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3年B組クズ先生と卒業式前の暴力 - わたしがテレビドラマを嫌いになったわけ

その当時、学校ではあるテレビドラマが話題になっていた。そもそもアニメや特撮番組以外のテレビはほとんど見ていない少年だったが、そんなに面白いのならば一度見てみるかと夜になってテレビの電源を入れた。
そして『3年B組金八先生』 第二シリーズ第24話「卒業式前の暴力2」が始まった。1981年3月20日のことである。
それまでの23話分を見ていないので話や人間関係がさっぱりわからないがそれは仕方がない。これからのシーンは当時見たきりのわたしの記憶だけで書くので多少間違っている部分があるかも知れないことを最初にことわっておく。
金八の務める中学校である生徒が学校の放送室に立てこもっている。教師たちは説得を試みるが失敗、そして110番通報で呼ばれた警察がついに強行突破で放送室に押し入り、その生徒を取り押さえる。
手錠をかけられ警官に囲まれた生徒が放送室から出てくるシーンがスローモーションになる。そこへ中島みゆきの『世情』が流れる・・・

なんてことしますか、君らーー!
猛烈に腹が立ったし吐き気がした。えっ、大人が若者の主張を暴力でねじ伏せたのが許せなかったのかって?そんないかにも全共闘世代の人間が書いたようなクソストーリーはどうでもよろしい。(当時はまだ学生運動のことなど知らなかったが)
わたしとしてはただそのスローモーションの使い方が許せない。
そんないかにもなシーンで中島みゆきを流してしまう感覚が許せない。
あまりにも工夫が無く考えが無くセンスがない。制作陣は真面目に作ってるのかこれは。
連れ出されるところにスローモーションというテクニカルな手法を用いるのがまず普通は恥ずかしくて出来ないし、そこに流す歌が中島みゆきの『世情』だ。中島みゆきが嫌いなわけではなく、オールナイトニッポンを聴いていた時期もありしゃべりに関してはファンなぐらいなんで、悪いのは選曲者だ。スローモーションと中島みゆき、ドラマとして盛り上げる演出として絶対やってはいけない組み合わせだと誰か放送前に指摘しなかったのだろうか。
東大講堂陥落の映像をスローにして、そこに「シュプレヒコールの波~通り過ぎていく~」と流れるシーンを想像すると、いかに第24話が映像作品として犯罪的かつクソだったかがわかる。

もちろん、まだガキだったのでその時点ではっきりとした考えとしてダメな理由が分かっていたわけではない。ただもう、生理的にイヤだったのだ。
この件はわたしが中学生だった頃だと思っていたのだが、この文を書くためにウェブで調べてみたところ放送日が1981年3月20日だったことがわかった。当時わたしは小学校を卒業し中学校へと進む時期だ。テレビの一般向けドラマを見始めるのは中学生ぐらいからだろうが、その入り口で「卒業式前の暴力」と出会ってしまったために、「テレビドラマなんかつまらん。んなーもの見るより面白い物はたくさんある」と小説(主にSFや推理小説、冒険小説)やMZ-80やPC-8001などのマイコンにはまっていって、ほとんどテレビドラマとは縁がないまま2004年に至る。
考えようによっては「金八先生によって人生が変わった」と言えなくもないが、「金八先生に感化されて人生が変わった」などという変わり方でなくて良かったなと個人的には強く思う。

1980年代末に映画『いちご白書』(1970)を観る機会があった。
アメリカの大学を舞台に、あるノンポリ学生(*)が学生運動に巻き込まれていき、最後には大学に突入してきて州兵によって学生たちは鎮圧されていく。もちろんスローモーションが入る。ほんと頼むから止めてくれ。
なんのことはない、「卒業式前の暴力」はストーリー的にも演出的にも『いちご白書』のまるまるパクリに過ぎなかったのだ。こんなとほほな映画をパクるとは。えっ、オマージュだって?じゃあ、こんなとほほな映画をオマージュするとは。
ちなみにプロフィールの嫌いな物に相田みつをを入れている.
この間本屋で見つけた相田みつをの新刊らしき本の帯には“金八とその後ろの黒板に貼られた相田の言葉”の写真が載せられていた。わたしの大嫌いな物が二つ結びついており拷問として読まされたらどんな秘密でもしゃべってしまいそうだ。逆に考えると、自分の好き嫌いの価値観の方向はこれで案外ちゃんと定まっていたことが確認できた。

(*)ノンポリとはノン・ポリティカルの略。左翼・右翼どちらの思想も持たない学生がそのように呼ばれた。そんなことを言ったらわたしらの頃はほとんどノンポリ学生。

『3年B組金八先生2』 第24回 「卒業式前の暴力2」 1981年
演出:生野慈朗 脚本:小山内美江子
出演:武田鉄矢、沖田浩之

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