『スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー』(2004) SKY CAPTAIN AND THE WORLD OF TOMORROW 107分 2004/12/08鑑賞
監督:ケリー・コンラン 製作:ジョン・アヴネット、サディ・フロスト、ジュード・ロウ、マーシャ・オグレズビー 製作総指揮:オーレリオ・デ・ラウレンティス、ラファエラ・デ・ラウレンティス、ビル・ヘイバー 脚本:ケリー・コンラン 撮影:エリック・アドキンス 美術:ケヴィン・コンラン 衣装:ステラ・マッカートニー 編集:サブリナ・プリスコ 音楽:エドワード・シェアマー VFXディレクター:スコット・E・アンダーソン
出演:ジュード・ロウ、グウィネス・パルトロー、アンジェリーナ・ジョリー、ジョヴァンニ・リビシ、マイケル・ガンボン、、バイ・リン
敵のロボットや飛行機、後半で登場する恐竜はおろか背景までCGで、ひょっとするとセットすらほとんど組まずにブルースクリーンの前で俳優を演技させそれを合成して画面が作られているのではないかといった徹底ぶり。
第二次世界大戦寸前の1939年を舞台にしており建物やメカのデザインはレトロタイプで統一されており全体にセピアがかった色調だ。どこかで見た映像だと思ったら日本の『CASSHERN』(2004)だった。公開年は同じなので単に偶然だろう。
マンハッタンを皮切りに世界各地を襲い始めた謎のロボット軍団。人々はスカイキャプテンに助けを求めるために無線信号を送る。タワーから発せられた電波が輪になって広がっていくのはなんとなく今はなきRKOピクチャーのオープニングロゴを思い出させる。こんなところまでレトロだ。
レプシロの戦闘機を操るスカイキャプテンはヒーローという以外ほとんど正体が分からない。軍など政府組織に所属してはいないようだが、自分専用の航空基地を持っておりそこには技術開発者や整備士など専属のスタッフまでいる。以前は上海など世界各地でその内容は不明だが色々活躍していたそうだ。おそらくは金持ちの元冒険家で趣味としてヒーローをやっているのではないかと推測する。笑顔が爽やかだが基本的にそれだけの人で、ものすごく強いとか頭が良いといったヒーローとして裏付ける能力は持っておらず少々飛行機の操縦が上手いぐらいだ。人物的魅力はジェームズ・ボンドやインディアナ・ジョーンズのそれに遥かに及ばない。
そしてもう一人の主人公が女性新聞記者のポリー。スカイキャプテンとは昔恋人だったが現在はケンカ別れした仲らしい。今回は特ダネを手に入れようとスカイキャプテンの冒険に同行することになる。空中要塞で「ここのことは絶対秘密だからな」と言われ「分かったわ」と返事をしつつも後ろ手でカメラのシャッターを押しているなど、ちょっとした悪女ないしは小悪魔的な要素を持っている。だがほとんどのシーンではドタドタと下品に歩き回り自己主張ばかり強いただの頭の悪そうな女性にしか見えない。個人的に勝ち気な女性というのは好みなのだが、ポリーのは勝ち気じゃなくて単に自己中心的なだけだ。
この様に、主人公二人に魅力が感じられないのが観ていてつらい。これがデビュー作になる監督・脚本のケリー・コンランは細部に至るまで非常に凝ったCG映像を創り上げることに夢中で、映画において肝心な人物描写をおろそかにしているとしか思えない。空中要塞の女艦長アンジェリーナ・ジョリーが唯一ましだが、それだって演出側よりもむしろ彼女自身によるものが大きい。しかも登場シーンはせいぜい10分ときてる。
なんでもケリー・コンランがこつこつと4年がかりで作った6分の自主映画がプロデューサーの目にとまり、それをベースにして『スカイキャプテン』を撮ることになったそうだ。製作総指揮にはラウレンティスの姓が付いた人間が二人含まれているがどうやら“あの”ディノ・デ・ラウレンティスの一族らしい。ディノ・デ・ラウレンティスの“あの”は良い意味でもあるし悪い意味でもあるのだが、今作は悪い意味でのラウレンティスっぽさだろう。いわゆる「大作だがおおざっぱで登場人物の魅力に乏しい」、うむまさにその通りだ。
結局、わたしにとってこの作品の一番の欠点は監督・脚本のケリー・コンランがオタクだということだろう。美術や小道具、メカなど確かに細部にまで凝っていて世界観は作り上げられている。それは認める。だが世界観を作り上げるところで満足している、世界観を作り上げることが目的としか思えない。世界観は舞台に過ぎず、そこでいかに人間を動かすか描くかが重要であるのではないだろうか。
同じくオタク系監督であるウォシャウスキー兄弟や押井守などの作品を観た時のうっとおしさと同じ物を感じた。
だが、クエンティン・タランティーノやピーター・ジャクソン、サム・ライミもオタクなはず。どこが違うのだろうか。やはり内に向かうか外に向かうかか?結論が出ないまま今回は終わる。
しょーもないギャグで終わるあの終わり方だけは好きだけどね。