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『恐怖の報酬』(1953) 最悪のニトログリセリン輸送

『恐怖の報償』(1953) LE SALAIRE DE LA PEUR フランス 149分

監督:アンリ=ジョルジュ・クルーゾー 原作:ジョルジュ・アルノー 脚本:アンリ=ジョルジュ・クルーゾー 撮影:アルマン・ティラール 音楽:ジョルジュ・オーリック
出演:イヴ・モンタン、シャルル・ヴァネル、ペーター・ヴァン・アイク、フォルコ・ルリ、ヴェラ・クルーゾー

東京の住宅地の真ん中で温泉を掘っていたところ地中から噴出した天然ガスに引火し火災になったそうで。消防隊が急行して火を消そうにも、地面の中から次から次へと天然ガスが吹き出して来るものだから、いくら水をかけようが化学消化剤をまこうがなかなか消えない。このように天然ガスや石油掘削現場での火災事故というのは燃えるのが仕事のような可燃物が大量にあるのでいったん火事になると消火は困難だ。
ちょっとした大きさの天然ガス溜まりを掘削機がぶち抜いてしまったのならばガスが燃え尽きるのを待つという手もあるが、油田の掘削現場だと石油が燃え尽きるのを待つというわけにもいかない。それどころが一分一秒ごとに金になる大量の原油が燃えているのだ、関係者は気が気じゃないだろう。
こういった火事を消すのに奥の手がある。火災現場を爆薬で吹き飛ばし、爆発で生じた炎が周辺の酸素を全て燃やし尽くし、しばらくの間だけ酸欠状態にして消火するというかなり荒っぽい技だ。『沈黙の要塞』(1994)の冒頭でスティーヴン・セガールがアラスカの油田火災でやっていたあれである。
今日紹介する『恐怖の報酬』は、中南米にある油田で火災が発生し、それを消火するために使う爆薬のニトログリセリンを500キロの山道を運ぶ男たちの映画だ。
ご存じのようにニトログリセリンは爆発力の強い液体状の爆薬で、ちょっとした衝撃でも爆発することがある危険な薬品だ。それを運ぶのはトラック運転のプロや肝っ玉のすわった奴などではない。多額の懸賞金に吊られて運転手に選ばれたのは本国フランスで食い詰めて流れ流れて中南米までやってきたようなあぶれ者ばかりの4人の男だ。つまり、油田会社にとっては失敗して死んでも惜しくも何ともない連中というわけだ。
2人1組で2台のトラックに分けて出発した男たちは、いくらニトログリセリンが危険と言ってもただ運ぶだけだろ、たかが500kmの距離だと高をくくっているのだが、先に進む内に普段ならどうということのない山道が彼らに牙を剥き始め、気のゆるみが危険につながってくる。簡単だと思いこんでいた仕事が恐怖そのものだと気付いたときにはすでに引き返すことは出来なくなってた。彼らは疲弊し狂気の縁を歩き始める。

ドキドキハラハラではなくドキドキだけの映画。立ちふさがる困難を一つ一つ対処しては先へ進むのだが、そこに爽快感はない。むしろ、進めば進むほど仲間が倒れ減っていき重苦しさが増すばかり。これがハリウッド映画ならば一つ難問が片付く毎にわっと盛り上がるのだろうが、さすがフランス映画というか監督がアンリ=ジョルジュ・クルーゾーだけのことはある。
若き日のイヴ・モンタンが格好いい。ニヒリストでタフなのは少々ステレオタイプだが当時衝撃だったラストへの逆伏線なのかもしれない。

1977年にハリウッドで同タイトルの『恐怖の報酬』として監督ウィリアム・フリードキン、主演ロイ・シャイダーで再映画化されているが、モノクロからカラーに変わったこととラスト以外はほぼそのまま構図まで同じに近いリメイクの上に、監督がフリードキンなのでアンリ=ジョルジュ・クルーゾーの53年版を観ていれば77年版は観る必要はなし。
どうせなら、油田火災とニトログリセリンいう題材なら、ジョン・ウェインが率いる油田消火のプロフェッショナルチームの活躍を描いたアンドリュー・V・マクラグレンの『ヘルファイター』(1968)をお勧めする。ジョン・ウェイン西部劇のカウボーイの子孫は現在こうやって暮らしてるのかと思わせるような楽しい(いや、やはり火災は楽しくないが)映画だ。

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コメント (2)

けん:

イヴ・モンタンはぶしょうひげがカッコよかった。いつもの女ったらし じゃなくハードな感じでしたね。

東森時音:

けんさん
確かに、イヴ・モンタンは洒落っ気のある役者でしたね。晩年作品『ギャルソン!』なんて実に粋です。

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