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『ダウン』 このエレベーター危険につき階段を使うべし

『ダウン』(2001) DOWN オランダ・アメリカ 111分

監督:ディック・マース 製作:ローレンス・ギールス、ディック・マース 製作総指揮:ウィリアム・S・ギルモア 脚本:ディック・マース 撮影:マーク・フェルペルラン
出演:ジェームズ・マーシャル、ナオミ・ワッツ、エリック・タール、マイケル・アイアンサイド、エドワード・ハーマン

インディペンデンス映画の『悪魔のいけにえ』(1974)が人々に与えたショックの一つは映画において保護されているべき車椅子の身体障害者まで惨殺されてしまうことだった。だが、メジャー系列で製作されている作品はホラー映画であろうと、ある程度の制約は存在する。『13日の金曜日』シリーズのジェイソンには慈悲も情けもないし、ついでに知能もなさそうだがそんな奴でも子供やペットの犬などは殺さない。
この『ダウン』ではそれらのタブーが次から次へと破られる。エンパイヤステートビルディングをモデルにしたとおぼしきマンハッタンの歴史あるビルが舞台となり、そこに設置された高層エレベーターが狂って暴走し次々と人を殺害していく。深いエレベーターシャフトに落ちていったり扉で首を切り落とされる犠牲者の中には、10歳ほどの子供や盲目の障害者、そして実はこれがメジャー系列の映画としては最大のタブーなのかも知れないのだが“盲導犬”まで含まれている。『ダウン』とは比べものにならない程の人数が犠牲になる『アルマゲドン』や『ダンテズ・ピーク』でも犬だけは決して死ぬことがなかったというのに。おそらくアメリカの劇場では悲鳴と非難の声、そしてホラー映画ファンから少しばかりの歓声が上がったことだろう。
これを可能にしたのは製作がオランダとアメリカという純粋なハリウッド映画ではないからだろう。脚本・監督のディック・マースはオランダ出身で、初期の作品『悪魔の密室』(1983)でアヴォリアッツ映画祭でグランプリを受賞した人だそうだ。アヴォリアッツといえSFやホラーなどのファンタスティック映画専門の映画祭で、第一回のグランプリがスティーブン・スピルバーグの『激突!』、そして『ターミネーター』(1984)、『ヒドゥン』(1987)、『ブレインデッド』(1992)などうれしくなる作品に賞をあたえている。
その『悪魔の密室』の規模をより大きくしてリメイクしたのが『ダウン』になる。『悪魔の密室』は観ていないので確かなことは言えないが、タブーとされがちな人物をも惨殺するのは非メジャー・非ハリウッド作品が原点となっているからだろうか。
エレベーターが人を殺す理由が“人が作り出したある物”が原因という合理的説明を付けてしまったところはさてどうだろう。エレベーターがおかしくなった理由にはなるが、それだけではあそこまで様々な手段を繰り出してくる説明にはなっていない。悪意の存在が怨念や悪魔など超自然的な物だった方が個人的には理解しやすい。唐突にかかってくる電話一本で「そうだったの!」と言われてもな。
ちょこちょことギャグが入っていて案外と笑える。エレベーターシャフトに潜り込んだ主人公に伸びてくる“腕”の正体には笑った。閉鎖されたビルには特殊部隊が乗り込みアクション映画の様相を呈しているシーンでなにをやっとるんだ。
『エイリアン4』の軍人役ダン・ヘダヤや同じく『エイリアン4』の馬面な宇宙海賊ロン・パールマン、そしてマイケル・アイアンサイドなど警察側のメンツが濃くてうれしい。ナオミ・ワッツは可愛らしい人で、『マルホランド・ドライブ』(2001)を観れば分かるようにかなりの演技派。『リング』の主役も松嶋菜々子よりナオミ・ワッツの方が良い。まあ映画自体、日本オリジナル版はアメリカリメイク版の方を評価しているしな。というか中田秀夫って駄目すぎ。
ところどころ面白いシーンはあるが、全体を通してみると今一つ退屈だった。エレベーターのシーンとしては『オーメン2』でのそれを超える物がなかったのが残念。あれは登場人物と観客にいったん「ほっ」とさせたところへどっかーんと驚かせる名惨殺シーンだった。

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