『地球防衛軍』(1957) 東宝 88分 2004/11/23レンタルDVDにて再鑑賞
監督:本多猪四郎 製作:田中友幸 原案:丘見丈二郎 脚本:木村武 潤色:香山滋 撮影:小泉一 美術:阿部輝明 編集:岩下広一 音楽:伊福部昭 音響効果:三縄一郎 特技・合成:向山宏 特技・撮影:有川貞昌、荒木秀三郎 特技・美術:渡辺明 特技監督:円谷英二
出演:佐原健二、平田昭彦、白川由美、河内桃子、志村喬、土屋嘉男、中村哲
チケチケ、チーケチーケーチケテケテー、ティケチーケーテー、ティケチーケーチケテテ、チーケーテーチケチケーチケケ
の勢いのある脂ののった伊福部節に乗って始まる地球侵略物SF映画。(このチケチケでもJASRACに訴えられたりするのだろうか)
火星と木星の間にあるアステロイドベルト。それは大昔、原水爆戦争で滅んでしまった惑星“ミステロイド”の残骸だった。火星に移住しかろうじて生き延びていたミステロイドの住人ミステリアンは、新たなる繁栄の場所として地球侵略を開始する。巨大なドーム型基地、攻撃用小型宇宙船など科学の粋を凝らしたミステリアンに人類はいかに戦いを挑むのか?
基本的なストーリーや小型宇宙船と戦車との戦闘シーンなどは、明らかにH・G・ウェルズ原作でジョージ・パルがSFXを担当した『宇宙戦争』(1953)の影響が見て取れる。実際、小型宇宙船のデザインやその光線でやられる戦車の描写は『宇宙戦争』のウォー・マシーンに非常に似通っている。
それと同時に、これはもう一つのゴジラでもある。一作目の『ゴジラ』(1954)とスタッフ・キャストがかなり共通しているだけではなく、老科学者の志村喬、世をすねて人前から姿を消した宇宙物理学の科学者が平田昭彦、その友人でおなじく学者の青年、河内桃子が志村喬の娘でないことと恋愛の三角関係がないのが残念だが、人間関係は非常に似通っている。ミステリアンの巨大ロボット“モゲラ”の登場シーンや、人類側が繰り出す作戦を次々と破られていくところ。そして平田昭彦がラスト身を挺して人類を守るところまで同じだ。
では、この『地球防衛軍』が『宇宙戦争』のパクリで『ゴジラ』の焼き直しにすぎないかというとそんなことはない。個人的は変に持ち上げられ神格化された『ゴジラ』よりも『地球防衛軍』の方がずっと面白い。なによりもミステリアンや地球防衛軍が繰り出す様々な兵器が格好いい。ジャンボジェットの翼を取り外したようなロケット型α号とβ号はその巨大さのスケール感が出ていて、ちょっとテレビ版『サンダーバード』(1964~66)を思わせる。
そして巨大パラボラ型兵器その名も“マーカライトファープ”には男なら心をくすぐられるはず。キャタピラで移動するこのマーカライトファープはその駆動部を見る限り高さ100メートルはゆうにありそうな巨大さだ。この兵器のせいで衛星放送のパラボラアンテナを見るたびに「はっ攻撃か?攻撃するのか?」と身構えてしまう人も多いだろう。多くないか。
“スーパーパラボラ”などといういかにもお子様向けではなくマーカライトファープとなにやら意味ありげなネーミングも優れている。ちなみに未だに意味が分からない。
科学力が優れているくせに、「子作りしたいんで女よこせ。若くて綺麗なのな。あらかじめ下見して目を付けといたからそいつらよこせ」やら、巨大ロボットモゲラで女湯を覗いたりとミステリアンのやることがせこい。いや、あれは女性が入浴している風呂場の窓から遠くのモゲラが写り込むカットで覗いてるんではないが。でもミステリアンのことなんで望遠カメラでチェックとかしているのかもしれん。そんなことばかりやってるから滅ぶのではないか。
『ゴジラ』の1954年から3年の間に、映像がカラーになっただけではなく特撮も一気に進歩している。光学合成やホリゾント合成、ミニチュアなど当時の円谷特撮の総力を挙げた映像である。宇宙の描写なども、人類初の人工衛星スプートニクスの打ち上げが同じ1957年だということを考えると、当時としては出来うる限りのリアリティだったのだろう。ドラマと特撮の融合もバランスが取れている。おそらく公開当時は子供よりもむしろ大人の娯楽作として作られたのではないだろうか。
特撮ファン以外からはあまり語られることのない監督の本多猪四郎だが、かなりの技量があった人であるのは間違いない。その本多猪四郎の個人的ベストがこの『地球防衛軍』だ。
『クレヨンしんちゃん 爆発!温泉わくわく大決戦』(1999)では往年の東宝特撮映画にオマージュが捧げられているが、その中でもメインの一本。
ちなみに『地球防衛軍』と大仰な名前の割に事実上日本国自衛隊である。外国人は学者が2、3人出てくるだけ。ということは自衛隊の新兵器開発能力はかなりの物ということか。
考えてみればミステリアンの侵略もとりあえず富士山麓と日本限定。きっと彼らは大和撫子好みなのだろう。だが、連れて帰って嫁にした後まで大和撫子でいてくれるか分からないぞ。
コメント (2)
はじめまして。
本多猪四郎監督って、マイナーなんですか?
うちでは「マタンゴ」「美女と液体人間」「ゴジラ」「サンダ対ガイラ」などなど、大人気なのですが。
Posted by: ningyo | 2004年11月30日 07:36
日時: : 2004年11月30日 07:36
ningyoさん、はじめまして
メジャー・マイナーという言い方をすれば
本多猪四郎監督作品=メジャー
監督本多猪四郎=マイナー
といったところでしょうか。
マイナーといっても名前が知られていないということではなく、人々が小津安二郎を語るように、溝口健二を語るように、三隅研次や鈴木清順について語るような具合に本多猪四郎について語られることはなく、その名前が頻出するのは特撮映画ファンの間で交わされる会話ぐらいだろう、ということです。
多くの人が『ゴジラ』(1954)を始めとする本多猪四郎作品について語っていますが、本多猪四郎の演出について語られることはあまりないはずです。
それがつまり「特撮ファン以外からはあまり語られることのない監督の本多猪四郎だが」の部分です。
しかし、特撮部分と人間が登場するドラマ部分の見事な融合や戦闘などアクションシーンの撮り方の上手さ、特に伊福部節の流れる戦車の行軍や新兵器登場のシーンは屈指の出来で興奮させられます。
それとこれは脚本の力も大きいのですがテーマやメッセージのドラマへの盛り込み方が巧みで、物語の進行を妨げることが少なくそれでいて観客には充分に伝わるようになっています。
『マタンゴ』や『ガス人間第一号』では大人向け映画として人間の業を描き、『キングコング対ゴジラ』では明るい怪獣プロレスをやってのける。本多猪四郎という監督がかなりの実力を持っていたことがうかがえます。
Posted by: 東森時音 | 2004年11月30日 20:41
日時: : 2004年11月30日 20:41