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『チキンラン』 酉年だからニワトリの映画。チキンと、いやキチンと観ろよな。

『チキンラン』(2000) CHICKEN RUN 84分 2001/04鑑賞

監督: ピーター・ロード、ニック・パーク 製作:ピーター・ロード、ニック・パーク、デヴィッド・スプロクストン 製作総指揮:ジェイク・エバーツ、ジェフリー・カッツェンバーグ、マイケル・ローズ、スティーヴン・スピルバーグ 原案:ピーター・ロード、ニック・パーク 脚本:カレイ・カークパトリック 撮影:トリスタン・オリヴァー、フランク・パッシンガム 音楽:ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ、ジョン・パウエル、ジェームズ・マッキー・スミス、ジェフ・ザネリ
声の出演:メル・ギブソン、ジュリア・サワラ、ジェーン・ホロックス、イメルダ・スタウントン、ベンジャミン・ホイットロー

『第十七捕虜収容所』(1953)や『大脱走』(1963)に関する記憶が随所に見られることについて今回は語らない。
『オズ(RETURN TO OZ)』(1985)でわたしが初めて観た粘土によるアニメーションであるクレイアニメーションについても語らない。

イギリスにあるその養鶏場は捕虜収容所そのものだった。ナチさながらの冷淡な女所長と愚鈍だが任務に忠実な看守が支配する中、雌鶏たちの中に一羽そこからの脱出を試みる者がいた。しかし、その度に捕まっては地下室に放り込まれる始末。諦めの漂う中、一羽の雄鳥が空から落ちてくる。彼こそ「空飛ぶニワトリ」としてサーカスに出演している人気者ロッキーで、彼は自由を求めてサーカスを抜け出してきたのだ。
ロッキーの指導の元、空を飛んで脱獄するため筋肉トレーニングに始まってリズム感やバランス感覚などの特訓に励む雌鶏たち。だが、その間に女所長が密かにチキンパイ製造機計画を進める。これまでは卵の生産が目的だったのをチキンパイ製造業に乗り出そうというのだ。もちろんその原料のチキンは養鶏場の雌鶏たち。危機はすぐそばまで迫る。果たして彼女たちは見事飛べるようになって無事に養鶏場を逃げ出すことが出来るのだろうか?

スポ根において努力こそ絶対である。産まれ持った才能が劣っていても、努力と根性で自分より恵まれた者を倒すことが出来る。汗と涙を振り絞ぼって困難に立ち向かえば必ず勝利が待っている。それがスポ根の基本的価値観だ。
では、雌鶏たちは努力の結果飛べるようになったのであろうか?いや、血と汗をどれだけ流してもニワトリはニワトリ。しょせん空を飛べるわけがないのだ。(実際の世の中にはまれに「飛ぶニワトリ」がいるが、それは無視する)
「空飛ぶニワトリ・ロッキー」だって、自分の羽ばたきで飛んでいたのではなく、千切れたポスターの下半分が示すように大砲の力で空に向かって打ち出されていただけなのだ。
ニワトリはどれだけがんばっても彼女たちがニワトリである以上決して飛べはしない。冷酷だけど当たり前の事実。努力や根性では乗り越えられない壁が立ちふさがる。

そこで諦めてしまってはただの挫折したニワトリだ。努力と根性で駄目でも、まだ知恵と勇気がある。自分の羽で飛んで逃げ出すことが出来なくても、別の方法で逃げ出せばいい。柔軟たる発想の転換と勢い任せで突き進み彼女らが取った方法は、おおこれぞバカだ。こうして壁はその横をそしらぬ顔で通り抜けることによってあっけなく無力化する。
世の中、努力と根性で乗り切れるとこばかりではない。出来ない物はどうやったって出来ないという状況は必ずやあるのだ。そんな時こそバカである。わたしたち人間だって空を飛ぶことは出来ないが、代わりに飛行機やヘリコプターで空を飛ぶ。それらを作り出したのは「努力と根性の人」や「知恵と勇気の人」よりもむしろ「バカ」だ。
レオナルド・ダ・ヴィンチは当時の製作技術では到底不可能だというのに、実際に飛行可能な飛行機械の設計図やスケッチをバカだから何枚も何枚も描いた。オットー・リリエンタールは木組みに布を張った不格好にも見えるグライダーでバカだから何度も何度も2000回以上も滑空してついには墜落して死んだ。ライト兄弟は「空飛ぶ乗り物なんてありえねぇよ」という世間の声に負けずに本業で稼いだ金をせっせとエンジンの改良や風洞実験につぎ込んだバカだった。1947年10月14日に人類で初めてベルX-1で音速の壁を越えたチャック・イェーガーはアメリカの有人宇宙飛行黎明期を描いた『ライト・スタッフ』(1983)を観れば分かる通りバカだ。
そして雌鶏たちもバカだった。後は本編を観ろっ!

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