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『ローズ家の戦争』 こうして二人は結婚しました、めでてしめでたし。・・・の17年後

『ローズ家の戦争』(1989) THE WAR OF THE ROSES アメリカ 116分 1999/6/22鑑賞

監督:ダニー・デヴィート 製作:アーノン・ミルチャン、ジェームズ・L・ブルックス 製作総指揮:ポリー・プラット、ダグ・クレイボーン 原作:ウォーレン・アドラー 脚本:マイケル・リーソン 撮影:スティーヴン・H・ブラム 音楽:デヴィッド・ニューマン タイトルデザイン:ソウル・バス
出演:キャスリーン・ターナー、マイケル・ダグラス、ダニー・デヴィート、マリアンネ・ゼーゲブレヒト、ショーン・アスティン

製作ニュースで『バラ戦争』というタイトルと出演者がキャスリーン・ターナー、マイケル・ダグラス、ダニー・デヴィートのトリオだと聞いた時には、てっきりこいつは『ロマンシング・ストーン』シリーズの3作目だとばかり勘違いしてしまった。
チビ・デブ・ハゲの三重苦俳優として有名なダニー・デヴィートだが、監督デビュー作として撮った『鬼ママを殺せ』(1987)で意外にも優れたサスペンス・コメディでの演出力を見せた。監督第二作目となる『バラ戦争』は正式タイトルが『ローズ家の戦争』となり、どうやら一連のジョーン・ワイルダー物ではなく離婚を巡る夫婦間のドタバタだとか。
まあたまにはそういうのもいいか、と気軽な感じで観に行った。そして上映が終わった時、わたしは観客席で硬く凍り付いていて、心の中を乾いた冷たい風がただ吹き抜けていた。

理想的な夫婦だと思っていた結婚17年目の妻(キャスリーン・ターナー)がふとしたことをきっかけに夫への愛が消え去っていることに気付く。夫(マイケル・ダグラス)に離婚を申し出るが、別れる気のない夫は子供の養育権や家の権利などを楯に離婚が成立しないようにごねる。そしてローズ家ではスターリングラード攻防戦も真っ青な泥沼に落ちた戦争が始まるのだ。
これは『ロマンシング・ストーン』のラストで愛によって結ばれた二人のその後を描いた作品とも言える。愛だ恋だのロマンスは最初の内だけで、結婚してしまえば残るのはただリアルな生活のみ。愛という幻想によって成立していた夫婦という“他人との生活”は、その幻想が消失することでもろくも崩れ去ってしまう。そんな、ごく当たり前でみんなが知っているのに知らない顔をすることで社会を成り立たせている事をダニー・デヴィートはスクリーンに容赦なく映し出してみせる。
『ローズ家の戦争』はブラック・コメディ仕立てになっているからまだいいが、小栗康平の『死の棘』(1990)ばりのシリアスさで描いたら観客は途中で全員映画館から逃げ出してしまうだろう。逆に言えば、『死の棘』なんかよりも『ローズ家の戦争』の方が本質的により残酷で無慈悲で救いの欠片もないということだ。
争った挙げ句の相互理解や再び燃え上がる愛など登場しない。それどころか、17年前に出会った時に感じた愛も実在はしなかったんじゃないだろうかというのがこの映画のスタンスで、それはこの二人だけじゃなく誰でもそうなのだ、とまで言う。なんとも怖ろしい考え方ではないか。

映画は白い柔らかそうな布のアップから始まる。ゆっくりと画面を流れていくそれはベッドの高級シーツだろうか?いや、カメラが引いていくとその正体は一枚のハンカチで、持ち主である弁護士(ダニー・デヴィート)はそれでいきなり鼻をかむ。なんとも人を食った上に映画の行く末を暗示する始まり方だ。ダニー・デヴィート、やはりなかなか上手い。
印象に残っているカットはクリスマスツリーのある居間でのボヤ騒ぎだろうか。大騒ぎになったあげくにようやくと消し止められるのだが、「どうだ、俺のおかげでボヤですんだんだぞ」と威張る夫に対して冷淡な妻とどうしていいのか困り顔の子供たち。炎に焼かたツリーの飾り玉に映し出される家族は汚れて歪んでいて、それぞれの心の中と距離を現すかのようだ。
そしてついにラスト。ローズ家の象徴でもあった玄関ロビーのシャンデリアにぶら下がった二人は、命の危機にさらされながらも口論を続ける。そして、二人を救い出そうと表であたふた慌てふためく弁護士と家政婦の努力もむなしくシャンデリアは落下する。
床に叩き付けられたすでに瀕死の状態。夫はゆっくりとその手を妻の手に向かって伸ばす。二人の手が重なる。妻は最後の力を振り絞って夫の手を握る、ああやはり愛はあったんだね・・・と思いきや「冗談じゃないわよ」とばかりに夫の手を振り払って孤高を貫いて一人で死んでいき、夫は未練を抱いたまま寂しく死ぬ。
愛という概念にあぐらをかいてしまい、相手への理解や思いやりを持たないと結婚生活は破綻してしまう。友人への結婚祝いでこの作品のビデオを贈ろうかと思ったことがあるが、意図が理解してもらえないと単なる嫌がらせにしか思われないので止めた。止めて正解だったなと改めて思う。下手をすれば友人を一人減らしているところだった。

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