『ミッドナイト・ラン』(1988) MIDNIGHT RUN 126分 1988/12/30鑑賞
監督・製作:マーティン・ブレスト 製作総指揮:ウィリアム・S・ギルモア 脚本:ジョージ・ギャロ 撮影:ドナルド・ソーリン 音楽:ダニー・エルフマン
出演:ロバート・デ・ニーロ、チャールズ・グローディン、ヤフェット・コットー、ジョン・アシュトン、デニス・ファリナ
ロバート・デ・ニーロというと「演技が上手い名優だ」といった評価をよく聞くが、わたしは本当にそうなんだろうかと疑問に思っている。
『レイジング・ブル』(1980)ではボクサーの現役時代と引退後と太ったり痩せたりして演じわけたり、『アンタッチャブル』(1987)ではアル・カポネ役のために太った上に生え際の髪の毛を抜いてハゲにしている。確かに根性がいるし肉体的にも大変だと思うが、それと演技力はまた別物ではないだろうか。
おそらく、ロバート・デ・ニーロは役者としてすごく不器用かつ真面目な人なのだと思う。その彼がメソッド演技と出会うことで、役になりきるためその外見やスクリーンには映らない内面を作り上げるといった行為に徹底してのめり込んでいったのだろう。
だが、わたしには感心するよりもむしろ「うっとおしい」「暑苦しい」といった印象が先に立ってしまう。ロバート・デ・ニーロだけではなくメリル・ストープやアル・パチーンなど他のメソッド演技を学んだ俳優からも同じような物を感じるので、メソッド演技というスタイル自体が好きではないのだろう。そもそも、役者が勝手にその役柄を固定してしまって、監督がそのシーンで要求する演技と異なりもめるという話を聞くことがあるが、こうなると本末転倒だ。役者は自分の役だけを考えればいいが、監督や脚本家は映画全体の流れを考えなければならない。当然、監督の演出が優先されるべきだ。
そんなロバート・デ・ニーロも最近は肩の力を抜いた演技の作品が多くなっている。いいことだと思う。これまた暑苦しいロビン・ウィリアムスと共演し、監督はペニー・マーシャルの『レナードの朝』(1990)なんて二度と見たくない。
ロバート・デ・ニーロ作品の中で一番好きなのが『ミッドナイト・ラン』だ。
いつもの「これでもかぁあ」という入れ込んだ演技ではなく、ロバート・デ・ニーロ本人の素顔に近いのではないかと思わせる等身大の姿だ。演ずるのはマフィアからの賄賂を受け取ることを拒んだばかりに罠にはめられ首になった元警官のジャック。現在は賞金稼ぎとして保釈金金融業者から依頼を受け、借りた保釈金を踏み倒して逃げた人物を連れ戻す仕事をしている。
今回の依頼は、マフィアの金を横領しそこから大金を慈善団体に寄付した会計士ジョナサンを捕まえてくること。金融業者は「ミッドナイト・ラン(日帰りでできる簡単な仕事:深夜にトラックを走らせるのは道がすいていて楽な仕事だという意味だそうだ)だ。」と言うが、ジャックと過去に因縁のあるマフィアやFBI、そして別の賞金稼ぎが同じくジョナサンを狙っている。こうして、ニューヨークからロスまで大陸を横断しての騒動が始まる。
『ビバリーヒルズ・コップ』の監督マーチン・ブレストらしく軽快なテンポで映画が展開されるが、ジャックがとうの昔に別れた妻と娘に未だに未練を持っていることを、古くなった腕時計を時折耳に当て動いているかどうかを確認する癖で表現するなど、なかなかどうしてあなどれない。
『スティング』(1973)にも似た胸のすく大逆転に続くラストの別れのシーンがまた良い。下手な映画だとここぞとばかりに盛り上げようとして逆に観客は冷めてしまうのだが、この作品では抑えた演出を崩さない。立ち去る途中のジャックが数歩行ったところでふと振り返ると、公衆電話の横にはもうジョナサンの姿がなく、そしてその後二人は二度と会うことはなかったのだろうなと感じさせる。うむむ、泣けるぜ。
これで『ミッドナイト・ラン2』とかいって再びジャックとジョナサンが組んだりするとこのラストも台無しなのだが、幸いなことにそれはなかった。
短気で怒りっぽいジャックに対し、常に冷静なジョナサンを演ずるのはチャールズ・グローディン。この人は他には『ベートーベン』(1992)ぐらいしかぱっと思いつかないのだが、ひょうひょうとしてつかみ所のない感じが良く出ている。
目立とうとする派手さはないが、噛めば噛むほど味が出てくるきっちりした娯楽映画だ。傑作である。
コメント (2)
この作品はもっと評価されて良いと思う。R・デ・ニーロのリラックス良し、C・グローディンのおとぼけ良し、脇も良し、面倒で変な恋愛もなく良し、大袈裟な爆破シーンなどがなくて良し、実に軽快なフットワークでテンポがはやく文句なし。ありがたいな「2」がなくて。粋な別れだぜ。
Posted by: オンリー・ザ・ロンリー | 2008年03月16日 01:18
日時: : 2008年03月16日 01:18
派手でもないが地味でもない。絶妙なバランスの作品ですね。当時は大作アクションが盛り上がっていた時期ですからちょっと見落とされがちなのかも知れませんが、ファンは多いと思います。
Posted by: 東森時音 | 2008年03月19日 22:27
日時: : 2008年03月19日 22:27