「違う、わたしがお前の父だ(I am your father.)。コーホーコーホー」と言い出してラストのどんでん返しになったら大笑いだったのだがなぁ。
でもって実は今作のサブタイトルが『公団の逆襲』で次回作の『課長補佐の復讐(最近は“帰還”になったんだっけ?まあどうでもいいが)』へと続く。
実際のラストは作品を観てもらうとして、結局何が言いたいのやら。実際の社会は活劇のように分かりやすくはなく複雑で理不尽だとでも言いたかったのか。しかし、逆にいかにもありがちなラストになっており、わたしとしては好みではない。1960年当時は衝撃的だったのだろうか。
ただ、『悪い奴こそよく眠る』につながっていく最後の締め方は上手い。
ふう、今夜も悪い奴らはよく眠っているのだろう。こちとら不眠症だというのに。コーホーコーホー、あー『スター・ウォーズ ダース・ベイダー ボイスチェンジャー』欲しいなぁ。